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病理組織micropapillary carcinomaの純型の術後治療

[管理番号:8001]
性別:女性
年齢:41歳
病名:乳癌
症状:しこり 乳房痛

はじめまして。
先生の古巣である○○で勤務医(循環器)をしております。
ご多忙の中、このようなサイトを運営されていることに、感銘を受け、日々拝見し、勉強させていただいております。
ありがとうございます。

病理レポートに、純型の浸潤性微小乳頭癌と記載され、動揺しております。
調べると症例報告しか見当たらず、リンパ節転移しやすく予後不良のフレーズだけが多用されておりました。
ステージのバイアスを取り除くと、ductal carcinomaと予後は変わらないという報告もありましたが、サブタイプもばらつきがあり、そもそもひとくくりにすることに問題がありそうです。
ただ、悪い情報は、一度目にすると、なかなか拭い去れません。
先生が、いつもステージを強調され、例外を嫌い、物事はシンプルに考える。
病理で予後は決まらない。
とおっしゃるのは存じておりますが、いざ自分のこととなると、普段のような思考ができずに困っております。
HER2が現時点で保留ですが、今回、2点回答をお願い致します。
①ly+f+の所見やmicropapillaryであることが不安です。
全摘+腋下郭清を追加すべき要素はありますか?
②化学療法の選択は? お手数をおかけしますがHER2陰性/陽性それぞれで、提示をお願いいたします。

経過)2019.9.(中旬)にしこりの触知と乳房痛を主訴に○○CL受診。
同日エコーガイド下マンモトーム生検施行。
乳がんと診断。
組織は、壊死が多くviableな細胞が少ない為、Ki67は不明。
ER+PR+HER2(2+)とのことでした。
Fish未検のまま、10.(下旬)左乳房温存術+SNB施行済みです。

病理報告書:Invasive micropapillary carcinoma
所見:切除組織をA~Qにスライスし、各スライスの尾側面を観察しました。
J~Lに長径13mmの白色調、充実腫瘍を認めます。

腫瘍内には異形細胞が列隙形成を伴いながら、血管茎を欠いた、偽乳頭状構造を形成し増殖しています。
通常型の浸潤性乳管成分は認められません。
腫瘍は純型の浸潤性微小乳頭癌です。
癌成分が、乳腺外脂肪識にわずかに浸潤しています。
スライスKで観察される腫瘍の黒褐色部では、出血、壊死が生じています。
すスライスJ~Kの赤点で示す部分に癌
成分の面疱型壊死を伴った管内進展を認めます。
癌成分によるリンパ管侵襲、神経侵襲がみいだされます。
静脈侵襲は明らかでありません。
切断断端陰性です。

迅速診断で、センチネルリンパ節に転移を認めないことを報告しました。

Lt. breast, D, Bp,
Invasive micropapillary carcinoma,
Total size:13mm, invasive size13mm,f,Ly1(D2-40), V0 (HE+R), margin(-)
TNM〔pT1,pN0(sn), cM0, stageⅠ〕
ER:PS4+IS2=6, J-score3b, PRG:PS4+IS3=7, J-score3b,
HER2: equivocal, score2+
Ki67 LI:62%

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「先生の古巣である○○」
→○○は、この時期もう寒いのでしょうね。(近年の温暖化とはいえ…)
私が住んでいたのは6年以上前になってしまいました。

東京の梅雨~夏の暑さには辟易しますが(身体に対する負荷としてはpositiveに捉えて鍛錬していますが)、冬の過ごしやすさ(天気のよさも含め)は利点ですね。

「①ly+f+の所見やmicropapillaryであることが不安です。
全摘+腋下郭清を追加すべき要素はありますか?」

→局所再発のリスクを考える必要はありません。
 「大きな腫瘍を無理やり温存した場合には、局所再発→(放っておくと)遠隔転移」に繋がるリスクがありますが13mmの乳癌で十分なマージンをつければ「温存乳房内」再発を心配する必要はありません。
 ゼロとはいいませんが、普通に「10年で5%程度」と考えていいでしょう。

 腋窩郭清も同様です。(追加郭清をする根拠がありません)
 ★局所再発は、半年に1回のエコーでリスク回避(最初から全摘や腋窩郭清したのと同等)しましょう。

「②化学療法の選択は? お手数をおかけしますがHER2陰性/陽性それぞれで、提示をお願いいたします。」
→「anthracycline+taxane」を選択する理由がありません。
 つまりTC(docetaxel+cyclophosphamide)です。

 HER2陰性なら TCx4→(照射)
 HER2陽性なら HER+TCx4→(照射後)→HERx14
  ♯pertuzumab追加の適応もありません。