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マンモトーム生検病理組織検査報告について

[管理番号:8537]
性別:女性
年齢:54歳
病名:乳癌 (浸潤性小葉癌)
症状:
投稿日:2020年5月18日

田澤先生 毎日、乳がんプラザを拝読して、勉強させて頂いております。
早速ご相談させて頂きたく、宜しくお願い致します。

先月4月20日に、半年ぶりに定期診断で受けたエコー検査で、右乳房上の外側に、
「ひきつれ」が見られるという事で、急きょ
マンモグラフィーをとりました。
その結果、石灰化が見つかり、マンモトーム生検を受けました。
2ブロック採取したようです。
5月(中旬)日に生検の病理組織結果を聞きに行って参りました。
担当医師からは、「浸潤性小葉がん」でステージIという説明を受けました。
エコーでの所見は、横13mm,縦13.6mm, 長径(斜め)16.4mmでした。
20mm以下という事で、ステージIという診断のようでした。
しかしながら、病理組織検査報告書を読むと、担当医の説明よりも状態が悪いような記載だと思いました。

以下、病理検査結果の記載をそのまま転載致します。

[右Cancer][MMT-CCB: Malignant (Invasive carcinoma)]
乳腺マンモトーム(Elite)生検:核異形中等度以上の癌細胞が、乳管内に充実性~コメドが他の構造を示し増殖するとともに、
豊富な間質内に策状、小充実性の構造をとり浸潤しています。
浸潤性の癌で、波及度は少なくともf, です。
硬性型の浸潤性乳管癌が存在しますが、少なからず細胞相互の結合性が低下した細い策状胞巣があり、浸潤性小葉癌成分の混在も考慮すべき所見です。
ER陽性(100%, J-Score3b, PS5+IS2=TS7), PR陽性(100%, J-Score3b, PS5+IS3=TS8)
HER2陰性(スコア0)

1.医師からは、「浸潤性小葉癌」と説明を受けましたが、病理説明を読むと「硬性型の浸潤性乳管癌」という表現もあります。

 浸潤性小葉癌と硬癌の両方が混在している、という風に理解しました。
医師の説明と病理の記載の食い違いが気になります。

 結果が悪いので、あえて細かく説明しなかったのでしょうか?田澤先生でしたら、この病理結果を見て、患者にどのように
 説明されますか?

2.医師からは、この病理結果では、核グレードとKi-67はわからないので、紹介先の病院(現在の担当医師はクリニックで検査の
 みをしており、手術は紹介先の病院になるとのこと)の病理検査結果で聞いてください、
 と言われました。
上記結果では、「核異形中等度以上」という表現が使われています。
これは、核異形度が2以上ということ
 でしょうか?癌の顔つきはかなり悪いという事でしょうか?核グレードとki67はマンモトームではわからない事もあるのでし
 ょうか?

3.この病理結果を読むと、小葉癌と硬癌の混合、核異形度は高い、という事で、かなり進行が早い、予後の悪い癌と考えてしま
 います。
限られた情報で申し訳ありませんが、先生のお考えをお聞かせ頂きたいです。

4.この結果を受けて、担当医師に今後はどのような診療方針になるか聞いたところ、MRIで癌の広がりを見ないと何とも
 言えないが、部分切除で術後ホルモン療法かな、と言われました。
小葉癌は、癌の広がりがわかりづらいと、過去のQ&A
 で拝見しました。
田澤先生でしたら、今の段階では、部分切除でホルモン療法とお考えになりますか?
私のようなケース
 は、全摘をお考えになりますか?術後は、ホルモン療法以外に抗癌剤や放射線治療もお考えになりますか?

5.1年前、今回癌が出来た場所近くに痛みを感じ、急きょエコーをしてもらいました。
その際は、問題なし、という事でした
 が、癌の大きさからいって、その時にはすでに癌があって、そのために痛みがでたと考えられるでしょうか?

6.2018年4月から2020年4月20日まで、更年期障害緩和のため、産婦人科医のすすめで、ホルモン補充療法(メノエイドコンビパッチ)を受けていました。
そのため、半年に一回、エコー、一年に一回マンモグラフィーを受けていました。
2019年の10月末の検査では、エコー、マンモグラフィーともに、問題なしでした。
たった半年で、16mmx13.6mmx13mmの癌が見つかるという事は、進行度が早い癌なのでしょうか?

7.ホルモン補充療法をやめた事で、少し改善される点はあるのでしょうか?
 (ホルモン補充療法をしていた自分の愚かさにうちひしがれています。)

8.2020年2月に人間ドックで胃の内視鏡検査をした際、初めて、「胃粘膜下腫瘍5mm」
と指摘されました。

 小葉癌では腹部への転移が特徴的と読みましたが、これは転移と考えられるでしょうか?

生検をやって、結果待ちになってから一か月、毎日不安と自己嫌悪に暮れております。
とりとめなく質問をたくさん書かせて頂きました。
お忙しい中、大変申し訳ありませんが、先生のご解説ご意見頂けますと大変有り難く存じます。
どうぞ宜しくお願い致します。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「1.医師からは、「浸潤性小葉癌」と説明を受けましたが、病理説明を読むと「硬性
型の浸潤性乳管癌」という表現もあります。
 浸潤性小葉癌と硬癌の両方が混在している、という風に理解しました。
医師の説明と病理の記載の食い違いが気になります。
 結果が悪いので、あえて細かく説明しなかったのでしょうか?田澤先生でしたら、
この病理結果を見て、患者にどのように説明されますか?」

⇒考えすぎです。

 「硬性型の浸潤性乳管癌が存在しますが、少なからず細胞相互の結合性が低下した細い策状胞巣があり、浸潤性小葉癌成分の混在も考慮すべき所見」
 ⇒これは(組織型は)確定していないということです。

  本来は(実際に小葉癌があるのかどうか?)を確定するには、E-cadherinによる免疫染色が必要なのです。
  「何故、今回E-cadherinを調べなかったのか?」
  おそらく、(針生検の少ない標本ではなく)「組織型(の本当のところ)は、手術標本で確認すべき」だから、敢えて調べなかったのだと推測します。

「2.医師からは、この病理結果では、核グレードとKi-67はわからないので、紹介先の病院(現在の担当医師はクリニックで検査の
 みをしており、手術は紹介先の病院になるとのこと)の病理検査結果で聞いてください」

⇒手術標本で判明すればいいことを、敢えて「針生検で確定しておく」理由は無いのです。(その主治医に賛成)

「「核異形中等度以上」という表現が使われています。これは、核異形度が2以上ということ でしょうか?」
⇒2なのか、3なのか?(印象としては)2の可能性が高そうです。
 ★ここでも、(針生検の少ない標本で確定する必要はなく)手術標本で「多くの材料で」評価しましょうと「敢えて」それ以上の確定は避けているようです。

「癌の顔つきはかなり悪いという事でしょうか?」
⇒「かなり」ではなさそうですよ(上記コメント通り)

「核グレードとki67はマンモトームではわからない事もあるのでしょうか?」
⇒(評価するには)材料が少ない、もしくは「そもそも」針生検標本でそれらを評価するのは無意味という立場なのでしょう。(それでいいのです)

「3.この病理結果を読むと、小葉癌と硬癌の混合、核異形度は高い、という事で、かなり進行が早い、予後の悪い癌と考えてしまいます。」
⇒全く、考えすぎ!

 早期なんだから余計な心配しないようにしましょう(上記)

「田澤先生でしたら、今の段階では、部分切除でホルモン療法とお考えになりますか?私のようなケース
 は、全摘をお考えになりますか?」

⇒主治医同様に「MRIで癌の広がり」を見て(普通に)評価します。

「術後は、ホルモン療法以外に抗癌剤や放射線治療もお考えになりますか?」
⇒「局所療法」と「全身療法」にシンプルに分けて考えましょう。

 「局所療法」 温存なら術後放射線は必須 全摘なら(照射は)不要
 「全身療法」 サブタイプ通り(つまり「抗がん剤が必要か?」はKi67次第なのです)

「その時にはすでに癌があって、そのために痛みがでたと考えられるでしょうか?」
⇒癌が原因で痛みがでることはありません。
 考えすぎです。(細胞レベルでは5年くらい前に癌細胞が発生して、ゆっくり増殖してはいたでしょうが、「痛みの原因」にはなりませんよ)

「たった半年で、16mmx13.6mmx13mmの癌が見つかるという事は、進行度が早い癌なのでしょうか?」
⇒考えすぎ(上記)

「7.ホルモン補充療法をやめた事で、少し改善される点はあるのでしょうか?
 (ホルモン補充療法をしていた自分の愚かさにうちひしがれています。」

⇒目に見えるような変化はないでしょう。(考えすぎ)

「8.2020年2月に人間ドックで胃の内視鏡検査をした際、初めて、「胃粘膜下腫瘍5mm」と指摘されました。
 小葉癌では腹部への転移が特徴的と読みましたが、これは転移と考えられるでしょうか?」
⇒これは10000%違います。
 ご安心を。