[管理番号:2048]
性別:女性
年齢:47歳
いつも丁寧なご回答ありがとうございます。
1年前に右乳房温存術を受け、術後補助療法としてハーセプチンを点滴しています。
一年検診では、エコーでポートを入れている左側に集ぞくが見られ、カテゴリー2>3とのことでした。
今まで異常を指摘されたことはありませんでした。
再発のことを考え、しばらくポートを入れておこうと思っていましたが、マンモが撮れないなら抜去したほうがよいでしょうか。
他に可能な検査はありますでしょうか。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「ポート留置中の検査」ですね。
「心臓ペースメーカー同様」マンモは禁忌です。
「一年検診では、エコーでポートを入れている左側に集ぞくが見られ、カテゴリー2>3とのことでした。」
⇒「エコーでの左側に集ぞく」とは、どういう所見でしょうか? 何が集簇しているのでしょうか?嚢胞?
「石灰化」ではないですよね? 石灰化は「マンモの所見」です。
♯エコーでの「石灰化集簇」などという所見は信頼できません。
「再発のことを考え、しばらくポートを入れておこうと思っていましたが、マンモが撮れないなら抜去したほうがよいでしょうか。」
⇒ポートは「必要無いなら」早めに抜去してしまいましょう。
血栓形成や感染など、「体にいいこと」はありません。
「他に可能な検査はありますでしょうか。」
⇒超音波で所見があれば、「超音波ガイド下に針生検する」ことが最も確実な方法です。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、とても早いご回答ありがとうございました。
ポート留置中はマンモ禁忌ということがよく分かりました。
右乳がんはルミナールB( HER2タイプ)で、T1N0MOでした。
血管がとても細く、再発・転移のことも考えポートは留置しておこうと思っておりましたが、異物なので体にいいことはないのですね。
ハーセプチンが終了しましたら、(再発・転移の兆候がないようなら)抜去しようと思います。
左乳房のエコー所見について、今一度教えていただけませんでしょうか。
エコーは術前2回、術後2回行っています。
今回は術後2回目のエコー検査でした。
エコーは技師さんが行っています。
(毎回、違う技師さんです)
担当医は画像とレポートを見て「異状なし」と仰るだけで、特に説明もありませんでした。
以下エコーの所見です。
右乳腺:
D 術後。
術後領域は皮膚の肥厚、浮腫像(+)
術後瘢痕を疑う低エコー帯(+)
残存乳腺に明らかな腫瘤像(-)
左乳腺:
小嚢胞の集簇領域数個(+)
明らかな石灰化や周囲乳腺のエコーレベルの
低下(-) 血流(-)
数個あり、正常のバリエーションを疑う。
⇒カテゴリー2>3
乳管拡張(-)
腋窩:リンパ節腫大(-)
①今まで一度も嚢胞を指摘されたことはないのに、「集簇領域数個」は新しくできたということでしょうか。
それとも今までの技師さんは問題なしとしてスルーしていたのでしょうか。
②新たにできたものだとすれば、悪性の可能性はありますか。
③このような所見でも「超音波ガイド下で針生検する」ことは可能でしょうか。
また、その必要性はありますか。
お忙しいところ誠に恐縮です。
よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
術後のフォローまで「エコーは全て技師さん任せ」なのですね。
それでは「エコー技術」(術後の局所再発などの所見は非典型的です)の上昇が見込めないのに…
『①今まで一度も嚢胞を指摘されたことはないのに、「集簇領域数個」は新しくできたということでしょうか。それとも今までの技師さんは問題なしとしてスルーしていたのでしょうか。』
⇒どちらの可能性もあります。
小嚢胞の集簇であれば「腫瘤非形成性病変」である可能性があるので、本来は「担当医が自らのエコーで確認」すべきです。
♯「腫瘤非形成性病変」は「トップページ」の「腫瘤非形成性病変」を参照してください
「②新たにできたものだとすれば、悪性の可能性はありますか。」
⇒その可能性は否定できません。
「③このような所見でも「超音波ガイド下で針生検する」ことは可能でしょうか。」
⇒可能です。
ただし、「腫瘤非形成性病変」が疑われれば「バネ式針生検よりは(超音波ガイド下)マンモトーム生検の方がベター」です。
「また、その必要性はありますか。」
⇒所見次第です。
技師さんは「カテゴリー2>3」としていますが、医師が自ら確認すべきものです。
質問者様から 【質問3】
先日は、ポートを抜去と対側乳房小嚢胞の集簇について、丁寧なご回答ありがとうございました。
現在かかっている病院では、担当医によるエコーは行われないため、不安が払拭できないでおりました。
是非、田澤先生に診ていただきたく、来月メディカルプラザ市川の予約を取らせていただきました。
病理の結果は以下の通りです。
2014年11月 右乳房部分切除(扇状4/1切除)
組織型:硬癌
腫瘍の大きさ:浸潤部4×4mm (in situを含む全
体=18×7×24mm)
浸潤の範囲:g,f
脈管侵襲:ly1,v0
リンパ節転移:なし センチネルリンパ節転移(0/3)
核グレード:Grade3(核異型スコア=3、核分裂スコア=2)
随伴するDCIS:Extensive(25%^)
Gradeおよび組織型:high,comedo
切除縁:断端露出なし(negative)
水平方向(2mm、内側)
垂直方向(2mm、皮膚表層側、標本#8)
免染結果:ER+>95%, PgR+>95%, Her2(score3+), MIB-1 index≒35%
担当医からは浸潤部が小さいので、ホルモン療法のみでもよいと言われましたが、悪性度が高いので化学療法の追加を希望しました。
SABCS2013で発表されたAPT試験のレジメン(TH療法)です。
本来であれば、パクリタキセルとハーセプチンなのです、副作用防止のためのステロイドを使用したくなかっ
たので、アブラキサンに変更しました。
先日、ハーセプチン単独14回目が終わり、現在はタモキシフェンを服用しております。
放射線は50Gy+10Gy(追加照射)でした。
二つほどお伺いしたいことがあります。
①浸潤部が4×4mmと小さいのに(腫瘤の大きさは12mm)、脂肪浸潤やリンパ管侵襲があるのは何故でしょうか?
②5年、10年再発率(遠隔転移)を教えていただけますか?
③メディカルプラザ市川では、現在の病院の紹介状を持参するようにと言われておりますが、手術をした病院が遠方のため、まだ紹介状を依頼できずにおります。
病理結果の他に術前後の血液検査やエコー、胸腹部のCTの結果も手元にありますので、ひとまずそちらを持参しての受診でも可能でしょうか。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
pT1a(4mm), pN0, luminalB(HER2陽性)
十分な早期癌です。
これで「再発を意識してポートを暫く留置」というのは「考え過ぎ」です。
(ハーセプチンが終了したら)即刻抜去しましょう。
「担当医からは浸潤部が小さいので、ホルモン療法のみでもよいと言われました」
⇒まさにその通りです。
「浸潤径4mm」では例え(luminal typeでない)「HER2 typeであっても」抗HER2療法の適応がありませんが、「luminalB(HER2陽性)」なのだから「尚更、ホルモン療法単剤が推奨」されます。
「本来であれば、パクリタキセルとハーセプチンなのですが、副作用防止のためのステロイドを使用したくなかったので、アブラキサンに変更しました。」
⇒本来「アブラキサンは(術後補助療法には)適応外」ですが…
「①浸潤部が4×4mmと小さいのに(腫瘤の大きさは12mm)、脂肪浸潤やリンパ管侵襲があるのは何故でしょうか?」
⇒浸潤部の大きさと「脈管侵襲」は無関係です。
♯「脂肪浸潤」は「浸潤癌であれば通常のこと」です。
「②5年、10年再発率(遠隔転移)を教えていただけますか?」
⇒(5年は不明ですが)10年再発率は8%程度となります。
ただし、これは「腫瘍径≦10mm」なので質問者のように「4mm」では、その半分以下でしょう。
「③メディカルプラザ市川では、現在の病院の紹介状を持参するようにと言われておりますが、手術をした病院が遠方のため、まだ紹介状を依頼できずにおります。病理結果の他に術前後の血液検査やエコー、胸腹部のCTの結果も手元にありますので、ひとまずそちらを持参しての受診でも可能でしょうか。」
⇒大丈夫です。
(対側の)「小嚢胞の集簇」所見は、場合によっては「マンモトーム生検」してしまえばスッキリします。