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リンパ転移多数

[管理番号:2693]
性別:女性
年齢:42歳
はじめまして。
12月下旬に妻に両側に乳がんが見つかり、3月初頭に手術をして先日病理結果が出ました。
(左側)
・腫瘍の大きさ:2.5センチと2センチの二つ
・腫瘍径:6センチ×10センチ (この大きさの腫瘍があったわけではなく、乳腺内に細かく散らばっており一番離れているところで10センチとのこと)
・グレード1
・リンパ節転移:36/41
・KI67=20~30%
(右側)
・腫瘍の大きさ:1センチ以下
・腫瘍径:聞きませんでした
・グレード1
・センチネルリンパ節生検で0/2だったが、乳腺内にあるリンパ節への転移が一つある模様
・KI67=20~30%
双方同じタイプだとのことですが、これが原発なのか転移なのかは最後まで分からないかもとのこと。
(再建)
一次同時再建で両側にインプラントを入れたのですが、傷みがひどく結局病理結果を聞いた日に急きょ取り出してもらいました。
リンパ節転移数を聞いたときは、完全に動転して、医師の話をきくのがやっとの状態になりました。
医師としても予想外とのことで、41個もとったつもりはなく病理に確認したが間違いないといわれたそうです。
ふつうはとったとしても25個程度であり、
検体を切ってしまい倍の数が出ている可能性もあるといっていましたが・・・。
あまりにも転移数が多いので、PETを受けることになりましたが、他の場所に何かあると思うと恐ろしい限りです。
田澤先生にお聞きしたいのは、
・なぜ、36/41という見たこともないような転移数がでてしまったのでしょうか?
腫瘍の大きさも二つあるとはいえそれほど大きくないと思います。
 他の人はおおくてもせいぜい一けたに収まっています。
この数をどのように受け止めればよいのでしょうか。
一けたの人に比べるとリスクは段違いに増すのでしょうか。
・PET結果後抗がん剤を開始しますが、放射線は一番最後でもよいのでしょうか。
放射線を最初にやる選択肢はあるのでしょうか。
・この病理結果に相当精神的に参ってしまいましたが、前向きなアドバイスをいただければ幸いです。
子供はまだ3才です。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「双方同じタイプだとのことですが、これが原発なのか転移なのかは最後まで分からないかもとのこと。」
⇒転移はありえません。
 乳癌が「対側に転移する」ことは、ありえません。
 そんなこともしらないようでは「その担当医」にも困ったものです。
 
「ふつうはとったとしても25個程度」
⇒沢山手術していると、このようなことはあります。
 決して異常ではありません。
 
「あまりにも転移数が多いので、PETを受けることになりました」
⇒不要です。
 リンパ行性転移と血行性転移は全く別なのです。
 
「36/41という見たこともないような転移数がでてしまったのでしょうか?」
⇒あまり問題にする必要はありません。
 時として、そのような事もありますが何も「特別ではない」のです。
 心配いりません。
 
「この数をどのように受け止めればよいのでしょうか。」
⇒特別なことはありません。
 「10個以上」という括り(pN3)で考えるだけです。
 
「一けたの人に比べるとリスクは段違いに増すのでしょうか。」
⇒再発せずに、元気に暮らしている人も沢山いらっしゃいます。
 
「・PET結果後抗がん剤を開始しますが、放射線は一番最後でもよいのでしょうか。」「放射線を最初にやる選択肢はあるのでしょうか。」
⇒放射線照射を先行させる理由がありません。
 通常通り「抗ガン剤」⇒「放射線」の順番が妥当です。
 
「・この病理結果に相当精神的に参ってしまいましたが、前向きなアドバイスをいただければ幸いです。」
⇒あまり数字に振り回されずに「やるべきこと」をきちんとやるだけです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

こんにちは。
妻の件について、以前3/30に回答をいただいたものです。
病理学的所見を整理すると
①左側
組織型:invasive ductal carcinoma, scirrhous carcinoma
浸潤径:6×10センチ(この大きさの腫瘍があったわけではなく、細かく散らばった
全体の広がり)
波及度:f
脈管侵襲:ly(+++)高度,sly(+++)高度,v(+)軽度
核グレード:1(nuclear atypia:2, mitotic counts:1)
リンパ節:level Ⅰ(25/30)、level Ⅱ(11/11)*郭清はレベル2までだが、level
Ⅲからもとれる限りとったとのこと。
biomarker;
ER(+), PgR(+), HER2:scorel, ki67(20-30%)
②右側
標本上作製範囲内では、原発巣認めず。
#46の腺内LNにがんの転移を認める。
追加切り出しを行い検討します。
リンパ節:SLN(gef) pN1mi(1/2), SLN(永久)0/1、腺内LN1/1
*右側も全摘してありますので、右に関してはもう問題とはしていません。
本日、PET検査の結果が出たので聞いてきました。
それによると、「遠隔転移はありませんでしたが、左側鎖骨裏にとれなかったリンパ節3つがみられる」とのことでした。
(ただし、手術による炎症の可能性もあり)
たしかに画像で見ると、鎖骨裏から上にかけて3つ光るものがみえました。
担当医としては、これは、手術してとったとしても、予後に影響ない。
すでにリンパ管をつたって、全身を流れていると考えるとのことでした。
そのような考えてよいでしょうか?
ステージはあえてつけるのであれば、3A~3Bとのことですが、田澤先生の区分だと3Cのように思います。
サブタイプはルミナルBで、来週からドセタキセル4クール→FEC4クール→放射線→ホルモン治療が始まります。
放射線については、トモセラピーのことをきいてみましたが、もちろん他院でやってもらってもいいが、
ピンポイントに特化したトモセラピーよりも、当院にあるリニアックで
胸壁等の照射と鎖骨のピンポイント照射をおこなうので、そちらをすすめるとのことでした。
(リニアックでもピンポイントでき、トモセラピーは広く当てる装置ではないとの認識)
放射線で鎖骨裏リンパ転移が消えることはあるのでしょうか?
消えたとしてもやはり予後に影響はないのでしょうか?
以上のように、悲観的な話しかありませんでしたが、根治の可能性は低くもう追い込まれたような状態です。
担当医も楽観できないといっています。
リンパ転移数36/41からすると勢いがあるタイプのようで、転移再発もすぐ起きるでしょうか。
4歳の娘をどのように育てていけばよいやら。
田澤先生からみて何か希望の光はありませんでしょうか。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「すでにリンパ管をつたって、全身を流れていると考えるとのことでした。そのような考えてよいでしょうか?」
⇒「リンパ行性転移」と「血行性転移」をごちゃ混ぜにしているようです。
 全身のリンパ節に転移する乳癌など見た事がありません。
 「リンパ行性転移」はあくまでも「局所」なのです。
 PETでは「鎖骨下~鎖骨上」ということですが、「PETで写るのであれば超音波で同定できる」と思います。
 「鎖骨下リンパ節」であれば「手術的摘出」も考慮すべきですし、その上で「鎖骨上及び、胸骨傍」にきっちり照射することで「防ぎえる可能性」は十分にあります。
 
「サブタイプはルミナルBで、来週からドセタキセル4クール→FEC4クール→放射線→ホルモン治療が始まります。」
⇒「アンスラサイクリン+タキサン」という選択肢は妥当です。
 
「放射線については、トモセラピーのことをきいてみましたが、
もちろん他院でやってもらってもいいが、ピンポイントに特化したトモセラピーよりも、
当院にあるリニアックで胸壁等の照射と鎖骨のピンポイント照射をおこなうので、そちらをすすめる」
⇒勘違いしているようです。
 トモセラピーは「照射線量の自由度が大きい」ので「照射したい部位に、より強く」照射できるのです。
 
「放射線で鎖骨裏リンパ転移が消えることはあるのでしょうか?」
⇒消えると思います。(乳癌のリンパ節は放射線に高感受性なのです)
 
「消えたとしてもやはり予後に影響はないのでしょうか?」
⇒そんなことはないと思います。
 「きめ細かい局所療法(この場合は放射線照射)が鍵」だと思います。
 
「リンパ転移数36/41からすると勢いがあるタイプのようで、転移再発もすぐ起きるでしょうか。」
⇒核グレード1からは「勢いが有るタイプ」だとは到底思えません。
 むしろ「極めて、リンパ行性の性質が強い ly(+++)高度,sly(+++)」性質のようです。
 局所コントロールが重要だと思います。
 
「田澤先生からみて何か希望の光はありませんでしょうか。」
⇒「遠隔転移ではない」ことに注目すべきです。
 ○しかも、「頚部や傍胸骨、縦隔などのリンパ節がPETでdetectできない」ことは「十分に根治性がある」と思います。
 化学療法+「きめ細かい」照射治療が重要です。
 ★手術で郭清して(画像上、残っていない)場合には「通常のリニアックでもいい」かもしれませんが、「画像上、明らかなターゲットが存在する」わけなので、「トモセラピーの方がいい」と思います。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

*再質問の「管理番号」が2683となっていましたが、内容から2693 としています。
ホームページ管理者
今回もよろしくお願いいたします。
前回、『「鎖骨下リンパ節」であれば「手術的摘出」も考慮すべきですし、その上で「鎖骨上及び、胸骨傍」にきっちり照射することで「防ぎえる可能性」は十分にあります。』
と回答をいただきましたが、主治医は取っても予後には影響ないといっており、手術
はしないまま抗がん剤が始まります。
今のままでもリンパ浮腫が起きやすい状況なので…、とも言っていましたがこちらとしてはリンパ浮腫より命のほうが大事ですので、手術的摘出について主治医にもっと考慮してもらったほうが良かったのでしょうか?
一方で抗がん剤開始が遅れて不安になっています。
本来であれば4/中旬にドセタキセル開始だったのですが、3/下旬に、両胸に入れていたインプラントを痛みが激しいため取り出したあと、ガーゼをたくさん巻いて液が出るのを収まるのを待ち、
また自然に穴がふさがるのを待っていたのですが、抗がん剤点滴前の診察で膿んでいる箇所が見つかり延期となってしまいました。
4/中旬に再度見てもらったところ、まだ完全ではないので4/25開始できればということになったのですが、それまでの間の安心材料として、ホルモン療法のリュープリンを注射し、毎日ノルバテックスを服薬することになりました。
鎖骨にリンパ節転移が残っている状態で、
治療が停滞しているのですが、このような状況でも大丈夫でしょうか?
また、ホルモン治療について詳しく医師に聞けなかったのですが、抗がん剤開始までに間が空くことでホルモン治療を行うことはよくあることなのでしょうか?
抗がん剤が始まったら、ホルモン治療は一
旦やめることになるのでしょうか?(主治医に聞けばよかったのですが、すみません。)
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
このQandAをやっていると、「局所再発が世の中に多い」ことに気付きます(質問者は局所再発ではないですが…)
その相談内容で、いつも衝撃をうけているのですが、「局所」と「全身」という概念に乏しい医師が多いことを残念に思います。
この乳腺外科の領域も、我々「一般外科から乳腺を専門として乳腺外科医となった」
世代と、「乳癌は全身病、薬物療法に興味があるみたいな、最近の(特に女性)医師」との間には温度差も感じます。
○私も(乳癌に限らず)「癌は全身が相手」であることは十分認識しており、局所療法だけに頼った治療をしているつもりは全くありません。
 ただし、沢山の症例経験を通して「局所が鍵」である事も少なくないことを感じています。
 「この状況であれば、手術や(ピンポイントの)放射線による局所療法が重要」というケースは、しばしばあるのです。
 そして、そのような際に「どのような局所療法(手術なのか、放射線なのか、その両方なのか)と全身療法(抗癌剤など)を組み合わせるのか」は、患者さん個々によって全くことなるのです。
 それを(大した経験もないのに)「リンパ節郭清は予後に影響しない」などとエビデンスだけをかざして、「すぐに抗ガン剤に走る」医師には本当に呆れてしまいます。(オーダーメード治療を最初から放棄しています)
「主治医は取っても予後には影響ないといっており、手術はしないまま抗がん剤が始
まります。」

⇒「局所と全身」の区別がつかないことを本当に残念に思います。
 
「手術的摘出について主治医にもっと考慮してもらったほうが良かったのでしょう
か?」

⇒主治医が理解してくれればいいのですが…
 
「鎖骨にリンパ節転移が残っている状態で、治療が停滞しているのですが、このよう
な状況でも大丈夫でしょうか?」

⇒手術自体に問題があるようです。
 手術がこの様な状態になっているので、尚の事「再手術は、考えたくない」のかもしれません。
 
「また、ホルモン治療について詳しく医師に聞けなかったのですが、抗がん剤開始ま
でに間が空くことでホルモン治療を行うことはよくあることなのでしょうか?」

⇒「できる治療だけでもやっておく」という考え方は通常とは思います。
 
「抗がん剤が始まったら、ホルモン治療は一旦やめることになるのでしょうか?」
⇒私は「ホルモン療法と抗ガン剤は併用(アンスラサイクリンとタモキシフェンは除く)」しますが、
医師によっては「併用しない」ものもいるので、「担当医がどうするつもりなのか」は解りません。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

こんにちは。
以前、管理番号2693で妻の件で質問させていただいたものです。
3月上旬に両側摘出手術
5月上旬からドセタキセル4クール開始
8月上旬からECを6クール開始し、現在5クール目に入ったところです。
お聞きしたいのは以下の点です。
1.ECは最大6クールできるといわれて頑張っておりますが、一方で予後に影響は無いともいわれました。
  当方はリンパ節転移が多かったため(36個)出来ることはやろうと思いここまできましたが、いまさらですが6クールやることの効果についてどう思われますか?
  また、先生の患者さんで6クールされる方はおられるでしょうか?
2.6クール終わった後は放射線の前にPETを行うといわれました。
PETは4月上旬に1回やっております。
1年もたたないうちに再度PETを行う必要はあるでしょうか?
  医療被曝についても心配です。
3.鎖骨下にリンパ転移が残っている状態であったため、エコーで状況を確かめてもら
いたいのですが、主治医はエコーをする考えがないようです。
強く希望したほうがよいでしょうか?
4.放射線を始めるのが年明けになりそうです。
手術をしてから大分たってしまいますが、問題ないでしょうか?
ご多忙のところ恐縮ですが、ご助言よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
「先生の患者さんで6クールされる方はおられるでしょうか?」
⇒いらっしゃいます。
 アンスラサイクリンは生涯投与量が決まっています(心毒性のために)
  ファルモルビシンで800-900mg/m2
ドキソルビシンで450-500mg/m2
これを超えなければ大丈夫です。
「1年もたたないうちに再度PETを行う必要はあるでしょうか?  医療被曝についても心配です。」
⇒腫瘍マーカー測っていますよね?
 とくにマーカーに動きがないのであれば、(PETよりも)先にやることがある筈です。(鎖骨下や鎖骨上の主治医自らのエコー検査です)
「3.鎖骨下にリンパ転移が残っている状態であったため、エコーで状況を確かめてもらいたいのですが、主治医はエコーをする考えがないようです。」
⇒全く「問題外」です。
 
「強く希望したほうがよいでしょうか?」
⇒当然です。
 「先生、PETより先にするべき事があるのではないですか??」と詰め寄ってみましょう。
「4.放射線を始めるのが年明けになりそうです。手術をしてから大分たってしまいますが、問題ないでしょうか?」
⇒問題ありません。
 抗ガン剤をしている間は放射線は併用しないのです。
 当然、そうなります。
 
 

 

質問者様から 【質問5】

今回もよろしくお願いします。
前回いただいた回答を踏まえ主治医に相談したところ以下のとおりでした。
○1年も経たずにPETすることについて、妻のような症例であれば経験上、術後
1,2年で内臓に転移してくるケースが多いのでやるべき。
抗がん剤をうっている間にも転移している可能性がある。
○PETは年に2~3回程度やるべき。
医療被曝といっても数十年後に影響がある話で、年2~3回であれば心配するほどはないし、今はそんなこと言っている場合ではない。
○エコーをしないのは、両胸を全摘出しているので鎖骨しかチェックできないから。
全身をチェックしたい。
○腫瘍マーカーをやっていないのはやる意味がないから。
その数値如何で治療方針を変えることはない。
○放射線は抗がん剤終了後1か月あける必要があるが、PETで転移が発見されれば
放射線はおこなわない。
主治医としては、はやり妻の状況を相当な高リスクと考えており、内臓転移は免れないというような感じでした。
ただ、田澤先生はこのQ&Aで以下のように書かれておられます。
・エコーは主治医自らこまめに行うべき
・抗がん剤治療中に再発・転移は通常ない
・術後1年以上は再発・転移は通常ない
・ある程度ステージが進んでいる人でも、根治している人のほうが多い
これらを考えると主治医の考えをどのように受け止めればよいか難しい状況です。
田澤先生は、主治医の方針をどう思われるでしょうか?
 

田澤先生から 【回答5】

こんにちは。田澤です。
「田澤先生は、主治医の方針をどう思われるでしょうか?」
⇒典型的な「自分で超音波をしない」医師ということです。
 私がそれらの医師のいうことにコメントすることはありません。