[管理番号:4720]
性別:女性
年齢:52歳
いつも拝見させていただき学ばせていただいています。
昨年9月に自分でしこりに気がつき検査を受け、
10月より術前化学療法(FEC/TC)→手術(全摘、リンパ郭清)を4月(上旬)日に終え、
ホルモン療法開始(フェマーラ)し、放射線治療を5月(上旬)日より開始予定です。
手術後の病理結果は下記の通りです。
【術後の病理結果】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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Invasive ductal carcinoma
INFγ, g(+) f(+) s(-) ly(+) v(+)
EIC(-): ICT(+),NCAT(+)
pT2:3.8cm 3.2cm(腫瘍は2つあり、ともに同じデータ結果)
nuclear atypic : Score 2, number of mitotic figures ; Score 1 nuclear grade :1 chemotherapeutic effect: Grade 2b Lymph nodes, axilla, excision Metastasis of carcioma #Level 1(10/21), #Level 2(0/2)
所見:肉眼的に切片上、B領域の腫瘍と考えられる境界不明瞭な病変がみられます。
組織学的に、B領域、C領域にそれぞれ腫瘍の形成を認めます。
いずれの腫瘍も化学療法の影響を高度に受けており、間質内に散在性に異型細胞が分布しています。
異型細胞には、
核・細胞質の変性が強くみられます。
これらは残存する癌細胞と考えられ、浸潤性乳管癌を考えますが、腫瘍残存量が少なく、変性が高度に加わっており断定できません。
乳管内にはDCIS成分が多く残存しており、変性も間質浸潤部と比較すると弱い印象です。
化学療法の効果の程度は、いずれの腫瘍もGrade 2b相当と勧化ます。
リンパ管侵襲、静脈侵襲が散見されます。
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質問は4点です。
①リンパ転移のガンが10個も残存し、
リンパ管侵襲、静脈侵襲が散見されますと所見のコメント欄の記載もありとても不安です。
放射線治療を開始する予定ですが、
5年、10年内の再発率や生存率はどの程度のものになるのでしょうか。
②化学療法を開始する前にPET検査を受けた時点では遠隔転移はありませんでしたが、
10個もリンパに残存していたことから、
半年の化学療法中に遠隔転移した可能性もあるのでしょうか?
③化学療法の効果はGrade2bでしたが、リンパに転移していた細胞には効果がなかったということなのでしょうか?
④ホルモン療法の薬剤フェマーラを処方されました。
これは閉経後の方向けのものではないのでしょうか。
抗がん剤治療開始する直前まで生理がありました。
過去1年間において生理がない場合を閉経後とするという記述をサイトでよみました。
このままこの薬で問題ないものでしょうか。
どうぞ宜しくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
そもそも術前化学療法の目的が何であったのか?という疑問が残りますが、その点は触れずにおきましょう。
ただ、術前化学療法を行うと「病理結果の判断が難しく」(統計ソフトでの)判定もできなくなります。
「5年、10年内の再発率や生存率はどの程度のものになるのでしょうか。」
⇒術前化学療法の前の状況が解らないので不明です。
「10個もリンパに残存していたことから、半年の化学療法中に遠隔転移した可能性もあるのでしょうか?」
⇒リンパ行性転移と血行性転移に直接の関係はありません。
一般的に「化学療法中に転移は起こらない」と思います。
「③化学療法の効果はGrade2bでしたが、リンパに転移していた細胞には効果がなかったということなのでしょうか?」
⇒リンパ節の癌細胞に対する「変性の程度」の記載が無く、不明ですが、
「大きな効果ではなかった」と思います。
「④ホルモン療法の薬剤フェマーラを処方されました。これは閉経後の方向けのものではないのでしょうか。」
⇒その通りです。
「抗がん剤治療開始する直前まで生理がありました。」
⇒化学療法閉経といいます。
化学療法終了後1年位は「タモキシフェン」として、(その後、エストラジオールを測定した上で)閉経値ならば「アロマターゼ阻害剤へ変更」するべきです。
「このままこの薬で問題ないものでしょうか。」
⇒タモキシフェンの方がいいでしょう。
○化学療法閉経で(つまり、不完全な状態で)アロマターゼ阻害剤を投与すると、「卵巣が復活=月経再開」を促す事があります。(これは予後不良因子なのです)