[管理番号:5752]
性別:女性
年齢:55歳
田澤先生お世話になります。
2年前に右胸全摘(乳頭も全て)し、ルミナールAで、現在ホルモン治療中(閉経前)です。
先日2年目の検診で右脇のリンパに5mm,7mmのものが映っていると言われました。
ただ、主治医は肺のレントゲンも異常ないし、疲れ等でもそう見える場合があると言われました。
リンパということに再発では?と不安になりました。
いくつか質問がございますので、お答えいただければと思います。
①疲れや体調でリンパ節がそのように5mmや7mmのものが映ることはあるのでしょうか?
これは正常リンパ節の腫れなのでしょうか?
再発でも腫れと同じ様な画像で細胞診等を行わないと超音波だけでは分からないものなのでしょうか?
主治医は今すぐ検査しなければならないものではないので、また3ヶ月後と言っていました。
②消化器系に疾患があるのですが、別の内臓部位の癌から脇のリンパ節に転移がある場合も考えられるのでしょうか?
③3ヶ月毎に診察を受けていますが、前回は触診のみで異常なし。
6ヶ月前はリンパ節のことは何も言われませんでした。
6ヶ月で5mmや7mmの
ものが出現するものなのでしょうか?
④もし、この2つが再発なら、サブタイプは2年前と同じものですか?
ホルモン治療中ですが、薬は効いてないのでしょうか?
⑤腫瘍マーカーのために採血は6ヶ月前にしましたが異常なし。
今回は結果待ちです。
リンパに再発があると血液検査にも異常が表れてくるのでしょうか?
⑤センチネルリンパ節生検では術中の迅速診断も、術後も0個でリンパ節転移はなかったのですが、それでも、リンパ節に再発することはあるのですか?ある場合はどれくらいの割合であるのでしょうか?
また、ルミナールAでの(領域?)再発率はどれくらいあるのでしょうか?
田澤先生は私の現状況で再発の可能性はどれくらいあると思いますか?
⑥手術経験が豊富な医師に執刀してもらいましたが、手術中に見つからなかったセンチネルリンパ節がもう一個あって、そこには転移があったなど、取り残すことはあるのでしょうか?
手術前日のセンチネルリンパ節生検用の注射は部下の医師が行なっていました。
⑦術後の病理結果で、リンパ管侵略がly1だったのですが、ly0よりも再発しやすいのでしょうか?
センチネルリンパ生検はパスしたので、リンパ節を取らなかったのは正しいのでしょうし、QOL的にも良かったのですが、取っておけば領域再発の心配をする必要はなかったのかなと思ったりしてしまいます。
⑧左胸にも1年ほど前に全く緊急性はないが良性とも悪性とも言えない白い不明瞭な1cm以下のものが見えると言われて経過観察していたのですが、今回は消えて見つけることが出来ませんでした。
これは、ホルモン治療の薬が効いたからでしょうか?
それとも、今回はたまたま見つけられなかっただけで、次回はまた見えたりするのでしょうか?
⑨次回の診察で受けた方が良い検査がありましたら、アドバイスをください。
ちなみに、次回は骨密度を測る程度で、大掛かりな検査は予定ありません。
最近薬の影響なのかもともとの更年期なのか生理が数ヶ月に一度しかこないので、今後の薬の変更について考えると言われているだけです。
比較的おとなしい部類の乳がんで、全摘したら根治だと考えて前向きに治療していましたので、右胸に関しては何も考えていなかったのですが、急に不安になりました。
手術後の病理結果は以下の通りです。
【病理組織診断】
Invasive ductal carcinoma of the right breast,total mastectomy.
-Rt.B area, 1.2×0/8cm,2a3,f(+),margin unkwnon,1y1,v0,n(0/4=0/4+0/0).
-ER8=5+3,PgR8=5+3,HER2:1+,Ki67:10%程度
【所見】
右乳腺全摘検体:14.2×13.2×4.0cm大、皮切13.0×4.2cm大
■主病変
Rt.B area,Bt+SNB→Fr(-)→Ax(略)
断片(#13):標本上は深部剥離断片に乳管内病変の露出がみられるが、肉眼的には筋膜が認められ、腫瘍の露出はないと判断する。
腫瘍径:1.2×0.9×3.5cm, 浸潤径(#8):1.2×0.8cm
組織型(規約17th):2a3,scirrhous carcinoma
組織型(WHO 4th):Invasive carcinoma of no special type.
UICC 7th:pT1c,pN0
NA:2,MC:1→NG:1
TF:3→HG:Ⅱ(6)
組織学的波及度:f(+),脈管侵略:1y1(HE,#12),v0(HE)
in situ(+):solid,cribri-comedo.
EIC(-),Comedo necrosis(+),石灰化(+,分泌型),TIL:2(#8)
背景乳腺症(+)
fibroelastotic stroma(+)(#8)
■免疫染色:(#8)
ER Allred score 8 = PS(5)+IS(3)(>95%), PgR Allred score 8=PS(5)+IS(3)(>95%),
HER2:1+(弱陽性10%程度,in situで中等度陽性像あり),MIB-1(Ki67):10%程度(Hot spot)
■リンパ節:(0/4=0/4+0/0)
1.術中迅速診断(0/4)(P15-016000);SLN1(-),SLN2(-),SLN3(-),SLN4(-),SLN5(-)リンパ節組織なし
2.通常診断(0/0)
■既往組織診:P15-016000(Gef),P15-02951(Rt.B,CNB,借)
■コメント:比較的限局した硬癌の所見#13で標本上は深部剥離断片に
乳管内病変の露出がみられるが、肉眼的には筋膜が認められ、腫瘍の露出はないと判断する。
よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「①疲れや体調でリンパ節がそのように5mmや7mmのものが映ることはあるのでしょうか?」
⇒そんなことでは起こりません。
主治医がいいたいのは「反応性リンパ節」のことでしょう。
「これは正常リンパ節の腫れなのでしょうか?」
⇒それは実際に画像も見ていないのに判断することはできません。
ただ主治医はそのように判断しているようです。
「再発でも腫れと同じ様な画像で細胞診等を行わないと超音波だけでは分からないものなのでしょうか?」
⇒物事には「程度」があります。
画像だけでは「どちらか区別がつかない」ものから、(画像だけで)「明らかに区別がつく」ものまで様々です。
♯5mmや7mmでは(画像だけでは)「反応性リンパ節と転移性リンパ節の区別は困難だと思います。(一般的に「小さければ小さいほど、区別はつきずらくなります)
「主治医は今すぐ検査しなければならないものではないので、また3ヶ月後」
⇒術後で「5mmや7mm」であればよほど「不整形」でないかぎり、経過観察となりそうです。
ここで重要なのは「大きさ」ではなく「形状」です。
『今週のコラム 105回目 「前医で細胞診良性」を信じられない私をご理解ください。』の2例の「再発リンパ節」の画像を良くご覧ください。
画像だけで「怪しい」と判断できるリンパ節の例ですが、「正円」でも「(横長)楕円」でもなく、「縦長不整形」ですよね?
こうなると、「サイズに関係なく」怪しいですが、「正円」の場合には(おそらく質問者の場合には、これだと推測していますが)その場合には、有る程度の大きさがないと「反応性と転移性の区別がつきずらい」のです。
「②消化器系に疾患があるのですが、別の内臓部位の癌から脇のリンパ節に転移がある場合も考えられるのでしょうか?」
⇒それは1000%ありえません。
「6ヶ月で5mmや7mmのものが出現するものなのでしょうか?」
⇒「術後」だから、尚の事十分ありえます。
「④もし、この2つが再発なら、サブタイプは2年前と同じものですか?ホルモン治療中ですが、薬は効いてないのでしょうか?」
⇒転移性リンパ節だと仮定すると…
サブタイプは同じでしょう。
解釈としては…
(手術時に取り残されていた)リンパ節が(ホルモン療法により長期間おさえられてきたので)「極めてゆっくり増大」してきた。となります。
「リンパに再発があると血液検査にも異常が表れてくるのでしょうか?」
⇒この程度では(もしも再発リンパ節だとしても)上がりません。
「⑤センチネルリンパ節生検では術中の迅速診断も、術後も0個でリンパ節転移はなかったのですが、それでも、リンパ節に再発することはあるのですか?」
⇒残念ながらあります。
それは(厳密には)再発ではなく、「手術時の取り残し」となります。
(手術の時点で、センチネルリンパ節に転移が存在していたのに)「別のリンパ節を(センチネルリンパ節と誤認し)術中に生検」してしまい、「転移無し」として「取り残されてしまった(転移のあった)センチネルリンパ節がゆっくり増大」したということです。
「ある場合はどれくらいの割合であるのでしょうか?」
⇒通常は(正しくセンチネルリンパ節生検が行われていれば)ありません。
「また、ルミナールAでの(領域?)再発率はどれくらいあるのでしょうか?」
⇒お解りですか??
局所再発(リンパ節も含めて)は(サブタイプとか、ステージとは無関係に)「手術手技そのものが原因」なのです。
ルミナールAとは全く無関係です。
「田澤先生は私の現状況で再発の可能性はどれくらいあると思いますか?」
⇒(質問者の手術時の状況を知らない)私に判断はできません。
「⑥手術経験が豊富な医師に執刀してもらいましたが、手術中に見つからなかったセンチネルリンパ節がもう一個あって、そこには転移があったなど、取り残すことはあるのでしょうか?」
⇒通常は無い事ですが…
それが「手術時の取り残し」となります。(術者にしか解らない事です)
「⑦術後の病理結果で、リンパ管侵略がly1だったのですが、ly0よりも再発しやすいのでしょうか?」
⇒無関係です。
「今回はたまたま見つけられなかっただけで、次回はまた見えたりするのでしょうか?」
⇒その可能性はあります。
「⑨次回の診察で受けた方が良い検査がありましたら、アドバイス」
⇒主治医みずから(責任を持って)超音波してもらいましょう(技師ではなく)さい。