[管理番号:406]
性別:女性
年齢:48歳
お世話になります。
私は先日乳房全摘の術中センチネルで1/3個の転移が見つかったのでレベル1まで郭清しました。
しこりが1センチであり、ほぼ転移なしと思われていたのでショックです。
このような状態でレベル1のリンパに何個くらいあると予想されますか。
気持ちの覚悟をしておきたいのです。
硬がん、Ki67 30~40、グレード2、ホルモン両方とも強陽性、ハーツー陰性です。
結果まで一ヶ月、気持ちのもちようがわかりません。
どうぞよろしくお願いします。
田澤先生からの回答
おはようございます。田澤です。
「術前(画像)診断でcN0(転移無)」だったけれど「術中センチネルリンパ節生検で陽性」との事ですね。
それでは回答します。
状況の確認
「術中センチネルで1/3個の転移」
⇒macrometastasis(肉眼的転移):2mm以上だったのでしょうか?
現在ではmicrometastasis(微小転移)の場合には「郭清省略」の方向にあります。
回答
「このような状態でレベル1のリンパに何個くらいあると予想されますか。」
⇒転移は無いと思います。
センチネルリンパ節転移が肉眼的転移だとしても、「他の2個のセンチネルリンパ節が転移陰性」ですので、「リンパ節転移はここでブロックされている」と考えていいと思います。
術前画像診断で(画像上)転移無しとしていることからも、「追加郭清リンパ節には転移は無い」と思います。
「硬がん、Ki67 30~40、グレード2、ホルモン両方とも強陽性、ハーツー陰性」
⇒一応luminal Bとなり「化学療法の適応あり」となりますが、Ki67も「それ程高くなく」患者さんの希望により「内分泌療法単独も十分選択肢に入る」と思います。
※センチネルリンパ節に1個転移を認めても関係ありません。
質問者様から
【質問2 主治医に確認しました。】
田澤先生
お忙しいなかをご返信ありがとうございました。
とても力づけられました。
リンパの数によってはステージ3になるかと思うと、いても立ってもいられませんでしたが、先生のお話で元気が出て、
食事も摂れるようになりました。
さて、今日の回診時にリンパ転移の状況を伺いました。
センチネルリンパ部分は目視で5ミリ以上、郭清部分は10個のうち1個ははれていたとのことでした。
レベル2には目視で腫れはみられなかったので郭清はしてないと。
放射線もあてるかもしれないと言われました。
これは、リンパ転移数が多いかもしれないと予測されてるからでしょうか。
また不安になりました。
また、抗がん剤のts-1が効くかもしれないとも話してくださいました。
慌ただしく伺ったので、詳しく聞けなかったのですが先生のお考えをお聞かせいただけましたら幸いです。
どうぞよろしくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「リンパの数によってはステージ3になるかと思うと、いても立ってもいられませんでした」とありますが、「術前(画像診断で)cN0」であるのに、「手術してみたらpN2(リンパ節転移4個以上)」と言う事は常識では考えられません。
その場合には「術前画像診断(超音波、CT)に問題がある」と言う事になりますが、さすがに「そのようなことは無い」と思います。
回答
「郭清部分は10個のうち1個ははれていたとのことでした。」
⇒リンパ節転移が最終的に「2個(SLNの1個とレベル1の1個」となるかもしれない。と言う事だと思いますが…
通常、「センチネルリンパ節として3個調べて、1個しか転移が無い」のに「それより(腫瘍から)遠いリンパ節に転移がある」ことは少ない筈ですが…
「放射線もあてるかもしれないと言われました。これは、リンパ転移数が多いかもしれないと予測されてるからでしょうか」
⇒違うと思います。
そもそも「乳房切除後の術後放射線の適応」は「リンパ節転移1個以上(推奨グレードB)」「リンパ節転移4個以上(推奨グレードB)」です。
質問者の場合に「リンパ節転移4個以上を想像」している訳ではなく、そもそも「リンパ節転移は1個でもあれば、放射線照射の適応がある」ので『術前に術後照射の話はしていなかった筈』なので話をしておいたのでしょう。
「抗がん剤のts-1が効くかもしれないとも話してくださいました。」
⇒これは問題のあるコメントです。
現時点で、「術後補助療法に有効性が証明されている(推奨グレードはC1ですが)経口抗がん剤」はUFTしかありません。
★「TS-1の術後補助療法は適応外使用」となります。(TS-1の適応は「手術不能または再発乳癌」なのです)
『POTENT試験』という「TS-1を術後補助療法として用いて、その有効性を評価する試験」が現在進行中です。
但し、「登録終了後5年間の観察期間があるので結果は2020年」なのです。
◎術後の補助療法として「TS-1が使用されることは(少なくとも5年以上は)ありません」
少なくとも「質問者が該当することはあり得ない」のです。
まさか、「適応外使用」を本当にするとは思いませんが、『そのようなことにならないように注意』が必要です。
質問者様から 【質問3】
田澤先生
いつも大変お世話になっております。
先日のお答えを何回も読み直しては気持ちを落ち着けています。
ありがとうございます。
本日退院をしましたが、周りにリンパ転移していらっしゃる方が多くて驚いています。
リンパ転移数と再発率は比例するのでしょうか。
また、ルミナルbは3年以内に再発しなければ安心とかも聞きました。
情報が交錯していて不安です。
お忙しい先生に何回もお尋ねするのは気がひけるのですが、お時間のありますときにお伺いできれば幸いです。
どうぞよろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「リンパ節転移」について不安になる気持ちは理解できます。
それでは回答します。
回答
「リンパ転移数と再発率は比例するのでしょうか。」
⇒ある程度あります。
「転移個数」と「再発率」の関係については、「0個」「1~3個」「4~9個」「10個以上」などに分けて検討すると「違い」はでてきます。
ただし、「実際の再発率」には「サブタイプ」なども関係してきますので「リンパ節転移の個数」だけで判断すべきではありません。
「ルミナルbは3年以内に再発しなければ安心」
⇒「luminal A」は「おとなしい分、晩期再発に気をつけるべき」という事と対比すると、「幾らかは」そう言えるかもしれまえんが…
実際は「luminal type」なので、「ホルモン療法終了後」つまり5年以降とか、「10年以降」とか晩期再発のリスクはあります。
ただ、「年数と共に」再発率が下がるのは間違いありません。
質問者様から 【質問4】
田澤先生
お忙しい中をいつもお答え頂きましてありがとうございます。
1日に何回も読み直しては心を安心させています。
また、他の質問に対するご回答もあわせて読みながら勉強させていただいております。
あと1ヶ月ほどで病理結果が出ますので、その際にはまたお尋ねさせていただくかもしれません。
またそれまでに不安感に苛まれたら、先生の回答を読み直すことに致します。
本当にありがとうございました。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「わからない事から来る不安」を軽減する最良の方法は「きちんと理解して、それと向き合う」事です。
いつでもお手伝いしますので、今後もお役立てください。
質問者様から 【質問5 トリプルポジティブでした。】
田澤先生
いつも丁寧にお答えいたたきましてありがとうございます。
術後の病理結果が出ましたので、またお尋ねします。
とても気になっていましたリンパ転移数は、センチネルに一つ、レベル1に二つの合計3つありました。
また、ハーツーが3プラスでトリプルポジティブと言う結果に驚いています。
これでハーセプチンが追加され、私の希望で放射線治療もして頂くことにしました。
ハーツーが陰性であったのに強陽性がショックです。
また、近くにあったしこりも非浸潤がんでした。
これは、サブタイプも何 もわかっておりません。
動揺しているためにまとまりなくて申し訳ありませんが、このような場合、田澤先生でしたらどのような治療をお考えになりますか。
非浸潤のがんもサブタイプなど調べたほうが良いのでしょうか。
また、予後などもとても気になります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
術後病理結果が出ましたね。
やや予想外の結果に私も驚いています。
回答
「ハーツーが3プラスでトリプルポジティブと言う結果に驚いています」
⇒これは通常はないケースです。
針生検でHER2-なおに、切除標本でHER2+というのは、かなり稀です。
考えられるのは「針生検の標本が中心から外れていた」もしくは「針生検の標本の処理に難があった」という事くらいです。
「針生検標本でのサブタイプを信じずに」切除標本でも「調べておいて本当に良かった」と思います。
「切除標本でER, PgR, HER2を改めて調べなければ(通常は、針生検での評価だけで済ます事が多い)抗ハーツー療法をしないところ」でした。
これは大変な不利益となります。
「私の希望で放射線治療もして頂くことにしました」
⇒リンパ節転移が3個であれば、妥当な判断だと思います。
「このような場合、田澤先生でしたらどのような治療をお考えになりますか」
⇒質問者の考えていることと同様になります。
具体的には
TC4サイクル⇒放射線照射⇒ハーセプチン1年間
♯ホルモン療法は最初から併用
「非浸潤のがんもサブタイプなど調べたほうが良いのでしょうか。」
⇒全く不要です。
今回の場合には「トリプルポジティブ」との事ですべての治療(ホルモン療法、化学療法、ハーセプチン)が行われますので、「非浸潤癌のサブタイプがどうであれ」追加の治療は一切ないのです。
「予後などもとても気になります」
⇒気持ちは解りますが、あくまでもステージ2A(pT1, pN1, pStage2A)となりますので、心配はありません。