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(温存)ルミナールBハーツ陽性

[管理番号:1314]
性別:女性
年齢:45歳
ハーツー陽性の事を調べていたら田澤先生の所に辿りつきました。
2年前の2013.10月に温存手術を受けました。
非浸潤ルミナールAという診断だったので温存を希望しましたが
術後の病理はルミナールBハーツー陽性でした。
現在までに①~④まで終了しました。
①抗がん剤 AC 3週に1回×4回
②抗がん剤 タキサン系パクリタキセル週1回×12回
③分子標的治療ハーセプチン1年
④放射線 30回(25+5)
⑤ホルモン療法5年
不安に思う事は、
ハーツー陽性、浸潤径が2.2cm(全体4.4)で大きかったこと、
グレード3、ki67が5割強などです。
術後から化学療法をしたので、抗がん剤やハーセプチンが効いているかも
確認できなかったことや
ハーツー陽性ならば全摘の方がリスクも減ったのではないかと
いまだにモンモンとしています。
田澤先生はサブタイプで予後を議論する事は無意味
あくまでも治療法の為にあるとおっしゃっていましたが
私のような病理でも温存で良かったのか・・・。
検診でも年1のマンモ、血液しかやらないのも不安にかきたてられます。
以下、術後の病理結果です。
検体:右乳腺 乳癌病巣巣:×1病巣
切除術:Bp+SNB 9.0×7.0×2.5cm,
占拠部位:C領域
腫瘍径:2.20×1.30×0.90cm  
腫瘍径 in Situ ca含む4.40×2.30×1.60cm
組織分類:invasive ductal carcinoma,popillotubular carcinoma
核異型スコア2
核分裂スコア3 (11/10HPF)
核グレード3
ER:Allred PS4 IS2 TS6,
PgR:Allred PS4 
IS2 TS6
HER2:score3,強陽性:100%,中等度陽性0%,弱陽性:0%
Ki-67:56.1%
波及度:gf,リンパ管侵襲:ly0,静脈侵襲:v0
断端:皮膚側:-,3.0mm in situ♯16,深部側:-,1.2mm in situ♯13
側方:-,11.0mm in situ♯5,乳頭側:-
in situ ca++,EIC+,娘結節-,comedo+++, 石灰化++,リンパ球浸潤++
前治療:なし,区分:初発
リンパ節転移:合計(0/2,i-)
SNB(0/2)
UICC7版:pT2 pNO pMO StageⅡA,規約17版:pT2 pNO pMO StageⅡA
異型乳菅上皮が小腺菅状、腺菅胞巣状に増殖する、invasive ductal
carcinoma,popillotubular carcinomaがみられます
papillary,solid,comedo typeのductal componentが見られます。♯13,15,17に
生検痕が見られます。
TNN ・T=2、N=0、M=0
しこりの大きさ(浸潤がん最大径) 2.2×1.3×0.9cm
リンパ節転移の数 なし
核グレード3
HER2タンパク(染色)陽性(3+)
エストロゲン受容体 +6/8
プロゲステロン受容体+6/8
Ki-67=56.1%
お忙しい中、読んでいただきありがとうございます。
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
強調したい事は2点です。
①抗HER2療法はとても優れた治療法であり、「術前に行い効果があるとか無いとかと
は無関係」に「必ず行うべきものである」こと(目に見える腫瘍を小さくすること
と、再発予防効果とは無関係)
②局所療法と全身療法は完全に「別個として」考えるべきである
 局所療法は「手術」±「放射線」
 全身療法は「化学療法」±「分子標的薬」±「ホルモン療法」
 ○HER2陽性だったから「局所療法として全摘すべき」などということは全くの誤解です。

回答

「術後から化学療法をしたので、抗がん剤やハーセプチンが効いているかも確認でき
なかったこと」
⇒確認する必要はありません。
 全く無意味です。
 抗HER2療法は「再発予防のため」に必ずやるべきなのです。
 
「ハーツー陽性ならば全摘の方がリスクも減ったのではないか」
⇒関係ありません。
 サブタイプ(全身治療)と局所療法は全く無関係です。
 
「私のような病理でも温存で良かったのか」
⇒術式選択(局所療法)と病理(サブタイプ)は全く無関係です。
 
「検診でも年1のマンモ、血液しかやらないのも不安」
⇒それに加えて3カ月に1回の採血マーカーと診察超音波で十分です。
 
pT2(22mm), pN0, luminalB(HER2タイプ)
一昔前(私が医師となった20数年前)には、そもそも「HER2を測定することなどあり
ません」でした。
其のころであれば、質問者は「リンパ節転移も無いし、腫瘍径も小さいから大丈夫。
タモキシフェンだけ飲んでおいてね」で済まされていました。
実際のところは、「それでも十分、問題無かった」のです。
それが、更に「抗HER2療法」という強力な治療が入るのですから「何も心配する必
要」などありません。
○グレードとか、サブタイプとか余計なことに頭を悩ませる必要はありません。
 サブタイプは全身治療のためにあるのです。(術式とも無関係)
 
 

 

質問者様から 【質問2】

以前相談させていただきましたNo. 1314です。
回答いただき、すぐにお礼を伝えたかったのですが、今になってしまいました。
その時とは別に新たに不安に思うことがあります。2013年10月に温存手術後の病理結果で化学療法が加わりました。
今までの経緯は術後1ヶ月を少し過ぎたあたりから、AC療法を4回→その後Weeklyパクリタキセル12回と同時にハーセプチン治療も18回行いました。
①不安に思う事は人によってACだったりFECやECなどがありますが自分の行った治療は適切だったのか?効果に違いがあるのか?と思ったりもします。
②Weeklyパクリタキセルのラスト2回は副作用が辛かったため、2回とも25%減量となりました。
減量した事により効果が落ちる事もありますか?
③解説本などを見ると初期ステージは1期までと書いてある本がほとんどですが
2A 、腫瘍径2. 2㎝(ルミナルBハーツ陽性)
グレード3、ki 67=56. 1波及度:gf、リンパ管侵
襲:ly 0、静脈侵襲:v 0リンパ節転移なし
この場合の再発率はどれ位でしょうか?
また転移しやすい部位はやはり脳ですか?
④術後何年目位が再発ピークなのでしょうか?
何年位たつと、一山越えたと思えるのでしょうか?
⑤ER:AIIred PS 4 IS 2 TS6,
PgR :AIIred PS4 IS2 T S6
この数値から見るとホルモン療法の効果は強いのか、まあまあなのか、あまり効かないのかなども参考までに教えていただけますか?
⑥ここ1ヶ月、腰の辺りからお尻(臀部)にかけて、ぶつけた訳でもなく、ねくじった訳でもないのに痛みがあります。
毎晩、寝返りをうって体重がかかると鈍痛があります。骨転移かと思うと頭の中が不安でいっぱいになります。
骨そしょう症なので3種類の薬も服用しています。
(カルシウムコザカイM、ロカルトロール、ボルテオ)
薬の副作用なのか、転移を疑うのか怖くて病気の事が頭から離れません。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

回答

「人によってACだったりFECやECなどがありますが自分の行った治療は適切だったのか?効果に違いがあるのか?と思ったりもします。」
⇒ACx4はスタンダードです。
 ちなみにエビデンスとして
 ACx4とFECx6が同等
 FECとFACも同等
 よって、ACx4=ECx4=FECx6と考えています。
 
「Weeklyパクリタキセルのラスト2回は副作用が辛かったため、2回とも25%減量となりました。減量した事により効果が落ちる事もありますか?」
⇒全く問題ありません。
 RDIという考え方があります。
 データとしてはrelative dose intensity(RDI)相対容量強度が85%以下となると「予後に悪影響を及ぼす」ことが知られています。
 RDI=実際の容量強度(RI)/計画された容量強度(RI)です
 
 質問者の場合には(投与延期が無かったと仮定して) 100(%)x10+75×2=1150
 1150/1200=96%となります。 十分なRDIと言えます。
 
「この場合の再発率はどれ位でしょうか?」
⇒すみません。今adjuvant onlineにアクセスできません。
 ただ、「ホルモン療法+抗HER2療法を行っている」のであれば10%前後だと思います。
 
「また転移しやすい部位はやはり脳ですか?」
⇒違います。
 脳転移が「初発転移部位などということはなりません」
 乳癌の再発好発部位は「骨」です。
 「脳」というのは、おそらくネットの情報かと思われます。
 「HER2陽性乳癌」は「脳に転移しやすい」みたいな情報でしょう。
 これは、完全な「勘違い」です。
 
 事実は以下です。
 「HER2陽性乳癌」で再発した場合、(この場合には、いきなり脳転移などありません)例えば「骨」や「肺」「肝」
 ⇒ハーセプチンを含んだ化学療法(当然、パージェタも)をしていくことになります。
  すると、「抗HER2療法は強力」なため、「長期コントロール」となります。
  そして「骨とか肺などの病変が長期間コントロールされている」中で、「脳転移」が出現したりします。
  それで「HER2陽性には脳転移に気をつける」みたいな話がでて「HER2陽性乳癌は脳転移が出やすい」みたいな誤解が生まれるのです。(あくまでも、脳転移は血行性転移の最終像なのです)
  これは「ハーセプチンに限らず、殆どの抗がん剤」が「脳血液関門を通過できない」ことに原因があります。
  つまり、「ハーセプチンが効き易い」から「遠隔転移を持ちながら長期生存」するために、「転移の最終像としての脳転移まで生存できる」という解釈が最も適切です。
 
「術後何年目位が再発ピークなのでしょうか?何年位たつと、一山越えたと思えるのでしょうか?」
⇒ピークは難しいですね「2年~5年」がまずはひと山でしょう。
 ルミナールタイプなので、「晩期再発」も注意が必要です。そのためにも「タモキシフェンは10年投与(途中でアロマターゼインヒビターへスイッチするかもしれませんが…)」がいいでしょう。
 
「ER:AIIred PS 4 IS 2 TS 6, PgR :AIIred PS4 IS2 T S 6この数値から見るとホルモン療法の効果は強いのか、まあまあなのか、あまり効かないのかなども参考までに教えていただけますか?」
⇒十分効果が期待できます。
 
「ここ1ヶ月、腰の辺りからお尻(臀部)にかけて、ぶつけた訳でもなく、ねくじった訳でもないのに痛みがあります」
⇒普通の腰痛だと思いますが…
 気になるのなら「単純レントゲン」撮影してもらいましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

以前1314で相談を受けた者です。
先生のQ&Aを読むことが
日々の日課になっています。
お忙しいはずなのに直接の患者でないのにお答えいただき感謝しています。
・2013年10月手術
・腫瘍径2.20(非浸潤含む4.40)
・グレード3
・Ki67は56.1
・ルミナールBハーツー陽性
・未出産(化学療法で44歳で薬剤閉経)
・乳癌罹患後、骨粗鬆症発覚、薬服用中
・現在、タモキシフェン服用中
以前も腰~臀部にかけて寝返りで圧力がかかる度に痛むと相談させていただきました。
主治医にもはなし去年暮れ(2015.12月)に骨シンチを受け異常なしでしたが現在も毎夜、寝返りの度に軽度の痛みは続いていますが検査で異常がない
以上
神経質にならないように
過ごそうと思い始めた頃、今月の術後健診でマンモとエコーをした結果、マンモで石灰化が見つかりました。
ただ2014年に受けたマンモでも石灰化の存在はありましたが異常なしと言われていたのに今回は半年後に再マンモと言われました。
温存手術時に金属クリップを入れたままなのですがどうやらそのあたりに石灰化があるような話ぶりでした。
■このクリップと石灰化は関係があるのか?
■石灰化と骨粗鬆の薬(カルシウム服用)は関係ないですよね?
私がとても神経質なので主治医はいつも詳しいはなしはしてくれません。
■乳房温存手術後の石灰化は極めて局所再発を強く疑うことなのでしょうか?
健康診断で区域性石灰化(右)で引っかかり再検査したら乳癌確定になった経緯があるので
今、とても不安です。
■2014年のマンモの石灰化と今回のとでは変化があったから再検査なのか。。。
半年後にもう一度マンモをするそうです。
■先日、マンモをしたばかりだから半年おかなければいけないのか?
■それとも半年後の石灰化の変化を見るためなのか?わかりませんが
半年もの間、不安をかかえなければいけないのか精神的にも辛いです。
2013年10月に手術したので乳房内再発にも注意が必要な時期だと思っていましたが
断端陽性で放射線も30回しているのにという気持ちもあります。
■自分の病理を見ると乳管内進展が目立つタイプのようですがその場合再発率も上がりますよね?
■娘結節コメド+++というのはどういう意味だったのでしょうか?
■先生の経験上、2cmを越えている癌は大きいですか?
■以前から日によって術側の手術創のあたりが固くなったり、やわらかい皮膚に戻ったりする事があります。
張ったりするような感覚で手術痕付近と二の腕が密着するような感じになります。
■それらは術後瘢痕組織の影響かと思っていましたが石灰化に関係があるのでしょうか?
■乳房温存手術後の放射線照射や傷跡後に生じる異栄養制石灰化も考えられますか?
■もとの乳癌が石灰化を伴っていたのでとても不安。
■針生検はしなくても大丈夫なのでしょうか?
■2014年10月のマンモは容積減少がありそれに向かって構築の乱れが存在している。
皮膚の肥厚が目立つ。
皮下に石灰化があるがこの石灰化はやや粗大な石灰化でもともと存在していた悪性石灰化とは異なる。
右乳房に再発を示す所見や新たな
malignancy は認めない。
※2015年10月のマンモ、
エコーせず12月に骨シンチ
※今回、術後2回目のマンモでした。
(2年7カ月後)
■前回は手術した本院での検査でしたが
今回は系列の分院で検査しました。
半年後の再検査は本院でやるそうですが
施設によって機械の精度の違いなどもあるのでしょうか?
(質問を■にしてあります。)
先生の経験上、やはり再発の可能性は強いですか?
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
温存術後の石灰化の大部分は(再発ではなく)「術後の易栄養性石灰化」です。
半年経過を見ることからは、(再発よりは)「術後の易栄養性石灰化を疑っている」のだと思います。
 ♯もしも「局所再発を少しでも疑う」のであれば、当然「生検(ST-MMT)すべき」です。(流石に、其の程度の常識はもっているものです)
 
「■このクリップと石灰化は関係があるのか?」
⇒クリップは乳腺を部分切除した部位に(放射線照射のための)目印として入れているものなので(当院では入れませんが)、その部位に「易栄養性石灰化」ができても不思議ではありません。
 (場所的には取り残しなどで局所再発し易い部位とも言えますが…)
 
「■石灰化と骨粗鬆の薬(カルシウム服用)は関係ないですよね?」
⇒無関係です。
 
「■乳房温存手術後の石灰化は極めて局所再発を強く疑うことなのでしょうか?」
⇒冒頭でコメントしたように…
 あくまでも「術後の易栄養性石灰化」が大部分です。
 
「■2014年のマンモの石灰化と今回のとでは変化があったから再検査なのか。」
⇒変化が無ければ「再検査とする筈がない」です。
 
「■先日、マンモをしたばかりだから半年おかなければいけないのか?」
「■それとも半年後の石灰化の変化を見るためなのか?」
⇒変化をみるためでしょう。
 
「半年もの間、不安をかかえなければいけないのか精神的にも辛いです。」
⇒それであれば、「ST-MMTしてもらえば済む」話です。
 
「■自分の病理を見ると乳管内進展が目立つタイプのようですがその場合再発率も上がりますよね?」
⇒そんなことはありません。
 
「■娘結節コメド+++というのはどういう意味だったのでしょうか?」
⇒コメド壊死(乳管内で増殖した癌細胞の中に生じた壊死」が豊富にあったということです。
 
「■先生の経験上、2cmを越えている癌は大きいですか?」
⇒そんなことはありません。
 
「■以前から日によって術側の手術創のあたりが固くなったり、やわらかい皮膚に戻ったりする事」
「■それらは術後瘢痕組織の影響かと思っていました」
⇒その通りです。
 術後の瘢痕による影響です。
 
「■乳房温存手術後の放射線照射や傷跡後に生じる異栄養制石灰化も考えられますか?」
⇒その可能性が最も高いです。
 
「■もとの乳癌が石灰化を伴っていたのでとても不安。」
「■針生検はしなくても大丈夫なのでしょうか?」
⇒ST-MMTをすれば「はっきり」します。
 
「半年後の再検査は本院でやるそうですが
施設によって機械の精度の違いなどもあるのでしょうか?」
⇒そんなものありません。
 
「先生の経験上、やはり再発の可能性は強いですか?」
⇒冒頭で示した様に「易栄養性石灰化」の可能性が高いです。