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ルミナールA?の抗がん剤治療

[管理番号:3381]
性別:女性
年齢:56歳
6月に右胸全摘術を受けました。
術前検査ではエストロゲン、プロゲステロンともに陽性、K6715%、HER2陰性でルミナールA、リンパ節転移もなさそうとのことでしたが、
手術してみると、リンパ節手にが7個以上もあり、びっくりしています。
腫瘍径は3cmでした。
再検査にてER強陽性、PGRは陰性となっていました。
これはルミナールAと考えてよいのでしょうか。
術後は化学療法AC+T、その後の放射線治療をすすめられ、現在抗がん剤2クール目です。
先生のご意見ではルミナールAでは化学療法は無効と何度もおっしゃられていますが、やはり、この治療は無駄なのでしょうか。
こんなにリンパ節転移があってもあとは運を天にまかせるしかないのでしょうか。
アジュバントオンラインのページが動きませんが、そこにのっていた他の予後予測ページでみてみると、化学療法も10年生存率に少し上乗せがあるように出ましたが(素人ではっきりはわかりませんが)、どうなのでしょうか。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
ルミナールA、リンパ節転移7個ですね。
「術前画像診断でわからない」が、手術してみたら「転移が複数」と言うケースはときどきあります(QandAでも、散見しますね)
同じ転移個数でも、「画像上、明らかな転移のケースとは予後は同等ではない」様な印象はあります。
「再検査にてER強陽性、PGRは陰性となっていました。これはルミナールAと考えてよいのでしょうか」
⇒術後にKi67は測定していないのでしょうか?
 それで判断すべきです。
「先生のご意見ではルミナールAでは化学療法は無効と何度もおっしゃられていますが、やはり、この治療は無駄なのでしょうか」
⇒その可能性はあります。
 ただし、St. Gallen 2015ではルミナールAでも「リンパ節転移4個以上」となると90%以上で「化学療法を選択」していることも事実です。
 このあたりが現時点では基準でしょう。
「こんなにリンパ節転移があってもあとは運を天にまかせるしかないのでしょうか。」
⇒リンパ節転移は「予後因子の一つに過ぎません。
 過剰に拘る必要はありません。
 「腫瘍径が大きい」人もいらっしゃれば、「サブタイプで悩む」人もいます。
 やるべき事をやる事です。
「アジュバントオンラインのページが動きませんが、そこにのっていた他の予後予測ページでみてみると、化学療法も10年生存率に少し上乗せがあるように出ましたが(素人ではっきりはわかりませんが)、どうなのでしょうか。」
⇒私がかつて「NewAdjuvant.com」をやっていた経験からは「リンパ節転移が4個以上」だと、「上乗せは結構ある」と思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

迅速なご回答をありがとうございました。
いくつか疑問点がありますので、お教えください。
リンパ節転移にこだわってしまって申し訳ありません。
何しろあちこちに、「最大の予後因子」と書いてありますので。
術前診断でリンパ節転移が確認できなかった場合では、
確認できる場合と比較して何か形的に違いがあるのですか?
ルミナールAに対しては、化学療法は無効であるのに、
アジュバントオンラインを含めて、リンパ節転移多数の場合のみいくらかの上乗せがあると合意されているということなのでしょうか。
これはどういう理屈なのか、お教えいただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「術前診断でリンパ節転移が確認できなかった場合では、確認できる場合と比較して何か形的に違いがあるのですか?」
⇒「違う」から「確認できなかった」わけです。
 術前に「画像診断で明らかなリンパ節転移」の場合は(術前画像では解らなかった場合に比べ)『大きい』『リンパ門が消失』等、画像で判断し易いわけです。
 例えば大きさが「大きければ、それだけ腫瘍量も多く予後にも影響ありそう」に思います。(実際に、その辺りの数量的詳細な検討は難しいわけですが)
「ルミナールAに対しては、化学療法は無効であるのに、アジュバントオンラインを含めて」
⇒Adjuvant onlineでは実際の統計データをもとにしています。
 実際に「リンパ節転移が多数の場合」には「化学療法の上乗せが大きい」結果なのです。
 「解釈」ではなくて、実際のデータなのです。
 ♯ただ、「ルミナールAとBを分けていない(あくまでも核グレードのみで分類)」ことに注意が必要です。
「リンパ節転移多数の場合のみいくらかの上乗せがあると合意されているということなのでしょうか。」
⇒この「合意」とはSt. Gallen 2015での「コンセンサス(votingの結果)」のことですね。
 治療というのは「リスクが高ければ高いほど」(相対的に)効果があるものです。
 (それを上回るエビデンスが出ない以上は)たぶんに、「経験則に基づいて」コンセンサスは形成されます。
「これはどういう理屈なのか、お教えいただけますでしょうか。」
⇒Adjuvant Onlineで実際に「リンパ節転移4個以上」では「化学療法の上乗せが高くなる」のが何故なのか?
 ということですね。
 これについては、Adjuvant Onlineが実際のところ「luminal AとBを分けていない(核グレードで判断している)」ことに起因しているのかもしれません。
 
 ひとつの仮説としては…
  (ルミナールAの方が相対的に大人しいわけですから)
  同じ核グレードでも「リンパ節転移4個以上には、(実際には)ルミナールBが多く含まれ易い」(同様にルミナールAではリンパ節転移が3個以下が相対的に多い)ことがあるかもしれません。
  
  Adjuvant Onlineでのデータで「核グレード2、リンパ節転移4個以上」と入力する患者さんでは「ルミナールAが3割、ルミナールBが7割含まれる」のに対し、「核グレード2、リンパ節転移3個以内」と入力する患者さんには「ルミナールAが7割、Bが3割」のようなこともあるのかもしれません。
 ただの想像です。実際に、(Adjuvant Onlineの統計データを)検証することは不可能です。