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リュープリンの必要性について

[管理番号:6728]
性別:女性
年齢:43歳

お忙しいところ、質問の機会をいただきありがとうございます。

43歳、閉経前
ホルモン陽性
HER2陰性
腫瘍径15×10×13ミリ
乳房温存術
Ki67 10%
ルミナルA

25回の放射線照射

放射線終了後、タモキシフェン、リュープリンを併用との説明でした。

こちらのQ&Aを拝読し、35歳以下、もしくは化学療法が適用になるハイリスクな人を除き、
リュープリンの追加は必要がないと整理していました。

乳がん学会のガイドラインも同様に示していると読み解きました。

病理結果の説明、今後の治療方針説明の席上、
主治医は「SOFT試験は知っているが、母数こそ多いが、信頼度が低い調査だ。
標準治療はタモキシフェンとリュープリン」と話しました。

その後、ウエブ(メディカルオンライン)で2018年7月、THE
New England Journal of Medechineに発表されたオーストラリア人医師の論文を見ました。

SOFT試験の長期結果(8年、n=2、660?)を示し、無病生存率について、タモキシフェン単独に対し、卵巣抑制群で優位に優れた、と結論づけていました。

質問は3点です。

①SOFT試験は「信頼度が低い」というのは、医療関係者共通の意見でしょうか。
また、現時点での標準治療は、併用なのでしょうか。

②2018年7月の研究成果を、どのように捉えたらいいのでしょうか。
具体的には、私のケースで、リュープリン追加は必要か不必要なのか、という点です。

③主治医の方針を断って治療に入った場合、転移、再発が起きた場合に
「それみたことか」となるのが怖い、という気持ちがあります。
科学的にどのように考えたらいいのでしょうか。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「①SOFT試験は「信頼度が低い」というのは、医療関係者共通の意見でしょうか。」
→違います。

 先日改訂されたばかりの「乳癌診療ガイドライン 治療編 2018」p22に『SOFT試験とE-3193試験はいずれも質の高い試験であることから、』という記載がありますよ!

「また、現時点での標準治療は、併用なのでしょうか。」
→違います。
 
 同診療ガイドラインには、その併用は「弱く推奨」となっており、「強く推奨」はタモキシフェン投与なのです。
 しかも、「弱く推奨」する根拠として、同p22に以下の記載があります。

 再発リスクが高い対象集団(35歳以下、腋窩リンパ節転移陽性、化学療法を必要としる症例)においては、LH-RHアゴニストとタモキシフェン併用療法の有効性が示唆されることから、再発を危惧する対象にとって、タモキシフェンにLH-RHアゴニストを併用する臨床的意義があると考えられる。

 上記が「弱く推奨」される根拠なのです。
 つまり、その「弱く推奨」される対象は、あくまでも「高リスク」という文脈であり質問者には「到底」あてはまりません。

「②2018年7月の研究成果を、どのように捉えたらいいのでしょうか。
 具体的には、私のケースで、リュープリン追加は必要か不必要なのか、という点です。」

→上記通りです。
 全く不要です。

「③主治医の方針を断って治療に入った場合、転移、再発が起きた場合に「それみたことか」となるのが怖い、という気持ちがあります。科学的にどのように考えたらいいのでしょうか。」
→上記通りです。

 (質問者が心配されるかどうかは別として)事実としてエビデンスがないのです。
(SOFT試験前から「閉経前=LH-RHagonist併用すべき」という考え方を持っていた医師は多いので、その習慣を捨てられないだけの話なのです)

 
 

 

質問者様から 【質問2 リュープリンの必要性について】

性別:女性
年齢:43歳
病名:乳がん
症状:胸のしこり

先日はご回答、ありがとうございました。

①と③については、理解できました。

2018年版のガイドラインもネット上で確認でき、助かりました。

ありがとうございます。

②に関して、こちらの理解力がなく、再度お尋ねさせてください。

〈以下、原文を引用〉
2015年に発表された統合解析では、TAMへの卵巣機能抑制の追加は無効、EXE+LHRHaのTAM+LHRHaに対する優位性が示された。
オーストラリアUniversity of NewcastleのFrancisらは、SOFT試験・TEXT試験の長期結果を報告している。

【結論】
SOFT試験の8年無病生存率は、TAM群78.9%・TAM+卵巣抑制群
83.2%・EXE+卵巣抑制群85.9%であり、卵巣抑制の追加は有意に優れた。
8年全生存率はそれぞれ91.5%・93.3%・92.1%、化学療法後にも未閉経であった女性では85.1%・89.4%・87.2%といずれもTAM単独に対してTAM+卵巣抑制群で有意に優れた。
化学療法を受けたHER2陰性女性での8年遠隔再発率は、EXE+卵巣抑制群でTAM+卵巣抑制群より低かった(SOFT試験で7.0ポイント、TEXT試験で5.0ポイント)。

〈引用終わり〉
(メディカルオンライン、2018年7月)
THE New England Journal of Medechine
に発表

上記の論文は、2015年のSOFT試験の結果と異なり、「三年経って、やっぱり、長期に見ていくと、卵巣機能抑制の追加は必要」と示唆しているようにも、素人の私には見えます。

私自身は、上乗せが期待できず、かつ、副作用が重くなる可能性が高い薬剤(かつ、薬価も高額)の使用は避けたいです。

ただ、主治医が「標準治療」と家族にも説明してしまったことから、
「少しでも再発予防に役立つ可能性があるなら、標準治療じゃなくても使って」という家族の声があり、上記の論文の読み解き方を確認させていただきたく、ご連絡いたしました。

ご多忙中、大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

申し訳ありませんが…
この場(QandA)は、「議論を戦わせる場」ではありません。

私の回答は前回と変更なく、それを信用するかは(無論)質問者の自由。(申し訳ありませんが、私には「質問者を納得させる義務はない」のです)

上記、ご理解ください。