[管理番号:4397]
性別:女性
年齢:49歳
はじめまして、○○と申します。
9年前から乳がん・子宮の検査を毎年して来ました。
一昨年左胸がひっかかりましたが、良性で、昨年3月末の検査でも良性。
11月に再度検査という事で、12月頭に行ったところ、腫瘍の形の変化が見てとれ
針生検、MRI検査、CT検査(胸部・上下腹部単純+造影)を経て2月(上旬)日に温存術で手術。
リンパ転移なく断面にも癌はみられませんでした。
自分としては、早期発見でき、腫瘍もおとなしいタイプだし、これからホルモン療法で治療をしていけば治っていくと感じています。
乳がんと分かった時に先生のQ&Aを知り、
シンプルな考え方や受け答えに納得でき信頼をしています。
お陰で色々と勉強する事ができました。
ありがとうございます。
素人判断で全体像を見てなかったら後悔すると思い先生に診断して頂きたくメールしました。
お忙しいところすみません。
よろしくお願いします。
主治医からは、抗がん剤治療(3週に1回でTC4~6回)も勧められています。
田澤先生に診断をお願いする事を主治医(○○大学病院から○○病院に乳腺外科を立ち上げた52歳の女医です)に話しています。
田澤先生はどのような治療をしますか?
①ki67が20%だった(ルミナールBだと言われました)
海外では15%からやるが日本は20%。
ボーダーライン上なので、考える様言われていたのですが、主治医は抗がん剤治療をやる気でいました。
田澤先生の考え(ザンクトガレン2015の境界線について)を伝えましたが20%なのだからと言われました。
田澤先生の抗がん剤治療についての考え方はki67が25%以上とあり、
私はルミナールAだと思っています。
だから抗がん剤治療は必要ないと思っています。
②手術前の血液検査で腫瘍マーカーが54だった事はどう考えるのかと言われました。
この数字は乳がんだけにしては大きすぎるのでしょうか?
2月(下旬)日に手術後初めて血液検査をしました。
結果は3月(上旬)日です。
腫瘍マーカーが4.5以上なら抗がん剤治療をした方がいいのでしょうか?
CT検査での異常は認められませんでしたが、他にも癌があるのだとしたら、個別に調べるしかないでしょうか?
手術前に別の内科で健康診断をしたところ、血色素量が9.7と低かったので、鉄剤を服用しました。
子宮筋腫があるからではないかとの事で、
その後乳がんが見つかったため、大腸は調べていません。
子宮筋腫については定期的に検査をしています。
12月に調べたところ特に問題なしでした。
次は3月(上旬)日に検査をします。
抗がん剤治療で髪が抜ける事に非常に抵抗があり、生存率90%を95%にあげるためと説明を受けていますが私としてはルミナールAだし上乗せが5%だけなのだからどうしてもしたくないのです。
③5年生存率を教えて下さい。
④再発した時には抗がん剤は効かなく完治はしないからそれでもいいのか良く考えるよう言われましたが、私の症状で再発する確率というのはそんなに高いのでしょうか?
以下診断報告書です。
・2月(上旬)日に温存術で左胸腫瘍を摘出。
87×82×23mm
・センチネルリンパ節3個で、永久標本にて、腫瘍転移陰性(0/3)
・術前にホルモン感受性100%と言われました。
・ステージは1です。
組織所見を参考にすると、がんは割面E-Fにあり13×12×9mm大です。
組織学的には不規則な腺管構造をとって増生する浸潤性乳管がんで、乳頭腺菅がんに相当します。
細胞の異型は中等度で、核分裂像は1個/10
HPF程度です。
乳管内では篩状の形態を呈します。
腫瘤外への乳管内
進展はみられません。
脂肪織への浸潤を認めます。
リンパ管、血管侵襲
は明らかではありません。
切除断端は陰性です。
・がんの大きさ 13×12×9mm
・組織型 Invasive ductal carcinoma(papillotubular
carcinoma)
Nuclear grade 1(nuclear atypia 2,mitotic counts 1)
g+,f+,ly-,v-
surgical margin:negative
2月(下旬)日に初回のリュープリンを打ちました。
(4週間持続型)
ホルモン剤(ノルバデックス錠20mg)も開始。
3月(上旬)日受診の際に、血液検査の結果を見て、放射線治療を開始するため紹介してもらいます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1c(13mm), pN0, luminalA(Ki67=20%), NG1(NA2+MC1=1)
どう考えても「ホルモン療法単独」です。 (全く論点がありません。)
これで「抗がん剤を勧める」ことは、全くナンセンスです。
どうしても(担当医を)説得できないならOncotypeDXをしてみましょう。
私の経験上、この値(Ki67=20%,しかも核分裂が10視野中1個!しかない)でhigh
riskとなることはあり得ない話です。(おそらくlow riskとなります)
しかも49歳で「LH-RHagonist」をしている理由は???(閉経前=LH-RHagonistと言う考えは10年前のものです)
「田澤先生はどのような治療をしますか?
①ki67が20%だった(ルミナールBだと言われました)海外では15%からやるが日本は20%。ボーダーライン上」
⇒全く馬鹿げています。
実際はOncotypeDXをすることで、「無用な化学療法が回避される」ことを(NCCNのガイドラインでも)推奨されており、それがデータに基づいた考え方です。(KI67のボーダーラインが20%など全く根拠がありません)
「私はルミナールAだと思っています。だから抗がん剤治療は必要ないと思っています。」
⇒これは「完全に」正しい。
実際にOncotypeDXすれば、それは証明されます。
そもそも、その「頭の硬い」担当医は「核分裂mitotic counts 1個」という意味が
解らないのでしょうか?(Ki67=20%の意味もさることながら)
殆ど細胞分裂していない=抗がん剤の作用点に乏しい ということです。
♯抗癌剤は(細胞分裂に備えた)「DNA合成」や「細胞分裂(そのもの)の阻害」を作用点としているのです。
「②手術前の血液検査で腫瘍マーカーが54だった事はどう考えるのかと言われました。」
⇒これは担当医が言ったのですか?????
もしも、そうなら(同じ医師として、そうではないと信じたいですが…)
全く「コメントするにも値しない」ことです。
○全く乳癌の臨床を理解していない。
一体、その医師は「きちんと自分で手術」をして術後患者さんを診てきているのですか??
長い事「大学病院」に在籍して、殆ど自分では診療していないのでは??
まともに「大勢の患者さんを手術し、その術後経過を診て」いれば、こんな「早期乳癌で、腫瘍マーカーの意味」など全くないことは知っている筈です。
事実は…
その54がCEAなのか、CA15-3なのか不明ですが…
(質問者が喫煙者なのか不明ですが)ご本人の基準値なのでしょう。
★そもそも、乳癌の初期治療の段階で腫瘍マーカーなど測定する事自体「ナンセンス」
もしも測定したとして、それは「ご本人にとっての基準値」として捉えるのが経験を積んだ臨床医です。
♯まるで「腫瘍マーカーが高いから、全身に(見えない)癌細胞が転移しているかもしれないわよ」みたいな発言を医師がしているようなら…(呆れを通り越して「戦慄」を感じます)
「この数字は乳がんだけにしては大きすぎるのでしょうか?」
⇒全くナンセンス
これ以上、これについてコメントすることは控えます。
「腫瘍マーカーが4.5以上なら抗がん剤治療をした方がいいのでしょうか?」
⇒前述したように…
腫瘍マーカー(特に、初期治療の段階では)は「全く無関係」です。
「腫瘍マーカーが高めだから、抗ガン剤したほうがいい」などというニュアンスを、もしもするようなら、「それは同じ乳腺外科医として決して許されない(私は許さない)」ことだと考えてください。
「CT検査での異常は認められませんでしたが、他にも癌があるのだとしたら、個別に調べるしかないでしょうか?」
⇒もしもCEAが高いなら、胃カメラや大腸カメラはすべきでしょう。
そもそも、早期乳癌の初期治療の段階で「腫瘍マーカーを乳癌の転移と1秒たりと考える」事自体が全くナンセンスです。(経験不足の極み)
「③5年生存率を教えて下さい。」
⇒5年はありません
10年生存率は
無治療 94%
ホルモン療法単独 95%
ホルモン療法+抗癌剤 96%
♯ちなみに他病死が3%あるので、無治療でも「乳がんの再発で亡くなる確率は僅か3%」となります。
「④再発した時には抗がん剤は効かなく完治はしないからそれでもいいのか良く考えるよう言われました」
⇒この医師は「自己防衛」に偏り過ぎているようです。
つまり、「なぜ、あの治療を勧めなかったのか?」と非難されることがないように「あらゆる治療を提示」しておかないと心配というような考え方が見てとれます。
○私から言わせると…
自分の保守を優先させるばかりに、「本質(患者さんにとって、無駄な治療を勧めることは副作用その他の不利益を招くので、「過剰」ではなく、「最適」な治療を見極めることが医師の責務である)を見失っている」ようです。
質問者様から 【質問2】
田澤先生
早速の回答を本当にありがとうございます。
腫瘍マーカーとはNCC-ST439の事です。
NCC-ST439が54あった事で担当医が非常に気にして
私に言った言葉でした。
その後NCC-ST439について他の方の質問に
意味がないので最初から測定しないと先生が回答されていましたので
その様に理解しました。
CEAは2.2でCA15-3は12.7でした(喫煙はしていません)ので
他の検査もしない事にしました。
抗がん剤治療は勿論ですが
リュープリンも断ります。
放射線治療とノルバデックス錠20mgで治療する事にします。
「過剰」ではなく、「最適」な治療を見極めることが医師の責務である
という言葉に深い納得をします。
先生に質問して良かったと心から感じています。
晴れ晴れとした気持ちになりました。
感謝致します。
PS:番組拝見しました。
ずっとお元気でいて欲しいです。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「腫瘍マーカーとはNCC-ST439の事」
⇒まさか、NCC-ST439のことだったとは!!
「CEAは2.2でCA15-3は12.7」ということで、(その時点でNCC-ST439のことなど)全く気にする必要はありません。
もちろん、「それを理由に抗癌剤を勧める」など、とても想像の域を超えています。
○腫瘍マーカーはあくまでも「全身検索を行うきっかけ」であり、「腫瘍マーカーが高いから、抗ガン剤しましょう」など、ありえないのです。
♯ただし、質問者の場合には「CEAとCA15-3が正常」なのだから、そもそも「余計な検査さえ、不要」となります。
「NCC-ST439について他の方の質問に意味がないので最初から測定しないと先生が回答」
⇒まさに、その通りです。