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術後治療について(抗がん剤治療)

[管理番号:576]
性別:女性
年齢:48歳
お世話になります。
今年の4月24日、妻が乳がんの手術を行いました。両側乳がんで右は一部切除(温存)、左は全摘出(センチネルリンパ節切除)です。
先日、病理検査の結果が出ました。その結果で術後の治療方法を決めなければならないのですが、とても悩んでしまい、是非田澤先生のお考えをお聞かせ頂きたいと思い、お忙しい中誠に申し訳ございませんが、ご質問させて頂きます。
以下、病理検査の結果です。

  【左】 【右】
浸潤巣の大きさ 3.1cm 0.6cm
リンパへの転移 2個 なし
悪性度 2 1
ER (+)80% (+)80%
PgR (+)80% (+)60%
HER2 2+ 2+
ハーセプチン 陰性 陰性
Ki-67 11% 29%
左右ともルミナールAタイプ

担当の先生の治療方針は以下の通りです。
右:放射線治療+ホルモン治療5年内服治療
左:ホルモン治療5年内服治療
但し、抗がん剤治療についても言及がありました。
左に関してはある程度進行しているけれど進行がんではない。ただ、大きさ・顔つき・転移・進行度があるので抗がん剤治療をしてもよいかな…とも思うとのこと。Ki-67が11%でもあり劇的に効果があるとは言えないし、メリットとしては多くはないけれども、リスクを背負いながらでも、ホルモン治療にプラスオンをすると望むなら抗がん剤をするという選択肢もあるとお話をいただきました。
それに合わせて、単純に比較できるものではないがとの前提で、妻と同じ年齢・癌の値の10年後の 再発率の北欧のデータを示して頂きました。
①10年後の再発率   57%
②ホルモン治療5年   40%
③軽い抗がん剤3ヶ月  30%
④強い抗がん剤3ヶ月  22%
⑤強い抗がん剤6ヶ月  19%
治療効果はこれくらいの差はあると思うとのことであり、抗がん剤をやるやらない、どこまでやるかは最終的に患者さんの考え方で決めてくださいとのことでした。
妻は抗がん剤による副作用(髪の毛が抜ける)に対して、とても辛い思いをするでしょうし、それに耐えられないと思います。出来ることならホルモン治療のみで再発防止が出来たらいいのにと考えています。
然し乍ら、上記のデータを見せられると、少なからず効果が認められるのであれば抗がん剤治療で再発の可能性を少しでも減らしたいと考えたりもしてしまい、非常に悩ましく、決断しかねている状況です。
1.担当の先生は上記の通りホルモン治療のみ(右は+放射線治療)とのお考えですが、田澤先生はどのようにお考えになられるでしょうか?病理検査の結果から具体的に勧められる治療方法があればご教授ください。
2.オンコタイプDXを受けようと考えています。このような状況の中、少しでも決断のための情報が得られればと考えています。受けることになにか問題ありますでしょうか?本人は閉経前でリンパへの転移も2個あることから条件が合致していないとも思います。この条件で受けることが可能でしょうか?また、受けたとしてその結果は抗がん剤上乗せあり・なしときちんと出るのでしょうか?
3.いつまでに治療方針を決め、治療を開始しなければいけないのでしょうか?術後すでに8週間が過ぎます。担当の先生からは8週に拘らず、よく考えて決めることで構わないと言って頂いています。
4 .本人の悩める思いを敢えて書きます。「抗がん剤は副作用に耐えられず出来れば避けたい。でも、小さな子供を残して絶対に死ぬわけにもいかない」
以上、よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「luminal A」タイプの化学療法による上乗せ効果について悩まれていると思います。

回答

「1.担当の先生は上記の通りホルモン治療のみ(右は+放射線治療)とのお考えですが、田澤先生はどのようにお考えになられるでしょうか?病理検査の結果から具体的に勧められる治療方法があればご教授ください。」
⇒私も「担当医と同様」ホルモン治療のみ(右は+放射線治療)でいいと思います。
 基本的にはホルモン療法(右は温存ですから放射線照射は当然ですが)だけでいいと思います。
 
 ただ、化学療法の「上乗せ効果」は、Adjuvant! Onlineなどでは16%となります。
 実際にはluminal Aでは、そこまでの上乗せ効果は無いとは思います。
 私はターゲット療法という考え方からは、luminal Aで化学療法は「効果と副作用のバランス」から積極的に勧めません。
 
「閉経前でリンパへの転移も2個あることから条件が合致していないとも思います。この条件で受けることが可能でしょうか?」
⇒条件が合致しません。
 「リンパ節転移+の場合は閉経後」しか当てはまりません。
 データが参考にならないのです。
 
「3.いつまでに治療方針を決め、治療を開始しなければいけないのでしょうか?術後すでに8週間が過ぎます。担当の先生からは8週に拘らず、よく考えて決めることで構わないと言って頂いています。」
⇒期限は実際にはありません。
 右の放射線があるので、ある程度「以下の区切り」をつけて考えるといいと思います。
 ①放射線照射開始まで
 ②放射線照射が終了するまで
 ③術後半年まで
 ④術後1年まで
 実際のところ、「化学療法について悩まれている方」については②までで決断する方が殆どです。
 しかし③でも④でも殆ど影響は無いと思います。
 
「4.本人の悩める思いを敢えて書きます。「抗がん剤は副作用に耐えられず出来れば避けたい。でも、小さな子供を残して絶対に死ぬわけにもいかない」
⇒ステージ2B、luminal Aですから、それほど心配することはありません。
 ホルモン療法(タモキシフェン+LH-RHagonist)で十分だと思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2 術後治療について(抗がん剤治療)その2】

即日のご回答ありがとうございました。
田澤先生のお言葉を聞かせて頂き、心を強く持って迷うことなく術後治療に臨むことができます。本当にありがとうございました。
以下、本人から御礼申し上げます。(合わせて追加でご質問させて頂きます。)
…………
ホルモン治療だけでいいのですね。
断言してもらえ、心が決まりました。
実は、昨日病院でした。
田澤先生のお言葉を聞く前でしたので、まだ悩みながらではありましたが、自分の思いを担当医に伝えました。
自分は、オンコタイプDXをしてもらい、結果が出る間に放射線、ホルモン治療を先にしてもらおうと考えていましたので、そのことを、担当医に伝えました。(その時点では、まだ抗がん剤をするかどうか迷っていましたので、結果が出てから抗がん剤を使うか使わないか決めようと。。。)
でも、田澤先生も言われたように、うちの担当医も、オンコタイプDXはリンパ節転移がある場合は閉経後しか条件に合わず、「データが参考にはならないのでできません。」と言われました。
(田澤先生と担当医の考えは一緒で良かったです。安心して信じられる。と思いました。)
合わせて、担当医の率直な考えを聞いてみました。
担当医は、「僕は、ガンの顔つきを気にするんです。」とのことで核グレード3(田澤先生への質問時にはこのデータを示さず申し訳ございません。)である私のガンの顔つきが気になっていたようです。
あと、私が前回話していた「子供を残して死ねない!」という言葉も気になっていたようで、少しでも可能性が高くなるのなら、「CMFの抗がん剤を、やってみようか?」と提案してくださいました。
暫くその場で悩んだ末に、ホルモン治療で効くガンに、弱い抗がん剤を上乗せし、私のガンを退治してみようと思いました。
私の身体に抗がん剤がどんな反応をするのか?全く未知の世界です。
皆さんが言われている副作用も出ることでしょう。
効果があるのか?出ているのか?わからないけど、6ヶ月の短期化学療法(CMF)と5年の長期ホルモン治療で私のガンを退治してみようと思います。(右は放射線もします)
…………
お忙しい中申し訳ございませんが、再度質問させて頂きます。
このCMFをやるという考えも間違いではないでしょうか?
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 主治医とのやり取りも解りました。
 効果と副作用のバランス、いろいろな考え方があります。

回答

「このCMFをやるという考えも間違いではないでしょうか?」
⇒「脱毛」をしない抗がん剤との事でCMFという選択はありだと思います。
 どうしても「より効果のある」化学療法に目がいきがちですが、「副作用に配慮」したバランスとしてはいいと思います。
 
 

 

質問者様から 【感想3】

御礼が遅くなり大変失礼を致しました。
田澤先生のお言葉で、心の霧も晴れ、
決めた治療法を頑張ってやっていこうと思います。
まだまだ不安はたくさんあります。
どんな副作用が出るのか、、
髪の毛は抜けてしまうのか、、
抗がん剤に耐えられるのか、、
何より再発は防ぐことはできるのか、、
それでも、何か不安なことがあっても、
迅速に、的確に、親切に丁寧に、悩める患者に向き合って
応えてくれる田澤先生がここにいつでもいらっしゃってくださることが、
それらの不安を抑える力となり、自信を持って前向きに頑張ろうという
気持ちにして頂けると思っています。
本当に感謝いたします。
ありがとうございました。