Site Overlay

術後の抗がん剤治療

[管理番号:3648]
性別:女性
年齢:63歳
初めての投稿です。
宜しくお願いします。
義理の母(63歳)・両側の乳がんについての今後の治療方針での相談です。
8月(中旬)日に両胸の全摘を行いました。
温存も考えましたが、再発の恐怖と、がんの出来た場所から、歪に残る可能性を言われ、全摘を希望しました。
<以下、術後組織検査の結果です。>
①右:浸潤癌・大きさ1.5・ホルモン受容体あり・
HER2陰性・Ki-67 12.6%・リンパ節転移なし・グレード
②左:浸潤癌・大きさ1.95・ホルモン受容体なし・
HER2陽性(3+)・Ki-67 40%・リンパ節転移なし・グレード3
<今後の治療予定>
①右:ホルモン受容体があるので、手術+ホルモン療法。
②左:ホルモン受容体がないため、手術+抗がん剤+HER2陽性のため、分子標的薬。
   :抗がん剤は10月4日予定
<以下、質問です>
①左の治療方針・考え方で、悩んでいます。
手術前、大きさが2センチといわれており、それゆえにステージⅡAでした。
しかし、術後の組織検査にて1.95センチに訂正され、ステージⅠとなしました。
使用する抗がん剤は、ステージがⅠへ変更になったこと、リンパ節転移がなかった。
ということでアンスラサイクリン系を使用、いわいるEC療法4クールです。
しかし、左のグレードが3ということで、本人の希望に
よっては、4クールではなく8クールへ増やすことも可能。
また、別にタキサン系を4クール追加することも可能だと言っています。
・何を基準に治療方針を考えていけばいいでしょうか?
・今できる最適の治療はなんでしょうか?
・EC療法4クールを8クールへ増やした時のメリットはなんですか?増やすことで、完治の確立・再発予防の確立がどの程度変わりますか?
・タキサン系を4クール追加することのメリットはなんですか?追加することで、完治の確立・再発予防の確立がどの程度変わりますか?
・沢山ある抗がん剤の中で、アンスラサイクリン系・タキサン系を選択するのは何故でしょうか?
・再発してしまった場合の治療方針は、今回の抗がん剤(8クールへ増やすこと・タキサン系を使用すること)で、何か変わりますか?
・タキサン系は末梢神経障害が出やすいと聞いていますが、治療後も障害が残る可能性はどれくらいありますか?
・他院のセカンドオピニオンを受けるべきでしょうか?
また、何を聞けばいいでしょうか?
★☆もちろん、副作用があり体力面も心配ですが、完治させ・再発をさせない!、後悔したくない!!というのが一番の目標です。
長文、失礼しました。
宜しくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
状況は理解しました。
術後補助療法は(再発治療とは異なり)使用できる薬剤も限られており、回数も決まっています。(永遠に行えばいいというものではありません。 対費用効果の問題もあるからです)
○抗HER2療法の基本的考え方としては
 Gold standardとして①アンスラタキサン ECx4⇒DTX+HERx4⇒HER
x14
 ここで(低リスクに対する)非アンスラサイクリンレジメンとして
 ②TC+HER
 ③weekly PTX+HER
④TCH
 があります。 
 私であれば「低リスクとして」②もしくは③を選択します。
「左のグレードが3ということで、本人の希望によっては、4クールではなく8クールへ増やすことも可能。また、別にタキサン系を4クール追加することも可能だと言っています。」
⇒心毒性のこともあり、「非アンスラサイクリン」の流れから逆行してEC8クールというのは如何なものか?
 
 そもそも「低リスク」なのだから②~④でいいのではないか?
「・何を基準に治療方針を考えていけばいいでしょうか?」
⇒上記コメント通りです。
 非アンスラサイクリンレジメンとして・
 (副作用を抑えたい、毎週通院してもいい)というのであれば、③を。(副作用はある程度覚悟の上、毎週通院は避けたい)のであれば、②をお勧めします。
「・今できる最適の治療はなんでしょうか?」
⇒上記通りです。 ②か③か(ご本人の希望にそうものを)
「・EC療法4クールを8クールへ増やした時のメリットはなんですか?増やすことで、完治の確立・再発予防の確立がどの程度変わりますか?」
⇒効果のエビデンスはありません。
 それよりも「心毒性」のリスクは確実にします。
「・タキサン系を4クール追加することのメリットはなんですか?追加することで、完治の確立・再発予防の確立がどの程度変わりますか?」
⇒それが①(gold standardであるアンスラタキサン)となります。
 直接比較はありません。(よって、どの程度の違いかは解りません)
「・沢山ある抗がん剤の中で、アンスラサイクリン系・タキサン系を選択するのは何故でしょうか?」
⇒(転移再発とは異なり)術前術後の補助療法では「それしか適応がない」のです。
「・再発してしまった場合の治療方針は、今回の抗がん剤(8クールへ増やすこと・タキサン系を使用すること)で、何か変わりますか?」
⇒再発すると「以前使用した薬剤」は使用しません。(原則として、それ以外の薬剤を探します)
「・タキサン系は末梢神経障害が出やすいと聞いていますが、治療後も障害が残る可能性はどれくらいありますか?」
⇒短期間であれば、問題ないでしょう。
「・他院のセカンドオピニオンを受けるべきでしょうか?また、何を聞けばいいでしょうか?」
⇒「抗HER2療法は絶対」であることは間違いありません。(もしかして一部の不届き者は 適応外であるカドサイラを使おうとするかもしれませんが…)