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骨転移 今後の治療について

[管理番号:5962]
性別:女性
年齢:51歳
はじめまして、今後の治療について相談です。
1/20骨転移と診断されました。
【経緯】
2008年4月に初期乳がんと診断。
6月に右乳房温存手術。
病理診断 硬がん 組織異型度/不明 ER+ pgr+ her2+ しこりの大きさ1cm以上2cm以下 リンパ節転移なし。
術後、ホルモン治療/2年間ゾラデックス3年ノルバデックスを服用。
放射線、抗ガン剤の投与なし。
2012年6月/月経再開、腫瘍マーカー/CA15-3→28.1 NCC-ST439→20 卵巣嚢胞5cmが見つかるも、排卵に伴う腫れの可能性と診断。
9月~12月
ゼローダ投薬。
PET-CT異常なし。
その後血液検査時T-BIL2.9 TG189
CA15-3→34.3 NCC-ST439→8.0
2013年2月よりTS-1投与するが、T-BIL上昇、黄疸が見られたため中止。
5月よりホルモン治療。
リュープリン2カ月ごと、ノルバデックス服用。
2014年4月/腫瘍マーカー/CA15-3→32.2 NCC-ST439→4.8 その後数値の大きな変化なし。
PET-CT、骨シンチ異常なし
2016年8月/月経再開 腫瘍マーカーCA15-3→35.7 NCC-ST439→15
2017年2月 腫瘍マーカーCA15-3→38.6 NCC-ST439→37 3月よりリュープリン/6カ月ごと
10月PET-CT/腰周辺に集積あり。
11月骨シンチ/仙骨周辺に骨転移の疑いあり。
2018年1月MRIにて仙骨に骨転移と診断。
自覚症状なし。
2013年からは継続して2017年までノルバデックス服用。
子宮体がん検査
異常なし。
【今後の治療】
2月より、イブランス服用とフェソロデックス/毎月 の予定です。
主治医曰く、大きな病院では、頻繁に腫瘍マーカーはとらず、明らかに臓器に転移が見られたら、抗ガン剤の投与とすることが多い。
まだ、仙骨のみの骨転移であれば、抗ガン剤ではなく、イブランス、閉経前はフェソロデックス併用でよい。
コントロールは、まだ可能。
とのことでした。
以上のことより、田澤先生のご意見を伺いたいです。
昨年のPET-CTで骨転移が疑わしいと診断されたときには、骨転移のときに使用する注射があると話がありました。
薬剤名は伺わなかったのですが、ランマークのことかと思われます。
来月からはイブランスと治療方針を変えたのは、どのような理由からと思われますか?
田澤先生でしたら、今後どのような治療をされますか?
10年生存率はどれくらいの割合でしょうか?うまく付き合えば、寿命を全うできるレベルでしょうか?
har2+の場合の治療としては適切であったと思われますか?
他に、田澤先生が思うことがありましたら、教えてください。
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
Trastuzumab(HER)については
2001 年6 月1 日   ハーセプチン150mg 発売 (適応症:HER2 過剰発現が確認された転移性乳癌)
2004 年8 月8 日   ハーセプチン60mg 発売 (適応症:同上)
2008 年2月29 日  適応拡大(適応症:HER2 過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法)
上記のように2008年2月から術後補助療法の承認がされ、「術後補助療法(再発予防)」として使えるようになりました。
勿論、乳腺外科医が待ち望んでいたことであり、そのころの「熱気」を今でも覚えています。
ただ、その当時は(もう、10年前ですね。)まだ「乳癌は乳腺外科医が診療する」
という時代ではなく、(特に地方では)一般外科医が乳癌の診療を(片手間で)行っていた時代だったのです。
○質問者は、明らかに「術後補助療法として抗HER2療法の適応があった」わけですが、(そのような時代背景を考えると)その当時は「早期なのに、抗ガン剤が必要?」みたいに(適応はあっても)投与されなかった方も多かったと思います。
「来月からはイブランスと治療方針を変えたのは、どのような理由からと思われますか?」
⇒パルボシクリブ(イブランス)はいい薬だからでしょう。(データ上は、かなりいいです)
「田澤先生でしたら、今後どのような治療をされますか?」
⇒HER2陽性なのであれば、当然抗HER2療法を行います。(勿論、デノスマブも併用)
 第1選択はpertuzumab + trasutuzumab + docetaxelです。
 質問者は化学療法を全くしていないのだから、「かなりの効果(画像上CR)」は当然狙えると思います。
 一度CRにして、それを維持するのにホルモン療法(状況に応じて+パルボシクリブ)と思います。
 ★ただし本当にHER2陽性なのか、確認すべきです。
  時々皆さんがHER2 1+とか2+を陽性と勘違いしていることがあります。
 HER2 0、1+     陰性
 HER2 2+       FISHで確認
 HER2 3+       陽性
 上記となります。
 もう10年も前の話ですが、主治医に「本当にHER2 陽性なのか?」確認すべきでしょう。
「 10年生存率はどれくらいの割合でしょうか?うまく付き合えば、寿命を全うできるレベルでしょうか?」
⇒数字は不明です。
 ただ、(経過からは)かなり大人しい癌なので、「長期コントロールを狙う」べきです。
「 har2+の場合の治療としては適切であったと思われますか?」「 他に、田澤先生が思うことがありましたら、教えてください。」
⇒冒頭で書いた通りです。
 (10年前)当時はHER2陽性なのに(術後補助療法として)「抗HER2療法がなされなかった」患者さんは、実は結構いらっしゃいました。
 その当時は乳腺専門医だけが乳癌の診療を行う時代ではなかった(現在でも、そのような病院は散見されますが)し、「サブタイプに応じた治療」という概念がまだまだ希薄であり「リンパ節転移陽性⇒抗癌剤、 リンパ節転移陰性⇒抗癌剤はしない」という考えが根強く残っていたのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2 今後の治療について】

性別:女性
年齢:51歳
田澤先生、丁寧な回答ありがとうございました。
次回の診療時にhar2の陽性または実は陰性なのかを確認してみます。
いままで、ホルモン治療のみしかしていないのは陰性の可能性が高いのではと、思えてきました。
そこで、もし陰性であった場合、田澤先生でしたら今後はどのような治療をされますか?
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「そこで、もし陰性であった場合、田澤先生でしたら今後はどのような治療をされますか?」
⇒bevacizumab + paclitaxelです。
 (HER2陽性乳癌でpertuzumab + trastuzumab + docetaxelと同様に)かなりの効果が期待されます。
 
 

 

質問者様から 【質問3 今後の治療方針】

性別:女性
年齢:51歳
【再々質問/管理番号:5962】part2
HER2を確認したところ、1+の陰性でした。
2月の上旬からイブランス125mg×14日、フェアストンの注射を始めましたが、2週間後の血液検査で、白血球と好中球の減少のため、イブランスは休薬となり、3月の中旬に100mg×7日で再開。
1週間後の血液検査では、好中球が規定より減少しているため、休薬になりました。
その間の腫瘍マーカーは、CA15-3→80.5NCC-ST439→50くらいに上昇。
主治医曰く、腫瘍マーカーも上昇しており、化学療法へ切替えるのも一つの方法と提案されました。
化学療法にした場合、TC療法とのことでした。
私としては、化学療法よりもイブランスを、75mgに下げて再開はできないものかと考えてしまうのですが、如何なものでしょうか?
前回、田澤先生でしたら、HER2陰性だった場合の治療方針は
bevacizumab + paclitaxelと、伺いましたが、TC療法とどのような違いがあるのでしょうか?
以前、TS1、ゼローダを服用した際にT-BIL上昇した経緯がありますが、
化学療法でも影響があるでしょうか?新しい薬に切替えるたび、肝機能の低下や白血球減少などがあり、治療が長続きしないことが多いため、
今後、適用する治療薬がなくなってしまうのではないかと不安です。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
私の回答は前回と全く変わりません。
HER2陰性だったわけですから
(前回の回答 参照)
『bevacizumab + paclitaxelです。
 (HER2陽性乳癌でpertuzumab + trastuzumab + docetaxelと同様に)かなりの効果が期待されます。』
「私としては、化学療法よりもイブランスを、75mgに下げて再開はできないものかと考えてしまうのですが、如何なものでしょうか?」
⇒(私の回答は)前回の回答とかわりません。
 あくまでも「化学療法(質問者は、傾向抗癌剤しかしていないので、かなりの効果が期待できます)」を先行し、十分な効果がでてから、その維持を図るのが私の方法だからです。
「化学療法にした場合、TC療法とのこと」
⇒??
 TCを行う理由が全く解りません。
 あくまでも術後補助療法としてはエビデンスがありますが、「再発後の治療」として選択するには「副作用が強いわりに効果は期待できない」と思います。
「bevacizumab + paclitaxelと、伺いましたが、TC療法とどのような違いがあるのでしょうか?」
⇒治療効果はTCとは比較にならず、副作用の少なさもTCとは比較になりません。
「肝機能の低下や白血球減少などがあり、治療が長続きしないことが多い」
⇒bevacizumab + paclitaxelなら、そのような副作用もないので「治療は長続き」します。是非『今週のコラム 123回目 QOLを保ったまま(胸部Xpも正常だし、無症状)、副作用も問題なく継続できる。』をご参照ください。
 ★ちなみに、この方は当初「副作用がこわいから、絶対に抗癌剤はしない」として、このコラムの「大量胸水」となり、そこでようやく極めて「しぶしぶ」抗癌剤(bevacizumab + paclitaxel)を開始し、現時点で26カ月も続けられているのです。
(70代ですが全くお元気です)
 ご参考に。