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KI-67とgradeについて

[管理番号:2743]
性別:女性
年齢:41歳
手術して以来、患者ブログの検索はしないことに決めて、こちらで勉強させていただいております。
言葉の使い方など、間違っているところが多々あると思います。
どうぞお許しください。
41歳です。
温存手術後1か月経過し、リュープリン+ノ
ルバデックス+放射線治療25回を開始しました。
gradeだけが高く、思い悩んでいます。
★術前の針生検結果
nuclear grade1(3P) atypia score2
mitotic1/10hpf,score1
ER:ps=5,IS=3 TS=8 PgR:PS=5 IS=3 TS=8
J-score ER score=3 Pgr score=3
herseptest score 0 Ki67 20.1%
★術後の病理
腫瘍形態・solitary 腫瘍径16×12×15 浸潤度 g,f 乳管
内進展像minimum リンパ管侵襲・静脈侵襲・神経周囲浸
潤absent 切除断端nagative 遺残度R0 sentinel nodes0/3 nuclear grade grade3(5P) atypia score3
mitotic9/10hpf,score2
ER:ps=5,IS=1 TS=6 PgR:PS=5 IS=2 TS=7
J-score ER score=3 Pgr score=3
herseptest score 0 Ki67 13.5%
高異型度乳管上皮の硬化性浸潤像、頭側にわずかに乳管内進展像。
腫瘤中心部には瘢痕性繊維化像が併存。
■グレードとKI-67について
術前と術後を比較して、NGが1から3に上がったのに、
KI-67の値が比較的低値である事がうまく理解できません。
主治医は「術後を判断材料とする」「グレードはあまり重視しない」「抗がん剤の効果はほんのわずか」という見解で、luminalAとしての治療を開始しています。
治療については納得していますが、このグレードとKIの乖離について主治医に伺っても「うーん」と悩まれて、説明していただくことはできませんでした。
先生は「グレードとKI-67は相関性が見られることが多い」とお書きになっていらっしゃいます。
https://nyuugan.jp/column/16078/
同時に「gradeを考慮しない」と解答されている質問も拝見しました。
https://nyuugan.jp/question/luminal-a-grade3/
二つの値が乖離している場合に「気になる」と書いていらっしゃるご解答もあったと思います。
増殖性を示す指標であるki-67とgradeの値が乖離する理由について、
また、先生がgradeを考慮されない理由についてご教授願えますでしょうか。
■セカンドオピニオンについて
また、St.Gallenに関する記事で、
If reliable Ki67 measurement is not available, some alternative assessment of tumor proliferation such as grade may be used to distinguish between LuminalA and LuminalB(HER2 negative)
とありました。
自分のKIの値が「reliable」かが分からなくなってきているのですが、病理結果から信頼性というのは判断できるのでしょうか。
私の場合、病理を含むセカンドオピニオンは有用でしょうか。
それともoncotype Dxを選択したほうが有意義でしょうか(高額なのが躊躇われます)。
■治療におけるグレードの扱われ方について
近年のSt.Gallenでは、ki-67がクローズアップされて、gradeについてはki-67を裏付けるためだけにあるような印象があります。
自分で治療方針などを考えるのにあたり、「脈管侵襲ぐらい」の位置づけでいるのですが、
adjuvant onlineでは、gradeはいまだ重要な要素なのではないかと思います。
また、St.Gallenコンセンサスの他に、私のような治療方法に関心のある患者が理解しておくといい会議内容、書籍、サイトなどございましたら、先生のお教えいただけますでしょうか。
長々と大変失礼いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1c(16mm), luminalA(Ki67=13.5%), NG3(3+2)
「術前と術後を比較して、NGが1から3に上がったのに、KI-67の値が比較的低値である事がうまく理解できません。」
⇒全てを「パズルのようにピタッとはめ込む」ことはできませんが…
 今回の病理結果を拝見して感じたのは
 NG3とは言え、mitotic counts が9/10hpf 点数2点というところです。
 つまりNG3は(分裂ではなく)「核異型により引っ張られる形」ということです。
 それと、mitotic countsは「顕微鏡10視野中の細胞分裂をしている細胞の数」に対してKi67は「細胞分裂期にある細胞の割合」を示しています。
 ここで一方(mitotic counts)は「実数」でもう一方(Ki67)は「割合(%)」での評価である事に注目してください。
これを説明する仮説として
 ①「細胞密度が高い腫瘍(細胞がぎっしりで、間質成分が少ない)」と②「細胞密度が低い腫瘍(線維性の間質が多い」を想像してみてください。
 話を簡略化するために①には10視野で100個の細胞があり、②には10視野で50個の細胞があるとしましょう。
 Ki67=14%とすると(実際は細胞分裂期にある細胞が全てリアルタイムで細胞分裂をしている訳では有りませんが、簡略化するとして)「10視野で」①では14個の細胞が細胞分裂をしているのに対し、②では7個の細胞が細胞分裂をしていることになります。
 結局「Ki67が同一」でも「細胞密度によって、細胞分裂をしている細胞の実数は変わってしまう」ことになります。
 この説明を用いれば、実際に腫瘍の増殖能を体現しているのは「Ki67」であり、「核グレード特にmitotic counts」は細胞分裂の影響を受けてしまうと理解できます。
 
「抗がん剤の効果はほんのわずか」という見解で、luminalAとしての治療を開始」
⇒妥当です。
 
「先生は「グレードとKI-67は相関性が見られることが多い」とお書きになっていらっしゃいます。」
⇒上記通りです。
 突き詰めれば「割合」と「実数」なのかもしれません。
 
「増殖性を示す指標であるki-67とgradeの値が乖離する理由」
⇒上記コメント通りです。
 
「また、先生がgradeを考慮されない理由について」
⇒上記コメントに加え、(核グレードのもう一方の構成要素である)「nuclear atypia」についてですが…
 これは(病理医による)「見た目の印象」に過ぎません。
 どの程度「定量的に妥当なのか」疑問に思います。
 
「自分のKIの値が「reliable」かが分からなくなってきているのですが、病理結果から信頼性というのは判断できるのでしょうか。」
⇒グレーゾーンではなく「低値」なので十分「判断基準として妥当」と思います。
 
「私の場合、病理を含むセカンドオピニオンは有用でしょうか。」
⇒私の印象ですが…
 あまり論点は無いと思います。
 
「それともoncotype Dxを選択したほうが有意義でしょうか(高額なのが躊躇われます)。」
⇒RSは低値となることが予想されます。
 「迷う様な状況なので、是非お勧めする」というケースではありません。
 
「また、St.Gallenコンセンサスの他に、私のような治療方法に関心のある患者が理解しておくといい会議内容、書籍、サイトなどございましたら、先生のお教えいただけますでしょうか。」
⇒網羅的なものでいえば、NCCNのガイドライン。
また、SABCS(San Antonio Breast Cancer Symposium)は参考になると思います。
(luminalAでは抗がん剤の上乗せがないことが、SABCS 2015に発表されています)