[管理番号:6560]
性別:女性
年齢:48歳
いつも、適確かつわかりやすい解説を発信していただき、感謝しております。
私の病歴ですが、2017年5月に右側乳房にしこりが見つかり、翌月に全摘手術を受けました。
術前の造影CTや腹部超
音波検査では、遠隔転移は見られませんでした。
センチネルリンパ節検査の結果、リンパ節転移なし。
脈管侵襲なし。
病理の結果、腫瘍の大きさは2.5cm、ステージ2A、浸潤がんかつ硬がんで、サブタイプはトリプルネガティブ。
悪性度はグレード3。
術後、AC療法4クール・ウィークリーパクリタキセル12クール施行。
2018年1月、パクリタキセルの8クール目の頃に
軽い肝障害になり、念のため腹部超音波検査を受けました。
やや脂肪肝気味なだけで肝転移ではなく、薬剤性肝障害との診断でした。
その後、ウルソ等の内服でしのぎ、12週休むことなく化学療法を終えることができました。
家族性乳がんの背景があり、またオラパリブの治験も受けたいため、遺伝子検査をしましたが、BRCA陰性でした。
先日の術後1年の検査で、CA15-3の値が46まで急上昇(1
月時は17、術直後も17)しました。
総ビリルビンも2で黄
疸(1+)、LDHも600代(化学療法終了時は300代、術直
後は正常値)と上昇。
GOT・GPTは正常値。
今後、PET検査
と腹部超音波検査をすることになりました。
肝転移の可能性が強いと思います。
抗がん剤終了後、5か月での早期の転移したことがショックでしかたがなく、残された時間が少ないと思うと悲しく、希望が持てなくなりました。
そこで、質問ですが、
・肝転移だとすると、今後のベストな治療は?まずは、ア
バスチン+パクリタキセルで様子見でしょうか?
・MRIも撮ってもらったほうがいいですか?
・ステージ2Aの充分に早期のがんで、術後の化学療法終了後、まだ5か月しか経っていないにもかかわらず、遠隔転移するとなると、相当勢いが強いがんだと思います。
抗がん剤の効きも悪いのですか?
・今後、何を目標にすべきなのでしょうか?
・治療の選択肢としては、化学療法(全身治療)と局所療法(トモセラピー・陽子線治療等)がありますが、ベストな治療の流れを教えてください。
まずは化学療法をして、
最初の薬剤の効きが悪くなったら別の薬剤を試す。
効く薬剤が無くなったら、最後に局所療法という流れでしょうか?
それとも、別の箇所への転移をおこす前に、トモセラピー等を化学療法の途中で試すべきなのですか?
・黄疸が出ているということは、腫瘍の個数が多いとか大きいことが予測されますか?この黄疸が、閉塞性黄疸だとすると、PTCDチューブを入れる治療をしなくてはならないのでしょうか?また、LDHが化学療法開始後に正常値を超えたのは何が考えられますか?
・もうしこりを発見した時には、既に肝転移があったのでしょうか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
私の診療経験からして、(万が一今回肝転移が見つかったとしても)それが原因で肝機能障害が起こることは考えられません。
逆に言うと…
肝機能障害があるとしたら、(それは、肝転移が原因と考えるのではなく)寧ろ、
「肝機能障害があるから、腫瘍マーカーが(代謝の影響で)上がっているのでは?」と疑ってしまいます。
☆一般論としてお話しすると…
肝転移が(マーカー上昇や、定期画像検査などで)発見された時点で肝機能障害が起こることはありません。
肝転移で肝機能障害が出るのは、(肝転移が見つかった後)『かなり長い経過の後』に起こるものなのです。
「・肝転移だとすると、今後のベストな治療は?まずは、アバスチン+パクリタキセルで様子見でしょうか?」
→「肝転移だとすると」という前提に問題があります。
(そう仮定すれば)bevacizumab + paclitaxelが有力です。
「・MRIも撮ってもらったほうがいいですか?」
→質的診断が必要な際に、追加すればいいでしょう。
「・今後、何を目標にすべきなのでしょうか?」
→肝転移を前提とすれば…
(治療により)画像上消失→長期維持
「化学療法(全身治療)と局所療法(トモセラピー・陽子線治療等)がありますが、ベストな治療の流れを教えてください。」
→化学療法です。
長期間コントロールが得られれば、そのあと局所療法でもいいでしょう。
「・黄疸が出ているということは、腫瘍の個数が多いとか大きいことが予測されますか?」
→それはないでしょう。(冒頭のコメントどおり)
肝機能障害が化学療法中に出た経緯を考えれば、薬剤性の肝障害を第1に考えるべきでしょう。
「LDHが化学療法開始後に正常値を超えたのは何が考えられますか?」
→素直に考えましょう。
「薬剤性の」肝障害です。
「・もうしこりを発見した時には、既に肝転移があったのでしょうか?」
→今回「肝転移」だと仮定すれば… そういうことになります。(再発とは、実際に「あとから出現する」わけではなく、「手術時には、画像上わからないほど小さいものが可視化する」ことなのです)