[管理番号:7287]
性別:女性
年齢:54歳
病名:浸潤性小葉ガン
症状:
田澤先生はじめまして。
術後2か月がたち、ようやく病理検査結果の説
明を受ける事ができましたが、担当の先生が提案してくださった治療方針について、自分では決断することが難しく、先生のご意見を伺いたく存じます。
今年の1月に浸潤性小葉癌で右乳房の部分切除術とセンチネルリンパ節生検で4㎜の転移が1つ見つかった為、レベル1の腋窩リンパ節郭清術を受けました。
手術から3週間たった2月に病理検査の結果についての説明を受けましたが、「HER2が2+で追加検査を行っている為に、まだ全ての検査結果が出揃っていないけれど、来週くらいには結果がわかると思います。」
との事でしたので、その日は郭清したリンパ節には転移がなかったことなどの説明を受け帰りました。
ところがその後連絡がなく、一か月以上経過したので、気になって連絡してみたところ、検査結果はもう出ていた様子で、3月もおわりに近づいた昨日、ようやく説明を受けることができました。
病理検査結果
・癌の種類 : 浸潤性小葉癌
・大きさ : 7×5㎜
・腋窩リンパ節転移 : あり (センチネルリンパ節に1個 4㎜)
・その他の転移 : なし
・進行度 : Stage ⅡA
・HER2タンパク発現量 : HER2(2+)⇒最終的に陽性
・増殖能 : ki67(17.4%)
・ホルモン感受性 : ER(3b) PgR (3b)
ずっと気になっていたFISH法の検査結果は
・HER2/neu FISH スコア : 1.33
・増幅の有無 : 下記参照
・スライドの状態 : 2 (まずまず判定可能)
備考 FISHスコア1.33ですが、HER2平均4.55です。
ASCO/CAP
HER2ガイドラインではequivocalに相当します。
と記載されていました。
担当の先生の説明によれば、ちょうど陽性と陰性の境界域にあり悩ましい結果ではあるけれども、日本ではこれ以上の検査はできないとの事でした。
(リフレックステストについては触れられませんでした。)
担当の先生も他の先生と相談してくださったり、調べてくださった結果、最終的にはHER2陽性と判断し、わずかでも再発のリスクを減らす為に、化学療法の
FEC 4クール + タキサン ハーセプチン 4クール + ハーセプチン の計1年3か月の治療と、放射線治療5週間とホルモン療法5年から
10年を受けることを提案されました。
化学療法については希望ならば
TC4クール+ハーセプチンでも可との事です。
ただ、ACやTC4クールで
も良いのだけれども、どうせ治療をするのなら、上記のように、しっかりやっておいた方が良いのではないかという事でした。
化学治療はより
安全に行うため、ポートを鎖骨下に埋め込む手術を外来で行うという事です。
化学療法を受けないという選択肢もある事や、すぐに決めることができない場合、先に放射線治療とホルモン治療を受けながら熟考し、どうするかを決めても良い事ということも言われました。
先送りにするよりも、期間を限定したほうが私にとっても決めるのに良いでしょうとの事で、一週間後に返事をする事になりました。
結果を待つ期間が予想外に長かった事もあり、このようにHER2陽性判定の微妙な結果が出るのではないかということは想定しておりました。
その間自分なりに考え、必要ならば化学療法も受ける覚悟でおりましたが、いざ実際このような検査結果を目にした時、化学療法を選択するのが果たして本当に最善なのかどうか、決断できず悩んでいます。
ですので先ずは放射線治療とホルモン治療を受けながらもう一度よく考えてみようかと思っているところです。
田澤先生のご見解をお聞かせください。
どうぞよろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
Equivocalの場合にはリフレックステストが推奨されています。
保険診療上、その病院で行えない際には「病理のセカンドオピニオン」という方法があります。
「田澤先生のご見解をお聞かせください。」
→上記通りです。
他の病理結果との「合わせ技」ではなく、純粋に「HER2が陽性なのか?」追求すべきでしょう。
質問者様から 【結果2 】
IHC法HER2 2+ FISH法equivocal 化学療法行うべきか
性別:女性
年齢:54歳
病名:浸潤性小葉ガン
田澤先生の診察:[診察なし]
田澤先生の手術:[手術なし]
田澤先生こんにちは。
先日はお忙しい中、ご見解をお聞かせいただきありがとうございました。
先日主治医の先生とお話しをした際、田澤先生の言われていたリフレックステストについてお願いをしたところ、病理検査をしてくださった先生には一度断られているという事で、別の先生をいろいろあたってくださり、自費で新たに検査を受けられる事になりました。
できれば、原発巣ではなく転移巣で検査をしていただきたいとお願いしていたのですが、問い合わせをしてくださったところ、転移巣の腫瘍が4㎜ととても小さいもので、迅速診断のための凍結標本にしたため残っていないと言われたそうです。ですので、新たな検査も前回と同様に原発巣で行うために、同様の結果が出る可能性もありうるとの事でした。
もしもまた結果がequivocalと出た場合は化学療法は行わず、放射線治療とホルモン療法で治療を受けたい意向と、もしも陽性と出た場合は、主治医の先生の提案された方法ではなく、TC+ハーセプチンにしてほしい意向を伝えました。
<Q&A結果>
質問者様から 【質問3 】
今後の治療について
性別:女性
年齢:57
病名:浸潤性小葉ガン
症状:多発性骨転移、リンパ節転移、脳転移疑いあり
投稿日:2022年2月15日
田澤先生こんにちは。
三年前に質問をした際には、お忙しい中回答してくださりありがとうございました。
リフレックステストの結果が陰性と出たため、術後の放射線治療の後は、アナストロゾールの内服薬の治療のみで三年が経過しました。
昨年三月に術後二年目のCT検査を受けた際、腰の継続した痛みがあった為、骨転移ではないかと心配していましたが、骨転移はなかったとの事で安心していました。
今年一月に術後三年目のCT検査を受ける際、昨年とは違う場所の結構な腰の痛みがあったのですが、
11月にギックリ腰になったため、その炎症が続いているものと思っていました。
ただ、術後三年ということで、もしかしたら再発や転移がそろそろあるかもしれないという心配はありました。
嫌な予感は当たり、今回のCTの結果で、背骨と腰椎に溶骨性の病変が見られ、骨転移の疑いがあるとのことで、後日腰部のMRI検査を受け、大学病院でPET-CTの検査を受けました。
そして昨日検査結果を聞いてきたのですが以下に記述します。
(大学病院のPET-CTの所見より)
右小胸筋背側に腫大リンパ節を認め、SUV max=15.4のFDG異常高集積を伴います。
リンパ節転移を考えます。
L1椎体、L4椎体~右椎弓、左後頭骨に溶骨性変化およびSUVmax17.8のFDG異常高集積あり、骨転移を考えます。
その他、胸骨、Th12右椎弓、仙骨右翼、両腸骨、左恥骨、左坐骨にも限局性のFDG集積を認めます。
本撮像上溶骨性変化ははっきりしませんが、これらも骨転移を疑います。
ただし集積の淡いTh12右椎弓や左座骨の集積に関しては変性の可能性もあります。
頭蓋内に占拠性病変を認めません。
肺転移を疑う結節を認めません。
腹部臓器に重複癌や転移を疑う異常集積を認めません。
肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、副腎、腎臓に特記所見を認めません。
胸腹水なし。
右母指球への集積は筋疲労を疑います。
脳、唾液腺、縦隔、肝、胃、腸管、腎、尿管、膀胱への生理的集積(排泄)を認めます。
脳は生理的集積のため微小病変の検出は困難です。
昨日結果の説明を受けた後で、転移したリンパ節の生検を受け、その結果が出てから今後の治療方針を決めるとのことです。
すでに他の遠隔転移があるので、転移したリンパ節の手術は行わないとの事でした。
田澤先生にお聞きしたいのですが、この様な所見がある場合、先生はリンパ節の手術について、どの様にお考えになりますか。
また骨転移の放射線治療については、我慢できないような痛みが出てから考えた方が良いと言われたので、多発性骨転移はありますが、まだ放射線治療が必要な段階ではないのでしょうか。
現在も痛みはありますが、我慢できないというほどではありません。
自分ではギックリ腰をした時の痛みが続いているのか、骨転移による痛みなのかもよくわかりません。
数ヶ月前から右の腋窩のおもだるい様な嫌な感じの痛みがあり気になっていたのですが、昨日の生検の時に、ピンポイントでそこが痛かったので、転移が原因だったのだと理解しましたが、エコーの画像にもかなりの大きさのものがうつっていたので(先生は2cm位と言われていました。)、これから他のリンパ節にもどんどん転移が広がっていくかと思うと、とても心配です。
レベル1の腋窩リンパ節の郭清をし、腋窩転移のルートは絶ったはずなのに転移があったということは、手術した際はセンチネルリンパ節以外は転移がなかったはずなのに、もっと深部には小さな転移があったということなのでしょうか。
主治医の先生は1月の術後三年目の検査でCTやエコーやマンモグラフィーをとった時には、腋窩の転移には全く気付いておられませんでした。
そのことも不可解に感じているのですが、腋窩リンパ節の郭清をしたら腋窩には転移はないものとしてあまり気にしないものなのでしょうか。
もしもその前の年の術後2年目の検査の時にわかっていたら、その時は遠隔転移はないとの事でしたのでリンパ節の手術ができたと思うと残念でなりません。
この様な大きさの腫瘍が一年にもならない間にできるものなのでしょうか。
脳にも少し気になるところがあるということで、後日脳のMRI検査を受けることになっています。
血液検査ではST-439が昨年8月に初めて基準値を超えて7.1になっていたのですが、当日は検査中とな
っていたため基準値を超えたことを知らず、三か月後の11月はコロナの関係で電話診療にすると言われたので、
三ヶ月ごとの血液検査もなく、一月の術後三年の検査の時も検査中となっていたので昨日気になって聞いたら75.2になっていました。
その他の腫瘍マーカーは上がってきてはいるものの基準値内におさまっています。
検査結果がこの様な場合、手術先行でそのあとに化学治療を受けるという選択肢はないのでしょうか。
今レベル2レベル3の腋窩郭清をしても、もう既に多くのリンパ節転移があると予想されるような末期的状況なのでしょうか。
後日改めて主治医の先生にももう一度手術のことをうかがおうと思いますが、断られ
た場合、田澤先生にお願いすることは可能でしょうか。
三年間続けてきたアナストロゾールの薬剤耐性ができて現在どんどん進行している状況と考えた場合、やはり手術はせず、化学治療が優先されるべきなのでしょうか。
田澤先生の見解をお聞きし、冷静に今後のことを考えたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは田澤です。
内容は了解しました。
骨転移+腋窩再発ですね?
その主治医は(遠隔転移があれば、その程度がどうあれ)手術はしないという「頭が固い」ようですが、私の意見は全く異なります。
★考え方としては「何を優先するべきか?」で考えます。
骨転移があるわけだから、「当然」全身療法は必要ですが、その緊急度により「局所治療(腋窩郭清手術)」を先に行うことも「当然」あります。
メール内容からは、「骨転移はあっても、早急に放射線や抗がん剤をしなくてはいけない!!」と言う状況では内容なので、(実際にそうであれば)私なら「腋窩郭清手術」を先ず行い、その後に「抗がん剤なのかCDK4/6inhibitorなのか」を行います。
ご参考に。