[管理番号:6463]
性別:女性
年齢:54歳
田澤先生。
いつも拝読し勉強させていただいております。
ありがとうございます。
私は最近海外(先進国ではない)にて右胸温存手術を受けた、54歳の者です。
先生に術後療法、特に抗がん剤適用の要否についてお尋ねしたく、質問させてください。
経過を説明いたします。
4月(下旬)日に民間のラボラトリーにて、乳腺専門放射線技師のエコーにより右乳房10時の位置に5×4×4ミリの、縦長、上部2か所に角あり、豊富な血流がみられる腫瘍が発見され、カテゴリー4bと診断。
その後同所、同技師によりエコー下組織診(カチッ
カチッと音のするもので、10回以上組織採取)を受け、乳がんと診断されました。
そのため、同じ標本を用いて後日免疫機能検査をし、結果は以下のとおりです。
(スペイン語の文章で説明が書かれているので、専門語が多く難しいですが、できるだけ簡潔に必要だと思われる個所を翻訳して書きます。
分かりにくい文章で申し訳ありません。)
<病理診断>
病理組織標本:大きさ 全体で1.0×0.8×0.2センチ
分析した標本組織の5%に、乳房柔組織に湿潤する新生物(腫瘍)形成細胞を認めた。
脈管侵襲、微小石灰化、上皮内(in situ)コンポーネントは見られない。
病変の別の域に、分泌を伴う嚢胞状で、細胞質に発砲性物質を伴った豊富なマクロファージとdecapitationによる分泌のあるダクトを認める。
乳房湿潤癌 (顕微鏡的病巣) 分析した組織の5%
(「乳管がん」「小葉がん」などの記述はなし。)
核グレード2(2+2+2)
脈管侵襲なし
微小石灰化なし
<免疫機能>
ER(陽性 80% 強度+++)
PgR(陽性 10% 強度+++)
Her2 Neu(陰性)
Ki-67%(陽性 5% 強度++)
その後、5月(下旬)日に国立保険病院で右乳房温存手術、センチネルリンパ節生検なし、
レベル2までの腋窩リンパ節郭清を受けました。
1週間後の腫瘍外科医の外来診察の
際、術後検体の病理結果を受け取ったのですが、結果は下記のとおりです。
(こちらも同じくスペイン語の文章による説明なので必要だと思われる個所のみ、翻訳します。)
<病理診断>
病理組織標本:乳腺1/4切除された乳房(11×10 センチ)、その表面にある皮膚
(3×1.5センチ)、同側切除腋窩リンパ節(13個)
乳腺は、新生物(腫瘍)形成の残留は見られない。
皮膚は、変質なし。
腋窩リンパ節(レベルⅡ)13個中13個に腫瘍病変は見られない。
腫瘍外科診察の2日後の5月(下旬)日、これらの病理検査の結果をもとに術後療法を決定すべく腫瘍内科医の外来で診察を受けて来たのですが、医師の診断は、放射線療法、ホルモン療法および化学療法とのことでした。
私は、エコーの所見から腫瘍がかなり小さいものであること、PgR値は10%と低値であるもののER値は80%と高く、またKi-67値が5%とかなり低いので、ルミナールA様で、抗がん剤はあまり効かず必要ないのではないかと質問したところ、抗がん剤が適用となるのは温存したからで、全摘であれば必要なかったと言われました。
また、私がその後も何度か質問を繰り返したので、医師に「次回(約20日後)の診察時に血液検査(腫瘍マーカーCEA, CA153含む)とレントゲン検査の結果を持ってくるように。
そこでもし、腫瘍マーカーの値が基準値より少しでも高ければ抗がん剤治療を適用する」と言われました。
ここから質問です。
術後検体にガン細胞が見つからなかったために、腫瘍径がわからなくなってしまったのですが、ステージはどうなりますか。
組織診前の2方向からとった実物大マンモの画像には微小石灰化が見られ、腫瘍外科医師(執刀医)が手術の前に2センチ大と4センチ大の丸を描いているのですが(MRIはしていません)、これが腫瘍径と考えられますか。
もしそうなら、田澤先生も化学療法は必要だとお考えになりますか。
全摘か温存かは化学療法の要否の決定には関係ないと思うのですが、どうでしょうか。
また、今の時点での腫瘍マーカーの値は、抗がん剤適用の要否を決定するものなのでしょうか。
また、腫瘍マーカーの値は、何か他の原因で上がったりしませんか。
小葉ガン、乳管ガンのどちらなのかわからないのですが、予後・生存率に違いが出てきますか。
最後に医師に「世界中どこへ行っても同じことを言われるよ。」と言われました。
そうなのでしょうか。
もし、抗がん剤治療が必要でないのなら、できるだけ避けられればと思っています。
以上、お忙しいところ恐れ入りますが、どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
それにしても、この病変で(センチネルリンパ節生検せずに)腋窩郭清されるとは!
さすがに日本では考えられないことですが、(国によっては)仕方がないことなのでしょう。(質問者には気の毒ですが)
私が見る限り、質問者のケースでは(浸潤径の記載がないものの)「術前画像所見で病変自体が小さい+術前組織診のみで病変が取り切れていた」ことを考えると、(私であれば)「術後無治療(放射線もホルモン療法も不要)」とするケースです。
「私は、エコーの所見から腫瘍がかなり小さいものであること」
⇒その判断でいいと思います。
(抗癌剤がどうこうではなく)放射線も不要としてもいいケースと判断します。
「Ki-67値が5%とかなり低いので、ルミナールA様で、抗がん剤はあまり効かず必要ない」
⇒まさにその通りです。100%正しい理解です。
「抗がん剤が適用となるのは温存したからで、全摘であれば必要なかったと言われました。」
⇒???
ありえない!
「お国柄」だけでは済まされない「誤った理解」です。
質問者のケースで抗癌剤適応とすることは「日本を含め欧米ではありえない」ことです。
「腫瘍マーカーの値が基準値より少しでも高ければ」
「また、今の時点での腫瘍マーカーの値は、抗がん剤適用の要否を決定するものなのでしょうか。」
⇒そもそも…
腫瘍マーカーは全く無意味です。
「ステージはどうなりますか。」
⇒1期です。(微小浸潤の可能性も、かなりありますが、いずれ「浸潤癌」という判定なので1期となります。)
「これが腫瘍径と考えられますか。」
⇒違います。
実際に、そこに癌はなかったわけですから。
「もしそうなら、田澤先生も化学療法は必要だとお考えになりますか。」
⇒そもそも腫瘍径と抗癌剤は無関係です。
「全摘か温存かは化学療法の要否の決定には関係ないと思うのですが、どうでしょうか。」
⇒正に、その通りです。
その点にかんしては、(このQandAに頻繁に登場する)「化学療法好きの乳腺外科医」でさえも(私に)もろ手をふって賛成することは想像に難くありません。
「また、腫瘍マーカーの値は、何か他の原因で上がったりしませんか。」
⇒喫煙者に一定の割合で「高CEA血症が存在」することは解っています。
「小葉ガン、乳管ガンのどちらなのかわからないのですが、予後・生存率に違いが出てきますか。」
⇒無関係
「最後に医師に「世界中どこへ行っても同じことを言われるよ。」と言われました。」
⇒??
アメリカンジョーク?(アメリカではないようですが)
「温存=抗癌剤」というのは斬新すぎて(私には)ついていけません。(世界中の医師も同じ意見でしょう)
質問者様から 【質問2 放射線療法とホルモン療法について】
性別:女性
年齢:54歳
田澤先生。
以前、右胸温存手術を受けた海外の国立保健病院の腫瘍内科医(執刀医は別)に、温存だからという理由で抗がん剤治療の診断を下され、相談させていただいた者です。
前回の質問の際には大変迅速で明確なご回答をいただき、本当にありがとうございました。
海外におりますため一人で心細く、このサイトが私の心の拠りどころとなっています。
本当にありがとうございます。
その後、腫瘍内科医を説得できるようにと、こちらの民間の腫瘍外科医にもセカンドオピニオンを聞きに行き、ホルモン治療のみという診断を受けました。
放射線治療は数年後に別の問題を起こす可能性があるということで、それを避けるために放射線治療は避けて、ホルモン治療を行うだけでいいとのことでした。
その結果と、前回の診察で指示のあった腫瘍マーカーの血液検査の結果(CEA,CA153
共に低値)をもって、再度国立保健病院の腫瘍内科医の診察に行きました。
その結果、
渋々ですがホルモン治療のみでよいということになり、レトロゾールを6年間服用と決まり、飲み始めて3週間になります。
やっと術後の治療が始まり、これからホルモン治療を頑張っていこうと思っていたのですが、いくつか疑問点・不安な点が出てきたため、もう一度田澤先生にご相談したく、
よろしくお願いいたします。
先日、インターネットで日本乳癌学会乳癌診療のガイドラインを見ていたところ、
「乳房温存手術後に放射線治療が省略できる場合」の条件として、「もともと乳房内に再発するリスクが低い場合:高齢(70歳以上)、2cm以下のしこりでホルモン療法が有効なタイプの患者でホルモン療法を行った場合、(その他)…」とありました。
私の場合、ほぼ当て嵌まっているものの年齢は54歳のため、放射線治療を受けなくても大丈夫なのかと不安になってきました。
また、実は温存した右の乳房に組織診をしたときの針が出入りしたあと(5ミリの切開跡)がまだ残っていて、それも気になっています。
放射線治療は受けなくても、乳房再発に影響はないでしょうか。
また、ホルモン療法ではレトロゾールの一般的な副作用と言われる関節痛などはまだないものの、軽い頭痛、倦怠感があり、心配なのは脚(特に左脚)に時々ひきつったような、張ったような痛みがあり、膝の内側の血管が少しですが浮き出て来ました。
他にも小さい、痣のように見える血管がいくつかあります。
脚の痛み自体はホルモン剤の服用前から、ふくらはぎ・太ももに時々ありましたが、血管が浮き上がってきたのは服用を始めてからです。
稀だが重篤な副作用と言われる血栓症になったりしないかと、とても心配です。
前回の先生のご回答では、私のケースでは(放射線療法、ホルモン療法どちらもなしの)無治療でも大丈夫ではないかと言っていただきましたが、無治療だとあとで後悔することになるのではないかと心配で、できれば体に負担の少ないホルモン治療は続けたいと思っています。
でも、このような状態でホルモン治療を続けてもいいのか、とも思います。
やはり、ホルモン治療は必要ないのでしょうか。
その場合、放射線治療省略に問題はありませんか。
また、ホルモン治療を続けるとしたら、このまま続けても大丈夫でしょうか。
また、どのくらいの程度の副作用がでたらやめるべきなのでしょうか。
以上、お忙しいところ恐れ入りますが、どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
物事にはバランスが必要です。
治療は「やればやるほど安心」というものではありません。(それに付随する有害事象や経済的負担などにバランスしなければ、やるべきではないのです)
「放射線治療は受けなくても、乳房再発に影響はないでしょうか。」
→その通りです。
前回、回答したように
(以下、抜粋)
「術前画像所見で病変自体が小さい+術前組織診のみで病変が取り切れていた」ことを考えると、(私であれば)「術後無治療(放射線もホルモン療法も不要)」とするケースです。
「無治療だとあとで後悔することになるのではないかと心配で、できれば体に負担の少ないホルモン治療は続けたい」
「やはり、ホルモン治療は必要ないのでしょうか。」
「その場合、放射線治療省略に問題はありませんか。」
→上記コメント通りです。
「期待される効果」と全くバランスしません。(私が勧めることはありません)
質問者様から 【質問3 術後5か月でみつかった低エコー小結節について】
性別:女性
年齢:54歳
病名:
症状:手術後右乳房に低エコー小結節
田澤先生。
今年の4月末に乳がん告知され、5月下旬に海外の国立保健病院の右胸温存手術を受け、
現在、ホルモン治療(レトロゾールを6年間)で治療を続けている海外在住の者です。
前回の質問の際には早々にご回答をいただき、本当にありがとうございました。
先生には「放射線もホルモン治療も必要なし、無治療」とご回答いただいたのですが、
その後次のような経過になってしまいました。
7月下旬に手術後初めての腫瘍外科医(執刀医)の診察を受けた際、放射線治療を行っていないことを告げると、「あなたの患部のことは(手術をした)私が一番よくわかっている。
全摘をする大きさではないので温存としたが、針生検の際に何度も針が通ったことで腫瘍の周りが(癌細胞に)汚染されている恐れがある。
初めから放射線治療をするつもりで手術しているので、予防のために放射線治療をしたほうがよい。」と放射線治療を強く勧められ、結局、国立保健病院委託の放射線治療の施設(地域のがんセンターのような所)で、術後14週目からと遅い開始となりましたが、8月上旬から9月中旬まで合計25回の放射線治療を受けました。
その施設では、何回照射をするかだけで他には全く情報がもらえず、私自身もあまり放射線治療についての知識がなかったため放射線の医師に質問することもできず、普通の2?を25回照射の治療だと思っていたのですが、実際は2.67?×17回と、2?×8回のブースト照射、合計61.39?の照射でした。
局所再発は低リスクに属すると思っていたのですが、ブースト照射まで(しかも16?)され
て普通より多くの線量の照射となってしまい、また、照射方法も日本のようにきっちりミリ単位で調整するなどということはせずいい加減(なように見える)で、今後晩期
副作用が出ないか、心配です。
(もう終わってしまったことなので、仕方ないですが…。)
その後、乳癌診断から6か月、手術から5か月経ち、10月末に、前回4月に乳癌を見つけてくれた民間のラボラトリーで超音波検査を受けました。
(執刀医の指示ではなく、別の民間の腫瘍外科医の指示。)特に問題ないですよ…と言われるものと思い込んでいたのですが、初めに超音波担当の女医に、「手術をしたのですね。」と聞かれたため、「5月下旬に手術を受けた。
術後の病理検査では、検体からは癌細胞が検出されなかった。」と答えると、「針生検で癌細胞がすべて取れてしまうことはない。
(私が全部とることはない。)
手術の際には腫瘍をマークする長い針金のような器具(名前は分かりません)を使ったか、皮膚にはマーキングをしたか。
」などと聞かれ、「皮膚のマーキングのあとはあったが、針金の器具については分からない。
」と答えると、「何だかわからない小結節がある。
どのように手術が行われたのかわからないので、私には何もわからない。」「結果は3日後に取りに来てください。」と言われました。
3日後に取りに行った結果レポートには「右乳房B領域9時から10時の位置に、3×2ミリの、周囲に血流を有する、前回針生検を行った腫瘤(手術を受けた癌細胞)と同様の所見の、低エコーの小結節を認める。
前回の針生検の結果が浸潤癌であったことも鑑みて、外科的生検を受けることを勧める。
BI-RADS6」と記載されていました。
(間違いではなく、「BI-RADS6」書かれています。)
大変驚いて、国立保健病院の腫瘍外科医(執刀医)の診察予約をして、診察を受けました。
まず、超音波のレポートと映像を見せたところ、「全く気にすることはない。
私は超音波のレポートは、主観的なので信用しない。
彼女はあなたの患部について何も知らないし、腫瘍科医でもない。
針金のような器具(名前不明)は使ったし、マージンもかなり多めに切除した。
あなたは放射線治療が終わってからまだ6週間しか経っていないし、手術の傷もまだ治っている過程の途中なので、今回の超音波はまだ時期尚早だった。
超音波を受けるのなら、マンモグラフィーの方がまだよかった。
放射線については乳がんは58?から65?が標準なので、心配いりません。
次回の診察は、5か月後にマンモの画像を持ってきてください。」と言われ、触診を受けて終わりました。
執刀医は国立保険病院で診察していることもあり、臨床経験も多く信頼できると思って
いるので、執刀医の「気にすることはない」という言葉に一応ホッとしたのですが、
やはり本当にそのままにしておいて大丈夫なのか、と不安です。
こちらでは、超音波、マンモグラフィー、外科手術、抗がん剤・ホルモン剤の処方など、全て別々の医師によって行われます。
腫瘍外科医の診察では、執刀医も民間の別の医師も、診察室には超音波の機器はありません。
なので、いつも田澤先生がおっしゃる「医師自らのエコー」は受けられないのが現状です。
日本で治療を受けられれば余計な心配などもいらないだろうに…と思いますが、いろいろな事情により残念ながら日本で治療を受けることはできません。
質問なのですが、本当にこの腫瘤をそのままにしておいても大丈夫でしょうか。
また、血流があるということや前回の癌の腫瘤によく似ているということで、やはり癌である可能性は高いでしょうか。
前回の取り残しでしょうか。
それとも新しい癌?予防的にとってしまうということも含めて、外科的生検を受けたほうがいいのでしょうか。
とても心配です。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「右乳房B領域9時から10時の位置に、3×2ミリの、周囲に血流を有する、前回針生検を行った腫瘤(手術を受けた癌細胞)と同様の所見の、低エコーの小結節」「外科的生検を受けることを勧める。BI-RADS6」「「針生検で癌細胞がすべて取れてしまうことはない。(私が全部とることは
ない。)」「手術の際には腫瘍をマークする長い針金のような器具(名前は分かりません)を使ったか、皮膚にはマーキングをしたか」
→この文面からすると、
その「超音波担当の女医」が「初回手術時に、(肝心の)腫瘍を取り残して(だから手術標本に癌が無かった)、その腫瘍がそのまま残っているのでは?」と疑っているようです。
一方、執刀医は「大きめに切除しているので、そんなこと(腫瘍を取のがして、別部位を手術してしまった)はありえない。 (術後半年だから)術後瘢痕が写っているのでは?」
という主張のようです。
★(その執刀医は)「もしかして手術時に残してしまったのでは?」という思いから、「放射線やホルモン療法に執拗に拘った」ように勘ぐってしまいます。
★★上記可能性が否定できない現状では生検(針生検)すべきだと思います。
質問者様から 【質問4 】
異時性両側乳癌について
性別:女性
年齢:56歳
病名:右乳房浸潤癌
症状:
投稿日:2020年2月3日
田澤先生
いつも拝読、勉強させていただいています。
1年半ほど前に、管理番6463で、海外在住、右外側上部5ミリ、ルミナールA浸潤癌の手術の際に化学療法の要否についてと、その約半年後に超音波検査で検出された同右側乳房、2~3ミリ、周囲に血流ありの腫瘤の外科的生検の要否について相談させていただきました。
結局、主治医(腫瘍外科医、こちらには残念ながら乳腺外科はありません)から、「(自信をもって)取り残しとは考えられないから気にすることはない」と言われ、外科的生検は受けませんでした。
その後特に問題なく約1年が過ぎましたが、昨年末か今年の初めぐらいの入浴中に、
対側の左乳房外側下部に小さいが固くて、触るとコリコリしていてよく動くしこりがあるのに気づき、すぐマンモ、エコ―を受けたかったので
すが、こちらの医療システムの関係で、ようやく1月末に検査を受けることができました。
その結果、左乳房のしこりが触れるのと同じ場所に縦横比大、不整形の周囲に血流のある約1センチ、更に右乳房の1年前の超音波とは
別の場所にあまり鮮明には見えないが縦横比大、不整形、内部に血流多い約1センチのしこりが検出され、BRADS-4Cと診断され、現在針生検待ちの状態です。
1年半前の右乳癌は、術後の病理結果で癌細胞が検出されないほど腫瘍が小さく、T1N0M0で予後はかなり良いと楽観視していたのに、現在、右側局所再発と、異時性両側乳癌疑いがある状態になり、とても心配です。
検査の後、インターネットでいろいろな学術論文などを検索して、両側乳癌について調べてみたのですが資料は
あまりなく、理解できたことは、①異時性両側乳癌の予後は、より進行している癌によって決まるが、言われているほど悪くはない。
②ただ、第1癌と第2癌の間隔が短いほど、予後が悪い。
ということでした。
私の場合、第1癌から術後まだ1年半しか経ってなく、現在もホルモン治療中(レトロゾール)なのにも関わらず、しこりが両乳房にできてしまい、非常にショックを受けています。
今回質問したいのは、①しこりに気づいてから手術まで、最短で2か月から2か月半たってしまうが、その間に癌が大きくなってしまわないか。
②異時性両側乳癌で第1癌と第2癌の間隔が短い場合、ステージに関わらず予後が悪いのか。
②実は今回手術を受けた場合、人生で10回目の手術となってしまうのですが、レトロゾールの副作用なのか
下肢静脈瘤(痛み、血管が浮き出る、ふくらはぎのつっぱり感等)やコレステロール・中性脂肪軽度高値などの症状があり、手術による深部静脈血栓症がとても心配です。
この国では、日本の手術で用いられている血栓予防の機械などはなく、手術の前に膝から下に包帯をきつめに巻くぐらいです。
なので、手術前に、または手術に際して、何か対策できることはあるでしょうか。
以上です。
お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「今回質問したいのは、①しこりに気づいてから手術まで、最短で2か月から2か月半たってしまうが、その間に癌が大きくなってしまわないか。」
→その程度なら十分、常識の範囲内です。
「②異時性両側乳癌で第1癌と第2癌の間隔が短い場合、ステージに関わらず予後が悪いのか。」
→「局所再発」も「対側乳癌」も予後とは無関係です。
ご安心を。
★温存乳房内再発後の温存乳房内再発は、全摘すれば「最初から全摘したのと予後は一緒」ですよ。
両側乳癌は予後とは全く無関係。(単純に別々に考えましょう。)
「②実は今回手術を受けた場合、人生で10回目の手術となってしまうのですが、レトロゾールの副作用なのか
下肢静脈瘤(痛み、血管が浮き出る、ふくらはぎのつっぱり感等)やコレステロール・中性脂肪軽度高値などの症状があり、手術による深部静脈血栓症がとても心配です。
この国では、日本の手術で用いられている血栓予防の機械などはなく、手術の前に膝から下に包帯をきつめに巻くぐらいです。
なので、手術前に、または手術に際して、何か対策できることはあるでしょうか。」
→包帯で十分では。
術後4hで歩けばいいのです。(安静臥床が良くないのです)
質問者様から 【質問5 】
今後の治療について
性別:女性
年齢:56歳
病名:
症状:
投稿日:2020年4月24日
田澤先生
何度も質問させていただき、お世話になっております。
ありがとうございます。
海外で第一乳癌後の経過観察(1年8か月後)で、1月末にマンモ、超音波の検査を受
け、乳房内再発と対側乳癌の疑いと診断された者です。
その後、2月のはじめに針生検を受け、2週間後に結果がでました。
乳房内再発疑いの右乳房の腫瘍は良性でしたが、対側の左乳房は浸潤癌との結果でした。
その後、3月下旬にようやく温存手術を受けることができ、1か月後の今日術後の病理の結果が全部出ました。
結果は次の通りです。
左乳癌 浸潤癌
最大腫瘍径は1センチ
脈管侵襲あり
Bloom Richardson 6
リンパ節レベル3まで郭清したうちの7個を検査し、転移なし
ER,PgR陰性
Her2陽性(20%)
Ki67 60%
レトロゾールを1年半飲んでいるのに癌が見つかってしまったので予感はありましたが、結果はHer2陽性乳癌ということで、抗がん剤と抗Her2治療必須となると思うのですが、どのような治療が一番適切でしょうか。
また、パクリタキセル等の薬剤名は万国共通なのでしょうか。
放射線治療は受ける予定です。
海外にいるため日本と同じような治療が受けられるのか不安ですが、今後の治療方法を決める腫瘍内科医の診察に、知識を持って臨みたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
今回もセンチネルリンパ節生検しなかったのですね?(何故だろう?)
「どのような治療が一番適切でしょうか。」
⇒low riskだから
非anthracycline regimenとしてTC+trasutuzumabもしくはweekly
paclitaxel+trastuzumab
更に1cmだからpertuzumabも不要と思います。
「また、パクリタキセル等の薬剤名は万国共通なのでしょうか。」
⇒その通りです。
質問者様から 【質問6 】
今後の治療について
性別:女性
年齢:56歳
病名:
症状:
投稿日:2020年4月24日
田澤先生
何度も質問させていただき、お世話になっております。
ありがとうございます。
海外で第一乳癌後の経過観察(1年8か月後)で、1月末にマンモ、超音波の検査を受け、乳房内再発と対側乳癌の疑いと診断された者です。
その後、2月のはじめに針生検を受け、2週間後に結果がでました。
乳房内再発疑いの右乳房の腫瘍は良性でしたが、対側の左乳房は浸潤癌との結果でした。
その後、3月下旬にようやく温存手術を受けることができ、1か月後の今日術後の病理の結果が全部出ました。
結果は次の通りです。
左乳癌 浸潤癌
最大腫瘍径は1センチ
脈管侵襲あり
Bloom Richardson 6
リンパ節レベル3まで郭清したうちの7個を検査し、転移なし
ER,PgR陰性
Her2陽性(20%)
Ki67 60%
レトロゾールを1年半飲んでいるのに癌が見つかってしまったので予感はありましたが、結果はHer2陽性乳癌ということで、抗がん剤と抗Her2治療必須となると思うのですが、どのような治療が一番適切でしょうか。
また、パクリタキセル等の薬剤名は万国共通なのでしょうか。
放射線治療は受ける予定です。
海外にいるため日本と同じような治療が受けられるのか不安ですが、今後の治療方法を決める腫瘍内科医の診察に、知識を持って臨みたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答6】
こんにちは。田澤です。
今回もセンチネルリンパ節生検しなかったのですね?(何故だろう?)
「どのような治療が一番適切でしょうか。」
⇒low riskだから
非anthracycline regimenとしてTC+trasutuzumabもしくはweekly
paclitaxel+trastuzumab
更に1cmだからpertuzumabも不要と思います。
「また、パクリタキセル等の薬剤名は万国共通なのでしょうか。」
⇒その通りです。
質問者様から 【質問7 】
抗がん剤治療について
性別:女性
年齢:56歳
病名:異時性両側乳癌
症状:
投稿日:2020年5月8日
田澤先生
いつもお世話になり、ありがとうございます。
一昨日、抗がん剤治療について腫瘍内科医の診察を受けました。
「脈管侵襲あり」だったため、初めは「赤と白の抗がん剤+トラスツズマブ」との提示があり、AC+トラスツズマブとTC+トラスツ
ズマブのことだと思い、お願いして「白の抗がん剤だけ+トラスツズマブ」にしてもらいました。
結果、実はTCH療法で初回の薬剤はドセタキセル120㎎+カルボプラチン 500 mgとのことでした。
腫瘍内科医からは、「これを全部で4回~5回、経過をみながら薬剤の量と回数を決定する」と言われました。
トラスツズマブは病院の上の人に投薬の承認をもらわなければならないので、その後追加する予定。
そして、異時性両側乳癌で左右どちらもリンパ節を郭清しているし、トラスツズマブの治療も1年続くので、
腕の静脈は使わずにポートの埋め込みをした方がいいとのことで、腫瘍外科医に手術の手続きをしてもらうようにと言われ、腫瘍外科医の診察を受けました。
ところが、腫瘍外科医からは、「①ポートの埋め込み手術は必要ない。
心臓や肺などに非常に大きいリスクとなる
ので、かえって危険であり全く勧めない。
②一日も早く抗がん剤治療を始めるべき。
ポート埋め込みの手術は(コロナの影響もあり)手続きに日数がかかりすぎて(4~6週間)抗がん剤の開始が遅くなって治療に悪影響が及ぶ。
③この薬剤は閉経後なので問題ないが、4回では不十分。6回は必要。」と言われました。
抗がん剤開始前に必要な検査、薬剤の量や副作用の説明でも、腫瘍内科医と外科医の見解は全く異なっており、
両者の板挟みになり途方にくれましたが、結果的に両方の中間をとる形で、最初の1回、多くても2回までは腕の静脈からの点滴を行うが、この間にポート埋め込みの手術を受ける、ということになり、来週の月曜日から抗がん剤治療が始まります。
ようやく手術から8週目に抗がん剤が開始できるというほっとした気持ちと、リンパの郭清をしている腕の静脈を
使っての点滴は大丈夫なのかという不安、またT抗がん剤の回数は適切なのか、という疑問があります。
TCH療法は適切だと思われますか。
また回数は何回がいいのでしょうか。
ポートの埋め込みは必要ですか。
心臓や肺へのリスクが高く、危険なのでしょうか。
以上、お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答7】
こんにちは。田澤です。
「TCH療法は適切だと思われますか。」
⇒敢えてカルボプラチンを使う必要は無いと思っていますが(当院では行っていません)
標準治療にはなっています。
「また回数は何回がいいのでしょうか。」
⇒6回が標準です。
「ポートの埋め込みは必要ですか。」
⇒不要
「心臓や肺へのリスクが高く、危険なのでしょうか。」
⇒危険な手技ではありませんが…
必要性が低いのに敢えて行う理由がありません。
質問者様から 【質問8 】
抗がん剤治療について
性別:女性
年齢:56歳
病名:
症状:
投稿日:2020年5月25日
田澤先生
いつもお世話になり、ありがとうございます。
先日第1回目の抗がん剤投与を受けて、また新たに質問ができました。
よろしくお願いします。
二週間前に初めてのドセタキセル120㎎+カルボプラチン 500 mgの投与を受けました。
投与から4日目に腫瘍外科医の診察があったのですが、医師の見解は今回投与された薬剤の量はどちらもほぼ限界の量で、少し多いのではないかとのことでした。
インターネットなどでドセタキセルは「1日1回60㎎~最大75㎎を点滴静注する」となっているのですが、私の場合はその最大75㎎/体表面積となっています。
(体表面積は1.6です。)また、カルボプラチンについては、投与前に特に24時間蓄尿検査などもせず、この量になりました。
田澤先生はこの薬剤の量について、どう思われますか。
また、TC療法とTCH療法では、TC療法の場合は4回に対して、TCH療法の場合は6回となっています。
同じドセタキセルの投与であるのにTCH療法の方が多くの量が投与されるのでしょうか。
それとも合計量は同じで回数のみが違うのでしょうか。
同じ量を投与するとしてTCH療法を4回行うのでは、やはり不十分になりますか。
またHER2陽性だったためトラスツズマブ治療の適応なのですが、実は居住国が途上国で、今回のコロナウイルスの影響もあってなのか、保険病院での治療承認がまだ下りません。
もしもトラスツズマブが使えない場合、他に治療の選択肢はありますか。
また、そうなると治療効果は下がるのでしょうか。
私の通う病院では医師、看護師などからほとんど指示、情報が得られません。
インターネットで副作用などの情報を得ています。
一回目の抗がん剤後、一週間目はほぼ副作用の症状が出ず、二週間目の11日目から二日間発熱しました。
(38.1℃)発熱についての指示がなかったため、近所の医師に診てもらい解熱剤を飲んで熱は下がりました。
この処置がよかったのか悪かったのか、または何か他にすべきことがあったのか実際わかりません。
このような場合、どうしたらいいのでしょうか。
お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答8】
こんにちは。田澤です。
「カルボプラチンについては、投与前に特に24時間蓄尿検査などもせず、この量になりました。
田澤先生はこの薬剤の量について、どう思われますか。」
⇒抗がん剤投与歴がなく、腎障害がなければ適切だと思います。
「また、TC療法とTCH療法では、TC療法の場合は4回に対して、TCH療法の
場合は6回となっています。
同じドセタキセルの投与であるのにTCH療法の方が多くの量が投与されるのでしょうか。
それとも合計量は同じで回数のみが違うのでしょうか。」
⇒同じ量(75mg/m2)です。
何故、回数が違うのか?
⇒成り立ちが異なるのです。
TCはもともと、anthracycline「単独」の替りとして登場したのに対し、TCHはanthracycline+taxane「併用」の替りとして登場したレジメンなのです。
その意味で(直接比較はありませんが)
(anthracycline単剤 < anthracycline+taxane併用が想像されるように)「TC+trastuzumab < TCH」と想像します。
「同じ量を投与するとしてTCH療法を4回行うのでは、やはり不十分になりますか。」
⇒(最強レジメンである)「anthracycline+taxane+trastuzumabよりは劣る」可能性はありますが、(taxane単独レジメンである)「TC+trastuzumabとは同等」かもしれません。
「もしもトラスツズマブが使えない場合、他に治療の選択肢はありますか。」
⇒(残念ながら)抗HER2療法の替りはありません。
「また、そうなると治療効果は下がるのでしょうか。」
⇒そう思います。
「このような場合、どうしたらいいのでしょうか。」
⇒予め抗生剤処方されていなかったのでしょうか?
早めに抗生剤を内服し、よく「うがい手洗い」することです。
質問者様から 【質問9 】
治療の遅れについて
性別:女性
年齢:57歳
病名:異時性両側乳癌
症状:
投稿日:2021年2月7日
田澤先生
いつも読ませていただいております。
ありがとうございます。
海外在住で、異時性両側乳癌の治療を受けている者です。
これまでも何度か質問させていただきましたが、治療の課程でまた質問が出て来ましたのでお尋ね致したく、よろしくお願い致します。
これまでの経過を簡単に説明します。
2018年5月 右側浸潤がん温存手術
ルミナールA 腫瘍径5ミリ Ki 5% 脈管侵襲なし グレード2 リンパ節転移なし ホルモン療法(レトロゾール) 放射線療法(25回・61グレイ)
2020年3月 左側浸潤がん温存手術
ホルモン陰性 HER2陽性 腫瘍径1センチ Ki 60% 脈管侵襲あり グレード2リンパ節転移なし 化学療法
(TCH:カルボプラチン+ドセタキセル=6回、トラスツズマブ=3回) 放射線療法
20回(60グレイ)、現在トラスツズマブ単独5回投与済み(残り9回予定)
右側の第1癌の時は、手術から放射線まですべてスムーズに治療が進み、特に心配することもなかったのですが、
左側の第2癌では、サブタイプ・腫瘍の大きさも第1癌より深刻な上に、最初の手術から治療が全て遅れ気味で治療の効果が心配です。
まず、①自分でしこりに気づいてから手術まで、約3か月かかった。
②ドレーンが取れるのが遅れたため、抗がん剤は手術後7週目からの開始となった。
③トラスツズマブの開始はさらに遅く、抗がん剤投与3回目の、術後13週目から開始した。
④病院に薬剤が不足する問題がたびたび起こり、4回目の抗がん剤の際、カルボプラチンの投与が受けられなかった。
⑤トラスツズマブも薬剤の不足から2回ほど4週間後の投与になった。
(薬剤の増量はなし)⑥病院と放射線治療委託施設の契約の問題から、照射の開始が抗がん剤の最終投与から12週後となった上、途中機械の故障で1週間照射できない期間があり、また、最初の17回の照射終了からブースト照射開始まで年末年始のため3週間空いてしまった。
⑦トラスツズマブの治療には半年ごとに病院の許可が必要で、後半の許可申請の際に、病院側のミスにより8回目と9回目の投与が7週間空いてしまった。
(薬剤の増量はなし)
思いつくだけでこれだけの治療の遅れがあります。
なかなか思い通りに治療が進まず、とても心配です。
特にHER2陽性なので、頼みの綱はトラスツズマブなのですが、これまでの経過から見て、治療効果はかなり下がってしまうと思われますか。
また、手術を受けた時から気になっていることがあります。
手術を待っている間に腋にしこりを感じるようになり、また手術中も肉眼で見える腫れたリンパ節がいくつもあったとのことでレベル3までの郭清となりましたが、病理検査の結果は、7個のリンパ節(最大1センチ)を検査して転移はなかったという結果でした。
執刀医が肉眼でいくつも腫れたリンパ節を確認しているのに、そして私自身もしこりを触れるような感覚があったのに、
「リンパ節転移なし」ということがあるのでしょうか。
そのまま信じてもいいのでしょうか。
また、抗がん剤治療終了直後に受けた血液検査で、抗がん剤開始直前は2.73だったCEA値が突然7.85まで上がりました。
その2か月後の検査では、3.33まで下がりましたが、CA-125が8.89から14.87に上がりました。
その20日後の一番最近の検査では、CEA3.3、CA-125 11.9、CA-15.3 は8.5でした。
この時一緒に受けた肝機能の血液検査、骨シンチ、頭部造影CTの結果は異状なしでした。
この結果から、転移、または消化器系の癌は心配しなくても大丈夫でしょうか。
以上、よろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答9】
こんにちは田澤です。
術後補助療法の開始の遅れは、ほぼ無関係でしょう。
リンパ節は病理結果を信じましょう。
腫瘍マーカーは、正常値に戻ったのであれば心配ありません。
以上。