[管理番号:4346]
性別:女性
年齢:50歳
先日乳がん確定したものです。
右胸が上から見ると少し外側に変形しています。
50歳。
閉経済み。
診断を下されたクリニックは手術ができないため、職場の近くの総合病院に転院しました。
マンモ、エコー、触診、MRI、針生検、造影CTを終えて現在主にわかっていることは以下の通りです。
右乳腺腫瘤(E領域広範囲に位置する)乳管がん
scirrhous carsinoma(硬がん)が推定される
Nuclear grade : 1 (nuclear atypic 2, mitotic counts 1: 3個/10HFP)相当
HER2 score 2+ HER2 FISH を行い後日報告(おそらく陰性とのこと)
エストロゲン受容体:80% 3b
プロゲステロン受容体:30% 3a
Ki-67:7.3%
骨や肺、肝臓などへの目に見える転移は認められない
核グレードが低いこと、Ki-67の数値が低いことから、おとなしいものと思われるが、しこりが大きい(4.0×5.0cmくらい)のと、リンパ転移が
2個見つかっているので、残りの検査(骨密度、胸部CT)が済み次第治療を始めたいと言われています。
ステージは正式にはまだ出ていませんが、クリニックの先生がⅢの中期くらい…とつぶやかれました。
1.ホルモン剤(フェマーラ)で術前治療を1年間した後に手術、あるいは手術してからホルモン療法、どちらでもよいと言われています。
私は温存にこだわらないので先に手術をしたいですが、自分の仕事と病院のスケジュールの関係で、
どうしても1ヶ月以内に受けるのが無理かもしれません。
例えば3ヶ月ほど術前治療をしてから手術というのはありでしょうか?
2.私のような条件で先に全摘したとして、手術とホルモン療法の他に、
化学療法や放射線治療もするのでしょうか?
ルミナルAであれば、抗がん剤は不要ですか?
3.やるべき治療をやりきるつもりです。
根治あるいはそれに近い状態に持っていくことは可能ですか?
4.こちらのQ&Aでも、術後の病理検査でがんの性質が最初と変わったという報告を見かけることがあります。
それはなぜですか?自分にも起こりうると覚悟しておいたほうがいいでしょうか。
情報が少ないかもしれませんが、推測される範囲で気をつけるべき点などお答え頂ければ嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「1.ホルモン剤(フェマーラ)で術前治療を1年間した後に手術、あるいは手術してからホルモン療法、どちらでもよい」
⇒術前ホルモン療法は、あまりお勧めしません。
あくまでも「手術までのつなぎ」と捉えましょう。
長期の「術前ホルモン療法」では、(その間に)「新たな転移が起きないか?」注意深い配慮が必要となります。
「例えば3ヶ月ほど術前治療をしてから手術というのはありでしょうか?」
⇒3カ月程度であれば、問題はありません。(手術待ちが2カ月以上となる事自体、今のご時世普通のこととなっています)
「2.私のような条件で先に全摘したとして、手術とホルモン療法の他に、化学療法や放射線治療もするのでしょうか?ルミナルAであれば、抗がん剤は不要ですか?」
⇒化学療法は、「ルミナールAでは不要」です。 ただし、術後の標本できちんと「病変全体のKi67を再評価すべき」と思います。
放射線治療は「腋窩リンパ節転移が4個以上」で適応となります。(ルミナールAなどは無関係)
「3.やるべき治療をやりきるつもりです。根治あるいはそれに近い状態に持っていくことは可能ですか?」
⇒もちろんです。
乳癌で「根治の可能性の方が低い」という状況はむしろ稀なのです。
「4.こちらのQ&Aでも、術後の病理検査でがんの性質が最初と変わったという報告を見かけることがあります。それはなぜですか?」
⇒術前はあくまでも「サンプリング検査」によるものであり、「病変全体を評価した術後」とは乖離がありえます。
「自分にも起こりうると覚悟しておいたほうがいいでしょうか。」
⇒可能性は低そうです。
まず、ER, PgR, HER2 は殆ど変化することはありません(変化するケースは、かなりのレアケースといえます)
Ki67ですが、さすがに一桁なので、「いきなり(術後)30%以上」などにはなりそうにありません。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、先日はご回答いただきありがとうございました。
大変かもしれないけれど治療をがんばろうと思えました。
おかげさまで、あの後の受診で手術日に空きが出たため当初より早く行われることが決まり、あと半月程で全摘、落ち着いてから再建を考えるということになりました。
それはよかったのですが、追加で骨シンチをうけることになってしまいました。
「造影CTでは転移なしだったのに、やはり何か怪しいところがあるのか」と感じたのをきっかけに、気持ちがどんどん落ちてしまいました。
この骨シンチで造影CTでは見つからなかったものが見つかる可能性があるのですか?
また、ひと月前には手のだるさがあるくらいだったのに、最近は鎖骨の下や肩、首、二の腕などがピリピリ、ジンジンと痛みます。
時には足の付け根から下も同じように痛くなります。
胸も、針生検の後の痛み?が残っている感じで、時折鈍痛があります。
うまく言えませんが、そこに「ある」という重みを常に感じます。
仕事の間は笑ったりして気が紛れているのですが、帰宅する頃になると息苦しさやめまいを感じ、心身ともに重苦しくなります。
それはもう、そういうものだと考えて過ごすしかないのでしょうか。
しんどいのは精神的なものでしょうか。
もしくは本当に急に進行しているのでしょうか?
スケジュール的には近日骨シンチと麻酔科受診、来週には乳腺外科受診、再来週には手術です。
診断から手術まで2ヶ月で良かったですし、
気持ちを強く持って、明るくしなければと思うのですが、なかなか難しいですね(すみません、愚痴になりました)
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「追加で骨シンチをうける」
「この骨シンチで造影CTでは見つからなかったものが見つかる可能性があるのですか?」
⇒全く無駄な検査です。
無駄な被爆はCTだけにしましょう(断れるのならば)
「しんどいのは精神的なものでしょうか。」
「もしくは本当に急に進行しているのでしょうか?」
⇒不安な気持ちはよくわかります。
「精神的なもの」であることは間違いありません。
前向きになることです。
質問者様から 【質問3】
田澤先生こんにちは、
また質問させてください。
少し混乱しています。
先月無事に全摘手術を終え、仕事も復帰して、傷も落ち着き始め、体力も少しずつ戻っていると感じます。
手術前に腫瘍径は2.5cm、浸潤径は7cmと口頭で聞いていました(最初の診断より大きくなりました)が、
手術後に「全部取れたと思います」と言われました。
先日の受診の際、術後の病理検査の結果が一部出たと主治医の先生から知らされました。
詳しくは全て揃ってから説明します、とのことでした
が、電子カルテの一部が見えて
ER : 90%
PgR : 20%
HER2 1+
目が悪くKi-67の数値は確認できませんでした(田澤先生が言われたとおりこちらも術前と大きく違わなければよいのですが…)。
ただ、リンパ節への転移が4個あったそうです。
そのため、抗がん剤、放射線照射、ホルモン療法(閉経しているのでAIを10年)になると思いますとのこと。
フルコース治療は覚悟していたので、しっかり取り組もうと思っています。
ひとつ気になるのが、電子カルテの報告の中に「断端陽性」の文字があったことです。
前後の文章は読めませんでした。
浸潤径は大きいですが、全摘すれば断端陽性にはならないと思っていました。
断端陽性の文字に驚いてしまいその場で詳しいことは先生に聞けませんでしたが、その表記があるということは「ある」ということなのでしょうか。
来週に残りの結果と治療方針を相談する予定ですので、心の準備のために質問させてください。
1.全摘でも私のように浸潤径が大きければ断端陽性が見つかることはありますか?
2.本当にあった場合、フルコース治療で消えるのでしょうか?
3.抗がん剤は何になると思われますか?
曖昧な記述が多くて申し訳ありません。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「1.全摘でも私のように浸潤径が大きければ断端陽性が見つかることはありますか?」
⇒ありません。
ただ、病理医は(実際の手術の場を見ている訳ではないので)「そのように記載」
することがあります。
○実際は「全摘なのに、断端陽性となることはありません」
ご安心を。
「2.本当にあった場合、フルコース治療で消えるのでしょうか?」
⇒ありませんし、(そもそも)その「フルコースの治療」とやらは、「再発予防」で行うものです。
本当に「癌が残っている」と考えるなら(再発予防としての薬物療法や放射線ではなく)「その部位を手術で摘出」しなくてはなりません。(ただ、実際にはそのようなものは残っていないでしょう)♯担当医に直に確認してみてください。
「3.抗がん剤は何になると思われますか?」
⇒アンスラ+タキサンとするかTCでしょう。