[管理番号:4525]
性別:女性
年齢:30歳
田澤先生、はじめまして。
よろしくお願い致します。
いつも、こちらのQ&Aを参考にさせて頂いています。
術後の治療について教えて頂きたいです。
妻(30歳)は今年3月(上旬)日に(海外の病院にて)右乳房温存術を受けました。
病理検査の結果、
非特殊型浸潤性乳管がん レベル2
腫瘍の大きさ 1.5*0.7cm
センチネルリンパ節3個取って転移なしでした。
ER(+)90% 強陽性
PR(+)中強陽性
HER2(2+)(FISH検査結果待ち)
Ki67 (+30%)
P53 (+10%)
TOP2A (+10%)
AR (+20%) 弱陽性
CK5/6 (-)
E-cadherin (3+)
EGFR (-)
私の質問は:
1、Ki67値で見ると、ルミナールAかBか特定できないと思います。
化学療法の上乗せ効果を評価したい場合、OncotypeDXを受ける必要があるのでしょうか。
2、妻はまだ海外に住んでいます。
現地ではOncotypeDXの受付はできないため、5月頭に日本に戻ってOncotypeDX検査を行う予定です。
6月に結果が出ることとして、手術から3ヶ月という長い期間が「無治療」になってしまいます。
解決案として(温存術と放射線治療がセットで実施するはずって思っているので、一日も早く術後治療に入りたい為)来週頭から現地にて5週間の放射線治療を先に受けたいです。
先生のご意見は?
3、放射線治療の途中でもし必要であれば、治療を一時停止し、日本に戻ってから続けて受けても大丈夫ですか。
4、OncotypeDXの結果による、やはり化学療法が必要になった場合、6月から化学療法を受けることは遅すぎますか。
5、先生は、上記の病理結果を見て、(ER/PR/HER2/Ki67以外の値に)気になることはございますか。
6、上記の病理結果から、再発率と生存率はどうなりますか。
ご回答の程よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
術後治療を慌てる必要はありません。
化学療法を迷っている(場合によってはOncotypeDX待ち)場合には「放射線照射先行」として、術後「3~4カ月後」から化学療法が開始となることはザラにあることであり、それは全く問題ありません。
♯どうしても気が焦るならば「ホルモン療法を開始」しておけばよいでしょう。
抗癌剤や放射線と一緒でも何ら問題ありませんし、(どうしても併用が嫌なら)その間はいったん休止してもいいわけです。(細かいことに拘る必要はありません)
pT1c(15mm), pN0, luminal
完璧な早期癌です。
余計な心配をする前に、まずはそれで一息つきましょう。(何も慌てる要素は一切ありません)
「1、Ki67値で見ると、ルミナールAかBか特定できないと思います。
化学療法の上乗せ効果を評価したい場合、OncotypeDXを受ける必要があるのでしょうか」
⇒その通りです。
「解決案として(温存術と放射線治療がセットで実施するはずって思っているので、
一日も早く術後治療に入りたい為)来週頭から現地にて5週間の放射線治療を先に受けたいです。先生のご意見は?」
⇒それでいいと思います。
ホルモン療法の併用も考慮してみましょう。
「3、放射線治療の途中でもし必要であれば、治療を一時停止し、日本に戻ってから続けて受けても大丈夫ですか。」
⇒放射線の場合は、「照射野の微妙な違い」があるので、放射線科医と相談が必要です。(可能なら1施設がいいでしょう)
「4、OncotypeDXの結果による、やはり化学療法が必要になった場合、6月から化学療法を受けることは遅すぎますか。」
⇒全く問題ありません(冒頭のコメント通りです)
「5、先生は、上記の病理結果を見て、(ER/PR/HER2/Ki67以外の値に)気になることはございますか。」
⇒ありません。
「6、上記の病理結果から、再発率と生存率はどうなりますか。」
⇒HER2が決まらないと(統計ソフトでは)出せません。
HER2が陰性だと仮定すると
10年再発率 生存率
ホルモン療法単独 21% 91%
ホルモン療法+化学療法 14% 94%
♯但し、上記数値はルミナールAとBが合わさっているので正確な上乗せにはなっていません。(OncotypeDXで確認しましょう)
つまりルミナールAなら上乗せは5%以下となるし、Bなら10%以上となると予想します。
質問者様から 【質問2】
田澤先生こんにちは。
先日は質問にお答え頂きありがとうございました。
またお聞きしたいことがありますので、教えて頂けますでしょうか。
(追加の情報:FISHの結果ではHER2が陰性になります)
①術後の病理結果に「下部切除断端(の一部)に導管上皮の軽度の異常増殖」が書いてあります。
それは「断端陽性」と同じ意味ですか。
乳がんの再発及び転移リスクにどの程度影響しますか。
術後の治療に、断端の状況を如何配慮すれば良いですか。
②ホルモン療法を受ける間、エストロゲンの量を抑制するために、性生活を控えた方が良いですか、または無関係ですか。
③30歳のホルモン療法は、
閉経の確率はどのぐらいですか。
確実に体に悪い影響をしますか。
代表的な影響は?
④ホルモン療法が終わった後、生理が再開になっても、追加で薬を飲む必要がないでしょうか。
どうぞよろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「①術後の病理結果に「下部切除断端(の一部)に導管上皮の軽度の異常増殖」が書いてあります。それは「断端陽性」と同じ意味ですか。」
⇒癌ではないようです。(断端陰性)
「乳がんの再発及び転移リスクにどの程度影響しますか。」
⇒まずは「局所」と「全身」に明確に分けて考えてください。
「断端はあくまでも局所再発にのみ影響」するものであり、「遠隔転移再発には無関係」です。
♯ただし、今回は「断端陰性」のようですが…
「術後の治療に、断端の状況を如何配慮すれば良いですか。」
⇒もそも断端陽性の場合には…
純粋にBoost照射を加えるだけです。(全身療法とは無関係)
「②ホルモン療法を受ける間、エストロゲンの量を抑制するために、性生活を控えた方が良いですか、または無関係ですか。」
⇒無関係です。
「③30歳のホルモン療法は、閉経の確率はどのぐらいですか。」
⇒もしもLH-RHagonistを併用すれば(すると思いますが)必ず(施行中は)生理がとまります。
ただ、ほぼ確実に終了後、再開します。
「確実に体に悪い影響をしますか。代表的な影響は?」
⇒更年期障害です。
「④ホルモン療法が終わった後、生理が再開になっても、追加で薬を飲む必要がないでしょうか。」
⇒ありません。
質問者様から 【質問3】
田澤先生こんにちは。
先日は質問にお答え頂きありがとうございました。
放射線療法(25回+5回Boost)が終わりました。
日本に戻って、化学療法を検討しているのです。
近くの病院の先生から、化学療法をせず、ホルモン療法の中に、より効果が強いLH-RHagonist
+タモキシフェンをお勧められました(効果について、「LH-RH +タモキシフェン」は化学療法のCMFと
ほぼ同じって説明しました)。
Oncotypeをしても、グレイゾーンに入ってしまう可能性が高いから、
お勧めしませんでした。
化学療法について、田澤先生はどう考えますか。
もし化学療法をしたい
場合、具体的にどの療法がお勧めですか。
(補足:妻はアレルギーしやすい体質で、胃はちょっと弱いです)
お忙しいところ恐縮ですが、教えて頂けますでしょうか。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「Oncotypeをしても、グレイゾーンに入ってしまう可能性が高い」
⇒多くの医師が勘違いしているようです。
OncotypeDXにグレーゾーンなどありません。
「中間リスクは(グレーゾーンではなく)化学療法による上乗せは無い」のです。
♯唯一「高リスクとなった時のみ」化学療法の適応となります。「お知らせ」内の『Oncotype DXで勘違いしていませんか??』を参照のこと
「化学療法について、田澤先生はどう考えますか。」
⇒前回の回答と何らかわるところはありません。
OncotypeDXしない限り「何ともいえない」わけです。
「もし化学療法をしたい場合、具体的にどの療法がお勧めですか。」
⇒TCです。