[管理番号:2334]
性別:女性
年齢:41歳
乳がんを告知されてから病気ばかりの自分に落ち込みましたが、こちら、田澤先生のご回答にずっと励まされ続けております。
自分には当てはまらないケースでも、元気をもらっております。
今回は術後治療についてお伺いいたしたく思っております。
私のケースですが、
既往歴:膠原病(SLEに近い):現在は寛解中、2011年11月頃から投薬なしになってます。
皮膚症状、肺症状なし
大腿骨頭壊死(両足):経過観察中(まだ手術は受けておりません)
乳がん:2015年11月(中旬)日に告知、同年12月(下旬)日に左乳房温存手術を受けました。
術前の化学療法はなし。
超音波:左乳房BA領域に20x19x20mmの腫瘤
マンモグラフィー:左乳房に腫瘤影、MLOでM領域、CCでI領域
造影CT:20x25mm程度の腫瘤
2016年1月(中旬)日に病理検査結果が出ました。
私の読み方が間違っててはいけないのでそのまま記載します
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Invasive ductal carcinoma, It. breast
(scirrhous carcinoma)
f/s, grade3(structure-3,nuclear-3,mitosis-3), EIC (-), n(-) max dimension of the invasive lesion:2.7cm #.sentinel nodes(0/3)*(micrometastasis(1100μm))
Allred score:ER-TS(8/8), PgR-TS(5/8)=PS(3)+IS(2), HER2(3+)on IHC,CK5/6(-),
Ki67 index:35%
病理コメント:
切除検体のほぼ中央部に径2.7cm程度の浸潤病変を認めます。
腫瘍は硬化した線維組織を伴い、壊死もみられます。
腫瘍は異型度が高く核分裂像が多数存在しており、脂肪織および真皮内へ浸潤しています。
また、腫瘍は深部断端のごく近傍までみられます。
免疫染色結果は追記します。
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ステージⅡa。
術後の診察時に筋肉にまでいっていた、胸骨に浸潤の可能性・・・という言葉が出てきて、
これは大変ショックでした・・・
そして病理検査の結果に再発転移の恐怖が頭をよぎりました。
一人暮らしで家族は遠方なので抗がん剤治療への不安もありました。
・・・が、今は気持ちを切り替え、
使える武器がたくさんある!
全部の薬がとても効きやすそう!
・・・と、自分を納得させ、前向きな気持ちになれました。
術後の治療は、
最初に放射線治療25~30回(皮膚の状態が良ければ30回打ちたいそうです)
その後、抗がん剤(TC療法)+ハーセプチン、
最後にホルモン療法
・・・ということになっております。
放射線が最初なのは、
照射する場所、筋肉や胸骨の状態(がん細胞が残っているかもしれない)、心臓への負担を考えてのことのようです。
TC療法は病理結果など総合的に考えてのことだと説明を受けましたが、
リンパ節転移がない(センチネルリンパ節に微小転移のみ)ことが大きいのでしょうか。
治療の順番や抗がん剤の種類に驚きました。
田澤先生ならどのような治療を選択されますでしょうか?
今の主治医の事は信頼しているのですが、
田澤先生に背中を押していただけたらもっと頑張れる気がします!
乳房に残っているかもしれないがん細胞、
全身に飛び散ってしまったかもしれないがん細胞、
一刻も早く治療を開始したいのですが
手術の傷の一部が少し壊死してしまい、現在は治るのを待っている状態です。
術後、治療が始まるまでの期間が長いのは好ましくないですよね・・・
最初は怖かった抗がん剤なのに、今では治療開始が待ち遠しいです・・・
大変お忙しい中ご迷惑をおかけしますが、ご回答いただけたら嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT2(27mm), pN1mi, luminalB(HER2陽性), NG3
「術後の診察時に筋肉にまでいっていた、胸骨に浸潤の可能性・・・という言葉が出てきて」
⇒これは質問者の勘違いのようです。
おそらく「腫瘍は深部断端のごく近傍までみられます」という記載をいっているのでしょうが、それは『胸骨ではなく、胸筋への浸潤の可能性』です。胸骨と胸筋では大きな違いです。
「深部断端に近い」とはいっても、「断端陰性」なのだから「胸筋浸潤などありません」ご安心を。
「術後の治療は、最初に放射線治療25~30回(皮膚の状態が良ければ30回打ちたいそうです)その後、抗がん剤(TC療法)+ハーセプチン、最後にホルモン療法」
⇒抗HER2療法として「TC+HERを選択」には賛成です。
ただし、「放射線治療が最初とか30回」というのは「深部断端を過剰意識」し過ぎのように思います。
「放射線が最初なのは、照射する場所、筋肉や胸骨の状態(がん細胞が残っているかもしれない)」
⇒過剰反応です。
外科医であれば、「深部断端に自信を持つべき」です。
「TC療法は病理結果など総合的に考えてのことだと説明を受けましたが、リンパ節転移がない(センチネルリンパ節に微小転移のみ)ことが大きいのでしょうか。」
⇒私も全く同意見です。
「田澤先生ならどのような治療を選択されますでしょうか?」
⇒普通に、
TC+HERx4⇒放射線⇒HER単剤x14とします。
「乳房に残っているかもしれないがん細胞、全身に飛び散ってしまったかもしれないがん細胞」
⇒想像力を発揮し過ぎです。
私から見たら「全く普通の状態」に思います。
「術後、治療が始まるまでの期間が長いのは好ましくないですよね・・・」
⇒考え過ぎです。
3カ月以内に始めるようにしましょう。
質問者様から 【質問2】
前回は丁寧なご回答ありがとうございました。
田澤先生のお言葉のおかげで、
抗がん剤が始まるまでの不安な気持ちが全くなくなりました!
今回も術後の治療について、
田澤先生ならどのようにされるかお伺いできればと思っております
治療の経過ですが
●2015年12月(下旬)日
温存手術
●2016年1月末
手術跡(胸骨近傍)が壊死
●2月末
2回に分けて再縫合
●3月(上旬)日
TC療法+ハーセプチン、スタート
●3月(中旬)日ごろ
再縫合箇所の再度壊死
(壊死部は5.5cm×4cmほど)
●5月(上旬)日
TC療法4回目
(以降、3週間おきにハーセプチン継続中)
●6月(下旬)日
植皮手術(胸骨近傍)
●7月(下旬)日
ハーセプチン8回目
リュープリン開始
フェマーラ開始
●8月(上旬)日
放射線治療スケジュール組立予定
放射線治療中はハーセプチン休薬
TC療法中はおそらく壊死部分から感染症にかかったようで
(投与後1週間目くらいにひどく痛み、発熱しました)
3、4回目はジーラスタを使用し、
なんとかスケジュール通りに4回完遂することができました。
植皮術後の皮膚の状態は順調で、皮膚科の先生には
もういつでも放射線治療をスタートして良いと言われております。
前回の質問では治療の順番についてお伺いしたのですが、
主治医の考えは、
心臓への影響を心配してのことだったと分かりました。
先に放射線をやってしまってからハーセプチンをしたかったようです。
胸骨近傍へも当てるから…とのことです。
結局は植皮することになってしまったため
TC療法が先行になり(術後3か月以内にスタートするため)、
ハーセプチンを中断してまで
放射線治療をするかどうか悩んでらっしゃいました。
最終的には私の希望で放射線治療を行うことにしました。
植皮部分に潰瘍が出来ることや
膠原病で予定回数をこなせないかもしれないことは承知済みです。
しかし、ハーセプチンを中断することがいいのか…
田澤先生なら、放射線治療はやめてハーセプチン中断を避けますか?
それともハーセプチンを一旦中断して放射線治療を行いますか?
あと、ホルモン療法は
ノルバデックス+リュープリンだと思っていたのですが、
主治医の説明では
私の場合はフェマーラ+リュープリンの方が良いとのことでした
(現在42歳、TC療法後、現段階で生理は再開していません)
放射線治療を行うかどうか、
ノルバデックスかフェマーラか、
ノルバデックスの場合は次回1か月後から変更することはできるか…
骨頭壊死もあるのでフェマーラでの骨密度低下が気になるところです。
もちろん、フェマーラの方が良い!と断言できるのであれば、
迷うことはないのですが…
自分が予想していたことと違っていたので
田澤先生ならどのような選択をされるのかな…と、
ご意見をお伺いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
皮膚壊死ですか。
質問者には不運なことでしたが、このQandAを見て術後の「皮膚壊死」などという「ありえない合併症」に心配されることがないように敢えてコメントさせてもらいます。
通常、創縁の「つきが悪い」ようなことは稀にあるにしろ、「皮膚壊死で皮膚移植」などありえない話です。
私自身は、自分の手術は勿論、今までかかわった手術で「皮膚壊死など経験した事もない」ことです。 質問者には不運なことでしたが皮弁の作成に問題があるのだと思います。
「胸骨近傍へも当てるから…とのことです」
⇒これは「胸骨傍リンパ節:parasternal lymph nodes:PS」のことでしょう。
質問者は「胸骨へ浸潤?」など余計な心配をされているようですが、ターゲットは胸骨ではありません。
「PS」は内側に腫瘍がある際に(おそらく質問者は内側に腫瘍があるのだと想像します)照射を検討する部位です。
通常の考え方では「内側に腫瘍があって、腋窩リンパ節転移がある場合」にPS照射を検討します。
○ただし、質問者は「微小転移のみ」なのだから、『そもそもPS照射など不必要』と私は思います。
「ハーセプチンを中断してまで放射線治療をするかどうか悩んでらっしゃいました。」
⇒担当医は「何か勘違い」をしているようです。
通常の考え方として「化学療法(TC+HER)」⇒「放射線」⇒「ハーセプチン単剤」となります。
そもそも「ハーセプチンが終了(1年)するまで」放射線治療をしないことは常識外です。
「ハーセプチンを中断してまで放射線治療をする」と言う表現は寧ろおかしく、正しくは(放射線照射するのであれば)『是非ハーセプチンを中断して放射線治療をすべき』となります。
「最終的には私の希望で放射線治療を行うことにしました。」
⇒当然です。
「田澤先生なら、放射線治療はやめてハーセプチン中断を避けますか?それともハーセプチンを一旦中断して放射線治療を行いますか?」
⇒上記通りです。
ハーセプチンを中断して放射線治療をする事は「寧ろ、当然」です。
「主治医の説明では私の場合はフェマーラ+リュープリンの方が良いとのことでした」
⇒適応外治療です。
本来、化学療法閉経では「閉経前」のホルモン療法(タモキシフェン)をすべきです。
担当医は(海外での臨床試験の結果「タモキシフェン+LH-RH vs. エキセメスタン+LH-RH で後者が優れていた」を基にして)そのような治療「フェマーラ+リュープリン」を選択しようとしているのだと思いますが、「日本の保険診療を守るべき」です。
「田澤先生ならどのような選択をされるのかな」
⇒温存乳房照射(PSは照射しません)⇒HER単独となります。
またホルモン療法としては当然「タモキシフェン+LH-RHagonist」とします。