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術後の病理結果について

[管理番号:6354]
性別:女性
年齢:43歳
いつも田澤先生の明確なアドバイスを心の拠り
所にさせて頂いております。
術後病理結果の疑問点についてご教示願います。
【術前診断】
・非浸潤性乳管癌
・広範囲に広がりあり(8×3×3cm)
【術後病理の結果】
・pT1aNOMO
・浸潤径 0.5×0.5cm
・占拠径 1.0×0.9cm
・核グレード1
・ER 陽性
・PgR 陽性
・HER2 陰性
・Ki…割が小さくて出せなかったとの説明
・Resected
marjin:negative(marjin2mm)
・周囲の脂肪組織や脈管侵襲は明らかではない
《皮下乳腺全切除(乳輪乳頭切除)・自家組織による同時再建》
【質問】
① Ki…「割が小さくて出せなかった」との説明でしたが、よくあることでしょうか。
どのように理解したら良いのか当惑しております。
セカンドオピニオン等で他の機関で値を出して頂くことは可能か、また、その必要性はありますか。
② 術前診断で、非浸潤性だったため、皮下乳腺切除術となりましたが、結果、浸潤癌でした。
術前から皮膚を残すことに不安がある旨伝えておりましたが、「問題なし」との主治医の判断でした。
皮下乳腺切除術は全摘とは違う、という説明を読んだことがあり、浸潤癌に対して適応があったのか不安です。
全摘と皮下乳腺切除術の違い、田澤先生の見解を教えてください。
また、残した皮膚や生検あとから局所再発する可能性はどのくらいありますででょうか。
これから気を付けるべき点はありますか。
③田澤先生の説明に「マージン2cm」とよく出てきます。
それと比較するとmarjin2mmというのは心許なく不安になりました。
今回のmarjin2mmはどのように解釈したらよろしいのでしょうか。
不安要素となりますか。
④MRIによる広がり診断によって全摘となりましたが、実際には占拠径1cmと充分に温存適応術サイズでした。
元々「温存可能でも根治性が高まるなら全摘で」と考えていたので、私からこの点を指摘することもなく、主治医から特段の説明はありませんでしたが、このような違いは間々あることなのでしょうか。
1cmのしこりに対して全切除をされる方もいらっしゃいますか。
⑤「脂肪組織や脈管侵襲は明らかではない」というのは、脈管侵襲があるかもしれない…ということでしょうか。
⑥今後の治療法についてホルモン療法5年を勧められています。
ER等の%は説明なし。
(鳶卵大の子宮筋腫あり)田澤先生の最善と思われる治療法を教えてください。
ホルモン治療は、服用している期間だけ予防効果があるのか、その後に於いても恩恵があるのか教えてください。
どうぞ宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
物事はシンプルに考えましょう。
難しく考えることは、(実際には)「極めて簡単な物事」を、(かえって)「難しく見せている」にすぎないのです。
「セカンドオピニオン等で他の機関で値を出して頂くことは可能か」
⇒難しいようです。
「また、その必要性はありますか。」
⇒不要です。
 なぜなら、そもそも「5mm以下では抗癌剤の適応がない」からです。
 ☆Ki67は「抗癌剤が必要なのか?」のためにあるのであって、最初から「抗ガン剤が必要の無い」ケースでは全く無意味です。
「全摘と皮下乳腺切除術の違い、田澤先生の見解を教えてください。」
⇒殆どが非浸潤癌なのだから皮膚を残しても問題ありません。
 浸潤癌が(その真上の)「皮膚付近の皮下脂肪」もしくは「皮膚浸潤」が疑われる場合には、その真上の皮膚も切除した方がいいと言うだけの話です。
「また、残した皮膚や生検あとから局所再発する可能性はどのくらいありますででょうか。」
⇒局所再発に…
 そもそも「再発率」などありません。
 ほぼゼロでしょう。
「今回のmarjin2mmはどのように解釈したらよろしいのでしょうか。」
⇒完全な勘違いをしているようです。
 マージン2cmは、あくまでも「温存手術(部分切除)」だけの話です。
 全摘の場合には、そもそも乳腺を全摘しているのでマージンは無関係です。
「このような違いは間々あることなのでしょうか。」
⇒MRIの拡がり診断でしょう。
 勿論、あります。
「1cmのしこりに対して全切除をされる方もいらっしゃいますか。」
⇒勿論。
 術式は最終的に「本人の優先度が何処にあるのか?」で決まるのです。
「脈管侵襲があるかもしれない…ということでしょうか。」
⇒考え過ぎです。
 たとえ話をすると…
  銀行では、閉店後にお金が1円単位で完全に一致しない限り、「大捜索」が始まるそうです。
  すぐに見つかればいいのですが、見つからない場合には「延々」と続きます。
  「ある」場合には、「ここに、あった!」で済むのですが、「なかなか見つからない」場合には、「ここには本当にない」と断言することは非常に大変な作業なのです。(銀行中の大掃除を3回位しなくては断言できないでしょう)
  この「例え」解りました?
   つまり、「無い事を無い」と証明することは容易ではないということです。
「⑥今後の治療法についてホルモン療法5年」
「田澤先生の最善と思われる治療法を教えてください。」

⇒私なら…
 無治療とします。(現在、私はpT1aでは無治療を勧めています)
 ☆術後補助療法(再発予防の治療)は「メリット」と「デメリット」のバランスで決まります。
  簡単に言えば「5mmの浸潤径」では「メリット(期待される再発予防効果)」が「デメリット(子宮体癌のリスクや、ホットフラッシュなどその他の有害事象、内服の経済的負担、通院の社会的負担など)」を上まらないのではないか?と思うからです。
「ホルモン治療は、服用している期間だけ予防効果があるのか、その後に於いても恩恵があるのか教えてください。」
⇒その後にも恩恵はあります。
 ただ、ホルモン療法をそもそもすべきなのか?
 質問者が(有害事象は全て覚悟の上で)「1%でも再発率を下げたい」と考えるなら、それでもいいでしょう。(最後は本人の価値観なのです)