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局所再発全摘手術後の放射線治療等について

[管理番号:1725]
性別:女性
年齢:67歳
 
田澤先生 はじめまして
 
3ヶ月程前に田澤先生のブログに出会いトモセラピーを初めて知りました。
同時に田澤先生のQ&Aを拝見しまして、日本にもこんなに患者目線にたって医療活動をして下さっているお医者さんがおられるのだ!と感激しております。ただただ頭の下がる思いで一杯です。
今回はご多忙のところ大変恐縮ですが妻の乳癌、局所再発後の放射線治療等について、ご相談させて下さい。
よろしくお願い致します。
 
まず経緯の概要を申し上げます。(いささか長くなって申し訳ありませんが)
近畿在住ですが、一昨年(2013年)の10月初旬に左胸にしこりを自覚、
翌日国立大学付属病院で受診し、触診、エコー検査で乳癌と診断。
一連の検査を受け、病理検査の結果は下記の通りです。
2013年10月 [マンモトーム採取 病理検査結果]
左乳房上内側部乳癌
cT2N0M0 StageⅡa サイズ23mm ER:100%、PR:60%
Her2:(2+ (DISH:2.23)) 陽性、Ki67:27.9%
充実腺管癌、mSBR grading:grade Ⅲ (3-3-2)
Ⅰ術前化学療法 (2013年11月~2014年4月)
① AC施行、効果なく3回で中止。
② TCbH(ドセタキセル、カルボプラチン、ハーセプチン)
6回の予定で、3回まで受けるも4回目は血小板が低下し中止。
  早急に全摘手術をし、手術後残りのTCbHを3回をやると言わ
  れました。
 
この間、腫瘍は体積的に30%に縮小(70%消失)し一定の効果が見られましたが副作用として、重篤な手足症候群に苦しみ、又、3回目のTCbHで右腎盂尿管狭窄で水腎症を発症しステント挿入、半年後に抜去という出来事もありました。更に両眼に涙腺狭窄が発症。
 
手術は温存希望も主治医(乳腺外科)の先生は腫瘍が乳頭に近いので全摘ですと言われ、傷口は将来的に目立たなくなりますかという質問にはケロイド状になる人もいます。
との返事で??? 気持が揺らいでしまいました。
そこでラジオ波焼却とかで温存手術をやっている都内のクリニックでセカンドオピニオンを受けました。
 
Ⅱ 温存手術実施(都内のクリニック) (2014年5月)
紹介状とCD(MRI画像)を持参の結果
① ラジオ波焼却法より通常の外科手術の方が良い。
 
② 乳頭も残しほとんど変形なく、傷口も暫くすれば全然分から
なくなるように腫瘍を除去できる。
 
③ 麻酔も局所麻酔ですので日帰り手術です。お任せください。
 
④ センチネルリンパ節検査は胸に傷が付くし状況から判断して不要
です。
以上自信たっぷりに言われ、このクリニックで手術をお願いすることに
決めました。
 
大学病院の主治医の先生にはクリニックで手術を受けることを報告し
ご了解をいただきました。
2004年6月中旬 [温存手術 病理検査結果]
組織診断: 浸潤性乳管癌、硬癌(2a3>2a1) 15x13x14mm、
波及度:f、浸潤様式:INP-γ、脈管浸襲:ly 1、v 0、
乳管内進展:(+)
SBR:grade 2 (管腔形成 2,核異型 3,核分裂数 1)、grade 2
(核異型 3、核分裂数 1)、
組織学的治療効果判定:Grade 1b (変性、核濃縮)
癌を認める割面:E、F、I、J 切除断端:全て(-)
ER:陽性(90%以上)、PR:陰性(1%未満)、 Her2:(1+)陰性
      
この結果を踏まえてクリニックの先生は
① 残りの抗癌剤(TCb)投与は副作用がきつ過ぎるのでやらない方
が良く、ホルモン療法(5年間)とハーセプチン1年間で良い。
② 放射線治療(以後放治と略)は心臓や肺に悪影響を及ぼすのでやら
ない方が良いのでは、特に患部が左側なので心臓への悪影響が
心配。もし私が主治医であればやらないです。
③ これまでの病院には行きにくいでしょうから地元の別の大学病院
を紹介しましょう。
ということで紹介していただいた地元の別の大学病院で術後の補助療法を始めました。
元の大学病院に戻らなかった理由につきましては字数制限の関係で省略します。
 
次に、放治ですが、温存手術は放治が前提との認識は持っていたのですが、クリニックの先生の意見を聞き、そんなものなのかな~と思うようになり、またネットでデータ解析上温存手術後の放治の上乗せ効果はわずかであるとの資料を目にし、放治は必ずしもやらなくて良いのだと全く誤った考えを持つようになってしまいました。
Ⅲ 別の地元大学病院での治療と局所再発(2014年6月~2015年5月)
 
新たに主治医になっていただいた先生は、まずは放射線治療ですね、と仰って下さいましたが、上記しましたように出来れば放治は避けたいという気持ちになっていましたので、例のネットの解析資料をお見せし、出来れば放治は避けたいのですがという気持をお伝えしたところ、無理には薦めません、患者さんの希望どうりでいいです。ということで放治は取り合えず中止。
 
2014年6月からフェマーラの服用とハーセプチンの静注(1年間)を開始。
秋頃、手術した側の胸がちりちり痛み始めましたので、再発ですかとお聞きしましたところ手術から半年位なので神経が出だしてそれが痛むのでしょう、とのことで、特にエコーでの診察はしていただけませんでした。この時、診て頂けていたならもっと早い段階で再発が発見されていたかも知れません。
 
今年の3月中旬に手術側の胸にしこりを自覚しましたので翌々日、主治医の先生に診ていただいたところ軽く触診しただけで「大丈夫だと思いますよ、再発にしては早すぎるし。まあ念のためMRIの予約をしておきましょう。3週間後です。」とのことでエコーでは診ていただけませんでした。
 
2015年4月 MRIの結果はやはり局所再発、7ヶ所 MAX 7mmということで、その場でエコー見ながら穿刺吸引。又、この日はハーセプチン静注の日でしたが、効果が無いようなので止めましょう ということで残り3回を残して中止。
2015年5月 [局所再発穿刺吸引 病理検査結果]
① 索状や小型~中型の結節状を呈して浸潤する硬癌を認める。
② 既往の乳癌(2014年5月に他院にて左乳房部分切除施工):報告書に
  よれば硬癌と組織型、ER/Pgrの染色濃度が同じであり、部位
が近く(既往:CA、今回:C)、既往の乳癌はリンパ侵襲を伴っ
ていたことから、局所再発と考える。
③ Tumor Grade 3 (3、2、3)
④ 免疫染色 ER:>10%強、PgR:0%、
  HER2:2+DISH1.84)、CK19:++、MIB-1:M-G2(20-50%)、
PHH3:15/10HPF,25  
5月 CT検査 ⇒ 問題なし
これらの結果を踏まえて主治医の先生は全摘手術。その後の補助療法は
Nab-PTX④⇒FEC④⇒ET とのこと。
ここで、手術は内視鏡下での手術のほうが整容性が高いのかなと考え、当院で手術を受ける前に一度、内視鏡下での手術ができる病院で意見を聞いてみようと思い関東地区の病院にセカンドオピニオンをお願いしました。
Ⅳ 関東地区の病院で全摘手術と術後補助療法 2015年7月~11月
2015年5月 関東地区の病院 乳腺外科でセカンドオピニオンを受診。
3日間でエコー、MRI、PET-CTを受けました。
 
こちらの病院の検査機器は解析度が非常に高く、持参した地元の大学病院撮影のMRIには映っていなかった腫瘍が見つかり、それが一部胸筋に接触しているようだとか、エコーではリンパに転移が有るようだとか新たな発見がありました。PET-CT(感度 5mm)では遠隔転移は発見されませんでした。
 
これらの結果を踏まえ、乳腺外科の先生はまず手術より抗癌剤治療が優先、アブラキサン+ハーセプチン+パージェタの組み合わせが良いと思うがちょっと迷う点があるので当院の腫瘍内科の先生とも相談してみましょうということで 6月 腫瘍内科を受診しました。そこでの方針も同じで、遠方なので3か月入院と決定。
6月中旬から3カ月入院ということで準備万端整え、いよいよ明日入院という日になって突然腫瘍内科の先生から電話がかかってきて、これまでの治療経過を改めて詳査したところ抗癌剤はあまり効いていないようなので手術が優先です。ということで7月手術となりました。
 
2015年7月中旬入院 翌日センチネルRI法 翌々日手術
手術結果
全摘(通常の切開法)、出血量20ml(通常50mlなので少なく出来た)、センチネルにしっかり転移有、腋窩リンパ節郭清レベルⅠ&Ⅱ(リンパ節郭清したが浮腫の心配はないと思うとのこと。)、
画像で一部の腫瘍が大胸筋に接していたようなので胸筋を薄く(約5mm)そぎ取った。(後日、パソコンの画像を示して実は接していなかったのでそぎ取ったのは過剰でした。申し訳ありませんでしたとのコメント有)
2015年8月 [全摘腫瘍の病理検査結果]
ER:+(90%)、PR:+(10~20%;(弱)、HER2:+2(Dish
1.54)、Ki-67:30~40%(浸潤先端部)
組織型:硬癌>充実腺管癌、浸潤部=15x11x27mm、浸潤の範囲:
g,f、脈管侵襲:ly1,v0(4段階評価;0-3)、核グレード:Grade 3
(核異型スコア=3、核分裂スコア=3) (参考)Nottingham
Histological Grade 3(score:
tubule=3,atypia=3,mitosis=3)、 随伴するDCIS:Minimal
(~25%)、
切除縁:断端露出なし(negative) 組織学的治療効果判定:Grade0
(効果(ほとんど)なし)数か所に散在(multicentric)、大胸筋に接す
るも筋内への浸潤はなし。
郭清腋窩リンパ節:レベル1&2 レベルⅠ= 0/11、レベルⅡ=
0/2 いずれにも
転移を認めません。
センチネルリンパ節:(+)1/1  転移癌はリンパ節の大半を置換し節
外に及んでいます。
 
2015年9月開始 [術後の補助療法]
外科手術が終了したので当院腫瘍内科に移行。
腫瘍内科の先生は冒頭に、これまで随分化学療法をやってきて効果が無かったので正直効く薬がありません。再発率は80~90%でしょう。
 
再発すれば治りません。と宣告され、やったとしても効果は無いことはないが10%以下でしょう。どうしますか? とたたみかけられ、少しでも効果があるのであればお願いします。と返答し、入院してアブラキサン 12回/毎週に決定。
(抗HER2療法の適応はハーセプチンだけでHER2は陰性化しているので不要とのこと。
アブラキサン終了後はホルモン療法。又、放射線治療は通常の適応ではないがセンチネルが節外浸潤していたこともあり局所再発のリスクが高いので推奨するとのことで、補助療法終了後に受ける予定で入院。
現在、アブラキサン静注を9回終了した段階です。
 
Ⅴ[ご相談したいこと]
① 放射線治療は受けた方がよろしいでしょうか?
 
② トモセラピーであれば腕の浮腫は防げますでしょうか?
(実は補助療法の入院当日に腫瘍内科の先生から放射線治療
では 100%浮腫になります。と突然言われショックを受けて
います。
 
③ もしトモセラピーで浮腫を防げるようであれば田澤先生の病院で
トモセラピーを受けることが出来ますでしょうか?
又、遠方ですので入院希望です。
 
④ 放射線治療は受ける必要がある場合、いつまでに開始すべきで
しょうか?
 
⑤ アブラキサン終了後はホルモン療法だけでよろしいでしょうか?
 その場合何がよろしいでしょうか。フェマーラは約1年続けた
だけで現在中止状態です。
 
⑥ アブラキサン終了後に推奨される補助療法はありますでしょうか?
例えば抗HER2療法は?
以上 よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
 
あまり個人的な感想は書かない方が差し支えがないと思うので、記載は以下の「万感の思いを込めた」一言で済ませます。
『(普通に)手術先行して、(普通に)術後HER2療法していたら、と思うと残念です』
受診する病院が、全て「おかしな治療」をしているようにしか思えません。

回答

 
「放射線治療は受けた方がよろしいでしょうか?」
⇒当然受けるべきです。
 局所再発した訳ですから、「局所だけでも」抑え込める可能性はあります。(逆に再再発などとなったら、それどころではなくなります)
 
「トモセラピーであれば腕の浮腫は防げますでしょうか?」
⇒これは「放射線」というよりも「手術」に関係してきます。
 私にはその「解析度が高い機器を備えた施設の医師」の「手術精度」を評価することはできません。
 それは、その「執刀医」に聞いてみるべきでしょう。
 ○普通に考えれば「大丈夫」な可能性が高いと思いますが…
 
「もしトモセラピーで浮腫を防げるようであれば田澤先生の病院で トモセラピーを受けることが出来ますでしょうか?」
⇒(浮腫を防げるかは手術精度次第なので不明ですが…)
 その場合には(私は介さずに)「直接、当院放射線科 は○医師に紹介」してください。
 「入院での照射」も行っています。
 
「放射線治療は受ける必要がある場合、いつまでに開始すべきでしょうか?」
⇒特に決まりはありません。
 化学療法終了後、「最低3週間」は空けなくてはありません。
 
「アブラキサン終了後はホルモン療法だけでよろしいでしょうか?  その場合何がよろしいでしょうか。フェマーラは約1年続けただけで現在中止状態です。」
⇒再発といっても「局所再発」だから「ホルモン療法単剤が妥当」と言えます。
 フェマーラの次として「エクセメスタン」でいいと思います。
 
「アブラキサン終了後に推奨される補助療法はありますでしょうか? 例えば抗HER2療法は?」
⇒そもそも「アブラキサンの毎週投与」は「適応外使用法」です。乳癌では「3週毎投与しか認められていません」
 そのような「適応外使用」は勘弁して欲しいというのが正直なところで申し訳ありませんが、「それ以上、考えられません」
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

管理番号 1725 で妻の乳癌についてご相談させていただいた者です。
 
お忙しい中、早速お心のこもったお返事をいただき本当にありがとうございました。
先生がご回答下さった内容を踏まえて、より理解を深めるため若干の追加質問と今後のことについてご相談させて下さい。
 
まず、田澤先生が万感の思いで
『(普通に)手術先行して、(普通に)術後HER2療法していたら、と思うと残念です』
と仰っていただいた事、本当に心に染み入ります。
 
妻がこれまで他の病院で受けてきた説明、治療がどうしてこんなにも先生の「(普通に)」とかけ離れているのか! と愕然としています。
一方で、先生の「(普通に)」の治療を他病院で受ける事の難しさを痛感もしています。
例えば「(普通に)手術先行して、」にしても、初めてしこりを自覚して駆け込んだ地元の国立大学付属病院では術前の化学治療をやることが基本方針のようで、妻の場合も腫瘍の病理結果が出た時点で、予後は術前でも術後でも変わりません。なので①腫瘍を出来るだけ小さくする。
 
②抗癌剤の効果を確認する。③グレードが3で悪性度が非常に高く、又Ki67が27.9%で増殖が盛んなので早期の抗癌剤治療が必要です。
 
④全身に回っている小さい癌をたたく、等の説明を受け、温存か全摘かの話は全くないまま抗癌剤の治療が始まりました。
私共はこれらの説明と治療を なるほど と何の疑問も抱かず受け入れてきました。ネット上もそのような情報で溢れています。
田澤先生のブログのQ&Aに辿り着いてそうではないことを初めて知り、複雑な心境です。
結局、田澤先生の「(普通に)」の治療を受けるには田澤先生に主治医になっていただくしか方法はないのではないか と思う今日この頃です。
その意味で、もう少し早く田澤先生のブログに辿り着けていればこんなにはなっていなかっただろうと悔やまれますが、これも結局全て自己責任の問題でしょうから過ぎたことは素直に受け止め、今後どうするかが一番重要、と気を取り直し、これからは田澤先生のご指導を仰ぎながら治療を進めていきたいと考えております。
どうか宜しくお願い申し上げます。
 
前置きが長くなってしまいましたが、今回は初回では字数の関係でご相談しきれなかった事項も含めてお教えいただければ幸いです。
Ⅰ TCbH(ドセタキセル、カルボプラチン、ハーセプチン)の適用の妥当性
まず、今となっては今更の話で申し訳ないのですが、この病院で2回目に受けた抗癌剤 TCbHの適用が妻にとって適切であったのかどうか
ずっと引っかかっています。田澤先生のお考えをお聞かせいただければありがたいです。
この組合わせの抗癌剤の副作用で妻は随分と辛い思いをさせらてきましたので。
 
初回のご相談の時に述べていますが、再記しますと
2013年10月 [マンモトーム採取 病理検査結果]
左乳房上内側部乳癌
cT2N0M0 StageⅡa サイズ23mm ER:100%、PR:60%
Her2:(2+ (DISH:2.23)) 陽性、Ki67:27.9%
充実腺管癌、mSBR grading:grade Ⅲ (3-3-2)
の結果に基づいて
① AC 4K予定のところ、効果なく3Kで中止。
 
② TCbH 6Kの予定で、3Kまで受けるも4K目は血小板の低下で中止。
 
②のTCbH 3Kで腫瘍は体積的に30%に縮小(70%消失)し、一定の効果が見られましたが副作用として、重篤な手足症候群に苦しみ、又、
3K目で右腎盂尿管狭窄で水腎症を、更に両眼に涙腺狭窄を発症し、現在も目が見づらくて疲れやすい状態が続いています。
腎盂尿管狭窄症を発症したのはこのTCbHのためだと思っているのですが、この大学病院の先生は関係ないの一点張りです。 両眼の涙腺狭窄も合わせて考えると何かこの組み合わせは身体の管とか腺に悪影響を及ぼすのでは?と思えてなりません。勿論、素人判断に過ぎないとは思うのですが。
 
Ⅱ放射線治療について
術後の補助療法後、本当に放射線治療が必要なのかどうか、もやもやとした気持が続いていましたが田澤先生の「放射線治療は当然受けるべきです。」との明確なお言葉でこのもやもやが完全に消え、気持がすっきり吹っ切れました。
ありがとうございました。
 
もやもやの原因は乳腺外科の先生(主治医及び執刀医)方は放射線治療の必要性について全く言及されず、全摘なので必要ないと考えておられるのかな という疑問をもっていたからです。
早速、江戸川病院の放射線科を受診させていただきます。
そこでトモセラピー治療に際して少しお教え下さい。
 
①受診の時にはまず手術を執刀していただいた先生に江戸川病院放射線科の「は○先生」宛に手術記録と病理レポートを添えた紹介状を作成していただきそれを持って江戸川病院放射線科を「外来」で受診するということでよろしいでしょうか?
(こんな細かいことまでお忙しい田澤先生にお聞きして申し訳ございません。)
 
②トモセラピーの開始時期は、現在受けている抗癌剤(アブラキサン)治療が11月末で終わりますのでそれから最低3週間以上空けて、来年1月初旬~中旬開始ということでよろしいでしょうか?
その場合、手術が7月中旬でしたので手術から半年後ということになりますがそれでよろしいでしょうか? 尤も、江戸川病院のトモセラピーは混んでいると思われますのでその時期にお願いできるかどうかわかりませんが。
 
③妻の場合、トモセラピーでの放射線照射範囲はどの部位になりますでしょうか?
浮腫のリスクが大きくなる部位への照射はありますでしょうか?
ちなみに病理結果は
切除縁:断端露出なし(negative)、大胸筋に接するも筋内への浸潤はなし。
郭清腋窩リンパ節:レベル1&2 レベルⅠ= 0/11、レベルⅡ=
0/2
いずれにも転移を認めません。
センチネルリンパ節:(+)1/1  転移癌はリンパ節の大半を置換し節外に及んでいます。
大胸筋は腫瘍が接していた部分を手術で薄く(5mm位)剥いでいます。
 
④浮腫の心配
田澤先生のご回答で浮腫のリスクは放射線治療よりも手術の精度によるとのご指摘、理解できました。又、
「○普通に考えれば「大丈夫」な可能性が高いと思いますが…」
とのお言葉に救われました。 ありがとうございます。
 
手術を執刀していただいた乳腺外科の先生のお話では浮腫の心配はあまり無いでしょうという事で少し安心していたのですが、補助療法での入院当日、新たに主治医になられた腫瘍内科の先生(この先生に放射線治療を勧められました)から突然、放射線治療では 100%浮腫になります。と言われ大変ショックを受けました。
そこで(この病院ではトモセラピーを導入しているとのネット上での記事を目にしていましたので)トモセラピーでも浮腫を防ぐことは出来ないのでしょうか?とお聞きしましたところ、なんだそれは?という顔をされましたので、強度を変えながら、回転しながら照射するようなタイプのものですと返答しましたところ、うちは2年前に最新式のリニアックを入れている。素人はいろいろ考えないで専門家に任せておけば良いというような事を言われ、この病院で放射線治療を受ける気が失せてしまいました。
(ちなみにこの病院にトモセラピーが有るというネットの記事は間違いのようです)
そんないきさつがありましたので田澤先生にトモセラピーなら浮腫を防げますでしょうか?という質問をさせていただきました。
 
⑤執刀医の「手術精度」の評価について
『私にはその「解析度が高い機器を備えた施設の医師」の「手術精度」を評価することはできません。』とのお言葉で全摘手術をやっていただいた執刀医の手術の精度は田澤先生のお眼鏡にかなわなかったようですが、もしご差し支えなければ具体的にどのような点が不都合だったのでしょうか?
参考のためにお教えいただけますと大変ありがたいです。
Ⅲ今後の治療について
 
①現在、治療中のアブラキサン Weekly 12回は適応外とのご指摘をいただき、私共は正直どうしたらいいのか戸惑っております。
現在10回終了したところですが・・・・・。
 
②現在入院している病院も含めて田澤先生のお見立ては「受診する病院が、全て「おかしな治療」をしているようにしか思えません。」とのご評価で、私共もそのように思っております。従ってこれから先、受診すべき病院がありません。
そこで遠方ではありますが、十分日帰り可能な距離ですので、今後は田澤先生に主治医として診ていただけないものかと切望しております。
「術後補助療法の後はホルモン単剤療法が妥当」という事ですが、このホルモン療法はいつから始めるのがよろしいでしょうか?
できればこのホルモン療法から田澤先生に診ていただきたく希望しています。
そのためにはどのようにすればよろしいでしょうか?
例えば、紹介状は先生の病院の放射線科での受診用に、手術の執刀医に作成してもらう「江戸川病院放射線科宛の手術記録と病理レポート」で代用が効くものでしょうか?
以上、長々とたくさんの質問をお願いしてしまい誠に申し訳ありません。
 
宜しくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
 
「予後は術前でも術後でも変わりません。なので①腫瘍を出来るだけ小さくする」
⇒前半はその通りです。
 それが何故「後半」になるのか?全く「つじつまが合いません」
 その担当医は、それとも私の理解を超えた「日本語の達人」なのでしょうか?
 
「①腫瘍を出来るだけ小さくする。②抗癌剤の効果を確認する。③グレードが3で悪性度が非常に高く、Ki67が27.9%で増殖が盛んなので早期の抗癌剤治療が必要です。④全身に回っている小さい癌をたたく、等の説明」
⇒これら全てが「インチキな理由」です。
 それについては、過去のQandAでも「散々」コメントしてきているので、(もしも詳細を。という場合には)お手数ですが、「過去のQandAのどれかを参照」してください。
 私自身は「改めてコメントする」気も失せています。
 一つだけ付け加えると、「Ki67=27.9%は全く高く無い数字」です。それを「増殖が盛ん」としている点は「センスを疑い」ます。
 
「TCbHの適用が妻にとって適切であったのかどうかずっと引っかかっています。田澤先生のお考えをお聞かせいただければありがたいです」
⇒私は全く賛成できない「レジメン選択」です。
 「術前化学療法の適否」はこの際、全く置いておくとして、
 「ドセタキセル+カルボプラチン+ハーセプチン」所謂「TCH」は、あくまでも「ハーセプチン補助療法時のlow riskに対する非アンスラサイクリンレジメン」に過ぎません。(つまり副作用重視のレジメンです)
 
 ○術前化学療法するなら、「腫瘍を体に残したまま治療するのだから」(副作用重視では無く)当然「効果を狙って行うべき」です。
 私の経験上、「術前術後に行う抗がん剤治療での最強」は『ハーセプチン+weekly パクリタキセル』です。(再発治療なら、bevacizumabやpertuzumabなどもありますが)
 ⇒私であれば、(そもそもアンスラ先行ではなく)最初に『ハーセプチン+weeklyパクリタキセル』を持ってきます。
 
「受診の時にはまず手術を執刀していただいた先生に江戸川病院放射線科の「は○先生」宛に手術記録と病理レポートを添えた紹介状を作成していただきそれを持って江戸川病院放射線科を「外来」で受診するということでよろしいでしょうか?」
⇒その通りです。
 但し、私自身は「放射線科の(院外からの)紹介受診のシステム」を正確には知りません。
 やはり、一度「放射線科外来に電話する」ことが必要でしょう。(まずは病院代表へ電話⇒放射線科外来看護師へ電話転送)
 
「最低3週間以上空けて、来年1月初旬~中旬開始ということでよろしいでしょうか?」
⇒これも「その通り」です。
 
 
「手術が7月中旬でしたので手術から半年後ということになりますがそれでよろしいでしょうか?」
⇒全く問題ありません。
 抗がん剤と放射線照射の順番は「抗がん剤先行が基本」です。
 当然、そのようになります。(抗癌剤無しで術後半年というケースとは全く意味が異なります)
 
「トモセラピーでの放射線照射範囲はどの部位になりますでしょうか?」
⇒それこそ「手術の精度次第」ですが、「きちんとした郭清」がなされているのであれば、「腋窩は不要」です。
 「胸壁+鎖骨上」で十分です。
 
「具体的にどのような点が不都合だったのでしょうか?参考のためにお教えいただけますと大変ありがたいです」
⇒(前回のメール内容に)
 「出血量20ml(通常50mlなので少なく出来た)」という記載から、そういう印象を受けました。
  出血量が多い=不必要な損傷を起こしている=精度が低い  という構図です。
(勿論、それに伴い手術時間も、どんどん長くなります)
 「通常50ml」など(私から見れば)「とんでもない数字」です。
 普通は「出血量少量」として「カウントできない」のが当たり前です。(ただ、当院では麻酔記録のコンピューターに入力する都合上、(何故か)0mlと入力できないので(無理やり)1mlとか2mlとか入力している程度です)
 「20mlで満足」しているようでは「精度が高い」とは思えないという事です。
 
「治療中のアブラキサン Weekly 12回は適応外とのご指摘」
⇒腫瘍内科の医師が抗がん剤しているようなので、「適応外診療をする」ことに「変な満足感(自分は他ではしていないことをやっている=自分は優れている)」を感じるタイプなのかもしれません。
 私は「適応外治療」は一切認めません。
 直ぐにでも「辞めるべき」と思います。
 というか、率直に、その医師に「アブラキサンのweekly投与は適応外治療ではないか?」と聞いてみてください。
 適応外診療での「有害事象」に責任がもてるか?と。
 
「このホルモン療法はいつから始めるのがよろしいでしょうか?」
⇒本来、術後すぐに開始すべきでした。
 「化学療法」や「放射線」と併用しても「全く問題無」です。
 ○今からでも遅くはないでしょう。
 
「そのためにはどのようにすればよろしいでしょうか?例えば、紹介状は先生の病院の放射線科での受診用に、手術の執刀医に作成してもらう「江戸川病院放射線科宛の手術記録と病理レポート」で代用が効くものでしょうか?」
⇒それで十分です。
 経過はメールで十分すぎるほど解りました。
 「中途半端な理解である」担当医からの紹介状など「全く不要」です。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田沢先生 お世話になっております。
今では田沢先生が心の支えになってくれていまして大変感謝しております。
先日は妻の乳癌についての再度のたくさんの質問、ご相談にもかかわらずお忙しい中、丁寧で且つ、お心のこもったお返事、本当にありがとうございました。
お返事の中には目から鱗の内容あり、えっ そうなんですか!と意外のものありで、お返事の一つ一つが本当に参考になりました。
ありがとうございました。
 
本日はその後、発生しました新たな出来ごとに関してご相談させて下さい。
現在、入院中の関東地方の病院で、術後の補助化学療法アブラキサンWeekly 12Kが終了しましたので、そろそろ江戸川病院放射線科宛の紹介状の作成を依頼しょうと思っていたところですが、ここにきて、頭部のMRI検査で脳転移が疑われ戸惑っております。
 
病院の所見では
☆脳転移うたがい11月初旬 頭部MRI 小脳にT1造影Highの陰影あり、脳浮腫は目立たず。
読影:転移否定できず
12月初旬 頭部MRI再検 同様の所見が残存、大きさの増大はなし。
→MRI SWI 検討
ということで検査継続中の段階です。
今年 5月のPET-CT 検査では他の部位への転移はありませんでしたので、いきなり脳への転移疑いという思いも寄らない事態にショックを受けております。
 
現在の病院側の方針は
「MRI病変のフォロー/治療方針をカンファで相談
 →ご家族、ご本人と話し合い、フォローの予定を立てていく。」
という段階です。
そこで、もし 脳転移が確定という事になった場合、どのように対処し
ていけば良いのか、ご指導をお願いできれば大変ありがたいです。
宜しくお願い申し上げます。
現在のところ、脳転移が原因と思われる症状は出ていません。
 
1.「MRI 小脳にT1造影Highの陰影あり」とはどのような状況なのでしょうか?
  転移の可能性が高いのでしょうか?
 
2.脳転移の確定にはどのような検査が必要なのでしょうか?
  MRI SWI という検査で確定出来るのでしょうか?
 
3.もし転移確定の場合、更なる転移発生を予防する為、全脳照射が推奨されますでしょうか?
 
4.もし推奨される場合、江戸川病院に入院して受けられますでしょうか?
 
5.田澤先生には次の治療(ホルモン療法)から主治医になっていただく為、退院後すぐ外来で受診させていただく予定でおりましたが、この分では少しずれ込みそうです。 早く、ホルモン療法始めなければと気が焦っております・・・。
 
6.もし、脳転移確定の場合、今の病院から脳の画像データ等をもらう必要がありますでしょうか?
 
7.その他、特に留意すべき事があるでしょうか?
以上、お忙しい田沢先生にいろいろお聞きして申し訳ありません。
今、入院中の病院に質問してもまともな答えが返って来ませんのでついつい田澤先生にお聞きしてしまいました。
宜しくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
 
「今年 5月のPET-CT 検査では他の部位への転移はありませんでしたので、いきなり脳への転移疑い」
⇒(全身の他の部位に異常が無いのに)「脳単独というのは、殆どありえません」
 (5月のPETから半年以上経っている)訳ですから、『(脳に所見が有った以上)再度の全身検索(PETでいいと思います)をすべき』です。
 おおかた、「患者さんご本人が(化学療法中の副作用により)ふらつくとかお話したことで、脳MRIを撮影する流れになった」と思いますが、このケースでは当然「(半年経っている訳ですから)全身の再建策すべき」です。
 
『「MRI病変のフォロー/治療方針をカンファで相談 →ご家族、ご本人と話し合い、フォローの予定を立てていく。」』
⇒カンファとは、都合のよい言葉で「誰も責任を持って診療していない」と同義語です。
 全身再検索と考える人が「そのカンファに参加する複数の人達の中には一人もいなかったのでしょうか?」
 「カンファをして、責任が分散した」ということで安心しているようにも思います。
 
「「MRI 小脳にT1造影Highの陰影あり」とはどのような状況なのでしょうか?
転移の可能性が高いのでしょうか?」
⇒恐らく、生れてはじめての「脳MRI]でしょうから、(昔から有るかもしれない、無害の)小脳腫瘍なのかは判断できません。
 所見からは「転移の可能性はあります」但し、「脳だけ」ということは考えられず、そのためには「全身検索が必要」です。
 もしも「全身検索で骨や肝にあれば」脳転移の可能性はかなり高くなります(脳転移は血行性転移の第2、第3段階なのです。決して第1段階ではありません)
 
「脳転移の確定にはどのような検査が必要なのでしょうか?」
⇒MRI以上の検査はありません。
 生検はとんでもない話です。
 「状況証拠」と「経過観察」しかありません。
 
「もし転移確定の場合、更なる転移発生を予防する為、全脳照射が推奨されますでしょうか?」
⇒単独であれば、「トモセラピーによる定位照射」でしょう。
 
「もし推奨される場合、江戸川病院に入院して受けられますでしょうか?」
⇒放射線科のベッド次第だとは思いますが、可能だと思います。
 
「もし、脳転移確定の場合、今の病院から脳の画像データ等をもらう必要がありますでしょうか?」
⇒放射線科の紹介のためには「必要」です。
 
「その他、特に留意すべき事があるでしょうか?」
⇒「小脳転移」に伴う症状出現に留意することです。
 もしも「症状進行」などが疑われれば「躊躇なく、定位照射」すべきです。
 ○ただ、再三コメントしていますが、「全身と切り離してはいけません」
 全身検索が必要です。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生
お世話になっております。
「脳転移の疑い」についてのご相談について、早速のご回答ありがとうございました。
 
先生からご指摘いただきました、「全身検索」につきましては早速、妻の方から 担当の先生にPET-CTの検査をしつこくお願いしてみます。
すんなりやっていただければ良いのですが???
正に核心を突かれた先生のご指摘、本当にありがとうございます。
前回ご相談してから、その後の展開ですが、本日 MRI SWI の検査です。
 
担当の先生のお話では「この検査で不幸にして転移が確実となればサイバーナイフでの治療になります。ただ、当院にはその設備がないので東京で持っている病院を紹介することになります」 とのことです。
そこで、お教えいただきたいのですが、サイバーナイフとトモセラピーではどちらが定位照射として有効性・安全性が高いのでしょうか?
また、定位照射で現病巣を叩いた後、新たに発症のリスクを持つ微小癌を予防的に叩く為、全脳照射も必要でしょうか?
もし必要であればいつ頃までに受けるべきでしょうか?
その場合も、トモセラピーが最善の方法になりますでしょうか?
「「小脳転移」に伴う症状出現に留意することです。」とはどのような症状に気をつければ良いのでしょうか?
例えば、新たに発生する頭痛、吐き気、手足の麻痺でしょうか?
手足のしびれも新たに発生する場合、要注意でしょうか?
 
この頭痛ですが、妻には長年の偏頭痛の持病がありまして、天気が悪いとか抗癌剤の影響が酷いとかの場合、頭痛を訴えますので病院側は脳への転移を疑って、頭部のMRIを撮ってくれたのだと思います。
この頭痛はいつも偏頭痛の薬を飲めば治っておりますので、私共は何の心配もしていなかったのですが。。。
「症状進行」とは例えば偏頭痛の薬を飲んでも治らない頭痛が新たに断続的、継続的に発生した場合が該当しますでしょうか?
 
田澤先生のお答えを拝読し、
PET-CT等で脳以外の他の部位に転移が確認出来なく、且つ「小脳転移」に伴う症状が出現していない段階では、軽々に脳転移を断定して定位照射等はすべきではない と感じましたがこの判断でよろしいでしょうか?
また、長々とたくさんの質問をしてしまい、誠に申し訳ございません。
宜しくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
 
「サイバーナイフとトモセラピーではどちらが定位照射として有効性・安全性が高いのでしょうか?」
⇒定位照射としては、ここに「ガンマーナイフ」が加わります。
 乳腺外科医としての知識では「脳転移に対するガンマーナイフの有効性」については確認されていますが、「サイバーナイフやトモセラピーはX腺を用いた定位照射の選択肢の一つ」としての認識です。
 「両者の有効性及び安全性の比較」は簡単にはできないと思います。(放射線科医によっても異なるようです)
 
「新たに発症のリスクを持つ微小癌を予防的に叩く為、全脳照射も必要でしょうか?」
⇒勿論、そういう考え方もあります。
 通常は「有る程度複数病変」が有る場合や「異時性多発」などの場合に積極的に適応となります。
 
「もし必要であればいつ頃までに受けるべきでしょうか?」
⇒おそらく経過を見ている訳ではない筈(今回が初めての脳MRI)なので、(転移だと仮定しても)増殖スピードが不明です。
 ただ、「治療方針が決まれば」早いに越した事はないでしょう。
 
「トモセラピーが最善の方法になりますでしょうか?」
⇒前の回答にも重複しますが、「ガンマーナイフを加えた3種類の定位照射のどれが最善なのか?」これは「放射線科医」に聞いてください。
 
「新たに発生する頭痛、吐き気、手足の麻痺でしょうか?手足のしびれも新たに発生する場合、要注意でしょうか?」
⇒小脳だから「運動失調」です。
 つまり「大脳」のような「言語障害とか、片麻痺」ではなく、「バランスを崩す、歩行障害」などの「運動失調」です。勿論「脳浮腫となれば、頭痛・吐き気」もでます。
 
「手足のしびれも新たに発生する場合、要注意でしょうか?」
⇒アブラキサンの副作用の気がします。
 
「症状進行」とは例えば偏頭痛の薬を飲んでも治らない頭痛が新たに断続的、継続的に発生した場合が該当しますでしょうか?」
⇒「小脳であれば運動失調」でしょう。
 ただ、急速に大きくなれば「脳浮腫から、頭痛や嘔吐が出ます」、そんな状況までは「経過をみることは無い」とは思いますが…
 
『PET-CT等で脳以外の他の部位に転移が確認出来なく、且つ「小脳転移」に伴う症状が出現していない段階では、軽々に脳転移を断定して定位照射等はすべきではないと感じましたがこの判断でよろしいでしょうか?』
⇒その通りに思います。
 「脳転移単独」というのは、私の経験には(思い起こしても)ありません。
 それでも「放射線科医、(場合によっては原発性脳腫瘍も考え)脳外科医らが、脳転移と判断」した場合には、「それでも、脳転移ではない」と言い切れる程の根拠ではありません。
 まずは「画像診断」です。
 
 

 

質問者様から 【質問5】

田澤先生
お世話になっております。
 
たびたびのご相談、質問で本当に申し訳ございません。
妻の乳癌 脳転移疑いで昨日、MRI CWIの検査を受けましたが、腫瘍内科の担当の先生記載の昨夜のカルテによれば「脳転移>血管腫」との判定のようで担当の先生は当院放射線科に「レポート作成頂き」、他院での「γナイフ目的に紹介状を記載する」との記載がありました。
(当院では患者、その家族に限ってネットによるカルテの開示が許されておりまして、その記載を見ました。)
 
 
担当の先生から妻への説明はまだですので、現段階では上記以上の詳細は判らない状況ですが、以下の点をお教えいただければありがたいです。
1.「血管腫」とはどのようなものでしょうか?
 進展が早くてあちこち転移しやすいものなのでしょうか?
 治療は緊急を要すものなのでしょうか?
 
2.γナイフでの治療を考えて下さっているようですが、「血管腫」
 治療での定位照射の場合、γナイフ、サイバーナイフ、トモセラピーの治療法があるようですが田澤先生はどの方法がベストとお考えでしょうか?
思いもよらない事態の発生でどのようにすれば良いのか戸惑っています。
たびたび申し訳ございません。
宜しくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答5】

こんにちは。田澤です。
 

『「血管腫」とはどのようなものでしょうか?  進展が早くてあちこち転移しやす
いものなのでしょうか?  治療は緊急を要すものなのでしょうか?』
⇒質問者は勘違いされています。
 「血管腫」は「純粋な良性疾患」であり、「治療は不要」となります。
 ○『「脳転移>血管腫」との判定』という表現は「良性である血管腫の所見というよりは、脳転移の方をより強く疑う所見である」という内容です。
  つまり今回の画像診断では(鑑別疾患として考えていた)「血管腫」ではなく、「脳転移の可能性の方が大きい」という診断なのです。
 
『「血管腫」治療での定位照射の場合、γナイフ、サイバーナイフ、トモセラピーの治療法があるようですが田澤先生はどの方法がベストとお考えでしょうか?』
⇒完全な勘違いです。
 「血管腫であれば治療などしません」
 
 ○脳転移において「その内どれがベストなのか」(前回の回答にも記載しましたが)決着はついていないと思います。
★全身検索もなしに「脳だけの検査で脳転移と決めつける」のは如何なものか?
 乳癌診療の全体像を知らない「腫瘍内科医」の「視野の狭さ」と私には思えます。
 
 

 

質問者様から 【質問6】

田澤先生
お世話になっております。
 
前回(第5回目)の質問では「血管腫」との初めて目にする腫瘍名ですっかりパニック状態となり、良く調べもせずにお忙しい先生のお手を煩わせてしまいました。
誠に申し訳ございません。
お詫び申し上げます。
お陰様で良く理解できました。
特に現時点では全脳照射は必要ないようですので安心できました。
ありがとうございました。
 
現在の状況ですが
1.術後の補助療法が終わって明日、退院です。
2.腫瘍内科のセッティングで退院の翌日、都内の某ガンマナイフセンターに入院し、ガンマナイフでの定位照射治療を受ける予定です。
  脳転移と疑われる小さな一個の腫瘍を叩くとのことです。
3.田澤先生からアドヴァイスいただいていました全身検索は後手に廻ってしまいましたがやっと先週土曜日に全体CT(PET-CTより良くわかるとのこと)の検査を受けることが出来ました。
担当の先生に依頼していたのですが脳単独転移の人もあるという考えで全身検査に消極的でしたので、主治医の先生に依頼してやっと実現しました。
結果を本日教えていただければ良いのですが。
3.術後の放射線治療の件ですが、当院の乳腺外科、腫瘍内科合同のカンファで予定を変更して実施しないという事に決まりました。
 理由は [PMRTの追加ベネフィットは少ない(十分郭清できており、リンパ節転移もセンチネルのみ)」とのことです。
 そこで腫瘍内科主治医の先生に、再発のリスクを少しでも減らすためトモセラピーでの放射線治療が有効かどうか念のため他の病院で意見を聞いてみたいと申し出、紹介状(手術記録&病理
レポート添付)の作成を依頼しましたところ、快く引き受けてくれました。
それを持って江戸川病院 放射線科を受診したく考えております。
  放射線科の受診については田沢先生のご指示に従って、当科に電話しましたところ、放射線科に限っては初診でも予約制なので紹介状が入手できた段階で、改めて電話を下さいとのことです。
4.ホルモン療法として先週末からタモキシフェンを処方され飲み始めました。
  妻のこれまでの経緯を考えるとタモキシフェンが最も効果があるのでこれに決めたとのことですが、田沢先生推奨のエキセメスタンと異なります。
ネットで調べてみると、IES試験とかで「エキセメスタンは標準薬のタモキシフェンをしのぐ臨床成績が報告されています。
」とか、それにタモキシフェンの方が副作用が酷そうにも思え、田沢先生推奨のエキセメスタンの方が良いように思えます。
  田沢先生、タモキシフェンについてはどのようにお考えでしょうか?
5.今後の治療として当院は遠すぎるので地元の病院に移るよう薦められました。
  今後どうすべきか悩んでいます。
以上、よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答6】

こんにちは。田澤です。
 
「術後の放射線治療の件ですが、当院の乳腺外科、腫瘍内科合同 のカンファで予定を変更して実施しないという事に決まりました」
⇒おそらく「脳転移」があるのであれば「局所で頑張る意味は無し」みたいな考え方
でしょう。
 その「合同カンファレンスで決まった事」というのは、担当医にとって(患者さんから何か言われた際に)「錦の御旗」のように、もしくは「水戸光圀の印籠」のように使い勝手がいいのでしょう。
 「もう決まったことだから」で済まされます。
 
「担当の先生に依頼していたのですが脳単独転移の人もあるという考えで全身検査に消極的」
⇒その担当医は「腫瘍内科医」ですか?
 その「合同カンファレンスとやら」では、「全身検索の必要性」については議論さ
れなかったのですね。
 
「ホルモン療法として先週末からタモキシフェンを処方され飲み始めました。妻のこれまでの経緯を考えるとタモキシフェンが最も効果があるのでこれに決めたとのことですが、田沢先生推奨のエキセメスタンと異なります。
ネットで調べてみると、IES試験とかで「エキセメスタンは標準薬のタモキシフェンをしのぐ臨床成績が 報告されています。」とか、それにタモキシフェンの方が副作用 が酷そうにも思え、田沢先生推奨のエキセメスタンの方が良いように思えます。
田沢先生、タモキシフェンについてはどのようにお考えでしょうか?」
⇒質問者は「フェマーラ(レトロゾール)」既治療です。
 その後のホルモン療法として「何がいいのか?」というのが今回のテーマとなります。
○閉経後ホルモン療法の考え方
第1選択はアロマターゼインヒビター(アナストロゾールとレトロゾールとエキセメスタンの3種があります)のどれかになります。(優劣はありません)
この治療から変更する場合、①(別系統の)アロマターゼインヒビターに替える ②フルベストラント③タモキシフェン
 となりますが、現時点での考え方としては、①≧②>③なのです。
アロマターゼインヒビターには「ステロイド環を持たない」アナストロゾール、レトロゾール と「ステロイド環を持つ」エキセメスタンに分けられますが、質問者は「レトロゾール(非ステロイド)」だったので、(別系統である)「エキセメスタン(ステロイド環を持つ)」となるのです。
 
 

 

質問者様から 【質問7】

田澤先生 お早うございます
いつもいつもお世話になっております。
 
毎回の素早い、丁寧なご回答 本当に感謝致しております。
度々で申し訳ありませんが、今回はその後の新たな事態の進展についてご相談、質問させて下さい。
本題に入る前に、前回(6回目)のQ&Aでの田澤先生のご回答のなかでいただいたご質問にお答えさせて下さい。
「担当の先生に依頼していたのですが脳単独転移の人もあるという考えで全身検査に消極的」について
①[その担当医は「腫瘍内科医」]ですか?とのご質問をいただきました。
 ⇒はい。
腫瘍内科の先生です。
今回は腫瘍内科での入院ですので
主治医、担当医いずれの先生も腫瘍内科です。
担当医の先生が脳単独転移の人もあるとの考えで全身検索に消極的でした。
そこで腫瘍内科の主治医の先生にお願いしましたところ、脳への転移が疑われる状況なので他部位への転移がある可能性は十分考えられる。
ただ現状まだ見つからないと思います。
 
PET-CTは5~10mm位しか判らないのでより詳しくみられる全体CTを撮りましょう。
ということで全身検索が実現しました。
(「現状まだ見つからないと思います。」とのご判断の根拠は今もってわかりません。)
全体CTの結果は幸いにして今のところ確認できる腫瘍は無かったとの事です。
②「その「合同カンファレンスとやら」では、「全身検索の必要性」
  については議論されなかったのですね。」
 ⇒その合同カンファレンスでは主に術後の放射線治療の要否についてカンファされたようで「全身検索の必要性」については全く議論されていないようです。
私共患者側が(田沢先生のご助言に基づいて)何度も依頼して、やっと実現した状況から推測しての判断ですが。
(勿論、他病院の先生の薦めがあるからとかは一切言っておりません)
術後の放射線治療をやらないという逆転結論になったのは、乳腺(外)科の主治医の先生(執刀は担当医の先生)が手術の病理結果
切除縁:断端露出なし(negative)、大胸筋に接するも筋内への浸潤はなし。
郭清腋窩リンパ節:レベル1&2 レベルⅠ= 0/11、レベルⅡ=0/2
いずれにも転移を認めません。
 
センチネルリンパ節:(+)1/1  転移癌はリンパ節の大半を置換し節外に及んでいます。
大胸筋は腫瘍が接していた部分を手術で薄く(5mm位)剥いでいます。
(その後の画像精査で腫瘍は大胸筋には接していなかったことが判明。)
を基に"単純に" 「十分郭清できており、リンパ節転移もセンチネルのみ」で放射線治療の追加ベネフィットは少ない との主張でやらないことに決定されたようでして、田沢先生が仰る[「脳転移」があるのであれば「局所で頑張る意味は無し」]というような"深い"意味はなかったと思います。
術後の補助療法で乳腺(外)科から腫瘍内科に転科した時、腫瘍内科の主治医の先生が「転移癌はセンチネルリンパ節の大半を置換し節外に及んでいます。
」の節外浸潤を重視され、乳腺(外)科の前主治医の先生が海外出張か何かで不在であった為、相談できず、代わりに放射線科と相談されて放射線治療実施の方針を決められたようです。
焦点は「一個のセンチネルリンパ節の大半を置換し節外浸潤している」の捉え方に乳腺(外)科と腫瘍内科の先生に違いがあったのでしょうか?
尚、乳腺(外)科と腫瘍内科の先生の当病院での序列関係は圧倒的に乳腺(外)科の先生が上位です。
序列が放射線治療の要否決定に影響を与えたとは考えたくないですが。
田沢先生はこの「節外浸潤」をどのようにお考えになりますでしょうか?
そもそも、田沢先生のご回答では[局所再発した訳ですから、「局所だけでも」抑え込める可能性はあります。
(逆に再再発などとなったら、それどころではなくなります)]
と明確なリスク回避を根拠に放射線治療の必要性を説いておられますので「節外浸潤」の有無の問題では無いのでしょうが。
尚、来年の1月早々に江戸川病院放射線科 浜先生の予約がとれましたので受診させていただきます。
 
トモセラピーは混んでいると思いますのでいつ始めていただけるのかちょっと不安です。
次に、ホルモン療法に使うべき薬、詳しくお教えいただき本当にありがとうございました。
お蔭様でエキセメスタンが妻の場合の最良のホルモン療法ということが大変良く理解できました。
本題の、その後の新たな事態の進展についてご相談させて下さい。
 
1.脳腫瘍の件
補助療法で入院中、頭痛の原因を心配して撮って下さった頭部MRI の結果、脳転移が疑われる一個の腫瘍が小脳にあるということで、都内のガンマナイフ脳治療専門医院を紹介されて、退院翌日入院し、こちらのMRIで確認していただいたところ、この腫瘍はやはり、血管腫ではなく、サイズ2~3mmの小脳脚に転移したのであろう腫瘍との判断でした。
このまま放置しておくとどんどん大きくなりふらつきが出て歩行困難となり来年の桜の咲く頃には"お迎え"が来ていたかもしれませんと仰られ、背筋が寒くなりました。
入院翌日、ガンマナイフで患部を線量60グレーで照射治療を受けました。
腫瘍は小さいのでほとんど無くなるでしょうとのことです。
三ヶ月後に再診です。
今後は定期的に検査をすればもし脳の他の部位に転移が発症してもガンマナイフでの治療をすることによりコントロール可能ですとのことで、脳についてはちょっと安心です。
余談ですがこのガンマナイフ脳専門医院は理事長先生と院長先生の二人で診療、治療をやっておられ診療件数が理事長先生は1万件で世界一、院長先生は六千件で日本では理事長先生にに次ぐ件数で経験豊富との事です。
まるで田沢先生の脳外科判のような気がしました。
ここの院長先生は江戸川病院放射線科のこともご存じで放射線科は良い設備を持っておられますねと褒めておられました。
脳の腫瘍の件ですが、幸いにして今のところ脳以外に確認できる腫瘍は無いという状況のようですので、もし転移とすれば「単独脳転移」ということになりますが、田沢先生の膨大なご経験のなかでこのようなケースは無かったということですので、原発性ということも考えられそうですね。
いずれにしましても、今後全身への転移発症が心配です。
他部位への転移発症は時間の問題と考えなければならないのでしょうか?
今後はどのような対応をしていけば宜しいでしょうか?
このあたりの事についてご指導頂ければ大変ありがたいです。
いつもいつもお忙しい田沢先生のお手を煩わせて大変申し訳ありませんがよろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答7】

こんにちは。田澤です。
 
全体像につき詳細教えてもらいありがとうございます。
これでおおよそわかりました。
「脳転移単独」を何の疑問もなく(全くではないでしょうが)受け止めているのは(いろいろな癌腫を扱っている)「腫瘍内科医」らしい考え方です。
「癌には何でもあり」的な発想で「個々の癌腫」の実態など解らない(当たり前ですが)でしょう。
 
専門家として「乳癌に特化」して「豊富な経験」を得ていると「何が自然で、何が不自然」か感覚で解ってきます。
その意味で「乳癌で脳転移単独」というのは不自然であり(絶対に無いとまではいいませんが…)、「当然、全身検索すべき」となります。
「全身検索しても、どこにもない」そして、「脳の所見も良性とは考えにくい」際に「脳転移と(仮定)して治療するべきか?」という問題に直面します。
当然「組織検査」することはできない場所なので、「放射線科医もしくは脳外科医の見解」と併せての判断となります。
この場合、「ガンマーナイフの専門家」が(良性ではない)「転移と考えるのが最も妥当」とするのであれば、「治療することは妥当」とこの場合、私も思います。
長々とコメントさせてもらったのは、「脳転移?の所見⇒ガンマーナイフ」という(短絡的な)発想の前に、
○乳癌の専門家であれば、『「脳転移単独は不自然⇒全身検索⇒本当に脳転移か?」という疑念(発想)が必要』だということなのです。
「全体CTの結果は幸いにして今のところ確認できる腫瘍は無かった」
⇒これは何よりでした。
 
『「転移癌はセンチネルリンパ節の大半を置換し節外に及んでいます。」の節外浸潤を重視』「田沢先生はこの「節外浸潤」をどのようにお考えになりますでしょうか?」
⇒節外浸潤は重要な所見です。
 但し、私は「局所再発」は重大なことであり、(節外浸潤うんぬんの前に)可能ならば(一度も放射線照射していないならば)手術+放射線照射で「徹底させるべき」というのが持論です。
 それは私が「中途半端な局所治療」が(時に)悲劇を起こす事を(経験上)知っているからです。
 局所を抑え込むことの重要性は(全身他に無ければ、尚の事)間違いありません。
 
『明確なリスク回避を根拠に放射線治療の必要性を説いておられますので「節外浸潤」の有無の問題では無いのでしょうが。』
⇒その通りです。
 その上で「節外浸潤」もあるのに「放射線照射は不要」という乳腺外科医の意見には全く反対です。
 
「1.脳腫瘍の件 他部位への転移発症は時間の問題と考えなければならないのでしょうか?」
⇒私には、(必ずしも)そうは思いません。
 今回の「局所再発」も「小脳転移?」も(それぞれが)全く無関係なことだと思っています。
 ただ、全身への警戒は当然必要です。
 
「今後はどのような対応をしていけば宜しいでしょうか?」
⇒放射線照射+ホルモン療法で「当面は様子をみてもいい」とは思います。
 重要なことは「全身スクリーニングの考え方」です。
 「何度も被爆をしながらの画像診断は無意味」です。
 今回の「CTで全身にはない」という判断をまずは「受け止めて」今後は3カ月に1回程度の「腫瘍マーカー」が有効です。
 ホルモン療法(エキセメスタン)を行う訳ですから、(3カ月処方)の度に、「局所の監視(診察、超音波)」と「採血でのマーカーチェック」することが肝要です。
 その中で「マーカーが上昇する」ならば(画像所見はなくても)「抗がん剤を検討(何を使用すべきか?は、今までの抗がん剤歴を詳細に検討しなくてはなりませんが)すべき」と思います。
 
 

 

質問者様から 【質問8】

田澤先生
お早うございます。
いつもいつもお世話になっております。
 
妻の乳癌治療に関する第7回目の質問に対しても、早速の詳細で解りやすいご回答ありがとうございました。
毎回のご回答で、田澤先生の本当に暖かいお気持ちがひしひしと伝わってくるのですが、今回のご回答ではことのほかそのことが強く感じられました。
本当にありがとうございます。
特に、「全体CTの結果は幸いにして今のところ確認できる腫瘍は無かった」
⇒これは何よりでした。
のところでは、思わず胸が熱くなりました。
また、「脳の腫瘍」につきましては、田澤先生のお教えが無ければ、単純に「転移」と思って絶望的になっていたと思いますが、田澤先生の豊富なご経験に基づく詳しいご解説で正しい理解ができ、本当に勇気づけられています。
 
「1.脳腫瘍の件 他部位への転移発症は時間の問題と考えなければならないのでしょうか?」
⇒私には、(必ずしも)そうは思いません。
とのご回答にはどれだけ救われたことかわかりません。
本当にありがとうございます。
その後またいろいろと進展がありましたのでご相談させて下さい。
よろしくお願い申し上げます。
 
昨年12月に抗癌剤治療を終え退院しましたが、退院前に腫瘍内科の主治医の先生から今後の治療は地元の病院で受けるよう勧められ地元関西の私立大学病院を紹介して下さりました。
主治医の先生が転院予定先の病院の乳腺外科の先生に直接電話をして経緯を説明して下さり、紹介状も送ってくれました。
昨12月下旬に、 退院した病院が予約してくれた転院先の病院の乳腺外科を受診し、ホルモン療法の開始となりましたが、新しく主治医になって下さった先生は、エキセメスタンは最近では単独使用より、アフィニトール(エベロリムス)との組み合わせで投与するとより高い効果が得られることが解っているので、この2枚のカードの組み合わせは残しておいて、アロマターゼインヒビターとは異なる別系統のフルベストラントをやりましょうということで筋注が始まりました。
 
フルベストラントについては田澤先生から、①エキセメスタン≧②フルベストラントと解説していただいていましたのでフルベストラントの投与に同意しました。
田澤先生、現時点でのフルベストラントはベストの選択でしょうか?
今月の初旬には前病院の乳腺(外)科の主治医の先生にお世話になったお礼と今後の治療は地元の病院でお世話になることになったことのご報告に伺い、その翌日、江戸川病院の放射線科 ○ま先生の診察を受けました。
 
そして今月中旬に入院して念願のトモセラピーの治療を受けられる事になりました。
○ま先生のお話では放射線の照射は胸壁だけで、腋窩リンパ節への転移が無いので鎖骨上窩への照射は不要とのことです。
腋窩リンパ節への転移が4個以下であれば鎖骨上窩への照射は省略出来るとの事でした。
また、照射回数が30回と通常のガイドラインより5回多くするのは副作用は25回と同じですが再発防止の効果が明らかに上がるので増やしています。
但し、予後の寿命は変わりません。
 とのことでした。
胸壁だけへの照射で鎖骨上窩は不要ということですがこれでよろしいでしょうか?
田沢先生から当然受けるべき とアドバイスしていただいた放射線治療を江戸川病院のトモセラピーで受けられることになって本当に良かったと感謝しています。
 
先程のホルモン療法の件ですが、フルベストラントは筋注ですので
約1ヶ月半の入院でのトモセラピー治療期間中は、誠に勝手なお願いで申し訳ないのですが、江戸川病院でお願いできますでしょうか?
実は、転院した地元の病院の主治医の先生が田沢先生宛てに紹介状を書いて下さいました。
よろしくお願い申し上げます。
最後に腕のリンパ浮腫の治療の件でご相談させて下さい。
浮腫が発症するかどうかは腋窩郭清手術の精度によると田澤先生は仰っておられましたが、妻が受けたその手術は、田澤先生がご指摘されたとおり精度があまり良くなかったようで昨年7月の手術後、約4ヶ月目に発症し、現在も続いています。
 
またどのように治療して良いのか勉強不足で特に治療は行っておりません。
入院中に治療方法等有りましたらご指導いただければありがたく存じます。
以上、長々と勝手なお願いばかりで大変申し訳ございません。
よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答8】

こんにちは。田澤です。
 
「現時点でのフルベストラントはベストの選択でしょうか?」
⇒担当医の「エキセメスタンとエベロリムスのカードを残す」と言う考えには大いに賛成です。
 根拠がある「治療方針」です。
 
「○ま先生のお話では放射線の照射は胸壁だけで、腋窩リンパ節への転移が無いので鎖骨上窩への照射は不要」「腋窩リンパ節への転移が4個以下であれば鎖骨上窩への照射は省略出来る」「照射回数が30回と通常のガイドラインより5回多くするのは副作用は25回と同じですが再発防止の効果が明らかに上がるので増やしています。」
「胸壁だけへの照射で鎖骨上窩は不要ということですがこれでよろしいでしょうか?」
⇒非常に理論的な「○ま先生」の説明内容であり、私も信頼しています。
 「鎖骨上窩への照射」に関しては「局所療法として、どれだけ先回りができるか?」というになりますが、「患肢浮腫が現時点である」以上、現時点では「ベストな選択」とも言えます。
 
「約1ヶ月半の入院でのトモセラピー治療期間中は、誠に勝手なお願いで申し訳ないのですが、江戸川病院でお願いできますでしょうか?実は、転院した地元の病院の主治医の先生が田沢先生宛てに紹介状を書いて下さいました。」
⇒了解しました。
 当然の選択と言えます。
 ○ま先生に「院内紹介」で外来受診してもらうことになります。
 
「最後に腕のリンパ浮腫の治療の件」「浮腫が発症するかどうかは腋窩郭清手術の精度による」「妻が受けたその手術は、あまり精度があまり良くなかったようで昨年7月の手術後、約4ヶ月目に発症し、現在も続いています。」「入院中に治療方法等有りましたらご指導いただければありがたく存じます。」
⇒まずは、「患肢挙上」と「マッサージ」です。
 あと、サポーターなどを手に入れることです。
 当院では「患肢浮腫がない」ので「そのような態勢」が整っていないので「院内でリンパマッサージをすることはできません」
 ○退院後、地元に戻った際に「リンパマッサージの治療院を(担当医から)紹介してもらう」ことが最善でしょう。
 リンパ浮腫は「マッサージ+圧迫(バンデージ)」です。
 専門的なところに行くと、「きっちり治療」ができる筈です。(私は「江戸川に赴任してから、4月でようやく2年」なので「東京でのリンパマッサージ事情」について知識がありません。
 ♯仙台では「リンパ浮腫の治療院」などに紹介したりはしていました)

 
 

 

質問者様から 【質問9 】

局所再発全摘手術後の放射線治療等について
性別:女性
年齢:71歳
病名:乳がん転移
症状:倦怠感、食欲不振。
血圧低下等

田沢先生 ご無沙汰致しております。

約3年前、妻が胸へのトモセラピー照射で貴院に入院したとき、田沢先生にフルベストラントの注射をしていただくなど大変お世話になりました。
その節は本当にありがとうございました。

その後、地元の大学病院の乳腺外科に帰り治療を続けていましたが、去年の2月に縦隔リンパ節への転移が判明し薬を変更しました。
ところが今年の6月には肝臓、肺への転移が確認されましたので更に薬を変えましたが副作用のため継続できず、更に変更しました。

ところがこの薬も副作用のため継続できなくなりましたので、次の薬剤をどうするか主治医の先生も迷っておられます。

一応 ① アバスチン+パクリタキセル ② エリブリン を考えておられるようですがいずれも副作用の問題で継続できるかどうか心配しておられるようです。

そこで、この次の薬剤には何が最適なのかアドバイスを田沢先生からいただければ大変ありがたいと思っております。

これまでの治療経緯を下記しますので、大変お忙しいところ恐縮ですが宜しくお願い致します。

2013年10月初旬 乳がんと診断
         乳房上内側部乳癌        

2013年10月下旬 病理検査 結果
cT2N0M0 StageⅡa サイズ23mm  
         ER:100%、PR:60% 
Her2:(2+ (DISH:2.23)) 陽性、
  Ki67:27.9%

2013年11月下旬 AC4回/3週予定⇒3回で中止
   ~         
2014年01月下旬    

2014年02月中旬  TCbH6回/3週予定のところ3回
   ~      で血小板過小となり4回目は中止。

2014年04月     腫瘍は体積的に30%に縮小(70%消 
          失)し一定の効果が見られた
          副作用として、重篤な手足症候群で苦
          しむ。
又、3回目の静注で右腎盂尿管
          狭窄で水腎症を発症。

          ハーセプチンを2週間分静注。

2014年05月下旬  温存手術
病理組織診断  
         ER:陽性(90%以上)、PR:陰性(1%未
         満)、 Her2:(1+)陰性

2014年07月初旬 術後の化学療法
         フェマーラ服用 +ハーセプチン
         12回予定で開始

2015年04月中旬  MRI局所再発 (7カ所 MAX 7mm)
         ハーセプチン静注は効果なしということ
で最後の12回目は中止

2015年07月中旬 全摘手術(PET-CT検査で左胸以外の腫瘍
         はどこにも 認出来ず)        
 
2015年8月初旬 全摘腫瘍の病理検査結果
ER:+(90%)、PR:+(10~20%; 
        (weak)、HER2:+2(Dish 1.54)陰性、
Ki-67LⅠ:30~40%(浸潤先端部)
大胸筋に接していますが筋内への浸潤はあ
        りません。
郭清腋窩リンパ節:レベル1&
        2 レベルⅠ= 0/11、レベルⅡ= 0/2
        いずれにも転移を認めません。

        センチネルリンパ節:(+)1/1転移癌はリ
        ンパ節の大半を置換し節外に及んでいます

2015年09月中旬    
   ~    nab-PTX (アブラキサン) を12回 完了
2015年12月中旬
   
2015年12月下旬 フェマーラ+フルベストラント筋注開始 
        
2016年01月中旬 江戸川病院 入院 右側の腎臓機能停止し
        ていること判明
~ 左胸放射線 (トモセラピー照射 30回) 
 
2016年03月初旬 田沢先生 フェマーラ +フルベストラン
        ト筋注

2016年03月中旬 地元大学病院 フェマーラ +フルベス 
         トラント筋注
~           
2016年10月   フルベストラント筋注 11回目を中止
        (注射部付近の痛み酷く立ち上がれない、又
         筋注時 注射液が入らなくなった )

2016年11月
   ~ アロマシンの服用のみ開始
2018年02月                      
        
2018年02月   CT検査 ⇒ 縦隔リンパ節 転移確認
        ( CEA 3.0 )
         フェマーラ + イブランス 服用開始
16ヶ月服用

2019年06月中旬 CT検査 ⇒ 肝臓、肺への転移確認 (肝
         臓 2.8 cm 他複数 、肺 周辺に小さく
         点在 )               
         アフィニトール + アロマシンに変更
         ( CEA 8.7 )
         6週間服用
                           
2019年07月下旬  間質性肺炎発症 (アフィニトールの副
         作用)  ( CEA 13.8 )
         TS-1に変更
             
2019年08月中旬 肝臓への動注塞栓術 治療中の地元大学病
         院の紹介で他院で実施 ( CEA 27.0 )
         Epi 、CDDP 、5FU 、BV

2019年09月初旬 TS-1 5週間の服用で中止(副作用の
         下痢 酷し ) ( CEA 26.1 )
              
2019年09月下旬  血管造影剤CT検査 ⇒ 肝臓の腫瘍小
         さくなっている、中心部ほど黒くなって
いるようとのこと         
         肺は現存腫瘍以外の新たな発生はなし
         ( CEA 33.3 )
        効果認められるので肝臓への動注塞栓術 
      第2回目実施 (初回と同じ内容)
         Epi 、CDDP 、5FU 、BV
             
2019年10月中旬   造影剤CT検査、採血、採尿
2019年10月下旬   次の抗癌剤決定の予定 

下記の事項について田沢先生のご意見をいただければ大変ありがたいです。

① 対全身治療の最適な化学療法 (長年の抗癌剤治療で体力
  が衰えすぐ副作用が出てしまいますが)

② アバスチン+パクリタキセル の場合、既にnab-PTX (ア
  ブラキサン) を12回 完了していますのでその有効性
  は?

③ エリブリンの場合、副作用として骨髄抑制がありますので
  耐えられないのでは?

④ 局所治療としての肝臓への動注塞栓術 継続の可否

以上、大変長文になってしまいました。
申し訳ございません

 

田澤先生から 【回答9】

こんにちは。田澤です。

「① 対全身治療の最適な化学療法 (長年の抗癌剤治療で体力  が衰えすぐ副作用が出てしまいますが)」
⇒BRACAnalysisはやってますか? Olaparibの適応の可能性があります。

 またpalbociclibは行っているようですが、abemaciclibは? 

「② アバスチン+パクリタキセル の場合、既にnab-PTX (アブラキサン) を1
2回 完了していますのでその有効性は?」

⇒補助療法としての使い方なので、止める理由にはなりません。

「③ エリブリンの場合、副作用として骨髄抑制がありますので耐えられないのでは?」
⇒実際には、そんなことはありません。

 「耐えられない」どころか、最も「楽」に感じることでしょう。

「④ 局所治療としての肝臓への動注塞栓術 継続の可否」
⇒全身療法をまずはやるべきでしょう。

 肝臓はトモセラピーでも狙えます。