[管理番号:630]
性別:女性
年齢:45歳
田澤先生こんにちは。
今年の初めに乳房全摘術を受けてから、自分の乳癌について知りたくて色々調べているうちにこちらを見つけ毎日拝見しております。
乳癌の患者さんはどんどん増えていると聞きますので田澤先生もご多忙だろうと思います。そんなお忙しい中、ほぼ毎日更新され私達乳癌患者の疑問に一つ一つ丁寧に、わかりやすく回答されている先生の姿勢に本当に心打たれます。もっと近ければ先生に診て欲しかった、とつくづく思います。せめてこちらで第二の主治医になっていただければと質問させていただきました。
私の状況ですが、右乳房全摘後、腫瘍径20mm・病期ⅡA・ホルモンレセプター両方100%・核グレード1・ly0・v0・her2 1+・ki67 5%以下・充実腺管癌・センチネルリンパ節に微小転移が1つでタスオミンの内服(1日1回)とゾラデックスの皮下注射(3カ月に1回)を受けております。他の方のブログ等を見ると皮下注射をせず内服だけという方もおられますが注射もしている私はそれだけ再発率が高いということなのでしょうか。以前どなたかの質問で
「充実腺管癌はやっかい」みたいなことが書いてあったように記憶しているのですがそれは血行性転移をしやすいからですか?
またセンチネルリンパ節の微小転移は生命予後には関係しないと言われましたが本当ですか。
そのあたりの考え方がよく理解できないので教えていただけると幸いです。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1c, pN1mi, pStageⅡA,luminal A, NG1
申し分の無い早期です。
「タモキシフェンとLH-RHagonistの併用」されている。
回答
「皮下注射をせず内服だけという方もおられますが注射もしている私はそれだけ再発率が高いということなのでしょうか」
⇒そんな事はありません。
治療方針は主治医の考え方でしょう。
SOFT試験の結果で「タモキシフェンにLH-RHagonistの上乗せ効果が無い」という結論となりました。
但し、細かく見ていくと
①化学療法の適応となるようなハイリスク群
②35歳以下の若年者群
これら2群は「有効である」事が示唆されています。
○担当医は「質問者を①のケースと考えている」訳ではないとは思いますが、「何かしらの安心感」を求めたのでしょう。
「以前どなたかの質問で「充実腺管癌はやっかい」みたいなことが書いてあったように記憶しているのですがそれは血行性転移をしやすいからですか?」
⇒これは私の経験上、「(典型的な)充実腺管癌は、増殖傾向が強く、核異型度が高いケースが多い」事からのコメントでした。
ただ、質問者は核グレード1であり、Ki67=5%以下なので、「典型的な充実腺管癌」には当てはまりません。
ご安心を
「またセンチネルリンパ節の微小転移は生命予後には関係しないと言われましたが本当ですか」
⇒関係ありません
何故なら、「リスク因子として捉えられているリンパ節転移」は「センチネルリンパ節より前の時代」のデータなのです。
○「センチネルリンパ節での微小転移」は『センチネルリンパ節として細かく切ったから見つかった』のです。
つまり、「リンパ節郭清の時代では、(その様に細かくは切らないので)リンパ節転移無しとなっていた可能性が高い」のです。
質問者様から 【質問2 ホルモン療法について】
お忙しい中お返事ありがとうございました。田澤先生の回答を拝むような気持ちで読ませていただきました。
私は以前からしこりを自覚していて(20代の終わり頃から触れていたのであまり危機感を感じていなかったのです)40歳になったのを機に市の検診でマンモ・エコーを受け、異常を指摘され近くの大学病院を紹介されました。そちらではエコーを2回ほどした後「乳腺症でいいと思います」といわれすっかり安心していました。針生検はしていません。今思えば既にしこりを自覚していたあの時に、セカンドオピニオンを求めきちんと調べておけば胸を無くすような結果にはならなかったのかな、と後悔しております。
このQ&Aを読んで検査を受けている段階の方には田澤先生がいつも仰っているように「きちんと針生検をして胸にあるものは何なのかをはっきりさせてもらう」ことをお願いしたいです。私と同じ悲しい思いをする人が少しでも減ることを切に願っております。
申し訳ありませんが、再度質問させて下さい。
①先生の豊富な経験から、サンプリングで取った以外のリンパ節に転移が残っっていたことはありますか。主治医にも追加廓清をしなくて大丈夫か尋ねましたが、これ以上取ると後遺症が出るかもしれないので追加で廓清はしない、とのことでした。センチネルリンパ節が微小転移ならその先のリンパ節に転移している可能性はほぼないと、どなたかの質問で拝見しましたが、その「ほぼ」を打ち消すためのホルモン療法と考えていいですか。
②ルミナールaは大人しい分すぐには再発せず10年後でも再発の可能性はあるのですよね。初めの2年間は半年毎、その後は1年毎の検査としますと主治医より説明を受けました。これで大丈夫でしょうか。
③感覚的に、わたしの再発率はどの位ありますか。
小学生の子供がおりますのでもっともっと成長を見ていたいのです。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
一部質問者の希望で非公開となっています。
それに対する質問があるので、その回答だけ示します。
「通常は無いことです。きちんとしたヴィジョンを持った手術であれば、そのようなことは無い」と言えます。
ただし、そもそも「微小転移」で追加郭清が必要か?という問題があります。
○現状では「微小転移では郭清省略をしている施設が多く(江戸川病院でも、そのようにしています)」むしろ「肉眼的転移であっても、郭清省略できる条件は何か?」に議論が移っているのが現状です。
回答
「先生の豊富な経験から、サンプリングで取った以外のリンパ節に転移が残っっていたことはありますか。」
⇒ありません。
そもそも「腋窩リンパ節再発」というものは本当に少ないのです。
特に「センチネルリンパ節に微小転移」でリンパ節再発など1例もありません。
「センチネルリンパ節が微小転移ならその先のリンパ節に転移している可能性はほぼない」
⇒その通りです。
それで、「微小転移では郭清省略が一般的」なのです。
『「ほぼ」を打ち消すためのホルモン療法と考えていいですか。』
⇒これは違います。
ホルモン療法は「全身にたいする再発予防です(腋窩も含まれますが、それが主目的ではありません)」
「初めの2年間は半年毎、その後は1年毎の検査としますと主治医より説明を受けました。これで大丈夫でしょうか」
⇒十分です。
「感覚的に、わたしの再発率はどの位ありますか」
⇒ 「pT1c, pN1mi, pStageⅡA,luminal A, NG1」と言うデータからは10年での再発率は10-15% 10年生存率は91-96%となります。
私の感覚でも、だいたいこんな感じです。
ただし、これは「タモキシフェン5年の時代のデータ」ですから、今後「タモキシフェン10年の時代となると、もっと改善する」と思います。
質問者様から 【感想3 ホルモン療法について】
田澤先生こんにちは。答えにくい質問にもご回答いただきありがとうございました。
先生のお蔭で疑問が解消され自分の状況がきちんと把握できました。
先生が「Ⅱaでも早期」と仰ってくださり本当に気持ちが楽になりました。これからホルモン療法をしっかり受けていきたいと思います。ありがとうございました。
お忙しい日々が続くと思いますがくれぐれもご自愛ください。
質問者様から 【質問4 不正出血について】
性別:女性
年齢:48歳
こんにちは。
以前質問させていただきました者です。
その節はありがとうございました。
先生に勇気と希望をいただき気持ちを強く持って今まで元気に過ごしてこられました。
本当に感謝申し上げます。
今回心配なことがありましたのでまたお願いします。
念のため、私の乳癌は以下の様な結果でした。
浸潤部 20×16×5mm
乳管内病変含めての拡がり38×24×15mm
g(+)f(-)s(-) 充実腺管癌
核グレード1 ly(0) v(0) 断端陰性
センチネルリンパ節に微小転移あり
腋窩リンパ節レベル1郭清 転移なし
エストロゲンレセプター100%
プロゲステロンレセプター100%
ki67 5%以下 HER2 1+
pT1NmiM0
ゾラデックス2年
タモキシフェン 10年 の治療予定で約3年半経ちました。
今回の質問は不正出血についてです。
私は30代から子宮筋腫を指摘されていましたが特に酷い症状もなく経過観察でした。
生理はゾラデックス注射後からありません。
タモキシフェン内服中であること、子宮筋腫が7~8cmあるとのことで定期的に婦人科を受診していて子宮内膜が肥厚してきているとは言われていましたがずっと体癌も頸がんも大丈夫でした。
ところが数日前に生理の多い日くらいの出血があり慌てて婦人科を受診しました。
体癌と頸がんの検査とエコーをしました。
「内膜が前回(5月)2cmから今回3cmになっている本来ならピルを飲めば出血は止まるけどあなたは乳がんの関係でピルを飲むわけにはいかない。
かと言ってタモキシフェンを止めるわけにはいかないから止血剤と(軽度貧血あり)鉄剤を内服しつつMRIで確認後(説明はありませんでしたが先生が"今回ポリープ様のモノあり?"と打ち込んでいました。
これの確認のためのMRI?)厚くなった内膜を掻爬する手術をして一度リセットしたほうがいい」と言われました。
田澤先生はQ&Aで子宮内膜が肥厚した場合タモキシフェンを休薬すれば
落ち着くと仰っていますが、MRIでポリープ様のモノの悪性が否定された場合でも休薬で様子を見るわけにはいかないのでしょうか。
今回の様な不正出血は肥厚した子宮内膜からジワジワと出るものなのでしょうか。
それとも子宮筋腫や、ポリープから出ているのでしょうか?
私は子宮体癌を疑われているということでしょうか。
止血剤で少し減りましたが今も出血はしています。
モヤモヤした気分で、朝タモキシフェンを飲むのを躊躇している自分がいます。
田澤先生が仰る様にタモキシフェンを止めて徐々に肥厚が治ってくるなら、或いはタモキシフェンを止めてまたゾラデックスの注射に戻して様子が見れるなら掻爬の手術は受けたくないです。
私が乳腺外科の先生に
タモキシフェンを止めるか相談したいと話したらとりあえずMRIの結果を見てから、我々から乳腺外科の先生には話しておく(総合病院です)と言われています。
私はこのまま掻爬の手術を受けるしかないのでしょうか。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「田澤先生はQ&Aで子宮内膜が肥厚した場合タモキシフェンを休薬すれば落ち着くと仰っていますが、MRIでポリープ様のモノの悪性が否定された場合でも休薬で様子を見るわけにはいかないのでしょうか。」
→それでいいと思います。
「今回の様な不正出血は肥厚した子宮内膜からジワジワと出るものなのでしょうか。」
→そう思います。
「それとも子宮筋腫や、ポリープから出ているのでしょうか?」
「私は子宮体癌を疑われているということでしょうか。」
→それはないでしょう。
「タモキシフェンを止めて徐々に肥厚が治ってくるなら、或いはタモキシフェンを止めてまたゾラデックスの注射に戻して様子が見れるなら掻爬の手術は受けたくない」
→それでいいのです。
まず、根本的な考え方として…
副作用(それが問題になる場合には)があれば、(その)『原因薬剤は休薬する。』が大原則です。
今回は、その不整出血が最初の時点では「タモキシフェンによる副作用なのか?
(もしかして)子宮体癌なのか?」からスタートします。
そこで、婦人科を受診し子宮体癌は否定された(婦人科をまず受診した質問者は正しい判断です)
それなら、(原因と同定された)タモキシフェンを休薬する。 これが正しいステップです。
(タモキシフェンを将来的に止めたいか、どうか?を判断する前に)「とりあえず、原因薬剤を止める」それが大原則なのです。
タモキシフェンを止めたうえで、LH-RHagonist併用しながらタモキシフェンを再開するかどうか?は「後で考えるべきもの」なのです。
私は、そう思います。