[管理番号:6873]
性別:女性
年齢:58歳
病名:
症状:
いつも拠り所として、乳がんプラザを拝見させていただいております。
10月初旬に右房全摘し、ホルモン療養(閉経後)を開始するにあたり、
ご相談させていただきたいことがでてまいりました。
どうぞよろしくお願いいたします。
【術後病理結果】
腫瘍の大きさ:浸潤18×12×12mm
細胞異型度Ⅲ、核異型2、核分裂3(13/10HPF)
脈管侵襲:v(-)、 ly(-)
リンパ節転移:SNL0/1、腺内0/1
ER(+95%<)、PgR(+/-;1%)、Her2/neu(0)、
Ki67;25%(抗がん剤適用はオンコの結果待ち)
1)主治医からはアロマターゼ阻害薬(アナストロゾール)を薦められております。
閉経後でも抗エストロゲン薬(タモキシフェン)の利用が可能のようですが、
どのような関係因子で両者の選択をしたらよろしいのでしょうか
2)自身のホルモン陽性型が、ER(+95%<)、PgR(+/-;1%)とプロゲステロン
が少ないのですが、それとホルモン剤選択に関係がありますか。
3)閉経後の標準治療として、以下があるようです。
田澤先生はどのように選択されていらっしゃるのでしょうか。
①アロマターゼ阻害薬5年
②抗エストロゲン薬5年
③抗エストロゲン2~3年後にアロマターゼ阻害薬2~3年
4)アロマターゼは骨粗しょう症リスクがあるとのことですが、服用開始にあわせて
骨粗しょう症予防薬も併用することが望ましいと思われますか。
両者の効用に差がないとすれば、タモキシフェンの子宮体がんリスクと、
アロマターゼの骨粗しょう症リスクのどちらをとればいいか悩んでおります。
5)抗がん剤上乗せする場合はTCを予定しておりますが、それとホルモン剤選択に
関係因子はありますでしょうか。
6)ホルモン療法をした場合としない場合の再発・転移率はどの程度の差となりますか。
お忙しいところ恐縮でございます、どうぞよろしくお願い申し上げます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「どのような関係因子で両者の選択をしたらよろしいのでしょうか」
⇒単純に…
アロマターゼ阻害剤の方が再発効果が高いことが証明されているから、それが第1選択となるのです。
「2)自身のホルモン陽性型が、ER(+95%<)、PgR(+/-;1%)とプロゲステロン が少ないのですが、それとホルモン剤選択に関係がありますか。」
⇒無関係
「3)閉経後の標準治療として、以下があるようです。」
⇒勘違いしていますね。
スイッチ(抗エストロゲン⇒アロマターゼ阻害剤)は「閉経前」の患者さんが途中で閉経した際に考えるものです。
スタートの時点で「閉経後」の患者さんには無意味な話です。
「田澤先生はどのように選択されていらっしゃるのでしょうか。」
⇒①です。(乳腺外科医の常識です)
「服用開始にあわせて 骨粗しょう症予防薬も併用することが望ましいと思われますか。」
⇒まずは骨密度を測定しましょう。
YAM(young adult mean 若年者の平均値)で70%を切る場合には骨粗しょう症の治療を併用します。
「抗がん剤上乗せする場合はTCを予定しておりますが、それとホルモン剤選択に関係因子はありますでしょうか。」
⇒無関係
「6)ホルモン療法をした場合としない場合の再発・転移率はどの程度の差となりますか。」
⇒これは、データはないでしょう。
★物事を難しく考えるのは止めましょう。
ホルモン療法の選択は「化学療法などとは無関係」に、閉経後ならアロマターゼ阻害剤なのです。(データがいいわけですから)
そして、骨密度が低下している場合には骨粗しょう症の治療も併用するわけです。