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非浸潤癌全摘後の胸壁再発

[管理番号:7457]
性別:女性
年齢:68歳
病名:
症状:

いつも拝読しています。

早速ですが今後の治療について田澤先生のお考えを伺いたく質問いたします。

2018年6月に非浸潤性乳管癌と診断され右乳房全摘手術を受けました。
その後は無治療でした。

術後10ヶ月で手術痕の近くに7ミリ程のしこりを自己触知し、生検の結果、皮膚再発と診断され現在摘出手術待ちです。

また同時期のCTでは全身への転移はありません。

こちらのQ&Aを見ますと全摘後のしこり発現や、ましてや胸壁再発など起こりえないと学んできました。

主治医も極めて稀で驚いているとのことで、
おそらく非浸潤部分が皮膚に近い所に微小浸潤していたのかもしれない。

改めて前回の病理標本の見直しを始めるということです。

これまで田澤先生のコラムやQ&Aから学んだ
私の解釈ですが、局所再発には「胸壁再発」と「皮膚再発」があると認識しています。

「皮膚に転移」という主治医の説明に「胸壁再発」では?と言葉の解釈に難じています。

皮膚に再発したので今後の治療は
1 全身麻酔で局所のしこり(生検)を広めに摘出手術
2 胸壁に放射線照射
3 並行してホルモン療法
との説明を受けました。

極めて稀という症例にたいへん動揺しております。

田澤先生のお考えをお聞かせくだされば幸いです。
よろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「術後10ヶ月で手術痕の近くに7ミリ程のしこりを自己触知し、生検の結果、皮膚再発と診断」
「皮膚に転移」という主治医の説明に「胸壁再発」では?と言葉の解釈に難じています。

→質問者の言う通りです。

 これは「皮膚転移」ではなく、単純に「胸壁再発(手術時の取り残し)」となります。

「非浸潤部分が皮膚に近い所に微小浸潤していたのかもしれない。」
→術後10か月という「短期間」を考えれば、「手術の時点で存在していた」と考えるのが普通です。(もしも術後5年以上であれば、「(残存していた正常乳腺から)新たに発生」という可能性も考えられますが…)

「田澤先生のお考えをお聞かせくだされば幸い」
→ここから先は「セカンドオピニオン」的に、私の意見を記載すると…

「1 全身麻酔で局所のしこり(生検)を広めに 摘出手術」
→これは極めて妥当

「2 胸壁に放射線照射」
→これは病理を見てからでもいいのでは?(本当に限局していて十分すぎるマージンが確保されていれば省略も可能と思います)

「3 並行してホルモン療法との説明を受けました。」
→純粋な局所再発に「全身療法が必要か?」という議論となりますが…

 初回手術が非浸潤癌で無治療だったので、新たな浸潤癌に対する(純粋な)術後補助療法としての(サブタイプに応じた)全身療法と考えれば妥当だと思います。

「極めて稀という症例にたいへん動揺」
→質問者が動揺されていることは理解できますが…

 私のように、(QandAを介して)多くの「極めて稀」と言われている症例を
(全国から受診されて)診療していると…
 それ程稀ではないことに気付きます。

★本質的な問題として「全摘(しかも非浸潤癌)後の早期の胸壁再発」というのは(質問者の癌が稀ではなく)「手術手技の問題(避難しているわけではありませんが、結果として取り残した)として稀」だということです。
 つまり「特別な(残念な)癌」という訳ではなく、「残念な手術」と解釈しましょう。(術者を非難しているわけではなく、結果としてそうなってしまった事は事実として受け止めなくてはならないのです)