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HER2陽性3+ 抗がん剤しない方向で

[管理番号:2116]
性別:女性
年齢:77歳
母のことで質問させて頂きます。
20日前に温存術を受け、組織結果が下記の通りとなり、今後の治療について決定しなければなりません。
大きさ 2.2cm
リンパ節転移 なし
エストロゲン 陽性(99%)
プロゲステロン 陽性(5%)
HER2 陽性3+
Ki-67 10%
リンパ菅浸潤 1+
静脈浸潤 1+
悪性グレード 2
担当の先生からは
・抗がん剤3~6ヵ月+抗HER2療法1年
・ホルモン治療5年内服
・放射線治療2ヵ月
を提案されていますが、年齢(77歳)と母が逆流性食道炎や胃腸が弱いことなどもあり、抗がん剤は検討するように言われています。
術後も4日間気持ちが悪く水すらあまり飲めない状況で、精神的にもかなり辛そうでした。
なので本人も抗がん剤治療は無理だと思うと言っており、家族も本人の気持ち次第だと思っています。
ただ、HER2+3ということで本来であれば抗HER2療法が効果的ということでしょうし、抗がん剤はしなくとも抗HER2療法のみ受けるということは出来ないのでしょうか?
またはホルモン治療と放射線治療と平行して、体(胃腸や気持ち悪さ)に負担なく他にできることはありますか?
そして抗がん剤をした場合としない場合の生存率などがもしわかれば、教えていただけると決心もしやすいと思うのでお願いします。
お忙しい中読んでいただきありがとうございました。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT2(22mm), pN0, luminal B(HER2タイプ)
十分な早期です。
この状況で77歳であれば「抗がん剤を選択する」ことは寧ろ稀だとは思います。
 
「本人も抗がん剤治療は無理だと思うと言っており、家族も本人の気持ち次第だと思っています。」
⇒それであれば(HER2陽性とはいえ)「luminal type」なので「ホルモン療法単剤」でいいと思います。(私が主治医なら、そうします)
 
「ただ、HER2+3ということで本来であれば抗HER2療法が効果的ということでしょうし、抗がん剤はしなくとも抗HER2療法のみ受けるということは出来ないのでしょうか?」
⇒あくまでも「抗HER2療法は(通常の)抗癌剤を併用する」ことでのデータなのです。
 Trastuzumab(ハーセプチン)単剤の治療には全くエビデンスがなく「適応もない」のです。
「またはホルモン治療と放射線治療と平行して、体(胃腸や気持ち悪さ)に負担なく他にできることはありますか?」
⇒他にはありません。
 
「そして抗がん剤をした場合としない場合の生存率などがもしわかれば、教えていただけると決心もしやすいと思うのでお願いします。」
⇒「抗HER2療法をしない場合」と「抗HER2療法をした場合」で「乳癌が再発する確率」と「乳癌により死亡する確率」は

「抗HER2療法をしない場合」 「抗HER2療法をした場合」
3年再発率 14% 7%
3年(乳癌が原因で)死亡する率 4% 3%

○77歳と言う年齢からは「他病死が多く」単純に「生存率」で議論しても仕方がありません。
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日はお忙しい中、早速のお返事ありがとうございました。
先生のアドバイスをお聞きできたことで、母も家族もどれだけ気持ちが楽になったことか!本当に感謝しております。
引き続き質問させていただいます。
(経過)
1週間前に担当の先生の診察があり、抗がん剤は使用せず放射線+ホルモン治療でお願いしますとお伝えしました。
まだ術後の赤み(母は皮膚も弱い体質です)が引かないので、放射線は落ち着いてから、ホルモン治療を先に始めましょうということで、フェマーラ2.5㎎を処方され、1週間服用したのですが・・・
もともと逆流性食道炎のうえ胃弱のため、日増しに副作用と思われる胃もたれ・食欲不振にストレスも加わり、もう飲めないと言っております。
実際痩せてきてしまって続けるのは無理そうです。
担当の先生とは次回診察時に相談の予定にしております。
予想として、落ち着いたら他のホルモン剤はどうか試してみましょうとなりそうですが、母の場合、もし次回同じように苦しむ結果だと、もう3回目はやらないと思われます。
(質問)
①ホルモン剤の種類云々というより、薬自体を飲むことが厳しいと思われますか?また、もし最後に試すとしたらどのホルモン剤がよいと思われますか?
②量を減らすことで継続することも検討できますか?
(ネット検索でフェマーラ2.5㎎は1.0㎎でも期待できるというような内容がありました)
③これもネットですが、「副作用を考えると70歳以上のホルモン治療はアロマターゼ阻害薬よりSERMが好ましいかも」というのがありましたが、どう思われますか?
④前回のお返事で「抗HER2療法をしない場合」の3年再発率・3年死亡率を教えていただきましたが、さらにホルモン治療もしなかった場合はどうでしょうか?
抗がん剤は無理だとしても、ホルモン剤はなんとか頑張ってほしいと家族は思っていたのですが、食事も普通にできず日常生活もままならない状態では、それこそ何のために生きているのかわからないので、母にできる範囲のことを見つけられればと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
お忙しい中読んでいただきありがとうございました。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「1週間前に担当の先生の診察があり、抗がん剤は使用せず放射線+ホルモン治療でお願いしますとお伝えしました。」
⇒良く考えた上でであれば、いいと思います。
 
「フェマーラ2.5㎎を処方され、1週間服用したのですが・・・日増しに副作用と思われる胃もたれ・食欲不振にストレスも加わり、もう飲めないと言っております。実際痩せてきてしまって続けるのは無理そうです。」
「予想として、落ち着いたら他のホルモン剤はどうか試してみましょうとなりそうです。」
⇒通常はそうなります。
 
「(質問)①ホルモン剤の種類云々というより、薬自体を飲むことが厳しいと思われますか?」
⇒そんなことはないでしょう。
 
「また、もし最後に試すとしたらどのホルモン剤がよいと思われますか?」
⇒「フェアストン」です。
 「アロマターゼインヒビター」では同じ事になる可能性があります。
 
「②量を減らすことで継続することも検討できますか?」
⇒それは(他の薬剤がどうしても駄目な時の)「最終手段」です。
 
「③これもネットですが、「副作用を考えると70歳以上のホルモン治療はアロマターゼ阻害薬よりSERMが好ましいかも」というのがありましたが、どう思われますか?」
⇒と、いうことで「トレミフェン(フェアストン)」でもいいと思います。
 
「④前回のお返事で「抗HER2療法をしない場合」の3年再発率・3年死亡率を教えていただきましたが、さらにホルモン治療もしなかった場合はどうでしょうか?」
⇒ (ホルモン療法をしない場合)のデータは10年となります。
ホルモン療法もしない(無治療)では
10年再発率「40%」
10年(乳癌が原因で)死亡率「20%]
となります。
 
○「77歳」とは、平均余命までは10年あるのです。