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針生検の侵入跡が摘出病変に検出された場合

[管理番号:7796]
性別:女性
年齢:45歳
病名:乳癌 右乳癌部分切除術後、ER-, PgR-, HER2 1+, Ki67 79%、浸潤径9mm
症状:

術後の病理結果で、切片10数枚のうちの1枚だけ、腫瘍から離れた部位で切断端ギリギリのところに、ボールペンで突いたような点がありました。

質問1
うろ覚えですが、病理医のコメントは、針生検時の侵入経路といったようなことが書かれていましたが、これを断端陽性とは言わないのでしょうか?

質問2
針生検を受けた病院と手術を受けた病院は異なりますので、針生検の侵入経路を含めて執刀医が摘出するのは難しかったのでしょうか?

質問3
針生検のトラクトに腫瘍のインプラントがあったと考えられるのであれば、温存乳房に腫瘍組織が残っていると考えられますか?yesであれば、主治医に何の検査を求めるべきでしょうか?

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

このメールを読む限り…
質問者は勘違いをされているのではないかと危惧します。

Biopsy tract=癌ではありませんよ?
たまたまbiopsy tractに癌細胞が確認できれば、その部位は断端陽性となるでしょう。

「質問1 うろ覚えですが、病理医のコメントは、針生検時の侵入経路といったようなことが書かれていましたが、これを断端陽性とは言わないのでしょうか?」
⇒上記通り。
 (癌細胞を含まない)ただのbiopsy tract(瘢痕)という意味では?

 ★無論、瘢痕自体は癌ではないので断端云々とは無関係です。

「質問2 針生検を受けた病院と手術を受けた病院は異なりますので、針生検の侵入経路を含めて執刀医が摘出するのは難しかったのでしょうか?」
⇒そもそも…
 
 Biopsy tractは切除が必須ではありません。(殆どのtractに癌細胞が生着していないこと+放射線をかけるから)

「質問3 針生検のトラクトに腫瘍のインプラントがあったと考えられるのであれば」
⇒そもそも、その前提に誤りがあるようです。(癌細胞の生着があれば、病理レポートに明記される筈です)

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

TNBC術後1年です。

性別:女性
年齢:45歳
病名:乳癌(右)
症状:
投稿日:2020年7月10日

昨年、針生検の瘢痕について質問したものです。

術後療法を決めかね、セカンドオピニオン医を訪ねた際のコメントに「CNBのトラク
トに腫瘍のインプランテーションがあったこ
と、Ki67が高めなこと…アンスラ→タキサンを勧めます」と書かれたので、気にして
いました。

術後病理の結果は電子カルテから書き写しながら、主治医の説明をメモしたのでつじ
つまが合わない表現があるかもしれません。

浸潤径9mm×6mm
TNBC
Ki67: 79%(hot spot)
NG: 3(NA:3, MC:3)
n0
脈管侵襲なし
Central necrosis (+)
断端→針生検の飛んだところが1つプラス
因みに、術前の針生検では

ERは、all red法で5+1(初診)
転院先で、初診時の標本を使って再検査して5+でした。

質問1
2018年版乳癌取り扱いGL② BQ4では、ER, PgRどちらかが陽性なら内分泌療法考慮。
占有率が低い場合はリスクベネフィットに基
づき内分泌療法可否を決定と書かれていました。
私の場合、ER5+は内分泌療法のベネフィットなしと考えられるのでしょうか?
主治医からは一切の内分泌療法の提案がなく、粛々とddAC, wPTX12(※AC4回目は副
作用のため中止)、放射線50Gy25回を終え、
無治療期間に入りました。

質問2
術後は半年ごとの検診です。
3カ月の方もいますが、半年で妥当なのでしょうか?
10年以上前の英語の論文ですが、
TNBC、Central necrosis、Grade別のDFSを書いたものを見つけて、私の場合再発リス
クが高いのではないかと危惧しています。

先生なら、私のような患者はどれくらいの頻度で検査/診察しますか?

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは田澤です。

まず、免疫染色について以下に掲載します。
質問者は★に相当します。
(参考のためにJ-scoreも掲載します)

 100の細胞の内1個が染色されれば「1%」となります。
 この%を用いた判定法がJ-scoreです。

 J-score
  Score 0:染色される細胞が無い
  Score 1 〃     1%未満
  Score 2 〃     1~10%
Score 3 〃     10%以上(50%未満を3a, 50%以上は3b)
    Score 0を陰性
    Score 1,2を境界域
    Score 3を陽性

⇒更に「染まっている割合」と「染まっている濃度(強度)」の組み合わせがAllred
scoreです。

 Allred score
  染色細胞割合(PS) 1:染色される細胞が0~1/100
2:    〃   1/100~1/10
3: 〃   1/10~1/3
4: 〃   1/3~2/3
5: 〃   2/3~1★

染色強度(IS) 0:全く染まっていない
          1:弱く染まっている★
          2:中間程度に染まっている
           3:強く染まっている。

  ♯判定基準 染色細胞割合(PS)+染色強度(IS)=TSとして3以上を陽性

「質問1
2018年版乳癌取り扱いGL② BQ4では、ER, PgRどちらかが陽性なら内分泌療法考慮。
占有率が低い場合はリスクベネフィットに基づき内分泌療法可否を決定と書かれていました。
私の場合、ER5+は内分泌療法のベネフィットなしと考えられるのでしょうか?」

⇒Allred scoreはPS+IS=TSとなり3以上が陽性なので
 質問者の場合にはPS5+IS1(2/3以上の細胞で弱く染色ということ) 陽性となります。

「3カ月の方もいますが、半年で妥当なのでしょうか?」
⇒基本的に…

 ホルモン療法している場合には「3か月処方」なので「3か月に1回通院」が必要です。(質問者のいう「3か月の方」は、ほぼ間違いなくホルモン療法している方でしょう)
 質問1の回答のようにホルモン陽性なのでホルモン療法するとすれば「当然」3か月となります。

「先生なら、私のような患者はどれくらいの頻度で検査/診察しますか?」
⇒ホルモン療法で3か月に1回通院するなら…

 3か月毎に診察エコー
 半年に1回 採血マーカー
 1年に1回 マンモグラフィー

 
 


 

質問者様から 【結果3 】

術後2年 職場検診で肺結節影
性別:女性
年齢:47
病名:乳癌 右
田澤先生の診察:[診察なし]
田澤先生の手術:[手術なし]

主治医が、他院の針生検結果は参考にしない、手術で取った検体の病理結果でER/PgRがゼロ(という表現をしました)だったのでトリネガの標準治療をしたと回答しました。
先立って、東北地方にいる2nd opinionの先生にも相談しましたところ、仮にホルモン療法するにしても意味合いが異なる、と言われたことも相まって、ホルモン療法をしたいとは言えず、術後1年検診は終わりました。

術後1.5年(放射線治療から10カ月後、職場の検診で肺結節影を指摘され、主治医のもとでCTを撮り「放射性肺臓炎(疑い)」の診断でした。

術後2年でALPとCaが基準値を超えたため、1か月の今月中旬に採血して経過を見ることになっています。
この時、肺のフォローをしてもらうつもりです。

<Q&A結果>