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ホルモン療法中の反対側の乳がんの術後治療について

[管理番号:1361]
性別:女性
年齢:51歳
田澤先生
初めまして。
今後の治療について、ご助言を頂きたく相談をさせていただきたいと思いますのでよ
ろしくお願いいたします。
【経過】
2007年 44才 左浸潤性小葉癌により右乳房温存術
下記病理結果①により、閉経前により、放射線療法+ホルモン療法(ゾラデックス1
回/4週、タスオミン服用)→ゾラデックスは3年間施行しました。
【病理結果①】
大きさ2センチ以下(1.5×1.8)、ER 陽性 PgR 陽性(共に80%以上)
HER2 (-)、グレード1、リンパ節転移1個、脈管侵襲(-)
ゾラデックス施行中は、生理も止まっていましたが、終了後は年に数回(2~3回)
生理様の出血があります。採血では、完全閉経とは言えないと言われていました。
3ヶ月に1回受診、6カ月に1回採血+エコー 年に1回全身CT、マンモグラ
フィーを行っていました。タスオミン服用中(7年目)の2015年7月定期のCT
検査で、右乳房に異常が見つかり、針生検→組織針で乳がんと診断され、9月に右乳
房温存術を行いました。病理結果は下記②のとおりです。
【病理結果②】
・組織型 硬癌
・浸潤径 0.6cm
・リンパ節転移 3個
・ホルモン感受性 ER、PgR共に強度陽性
・HER2 (-)
・核異型度(1)
・Ki-67 17.7%
・脈管侵襲 あり
・乳がんのタイプ ルミナルA
ホルモン療法施行中の、反対側への乳がんという事で、現在はタスオミンは服用して
いません。
今後の治療については、放射線+ホルモン療法(改めて、女性ホルモンの値を確認し
て、アロマターゼに変更)ですが、主治医としては、ルミナルAではあるが、「リン
パ節転移、脈管侵襲もあり、ホルモン療法の効きが悪いような気がするので、抗がん
剤もおこなうことが望ましい。」ということでした。
そこで、ご相談です。
① 病理結果や経過から、抗がん剤をおこなうことは望ましいのでしょうか?
② 効果としては何%くらいになるのでしょうか?
③ もし、化学療法を行うとしたら、どのような内容になるでしょうか?
④ ER、PgR共に強度陽性ですが、ホルモン療法の効きが悪いということが、良
く理解できないのですが、そのようなことがあるのでしょうか?そのような場合、治
療はどのようなものになるでしょうか?
何も効果がないのではないかと、不安に感じております。
勝手な希望としては、ホルモン剤の変更により治療を行い、上乗せ効果があまりない
ようであれば、化学療法は避けたいと考えています。
長文になりましたが、主治医からは、来週(10月15日頃)にはどのような治療を
行うのか考えてきてくださいと言われております。
大変恐縮ですが、先生のお考えを教えて頂けると幸いです。
追記
33歳の時に、生理前になると右乳頭より出血があり、乳がんが疑われ、色々と検査
も行なっていましたが、異常ないと言われ経過を見ていました。左乳がんのホルモン
療法が始まると出血はまったくなくなり現在に至っております。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「ホルモン療法中の(ホルモン感受性陽性の)対側乳癌」ですね。
こういうケースでは「ホルモン感受性の低い」乳癌がでることが多いですが、「ホル
モン感受性が強陽性」であるのに「タモキシフェンが効かずに」増殖したことになります。
一般的には「タモキシフェン不応性」と考えるべきで、「術後補助療法としてのタモ
キシフェンは不要」と思います。
ここで焦点があたるのが「LH-RHagonist」と思います。
数年間「LH-RHagonist」を用いて、「終了しても閉経である頃」に「アロマターゼイ
ンヒビターへ変更」というのが「一つの選択肢」だと思います。
担当医のいうように「内分泌療法抵抗性のルミナールA」として「抗がん剤」という
選択肢も勿論あります。
私であれば、「この2つを提示」して「ご本人が化学療法に乗り気でない」場合には
LH-RHagonistとします。

回答

「病理結果や経過から、抗がん剤をおこなうことは望ましいのでしょうか?」
⇒冒頭でコメントした通りです。
 間違いなく、選択肢の一つとなります。
 
「効果としては何%くらいになるのでしょうか?」
⇒上乗せ効果は「3.6%程度」となります。
「もし、化学療法を行うとしたら、どのような内容になるでしょうか?」
⇒TC療法です。
 「ドセタキセル+エンドキサン」を3週間毎に点滴して4回(3カ月間)行う方法です。
「ER、PgR共に強度陽性ですが、ホルモン療法の効きが悪いということが、良く
理解できないのですが、そのようなことがあるのでしょうか?そのような場合、治療
はどのようなものになるでしょうか?」
⇒冒頭で示した通りです。
 「タモキシフェンで、全てのホルモン感受性乳癌が抑えられるわけではない」事を
示しています。
 だからといって、「LH-RHagonist」や(閉経後に行う)アロマターゼインヒビター
も無効とは限りません。
 
「勝手な希望としては、ホルモン剤の変更により治療を行い、上乗せ効果があまりな
いようであれば、化学療法は避けたいと考えています」
⇒上乗せ効果が低い(上記)であり、ご本人のご希望からは「LH-RHagonist」単剤⇒
数年後アロマターゼインヒビターを(私なら)選択します。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
早速のご回答をありがとうございます。
化学療法の効果については低いということから、本人の希望からは「LH-
Rhagonist」単剤→数年後アロマターゼインヒビターを選択するということについて
理解することができました。
この数日、色々と考えております。
そこで、大変恐縮ですがもう一つ質問させて下さい。
「本人の希望から」ということについてですが、本人の希望がなければ、望ましいの
は抗がん剤という事でしょうか?
それとも、抗がん剤とホルモン療法では、あまり効果として変わりないので「どちら
でも構わない」という理解でよろしいでしょうか?
自分の勝手な思いから、必要な治療に向き合っていないのではないか・・・とも、考
えてしまいます。
自分の選択に自信が持てず、改めてこのような質問をさせていたたくことをお許しく
ださい。
宜しくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
タモキシフェン不応性の「luminal A乳癌」の術後補助療法ですね。
化学療法の効果は低く、「積極的に化学療法の追加」が望ましい状況ではないと思います。

回答

「本人の希望がなければ、望ましいのは抗がん剤という事でしょうか?」
⇒どちらが望ましいというものでは無いと思います。
 私の感覚では「LH-RHagonistと化学療法は同等」ではないかと思っています。
 
「抗がん剤とホルモン療法では、あまり効果として変わりないので「どちらでも構わ
ない」という理解でよろしいでしょうか?」
⇒その通りです。