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超音波とマンモグラフィで判断出来ないしこりについて

[管理番号:154]
性別:女性
年齢:39歳
初めまして。
今回、表題にあります内容について是非先生にお伺いしたく投稿致します。
 
今年の1月に右胸の端(脇側)にしこりをみつけました。始めはその部分の皮膚だけにチリチリした痒みがあったのでおかしいな?と触って気がつきました。
2月半ばになり、右脇の下に張ったような感じとその部分に少し痛みを感じ、とにかく近隣のクリニックを受診したところ、マンモグラフィと超音波を撮り本日結果を聞いて参りました。
以下が本日のお話でした。
 

  1. マンモグラフィでは両胸ともあまり気になるところは見られない。
  2. 超音波では、右胸の痛みがあるしこりについては、乳腺に繋がっているのは解るが広がり方などよくわからない。来週クリニックで造影剤MRIを撮り、今後は今までの情報を持って大きな病院に行くように。(7~8センチだそうです)
    またそれとは別に、右胸上に0.8センチの怪しいものがあり、それは良くない感じがする。

との事でした。
今、私が不安でお伺いしたいのは

  • 大きくて少し痛みがある方のしこりは悪性の可能性があるでしょうか?(皮膚や見た目には何も症状は出ていません)
  • 脇の下の張った感じはリンパ節になにかしらの転移?などがあるということでしょうか?(超音波結果では何も言われませんでした)
  • 新たに見つかった小さなものが悪性だった場合、今後どのような治療となるのでしょうか?

大きな病院に行くように紹介状を出すと言われ、とても不安になってしまいました。
まだMRIを撮っていないのにそう言われるのは、既に進行したものなのでは、と怖くて仕方がありません。
長くなり申し訳ございません。
先生のご意見を是非お伺いしたくお願い申し上げます。

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「痛みがある大きなしこり」と「(それとは別の)0.8cmの怪しいしこり」という事ですね。
 それでは回答します。

回答

「大きくて少し痛みがある方のしこりは悪性の可能性があるでしょうか?」
⇒悪性(乳癌)の可能性は低いと思います。
 7~8cmもの乳癌があったら、診断に苦慮することはないでしょう。
 
 「痛みや張りがあることより、乳腺症なのか?」と思いました。
 「乳腺に繋がっているのは解るが広がり方などよくわからない。」というクリニックの医師のコメントからは、「はっきりとした腫瘍」(例えば線維腺腫や葉状腫瘍など)ではないような印象です。
 
「脇の下の張った感じはリンパ節になにかしらの転移?などがあるということでしょうか?」
⇒リンパ節の症状では無いと思います。
 症状の感じは「乳腺症」に伴う「脇の下の張り感」のように思いました。
 ●「超音波結果では何も言われませんでした」という事は「リンパ節腫張は無かった」ということを示しています。
 もし「腋の下の張り」がリンパ節腫張であれば、その所見についてコメントしない事は考えられません。リンパ節腫張は無いと思います。
 
「新たに見つかった小さなものが悪性だった場合、今後どのような治療となるのでしょうか?」
⇒0.8cmと小さいことから、手術(乳房温存術)⇒(術後)放射線照射 をまず行います。
 ※全身療法としては癌の性質によって内分泌療法と抗がん剤治療の使い分けを行います。
 (内分泌療法感受性がある場合には内分泌療法、内分泌療法感受性が無い場合には化学療法が適応となります)
 
「まだMRIを撮っていないのにそう言われるのは、既に進行したものなのでは、と怖くて仕方がありません。」
⇒「進行したもの」ということは無いと思います。
 そもそもMRIは診断には必須のものではありません。
 単に「大きな病院」へ紹介するための資料として撮影するつもりだと思います。
◎本来、診断にMRIは全く不要です。
 今回に関しては、「7~8cmのしこり」と「0.8cmのしこり」の両方を針生検すれば済む話です。
 
 

私の感想

 何故、そのクリニックでは針生検をしないのでしょうか?
 「大きな病院」を紹介するためにMRIを撮りたいというだけだと思います。
 とにかく、その2つのしこりを針生検してもらい「確実に」診断してもらってください。
 それほど心配する状況では無いと思います。
 
 

質問者様から 【感想2】

大変わかりやすくご丁寧にお返事を頂き本当にありがとうございました。
正直、クリニックの先生の説明よりわかりやすく家族共々少し落ちついて考える事が出来ました。
 
本当はすぐにでも乳腺専門の大学病院に行きたかったのですが、大学の初診は紹介状が無いと受け付けないと言われ、その紹介状を貰う為に近隣のクリニックを受診したのでした。
また痛みもあったので少しでも早く現状が知りたい気持ちもありました。
 
しかし、マンモグラフィから数日後に超音波、その数日後に説明、そこからまた数日後にMRIを撮りましょう…と、結局、紹介状を書いて頂くまで既に2週間以上かかっています。
また、そのクリニックは乳腺専門では無いため針検査はできないのだそうです。
だったら尚更、早く大学病院に紹介して頂けないかお願いしましたが、MRIまで全部終わらせないと書けない!と怒られてしまいました。
正直、そのクリニックにはもう不信しかありませんので、大学病院できちんと検査をして貰いたいと思います。
 
痛くて急ぎたくて、近隣の病院に飛び込みましたがやはり乳腺専門の病院に待ってでも行けばよかったと後悔しました。
 
今悩んで不安な方も、私と同じ目に合わないと良いなと思います…しっかりとした乳腺専門の病院である田澤先生の病院に始めから行っていたらよかったなと今は思います。
いつか母や友人が同じ悩みを持ったら、そのように勧めようと心に決めました。
 
この度は、お忙しいところをお返事頂き本当にありがとうございました。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生、前回はお返事を頂きありがとうございました。
案の定、ブランド病院ではまたいちからマンモと超音波を受け続いて針生検を受けました。
ブランド病院のほうで新たにしこりがみつかり、計2つのしこりを検査したところ、1つは良性、最終のクリニックから疑わしかった8ミリの腫瘍がどうやら癌らしいとなり、来週バコラ生検を行ないます。
そこで質問なのですが、

  • 今回のバコラ生検は癌のタイプを検査するものなのでしょうか?
  • 先生からは早期発見だから大丈夫とはいわれていますが、部分切除で済むということでしょうか?
  • 他にも嚢胞や痛みのある乳腺症が同じ胸なあるので、今の所早期だからリンパ節転移はないと言われていますが、私は思い切って全摘にして同時再建を希望しようかと考えています。その場合は抗がん剤やホルモン療法も省くことができますか?
  • もしくは、術中リンパ節生検でひとつでもひっかかれば、全摘でも抗がん剤は避けられない=同時再建は無理と言う事でしょうか?

今の所、全くそういった説明がなく、というかバコラ生検で見てから、との事でしたので、私としては先の予定が立てられず困っています。
通常でしたら、どのようにすすむのでしょうか?
また、前回田澤先生が仰っていたように、部分切除からの抗がん剤の流れが一番よいのでしょうか?
検査、検査が長すぎて結局2ヶ月かかってます。早く先を決めて覚悟を持ちたくてモヤモヤしています。
緊急ではありませんので、お時間宜しい時にお返事を頂けましたら大変有難く存じます。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答3】

 おはようございます。田澤です。
 先月初め頃に「これから大学病院へ紹介状をもらいます」という状況だったと思います。
 大学病院だから「フットワークが悪い」のだろう。と予想はしていましたが、まだ診断まで至っていないのには心底驚いています。
 質問者には悪いですが、「何だ、これは?」というのが正直な第1印象であり、さすがに黙っていられない怒りにも似た気持ちが湧きあがっています。
 「緊急ではありませんので」という質問者のコメントに「癌があやしい」と言われながら「2カ月も診断がつかない状況」で、全く先が見えていない「諦めの心境にいるのではないか」と大変心配になります。
 ブランド病院も(悪気は勿論無いのでしょうが)診断だけでも早くしてあげないと「多くの患者さんを不安にし、中には実際に不幸にもしている」という自覚を持ってもらいたいものです。
 
【少し脱線します】
 それでもブランド病院が「ブランドである由縁」は例えるなら、(行列のできる)ラーメン屋に並んで食べたラーメンは(実は美味しくはなくても)あとで友人に「あの有名なラーメン屋で食べたよ」と言えるし、(何となく)いいものを食べた(という幻想)が時に心地よいのでしょう。
 「実際に行われている資料を知っている私の気持ち」を例えるなら、「人気チェーン店のラーメン」の何処がうまいんだろう?(大して修行もしていない、若者が沢山で作っている下手なラーメンなのに) と嘆いている「頑固親父のラーメン屋」店主の気持ちにも似ています。
 つい余計なことを書いてしまいました。
 ただ、今回のケースを見て(質問者だけへのメッセージではなく)この「QandA」をみてくれている人たちが今後、「間違った選択」をしないで済むように、今後も 訴えかけないといけない。と考えさせられました。
 
それでは(脱線が過ぎてしまい、すみません)回答します。

回答

「今回のバコラ生検は癌のタイプを検査するものなのでしょうか?」
⇒(最初に行った)針生検で「診断がつかなかった」のです。手技技術の問題でしょう。
 本来であれば、(最初に行った)針生検で「癌の確定診断」がされるべきですが、「サンプリングミス(組織量が足りない)」などで「癌の確定にいたらなかった」ために、再度「吸引式針生検(バコラ)」で再検しようとしているのです。
 (と、いうか)それさえも担当医から説明が無いのは、大変嘆かわしい事です。
※「癌のタイプ」は通常の「針生検」でも普通に判明します。
 
「先生からは早期発見だから大丈夫とはいわれていますが、部分切除で済むということでしょうか?」
⇒(話のながれから、出たコメントだと思われますが)
 「部分切除でも十分いける」という意味と「転移再発等心配しなくていいよ」という両方の意味が考えられます。
 
「思い切って全摘にして同時再建を希望しようかと考えています。その場合は抗がん剤やホルモン療法も省くことができますか?」
⇒できません。
 乳がん治療は「局所療法=手術±放射線」と「全身療法=抗癌剤、ホルモン療法」に分けて考えなくてはなりません。
★大事なことは「局所療法」と「全身療法」は全く独立していることです。
 つまり「局所療法」として今回「乳房切除(再建)」か「乳房温存+術後放射線」を選択することは可能です。ただしこれは「純粋に局所療法で何を選択するのか?」であって、その後に行う「全身療法」とは全く無関係なのです。
 
「もしくは、術中リンパ節生検でひとつでもひっかかれば、全摘でも抗がん剤は避けられない=同時再建は無理と言う事でしょうか?」
⇒誤った理解をされているようです。
 理由は(抗癌剤ではなく)『放射線照射』です。
 抗癌剤治療の適応についても「誤解」があるので、それぞれを説明します。
 
「同時再建について」
術中センチネルリンパ節生検で「リンパ節転移陽性」とでた場合、同時再建を見合わせる根拠
⇒術中センチネルリンパ節生検で陽性となった場合には「追加郭清」が行われます。
 そうすると、最終的にリンパ節転移数が4個以上になる可能性がでてきます。
 (リンパ節転移が4個以上の場合には、乳房切除であっても放射線照射をした方がいい 推奨グレードA)
 ★「同時再建」してしまっていると「放射線照射ができない」のです。つまり(抗癌剤ではなく)『放射線照射』の可能性が、その理由です。
 
「抗癌剤の適応について」
 抗癌剤治療の適応は、あくまでも『サブタイプ』です。リンパ節転移の有無ではありません。
 「ホルモン療法が効くタイプでは、ホルモン療法を行うし」(例えリンパ節転移があっても)「ホルモン療法が効くタイプであり、HER2陰性で更に(Ki67など増殖指数が低ければ)」抗癌剤は行いません。
 
◎ひとり言
 昨日手術をして、今朝元気に退院される患者さんを日頃みている私にとって、「不幸な患者さんたち」が何と多い事か。と考えさせられます。
 私が少しでも力になれれば…
 ひとり言でした。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生、お忙しい中を迅速にご対応頂きまして本当にありがとうございました。
抗がん剤治療や放射線と局所療法についての説明がとても解りやすく、有り難かったです。
針生検で結果がわからなかった理由も先生のご説明でなんとなく想像がつきました。
実際、針生検の時にその疑わしいしこりは「細胞が足りなかった」との事で2回針を刺されました。きっと、やはりそれでも足りなかったのでしょうね…
今回、ブランド病院と言われる病院を選択したのは私の両親の意向もありました。
癌の家系であること、親族もその病院にかかった事があることが選択の理由となりました。
また、私自身も、近隣のクリニックで癌と疑わしいと言われたショックで思考が上手く働かなかったこともあり、選択を周りに任せてしまった責任もあると自覚しています…今更になってしまいますが。
 
癌の専門病院では、もっと重度かつ緊急の患者さんが沢山いるのだと思います。
手術についても、患者数が多いことと待っている方が多いからとの理由で、”癌と確定診断された順番に行ないます”とHPにも記載されていました。
(それもあって、私のような軽度?の場合は確定診断をあえて言い出さないのかなとも思いました)
 
しかし、例え早期発見で軽度であるにしても、癌が身体の中にあるということ、そのような病気の経験が全く無い身にしますと大変心が不安定になるものです…ですが、そのようなことは勿論、言い出せるはずもありませんが。
 
田澤先生は”脱線しますが”と、色々なお話を書いて下さいましたが、このような状態の私にとっあては心に思っていたことを代弁して頂いたようで少し心が軽くなりました。
ありがとうございました。
 
手術までにはまだまだ掛かりそうですが、自分でも病気について勉強して対応していきたいと思いました。
またお伺いさせて頂く事もあるかと思いますが、その際はどうぞ宜しくお願い申し上げます。
ありがとうございました。
 

田澤先生から 【回答4】

 「病院に対する不満も受け入れながら」ご自分を納得させていらっしゃるようで頭が下がります。
 きっと、「ブランド病院」で「診断や手術までの長い道のり」を(他の多くの方々も)そのように納得されているのだろう。と私も勉強になりました。
 勿論、質問者のそのような選択にこれ以上異議を申し立てるつもりはありません。
 ただ、ようやく(長い期間をかけて)診断が確定された揚句に、今度は手術までに「3カ月待ち」などとなったら、それで本当に後悔しないのか。もう一度考えてください。
 癌は待ってはくれないのです。
 私の家族であれば、とても考えられない事です。
 最後に余計なことを言ってしまいました。
 当然質問者は、そこまで考えての選択でしょうから。
 
 江戸川病院 乳腺センター 田澤篤