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がん診断後、検査の順番や不要な検査について。 ●初期で全摘になる石灰化の状況

[管理番号:7062]
性別:女性
年齢:40歳
病名:乳がん
症状:マンモで石灰化あり。しこりなし。エコーと細胞診で乳がんと診断され、詳しい説明はうけていません

40歳女性です。


夏から体調が悪く、11月半ばに検診のマンモで石灰化あり→精検になりました。

12月半ばに総合病院の乳腺外来で精検でマンモとエコー。
エコーで左胸に怪しい所見があり、細胞診→乳ガン確定と診断されたばかりです。

しこりはなく、まだ極初期で命には関わらない程度しか説明がなく、告知直後に術前検査の肺活量、心電図、CT、MRI、骨シンチ、マンモトーム、エコー所見の針生検など、たくさんの検査の予約を次々と取らされました。

初期で大丈夫と言われたのに、転移検査の予約を取らされたり、初期なのに全摘&再建で話が進み、温存の選択肢がなかった事で頭が混乱してしまいました。

私が動揺し出すと、担当医はめんどくさくなったようで、予約は一旦キャンセルし、年明けに家族を連れて、再度説明を聞きにくるよう言われました。
夏からの体調不良の予兆の訴えは鼻で笑われました。
気持ちのフォローはなく、突き離されたようでとても悲しかったです。

年末年始の休暇中、一人で不安で不安で、ネット検索で先生の質問コーナーに辿り着き、ようやく乳がんの事が少しずつ理解できてきました。

前文が長くなりましたが、質問は、
①無駄な検査を避けたいが、たくさんある検査は言われるがまま、全部受けなくてはならないか?
(今の病院はCTは急ぐと言われたが、順不同で空き枠に詰め込もうとしていた)

②超初期の段階と説明されたのに、全摘で話が進んだわけは微細石灰化が拡がっている(マンモの画像の説明時、石灰化が多い、と担当医がつぶやいていました)為なのか?
石灰化がどの程度拡がっていたら全摘は避けられない?温存できる可能性はあるか?

針生検なしに、1回の細胞診で診断名がついたのですが、通常より悪い状況なのかな、、、年末年始にかかり、検査がどんどん遅くなっているのもとても不安です。

充分な説明で納得の上、安心して任せられる病院やお医者様選びが一番と痛感しています。

まだよくわからない段階で恐縮ですが、わかる範囲でご返答と今後をご指導いただけたらと思います。

また、遠方ですが状況によっては貴院に転移も考えています。
手術申し込み希望のメールも併せて送っています。
どうぞよろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

今朝「秘書メール」の方はすでに読んで回答しています。
このメールに回答するにあたり、Key pointを挙げておきます。

細胞診による診断について
1.細胞診は確定診断とはならない(必ず組織診が必要)
2.細胞診の偽陽性率は1%である。
3.細胞診では「浸潤なのか?非浸潤なのか?」までは判断できない。

→つまり質問者は(現段階で)99%乳癌と確定しているが、浸潤の有無は確定されていない(非浸潤癌の可能性がある)ということです。
 ♯超音波で所見があるとはいえ、石灰化病変の場合には非浸潤癌の可能性も十分にありそうです。(担当医の「極初期」というコメントも、その可能性を示唆しています)

全身検査について
1.乳癌は初期治療の段階で遠隔転移している可能性は非常に低い(5%以下) 特に(自覚症状のない)「検診発見乳癌では、その確率はほぼゼロ」となります。
2.非浸潤癌では癌細胞が乳管内に留まっているので、遠隔転移することはない。

→(非浸潤癌の可能性も十分にある)質問者に(遠隔転移の検索のための検査である)CTや骨シンチは全く不要です。(これらの検査をルーティーンに行っている病院がありますが、「被爆面」「医療経済面」で絶対に反対です)

術式について
石灰化病変の場合には「最低限、石灰化の範囲(マンモグラフィーで)は全て切除」
+「MRIでの拡がりも全て切除」となります。
→質問者が(全摘を前提として)話をされているとすれば、「石灰化の範囲が狭くはない」のだと思います。

 実際にマンモグラフィーでの石灰化の範囲を確認の上、MRIも撮影して術式決定(温存可能なのか?)判断することになります。

「①無駄な検査を避けたいが、たくさんある検査は言われるがまま、全部受けなくてはならないか?」
→不要です。(上記コメント通り)

 たとえ浸潤癌であったとしても遠隔転移の可能性は(実際には)殆どありません。
 まして、(細胞診だけの診断=非浸潤癌の可能性も十分にある)今の段階で「ルーティーン検査として遠隔転移検査(CTや骨シンチ)を行う」ことは、全く賛成できません。

「(今の病院はCTは急ぐと言われた」
→「極初期」と言っておきながら「CTを急ぐ」とは、「矛盾そのもの」です。

「②超初期の段階と説明されたのに、全摘で話が進んだわけは微細石灰化が拡がっている(マンモの画像の説明時、石灰化が多い、と担当医がつぶやいていました)為なのか?」
→おそらく、ここは(その程度は無論不明ですが)その通りでしょう。

「石灰化がどの程度拡がっていたら全摘は避けられない?」
→上記コメントどおり…
 「石灰化の範囲は全て切除」することが前提であり、そのうえでも「十分に整容性が保たれる」ことが条件となります。

 画像(マンモ)を見ずに、それを言葉にするのは難しいですが、「乳腺の1/3以上のvolumeであれば不可能、1/4以上だと整容性も悪くなる」ようなイメージとなります。

「温存できる可能性はあるか?」
→上記コメントの「裏返し」となります。

 つまり「石灰化の範囲が乳腺の1/4以下」であれば、(温存可能な)可能性があります。
 ♯ただし、更にMRIでの拡がり診断も必要です。(石灰化とMRIでの拡がり、両方で1/4以下である必要があります)

「針生検なしに、1回の細胞診で診断名がついたのですが、通常より悪い状況なのか」
→これは完全な勘違いです。

 10年前までは(そもそも)針生検ではなく「細胞診だけで診断していた」のです。