Site Overlay

乳がんについて

[管理番号:413]
性別:女性
年齢:68歳
母親の病状についてお聞きしたい事があります。
5日ほど前に乳首左下あたりにしこりを見つけ、今日、受診しました。
おそらく悪性であろうとの診断を受け、しこり部分とリンパの組織を注射針で採取し、1週間後にもう一度来てくださいとの事でした。
しこりは2センチくらいです。
母親の症状と照らし合わせ素人なりに調べていくと『炎症性乳がん』かもしれないと思いました。
もちろん、1週間後の受診を待たないとはっきりはしませんが、炎症性乳がんだと、完治は難しいのでしょうか?外科的治療はしないのでしょうか?
すみませんが宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

 おはようございます。田澤です。
 メール内容から推測するに、「炎症性乳癌」ではない誤解だと思います。(一目見れば解るのですが…)

回答

「乳首左下あたりにしこりを見つけ、今日、受診」
⇒この記載からすると、「炎症性乳癌」では無いと思います。
 炎症性乳癌は「しこりは、あっても無くても構いませんが」皮下のリンパ管が「癌細胞で閉塞」して「皮膚が真っ赤になり、肥厚する」状態で「あたかも炎症がある様な感じ(実際には炎症では無いのですが…)です。
 ◎このメール内容からすると「しこりの症状がメイン」であり、「皮膚の特徴的な症状」がうかがえないのですが…(記載していないだけなのでしょうか?)
 
「おそらく悪性であろうとの診断を受け、しこり部分とリンパの組織を注射針で採取し、1週間後にもう一度来てください」
⇒全く無駄な検査です。
 「注射器で採取」とは細胞診の事でしょう。
 「1週間後に、細胞診で悪性でした。それでは針生検をしましょう」と、1週間も無駄になります。
 「悪性を疑った」のなら「最初から針生検をすべき」です。『何故、最初から針生検をしないのか?全くの謎』です。
 
「母親の症状と照らし合わせ素人なりに調べていくと『炎症性乳がん』かもしれないと思いました」
⇒「炎症性乳癌と考えた理由」がメール内容からは明らかではありませんが、推測するに「しこりの上の皮膚が赤いのでしょうか?」
 もし「しこりの上の皮膚や、その周囲が赤い」だけでは「炎症性乳癌」とは言いません。
 炎症性乳癌は「前述したように」乳房の皮膚全体が「赤く、ごわごわと肥厚した」状態です。その場合は「担当医も、そのような反応をしそう」なものです。
 
「炎症性乳がんだと、完治は難しいのでしょうか?外科的治療はしないのでしょうか?」
⇒本当に炎症性乳癌であるならば、「化学療法」の適応となり、「外科的治療は行いません」
 ※化学療法が奏功して、「手術できるくらいまで改善」すれば、「その後手術」はあり得ますが…
 
 炎症性乳癌は根治は困難です。
 但し化学療法が著効し、「手術まで辿りつけば」可能性はでてきます。
 
 

 

質問者様から 【質問2 炎症性乳がん】

田澤先生、早速回答頂きまして、ありがとうございました。
説明不足ですみません。
何故、炎症性乳がんでは?と思ったかと言うと、左のみ乳輪が、右の倍以上になり赤く熱を持った感じなのです。
インターネットなどで色々なページを検索していると炎症性乳がんの症状と似ているな。と思ったからです。もちろん違っていれば良いのですが。
とりあえず1週間後に受診するしか今の所方法ありませんが、田澤先生おっしゃったように針生検検査を昨日お願い出来れば良かったです。
私が無知のままで母の受診となり、とても残念です。もう少し調べてから臨めば良かったと思っています。
もしもですが、田澤先生に診て 頂いても、炎症性乳がんでは根治は難しいのですよね?
母の年齢が67歳です。残念です。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 「お母さんが炎症性乳癌ではないか?」とご相談いただいた方ですね。
 「追加の情報」ありがとうございます。

回答

「何故、炎症性乳がんでは?と思ったかと言うと、左のみ乳輪が、右の倍以上になり赤く熱を持った感じなのです。」
⇒「乳輪だけの問題なのでしょうか?」
 「乳輪部だけ」であれば、「腫瘍が乳輪部の皮膚浸潤しているだけ」の可能性があります。
 
 皮膚全体が「赤く、浮腫状」になっているのでしょうか?
 「乳輪部だけ」とか、「腫瘍の真上付近だけ」であれば、「炎症性乳癌ではない」のです。
 
「田澤先生おっしゃったように針生検検査を昨日お願い出来れば良かったです。」
⇒そもそも「細胞診をした」事からすると「炎症性乳癌」ではないのでは?
 
「炎症性乳癌を疑っていたら」
⇒細胞診よりは「針生検」を最初からするとは思います。
⇒(細胞診の結果を待たずして)「これは炎症性乳癌です」と説明されそうなものです。
 
「炎症性乳がんでは根治は難しいのですよね?」
⇒本当に「炎症性乳癌」であれば、「手術不能であり、化学療法」を行います。
化学療法が良く聞いたとしても、「根治は難しい」とは思います。
ただ、「腫瘍が乳輪部の皮膚浸潤しているだけ」であれば、「普通に手術ができます」
この場合には「根治も十分」あります。
 
 

 

質問者様から 【質問3 昨日病院に行って来ました】

田澤先生おはようございます。
先日は御回答頂き本当にありがとうございました。
昨日、検査結果を聞きに病院行って来ました。
結果は、浸透性乳がん(脇のリンパに転移あり)でした。(炎症性乳がんではありませんでした。)
来週からCT.MRI その他の検査をし、他の臓器などに転移がなければ来月中旬に手術。という事でした。
その後、がんのタイプを見て、放射線治療や薬での治療を行う。(場合によっては抗がん剤治療など)
今のところ転移の可能性は多分ないと思いますが、検査をしてきちんと確認します。との事でした。
今の段階でははっきり言えないですが、リンパに転移あるので、ステージは2以上ではある。との事でした。
現段階での私たちの疑問に時間をとって答えて下さったので、母は良かったと言っていました。私は田澤先生にこのように質問させて頂き、御回答、アドバイス頂き、とても心強いです。
根治を目指して治療のサポートをしていきたいと思います。
今後もお聞きさせて頂けたらと思います。よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 「炎症性乳癌」では無かった事、「普通に手術」ができる事。
 大変良かったです。
 状況が明らかになる中で、また疑問点がありましたら是非、ご質問ください。
 治療、応援しています。
 
 

 

質問者様から 【質問4 手術を受けました】

田澤先生、先々月に母親の乳がんについて色々教えて頂き本当にありがとうございました。5月中旬に発見し、病院に行き、検査をし、前月17日に乳房とリンパを摘出しました。
術後、主治医の先生より説明して頂き、ステージIIIaとのことでした。
リンパ13個のうち、8個転移ありました。
リンパ液がまだ溜まるので、溜まらなくなったら抗がん剤治療、ハーセプチン投与、放射線治療を開始するとの事です。
この先、上記の治療をしていく事で、根治も可能なのでしょうか?
やはり、転移の可能性はありますでしょうか?
発見後、約1ヶ月で手術して頂けたのは良かったと考えて良いでしょうか?
後、抗がん剤治療法などを術後2ヶ月以内には開始したい。との事で、まず体調を戻しリンパ液が落ち着くのを待ちましょうと言われました。
このような流れでしたが、先生はどのようにお考えでしょうか?
すみませんがお聞かせ頂けたらと思います。宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 まずは手術ご苦労様でした。
 pT?, pN2, pStageⅢAですね。

回答

「リンパ液がまだ溜まるので、溜まらなくなったら抗がん剤治療、ハーセプチン投与、放射線治療を開始する」
⇒この内容からすると、『サブタイプはHER2タイプ』です。
 ◎サブタイプとは?
 組織検査(針生検や手術標本)などで以下の3点を調べます。
 エストロゲンレセプターの発現(ER)
 プロゲステロンレセプターの発現(PgR)
 HER2蛋白の過剰発現の有無(HER2)
 ⇒これらの組み合わせで
 ●luminal type:(ER陽性、PgR陽性、HER2陰性) ホルモン療法が有効(更に増殖指数Ki67の値が低いAと高いBに分けます)
 ♯luminalA(Ki67低値)ではホルモン療法単独を、luminalB(Ki67高値)には(ホルモン療法に加え)化学療法も行う事が多い
 ● HER2 type:(HER2陽性のもの) ハーセプチンという分子標的薬と通常の抗癌剤の組み合わせを行う
 ●トリプルネガティブ:(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)通常の抗癌剤を行う
 ● トリプルポジティブ:(ER陽性、PgR陽性、HER2陽性)ホルモン療法と分子標的薬と抗癌剤の全てを行う
  ※正式名称はluminal B(HER2タイプ)と言います。
⇒「リンパ液貯留」に「抗がん剤による免疫低下⇒易感染性」が加わると「重篤感染症」となる懸念があるのです。
 
「上記の治療をしていく事で、根治も可能なのでしょうか」
⇒可能です。
 情報が少ないので「再発率などは不明」ですが、遠隔転移が無いのだから「根治は可能」なのです。
 
「やはり、転移の可能性はありますでしょうか?」
⇒誤った用語がつかわれています。
 
 この場合は正しくは「再発の可能性」です。
 「転移」とは「初期治療の段階でおこっているもの」です。これはすでに否定されています。
 「再発」とは、「初期治療の段階では無かった」が治療、経過を経る中で、新たに出現した「他臓器病変」です。
⇒再発の可能性はありますが、根治の可能性の方が高いでしょう。(浸潤径や核グレードなどが不明なので、推測にすぎませんが)
 
「このような流れでしたが、先生はどのようにお考えでしょうか?」
⇒「リンパ液貯留が多い」というのが治療の足枷になってはいるのが残念ですが「手術の精度は、術後の治療にまで影響を及ぼすのです」
 ただ、治療方針としては全く問題ありません。
○HER2タイプに取って「ハーセプチン療法は大変効果的なターゲット療法」です。
 是非やりきれるように祈っています。