[管理番号:8599]
性別:女性
年齢:49歳
病名:浸潤性小葉癌
症状:
投稿日:2020年6月2日
はじめまして。
5月初めに温存手術をした者です。
病理組織診断報告書には、次のように書かれています。
浸潤性小葉癌
浸潤径9×5㎜、乳管内進展巣20×35×10㎜
広汎な導管内、小葉内進展がみられ、一部で浸潤巣が認められる。
乳頭部断端の追加切除部にも導管内進展が達していると思われる(断端陽性)。
リンパ節転移なし、静脈浸襲なし。
核グレード1
術前の検査でトリプルポジティブと判明しており、術前抗がん剤+ハーセプチンを勧められましたが、私の希望で手術先行にしてもらいました。
術後、主治医からは「ハーセプチン単独とホルモン剤。
抗がん剤はしなくてよいと思う」と言われましたが、ハーセプチン単独では効果がないと聞いていたので、標準治療をする旨を伝えて、現在はドセタキセル+ハーセプチン4クールの投与中です。
一番気になっているのが、断端陽性です。
主治医は非浸潤性で小さくて1箇所だけだから、放射線で対応可能。
再手術は必要ないとおっしゃってます。
ただ、小葉癌は画像に映りにくいため、残った胸に他にエコーにも映らないがん細胞があるのでは?と考えると、不安になります。
そこでお聞きしたいのですが、
①この状況では、先生は再手術なしと判断されますか?
②再手術しない場合、今のドセタキセル+ハーセプチンと放射線治療で、残っているかもしれないがん細胞を無くせるのでしょうか。
お忙しいと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「①この状況では、先生は再手術なしと判断されますか?」
⇒断端陽性は温存乳房内再発のリスク因子であることは間違いありません。
(私なら)再手術をお勧めします。
「②再手術しない場合、今のドセタキセル+ハーセプチンと放射線治療で、残っているかもしれないがん細胞を無くせるのでしょうか。」
⇒「局所の借り(断端陽性)」を「全身治療(trastuzumab + docetaxel)で返す」という考え方は「そもそも」私にはありません。(放射線に手術程の確実性は「当たり前ですが」ありません)
質問者様から 【質問2 】
乳頭からの分泌物について
性別:女性
年齢:49歳
病名:浸潤性小葉癌
症状:
投稿日:2020年6月5日
田澤先生、お忙しい中、回答いただきありがとうございます。
先生の回答を聞いて、やはり再発を避けるためには、再手術が良いのかな…と思っています。
以前のQ&Aを拝見したところ(3150番)、私と同じトリプルポジティブで断端陽性の方が、放射線で大丈夫か?と質問されていたのがあったのですが、先生は1本の乳管で非浸潤なら、放射線と抗HER2療法で大丈夫と回答されていました。
再手術を勧める場合と、放射線で良いとする場合とでは、広がりやタイプ(乳管や小葉)など、何か基準があるのでしょうか。
断端陽性の具合によっても異なると思いますので、ぜひ先生に直接診ていただいて、ご判断いただけたらと思っています。
その場合には、これまでの検査結果をもらえるように主治医に話をして、セカンドオピニオンとして田澤先生にお願いすればよろしいですか?
また、今回癌が見つかった側の乳頭から、5年以上前から分泌物があり、術後の今も続いています。
(おそらく1箇所)
つまめば必ず出ますし、何もしなくても下着が濡れて気づくこともあります。
色は薄いオレンジです。
乳がん検診で毎回話をしても、血がでなければ大丈夫といわれ経過観察。
今回、癌になって主治医に話をしたのですが、MRIを見る限り、乳頭には影がないから心配ないと言われ、検査はしていません。
「乳頭部にも導管内進展が達していると思われる」との術後の診断結果をうけて、この分泌物もとても気になっています。
やはり、分泌物が継続している場合には、乳管造影をしたほうがよいでしょうか。
乳管造影をお願いしたい場合は、セカンドオピニオンではなく初診で予約したほうがよいですか。
せっかく初期で見つかったので、しっかり診断を受けてしっかり治したいと思っています。
いつも私たちの不安に応えてくださり、ありがとうございます。
お忙しいと思いますが、よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「再手術を勧める場合と、放射線で良いとする場合とでは、広がりやタイプ(乳管や小葉)など、何か基準があるのでしょうか。」
⇒ありません。
単純に「どこまで確実性を求めるのか?」だけです。
「断端陽性の具合によっても異なると思いますので、ぜひ先生に直接診ていただいて、ご判断いただけたらと思っています。
その場合には、これまでの検査結果をもらえるように主治医に話をして、セカンドオピニオンとして田澤先生にお願いすればよろしいですか?」
⇒断端陽性については、むしろ「病理医のセカンドオピニオン」では?
この件について私にセカンドオピニオンしたとしても「論点が殆ど無い」ように思います。(追加切除を勧めるだけ)
「MRIを見る限り、乳頭には影がないから心配ない」
⇒??
『乳頭腫は乳頭にある』と(その主治医は)勘違いしている??(まさかね。乳腺外科医だろ??)
今週のコラムで取り上げることとしました。
「やはり、分泌物が継続している場合には、乳管造影をしたほうがよいでしょうか。」
⇒本来の温存手術であれば、その乳管は全て切除範囲となっている筈です。
それが、「術後も継続している」ことには大変な違和感があります。
是非、トップページの『江戸川病院での診療』の中の『江戸川病院での手術』の中の『その1.温存乳房内再発の克服』をご参照ください。
また、QAの8596と同じケースの可能性があります。
(以下、抜粋)
別の病院で乳癌と診断され、2017年12月に部分切除してからも乳頭からの分泌があり、田澤先生に乳腺造影検査をしていただいたうえで、残った癌を切除
★このケースでは乳管造影を行ったところ(前医での)部分切除に(その分泌乳管が)連続していたので、(当院で)再手術したのです。(病理結果は想像通りでした)
「乳管造影をお願いしたい場合は、セカンドオピニオンではなく初診で予約したほうがよいですか。」
⇒確定診断希望メールにしてください。
「せっかく初期で見つかったので、しっかり診断を受けてしっかり治したいと思っています。」
⇒今回のメール内容からは…
断端陽性の問題というよりは、「乳頭側に分泌の原因となるような癌が残存している=8596のケース」なのかもしれません。