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温存術後の断端陽性について

[管理番号:7858]
性別:女性
年齢:46歳
病名:乳癌
症状:断端陽性について

初めまして。

お世話になります。
温存術を受けましたが、断端陽性のため、今後の治療を急いで決断しなければなりません。

9月に左乳房温存術を受けました。
CD領域の境で乳頭からは離れています。

術前のCTとMRIでは、大きさ6~9mm程の浸潤癌。
広がりはなし。

ただし、両側に気になる所見が散見するも、両画像所見で良性と思われるとの所見(但し、それぞれ他画像診断と要判別と書かれてました)。

画像診断の詳細は以下の通り「両胸CA部分小濃染(CT)や小結節や樹枝状の増強効果が見られるが異常信号目立たず正常乳腺のBPEを見ていいると思われる(MRI)」
主治医より温存の提案もあり、また乳房を残したい思いも強かったので、温存術を受けました。

術後の病理検査の結果は以下の通り

センチネルリンパ節生検では転移なし。

組織型:Invasive ductal carcinoma, Scirrhous type(a3>al),1t,CD,pT1a
腫瘍径(浸潤部):5×4×5mm
NG 2(2+2) HG Ⅱ(2+2+2) g ,ly0,V0 edge+,excision
ER:J-Score 3b 陽性 PgR:J-Score 3b 陽性 HER2:スコア0
ki67:12%

大部分は乳管内病変の形態をとり、一部浸潤性増殖を示す部分あり。
浸潤部は線管を形成する部分もあるが、小胞巣、小索上を形成しScirrhous
patternをとる部分が優位です。

管内性病変が断端に認められる(#1 乳頭側 、#5 表層+深部、#10 表層)

断端陽性と治療について質問です。

今後の治療として、全身治療としてはホルモン療法。

局所治療としては、
主治医からはMRIではわからない非浸潤の広がりがあったこと、事前に良性とみなした散見するものを考慮すると全摘(再建なし、または再建)を提案されています。

※散見部分は今回の摘出部分には入ってません。

スライスした標本を見ると非浸潤部分が点状と線状にあちこち印が付いていました。

詳細は自分には良くわかりませんでした。

断端に陽性がある以上、再手術(全摘)をすべきだと…思います。

提案は当然の内容かと思います。
しかし、自分の中の問題です。

術前に全摘も少し考慮しましたが、温存で大丈夫(もちろんリスクとして断端陽性の説明は有り)と言われたのと、自分のやっぱり残したいという希望が合致したので温存にしました。

陽性が出てしまったことは、非常に残念です。

取って見なければ分からないこともあり、出てしまった以上、次に進まなければならないことは重々承知しております。

今後の治療方針として、当初の全摘の提案です。
一応の説明として全摘以外の他の方法 である追加切除、あるいは追加照射での治療の説明もありました。
追加照射の説明を聞いてしまうと、自分の場合は追加照射の
適応を超えているんだろうと思いながらも、気持ちの上でこのまま追加照射で行くことはできないのかという思いが拭いきれません。

①普通に考えれば悪いものを残しておくというのは考えられないことだと思います。

それでもお尋ねせずにはいられません。
病理結果からどう判断されますでしょうか。

②MRI・CTでもエコーでも見つけられない部分があったことを考えると、今後健側への対応(良性と判断したものはあやしいかもしれない?)
については、どう考えればいいのでしょうか。
しこりとして、あるいはエコー上で発見できる状態までは心配いらないと思っていいのでしょうか。
定期健診で経過を見ていけばいいのでしょうか。

③乳房への未練があるなら、再建することになるかと思いますが、先生の所で再建を希望する方がおられたら、どの方法を提案されていますか(理由も)。

また、乳癌の治療は進歩してきていますが、再建の治療として今後こんな治療が勧められていくだろうというのがありますか。

低侵襲の治療があればいいのでしょうが。

④再建をするのであれば、今の所、広背筋皮弁を検討しています。
以前のコメントでQOLを考えたら、「自家組織再建」は勧められませんとありました。
当然だと思います。

自分でも迷っています。

先生の所でも自家組織での再建をされる方はいらっしゃると思いますが、手術時の痛み・侵襲はもちろんですが、年を経た時の身体へのダメージ(痛みや痺れなどの残存)や後遺症?などはいかがなものでしょうか。
全摘でも痛み等に残存する方もあるようですが、再建あり・全摘のみで違いはやはりあるように思われますか。

痛みの残存等は個人の体質、執刀での違いの差が関係するのでしょうか。

⑤今後の治療として、提案通りで…あるならば、全摘(再建あり・無しのいずれか)+ホルモン療法で問題ないと思ってますが、いかがでしょうか。
何か気になる所がありますでしょうか。

画像診断上の両側CA領域の事を考慮すると、再建については再考した方がいいのでしょうか。

たくさん質問をして恐縮ですが、教えていただけたら幸いです。

どうぞよろしくお願いします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「病理結果からどう判断されますでしょうか。」
⇒注目すべきは

 断端陽性が「乳頭側 、#5 表層+深部、#10 表層」であることと、「標本を見ると非浸潤部分が点状と線状にあちこち印」
⇒前者で言えば「乳頭側だけが真の断端陽性(表層とか深部などは乳腺をきちんと切除している限り実際には陽性とはならない)」なので「乳頭側の追加(部分)切除」という選択肢もありそうですが、
 後者を見ると(たとえ、断端陽性は乳頭側だけでも、スキップした病変が別の方向に存在している可能性があるので「全摘が(やはり)安心」のような印象です。

「エコー上で発見できる状態までは心配いらないと思っていいのでしょうか。」
「定期健診で経過を見ていけばいいのでしょうか。」

⇒その通り。

「③乳房への未練があるなら、再建することになるかと思いますが、先生の所で再建を希望する方がおられたら、どの方法を提案されていますか」
⇒自家組織(広背筋なのか、腹直筋なのかは、大きさによる)です。(現在はインプラントが使いにくい状況です)

「再建あり・全摘のみで違いはやはりあるように思われますか。」
⇒それほどの違いはないように思います。

「⑤今後の治療として、提案通りで…あるならば、全摘(再建あり・無しのいずれか)+ホルモン療法で問題ないと思ってます」
⇒そうなります。(浸潤径が5mmだから、ホルモン療法は省略する選択肢もありそうです)

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

温存手術からの断端陽性について 質問2
性別:女性
年齢:46歳
病名:左浸潤癌
症状:温存術後の断端陽性

先日はお忙しいところ、早速ご回答いただきありがとうございます。

断端陽性からの治療の選択(4つの選択肢)にかなり迷い、疲弊しております。
決めた今も、正直これで良かったのか迷ってしまいますが、どこかでいずれかに決めないといけなかったのですから、最善と思って進むしかありません。

結果として、全摘・自家組織(広背筋)での再建をすることにしました。

乳頭・乳輪は術中検査で断端陰性であれば温存、陽性であれば切除の方向です。

他での回答で、「通常の乳房全摘が標準」と書かれており、リスクを心配するのであれば、残すべきではないのでしょうね。
温存から全摘の意味がないのかもしれません。
乳頭側への断端陽性があったものの、乳頭から離れているとの説明で残せないものかと思っている自分がいます。

そこで、度々の質問で申し訳ありませんが、いただいたお答え等も含め、質問させていただけたらと思います。

(1)乳頭等については、術中にて判断としていますが、先生が以前の質問で「本来「乳頭乳輪温存」は「腫瘍径が小さい」「乳頭と十分に離れている」場合に、(リスクを許容した上で)選択されるべきものです。」
と書かれておられたのを決定後に拝見しました。

腫瘍径が小さいはどの位をいうのでしょうか。
また、十分離れているはどのように考えればいいのでしょうか。
(腫瘍径は…すみません。
前回記載が抜けておりましたが、pT1aの後に浸潤部/全体として、浸潤部5×4×5以外に全体の大きさの記載がありました。
浸潤径にばかり気持ちが行っていました。
全体が腫瘍径になりますでしょうか。)

実際の乳房の大きさや位置を見ない事には一概には言えないことだと思いますが、乳頭乳輪部の断端陰性であれば残すという考えは、どのように考えられますか。
やはりかなりのリスクを抱える事でしょうか。

(2)万が一、乳頭から再発した場合、発見はしやすいものでしょうか。
また、乳頭等に局所再発した場合、どの様な治療になるのでしょうか。
乳頭等の切除のみ?。
再建部分はどの様に考えたらいいのでしょうか。

(3)前回の⑤の回答として、「浸潤径が5mmだからホルモン療法は省略する選択肢もあり」といただいております。

勉強不足で申し訳ありません。
浸潤癌であった以上、全身療法は必要なのだと思っておりました。
浸潤径5mm以下の抗がん剤使用については過去の質問でお見かけした気はするのですが、ホルモン療法も同様に5mm以下は省略しても良いものなのでしょうか。

ホルモン療法も副作用(益と害)あるので、省略する選択肢もありということは効果より害が上回る?効果があまりないということになるのでしょうか。

ただ、浸潤径5mmが基準であるなら、自分の数値がギリギリの数値(5×4×5)というのが気になるところですが、問題ないのでしょうか。
回答の再確認になってしまいますが、今回のケースの場合、先生でしたら省略されるのでしょうか。

(4)もし、 乳頭乳輪を温存した場合は、上記のホルモン療法の考え方は違ってくるでしょうか。

(5)ホルモン療法をするのであれば、健側の予防ができるものなのでしょうか。

(6)術後、腋窩に出来た突っ張る筋(血管炎?)は自然と治っていくのでしょうか。
変化しながら、まだ残っています。
改善の為にできることはありますか。

勉強不足で申し訳ありません。
気持ちだけが焦って上手く整理・理解する事が出来ておらず、長文になってしまいました。
よろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「乳頭乳輪部の断端陰性であれば残すという考えは、どのように考えられますか。」
「やはりかなりのリスクを抱える事でしょうか。」

⇒その通り。
 本来、「乳頭乳輪温存」は温存手術が十分に可能な症例(腫瘍が乳頭から離れていて限局している)に適応されるべきものです。
 断端陽性である現状(広がりがある)で選択するのは「安全」とは言えません。

「(2)万が一、乳頭から再発した場合、発見はしやすいものでしょうか。」
⇒ご本人が毎日見ていれば、わかります。(最も解りやすい局所再発と言えます)

「また、乳頭等に局所再発した場合、どの様な治療になるのでしょうか。」
「乳頭等の切除のみ?。再建部分はどの様に考えたらいいのでしょうか。」

⇒余程、放置しない限り、乳頭部及び周囲だけの切除で大丈夫です。

「ホルモン療法も同様に5mm以下は省略しても良いものなのでしょうか。」
⇒「選択の余地あり」という意味です。

 つまり、こちら側(治療する側)から提案すべきことではありません。
 ただ、患者さん側から「無治療にしたい」と言われた際に、十分に「選択可能」という意味です。

「(4)もし、 乳頭乳輪を温存した場合は、上記のホルモン療法の考え方は違ってくるでしょうか。」
⇒無関係

 全身療法(ホルモン療法)と局所療法(乳頭を取るかどうか)は全く無関係です。

「(5)ホルモン療法をするのであれば、健側の予防ができるものなのでしょうか。」
⇒結果としてそうなりますが…

 そもそも(乳癌でない方が)「予防的にホルモン療法してはいけない」とある以上、「健側の予防のためホルモン療法を行う」という考え方には全く賛成しません。

「(6)術後、腋窩に出来た突っ張る筋(血管炎?)は自然と治っていくのでしょうか。」
⇒その通り。