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今後の治療

[管理番号:4520]
性別:女性
年齢:52歳
田澤先生
初めて質問させていただきます。
今年1月に胸には何の異常も見当たらないが、2,3年前から気になっていた脇のしこりが
少し大きくなっている(昨年1.8cm→今年2.5cm)ので生検をしたところ、
右液化結節生検後がん発見(metastatic adenocarcinoma,lymph node)
その後、PET-CT異常なし、MRIわずかではあるが、4mmほどの乳がん疑いであったので、MRIガイド化生検をした結果、がんはなし
しかし、2月に右腋窩廓清手術と右乳腺の疑わしい所も少し摘出
≪病理検査の結果≫
右胸の細胞には異常なし(No malignancy,right breas
t)
右脇の細胞は(Metastic adenocarinoma,lymph no

e)
リンパ節 #1  1/13(+) 13個中1個のみ
ER(4+)・PgR(4+)
HER2(3+)
今後の治療方針提案として
①ハーセプチン+抗がん剤4回(3週間に1回)その後ハーセプチン単剤で9カ月
②右胸放射線治療
③ホルモン療法(アロマターゼ阻害剤5~10年)
○副作用が怖いので抗がん剤は極力避けたいのですがハーセプチンを使用なら抗がん剤は
やはりセットになるということでしょうか?抗がん剤の名前は聞いていませんが、
できるだけ副作用のないものを希望しています。
○胸には検査結果では異常は見つかっていないのですが脇のリンパ節に1つあるということは胸からの転移と考えられるので、右胸の放射線治療(5回×5週間)を提案されています。
今後、様子を見て再発とかが出た場合にはその時、対応をするという考えもありですが、
再発が見つかった時に既にほかに転移している可能性もあるといわれるととても不安になっています。
田澤先生なら放射線治療はしておいた方が再発・転移リスクを少しでも下げるので勧めますか?
また、もし、抗がん剤+ハーセプチンの治療をすれば、放射線をしなくても再等防止できるのでしょうか?放射線を当てると、副作用や今後人工で再建とかできなくなるかもしれないのが気になっています。
○抗がん剤、ハーセプチン、ホルモン療法など、やはり何もしないと再発・転移リスクはかなり高くなるのでしょうか?
他の良い方法はありますか?
ご指導よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
メール内容を読みました。
乳腺外科医として多くの症例を経験していると、同様なケースには遭遇するものです。
実際に私も「ほぼ同様なケース」を2,3例は経験しています。(それでも1000例に1例と考えると、珍しいことは間違いありません)
このようなケースでは問題は以下の2点に集約されます。
1.乳腺をどうするか?
2.全身療法をどうするか?
(明らかなガイドラインなどは存在しませんが…)
1については(質問者のケース同様に)「怪しい部分を切除して、術後照射」するというのが一般的でしょう。
 もちろん、「心配な人には乳腺全摘」とすることもできるし、(逆に)「放射線が嫌な人には、部分切除のみ」とすることになります。
2については、リンパ節のサブタイプに応じた治療となります。
 質問者の場合には「HER2陽性」ですから「抗HER2療法」が選択されます。
(無論、ホルモン療法も)
 
 「リンパ節転移は(結局)1個だけ」だし、「腫瘍径も(画像で見えないくらい)
小さい」わけですから「low risk レジメン」を選択することでいいと思います。
「① ハーセプチン+抗がん剤4回(3週間に1回)その後ハーセプチン単剤で9カ月」
⇒これはTC+HERのようですね。
 それでもいいですし、(副作用をより抑えるのであれば)「weeklyPTX+HER」となります。
「② 右胸放射線治療」「③ ホルモン療法(アロマターゼ阻害剤5~10年)」
⇒これらも、ほぼ「定石通り」と思います。
「○副作用が怖いので抗がん剤は極力避けたいのですがハーセプチンを使用なら抗がん剤はやはりセットになるということでしょうか?」
⇒その通りです。
 「ハーセプチン単独」という選択肢はありません。
「抗がん剤の名前は聞いていませんが、できるだけ副作用のないものを希望しています。」
⇒それであれば、「TCでなく」weeklyPTXをお勧めします。
「今後、様子を見て再発とかが出た場合にはその時、対応をするという考えもありですが、再発が見つかった時に既にほかに転移している可能性もある」
⇒まぁ、内容はその通りですが…
 実際には「ホルモン療法を併用」するわけですから、「3カ月に1度通院時に超音波してもらう」ことで、回避できます。
「田澤先生なら放射線治療はしておいた方が再発・転移リスクを少しでも下げるので勧めますか?」
⇒物事はシンプルに考えましょう。
 放射線治療は、あくまでも「乳房内再発を防ぐ」ためだけに行います。
 「遠隔転移再発」には放射線は(ほぼ)無力です。
「また、もし、抗がん剤+ハーセプチンの治療をすれば、放射線をしなくても再発等防止できるのでしょうか?」
⇒これも基本的には分けて考えましょう。
 「放射線はあくまでも局所療法」なので、「局所再発(乳房内再発)」を防止するためであり、「抗HER2療法は全身療法」なので(局所のためではなく)「全身の遠隔転移再発」を防止するために行います。
「○抗がん剤、ハーセプチン、ホルモン療法など、やはり何もしないと再発・転移リスクはかなり高くなるのでしょうか?他の良い方法はありますか?」
⇒「かなり」高いとは思いませんが、「それぞれ」適応があります。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
お世話になります。
3月に質問させてもらい、安心して治療を受けています。
4月からTC+ハーセプチンを4回投与が今月終わりました。
副作用も軽い方ですが、今後ハーセプチン単独で14回、ホルモン療法と併用です。
やはり、14回しないと効果はないのでしょうか?副作用は少ないとはいえ、心臓に負担がかかるとか聞くと怖いところがあります。
心臓ではないと思うのですが、手術した胸の右の内側に鈍通を感じることがあります。
(手術は右外側とリンパ節)
また、ホルモン療法はアロマターゼ阻害薬を提示されていますが、より、副作用の少ないものはありますか?
ハーセプチンにしろアロマターゼ阻害薬にしろ、その副作用を少しでも緩和できることはないでしょうか?
あと、気になっているのが左胸の下部分に小さなあずき大くらいのものが自分で触れるのですが、これは2月に右手術した直後にきづいていました。
2月の段階では主治医から特に言われていませんが、先日聞いたら、少し画像に写っていたけれど良性だろうということで今後大きくなってきていたら言ってくださいと言われました。
様子を見るという感じだと思うのですが、転移とかの可能性、もしくは原発の可能性もあるのでしょうか?気になるのなら、すぐにでも生検とかしてもらった方がいいのでしょうか?
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
まず指摘しなくてはならないのは、(おそらく)質問者はネット情報の見過ぎで「極端な先入観」を持っているということです。
○ハーセプチン単独では副作用がなく、御心配のような「心機能障害は非常に低頻度」であり、しかも「可逆的(止めれば自然に回復します)」です。
  どう考えても、その「再発予防効果」とはバランスしません。
○アロマターゼ阻害剤も通常に使用される薬剤であり、副作用は全く強くはありません。(ご高齢の方でも普通に内服しています)
ネットの「副作用が怖い」という情報は、かなりのバイアス(酷い人だけが「酷かった」と言うが、何でも無い人は「何でも無い」とは敢えて発言しない)がかかっています。
日常診療をしている私から見れば、(治療をする前から)「情報でビビってしまう」ことは全く残念にしか思えません。
「やはり、14回しないと効果はないのでしょうか?副作用は少ないとはいえ、心臓に負担がかかるとか聞くと怖いところがあります。」
⇒上記通りです。
 ハーセプチンを恐れることは全くありません。
「ホルモン療法はアロマターゼ阻害薬を提示されていますが、より、副作用の少ないものはありますか?」
⇒(おかしな先入感なく)まずは始めましょう。
「ハーセプチンにしろアロマターゼ阻害薬にしろ、その副作用を少しでも緩和できることはないでしょうか?」
⇒上記コメント通りです。
 やる前から「副作用を心配」することは、全くナンセンスです。
「転移とかの可能性、もしくは原発の可能性もあるのでしょうか?」
⇒転移はありません。(乳癌は対側乳腺には絶対に転移しないのです 乳腺の左右は「天と地」ほどに離れているのです)
「気になるのなら、すぐにでも生検とかしてもらった方がいいのでしょうか?」
⇒担当医を信じましょう。(次の診察日に相談してはどうでしょうか?)