[管理番号:2861]
性別:女性
年齢:64歳
64歳女性。
3.5年前stageII の左乳腺温存摘出術を受けました。
左B
領域乳がんpT2(1.7cm x1.2cm x3cm) N0 (腋下郭清なし)
NG1 Ly2(D2-40) V1 F+ ER 100%,Pg 30%
Her2:score0 、Schirrhos carcinoma NG(nuclear atypia2,
Mitosis1) オンコタイプ6
術後残存乳房に50Gr 照射、その後 Ly2で腫瘍径が大きいことからドセタキセル エンドキサン 4回の化学療法をおこない、その後フェマーラ内服をしていました。
また樹状細胞療法も2クール行いました。
ところが今年3月PETで頸部(鎖骨に近いところ)に1cmのhot spotがひとつあり、摘出したところ1.5cmのリンパ節で転移が認められました。
単独リンパ節ですが一緒にとれた脂肪織のなかの小さいリンパ節2つにもがん細胞が入っていたそうです。
これから左頸部に50grの放射線照射、アンスラサイクリンを3週に1度6回する予定です。
またフェマーラがきいていないのではとノバルティックス20mgに変更しました。
これで治療はよいでしょうか?
主治医が転移なのでもう延命するたけで治癒することはないといわれ大変なショックを受けています。
戦う力ももうないように感じます。
希望はあるでしょうか?
発症時できることはすべてしたし、腫瘍の性格からいってもこんなに早く再発してくるとは予想していませんでした。
どこにひそんでいたのでしょうか?
これから左乳房切断、腋下郭清を追加する意味あるでしょうか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
文面からすると「鎖骨上リンパ節再発」のようですね。「左頚部に照射する」ことから「左鎖骨上リンパ節再発」のようです。
これは普通に考えると「腋窩からのルート」だと思います。
そうすると、(手術時の)センチネルリンパ節生検をすり抜けた癌細胞の「局所再発」ということだと思います。
○血行性の「遠隔転移再発ではない」ことから「根治性は諦める必要なし」と思います。
「これで治療はよいでしょうか?」
⇒(術後補助療法としてタキサンだけなので)
アンスラサイクリンを追加するのは「妥当」でしょう。
また、局所療法としては「放射線照射の追加」これも「妥当」です。
問題は「腋窩郭清を追加するかどうか」ですが…
冒頭でもコメントした通り、「腋窩からのリンパ節再発ルート」を考えれば「郭清すべき」と思います。
ただし、PETでも取り込みがなく、「超音波でもリンパ節腫大がない」場合には「経過をみる」ことも許容範囲内と思います。
「主治医が転移なのでもう延命するたけで治癒することはないといわれ大変なショックを受けています。戦う力ももうないように感じます。希望はあるでしょうか?」
⇒希望はあります。
鎖骨上リンパ節は、あくまでも「局所再発」です。
どうも、このQandAをやっていると「局所再発と遠隔転移再発の区別ができない
(違いを理解していない)」医師が多い事に危惧を抱いています。
これは経験上の「成功体験がない」頭の中だけの知識しかないことから来るのではないかと思います。
「どこにひそんでいたのでしょうか?」
⇒これが反対側ならまだしも、「同側の鎖骨上リンパ節」なのだから、「腋窩のルートに潜んでいた局所再発」と考えるべきです。
「これから左乳房切断、腋下郭清を追加する意味あるでしょうか?」
⇒乳房切除はいいとしても「腋窩郭清の追加」は(画像所見にもよりますが)考慮すべきです。