[管理番号:7451]
性別:女性
年齢:50歳
病名:浸潤性乳管癌
症状:
田澤先生、はじめまして。
乳がんと診断されてから「乳がんプラザ」で勉強させていただいております。
治療開始までの意外と長い待ち期間、「乳がんプラザ」のおかげで気持ちの整理がつき、治療に前向きになれました。
ありがとうございます。
(経過)
・健診(マンモ)で乳癌疑い、健診先の病院でエコー検査、MRI,針生検の結果、浸潤性乳管癌と確定診断される。
・腫瘍径(35mm×45mm×28mm)複数の腫瘍が大きくなりひとつになっているとのこと。
・組織検査結果(健診病院から外注)
ER(-) HER2(-) MIB1 90%
トリプルネガティブ
・PET検査結果、リンパ節に転移あり、遠隔転移なし。
(T2N1M0)ステージⅡb
・治療は大学病院で行うことになり、上記検査内容(CD,プレパラート)持参して大学病院受診。
・大学病院にて、再度組織検査、エコー検査、リンパ節細胞診行われる。
・組織検査の結果(大学病院での検査)
ER(+) HER2(2+) MIB1 80%
HG2 NG3
・リンパ節細胞診の結果はマイナス。
(質問です)
①同じ組織の検査結果に(時に)相違があることは、過去の質問を見て確認しましたが、当初はトリプルネガティブと言われていたのが、大学病院ではER(+) HER2(2+)(HER2については再度検査中)と言われ、戸惑っています。
治療方法が増えることはありがたいのですが。
(これは憶測ですが…)生検した癌細胞の中にマイナスとプラスの部分が混在、前回の病理検査では「マイナスの部分しか確認できなかった」が今回の検査では「プラスの部分が確認できた」ので、大学病院の検査結果で間違いないという捉え方でよろしいでしょうか。
②今後の治療方針は、腫瘍径が少し大きいので、乳房温存手術のために術前化学療法を検討しております。
まだサブタイプは決定してませんが、ルミナルBになるのでしょうか。
HER2陽性ならトリプルポジティブでしょうか。
術前化学療法の内容が違ってくることもあるので、手術先行して術後の病理検査後、化学療法をした方が確実なのか…迷い始めております。
③PET検査ではリンパ節に転移が認められましたが、細胞診ではマイナスでした。
健診病院でのエコー検査ではリンパ転移は大丈夫でしょうと言われましたが、大学病院でのエコー検査の結果は確認してません。
(細胞診ではエコー画面見ながら針さしてましたが)
T2N0 ステージⅡaでしょうか。
田澤先生、ご多忙のところ恐縮ですが、ご教示いただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「①同じ組織の検査結果に(時に)相違があることは、生検した癌細胞の中にマイナスとプラスの部分が混在」
→可能性は2通りあります。
1.質問者の言うように、「異なるbiology」である可能性
2.(最初の病院での)検体処理の問題で「ER, PgR, HER2の染色性が低下した」
通常は(1よりも)2を考えますが…
ただ今回は以下の理由で1の可能性の方が高いように思います。
・MIB1=90%と出ている
→もしも検体処理の問題ならば、この値も極端に低くなることが多い(例えば5%など)
同じ検体処理された標本の筈なので、「検体処理に問題無かった」という論拠となりうる。(この値が5%などと極端に低ければ「いよいよ怪しい」となるのです)
・複数の腫瘍が大きくなりひとつになっている
→本当に「そう」なら、それぞれ「biologyが異なっている」可能性もありそうです。
上記であれば、「トリプルネガティブ」と「ルミナールタイプ」の全く異なる癌が併存していることになります。
「まだサブタイプは決定してませんが、ルミナルBになるのでしょうか。」
→厳密には「手術標本でのKi67]ですが…
Ki67=90とか80などと出ているので、その可能性が高いです。(但し、トリプルネガティブとルミナールタイプの併存ならば、両方のサブタイプとなり、両方の治療が必要となります)
「HER2陽性ならトリプルポジティブでしょうか。」
→その通り。
「③PET検査ではリンパ節に転移が認められましたが、細胞診ではマイナスでした。」
→細胞診は(術者によって)精度が「雲泥」なので、大学病院での細胞診結果を鵜呑みにすることはできません。
特に「健診病院でのエコー検査ではリンパ転移は大丈夫でしょうと言われました」
程度のリンパ節(つまり、小さい)だと、「細胞診のspecialist」でないと(その結果には)信頼できません。
「T2N0 ステージⅡaでしょうか。」
→術前診断としてはそうなります。