[管理番号:8927]
性別:女性
年齢:43歳
病名:乳がん トリプルネガティブ
症状:
投稿日:2020年10月7日
いつもQ&Aでやコラムで勉強させていただいています。
田澤先生、お忙しい中このような場を設けてくださりありがとうございます。
9月初旬に左乳房全摘術を受け、先日以下の病理結果が出ました。
「組織学的には、腫瘍は浸潤性乳癌であり、腫瘍細胞は大小不整形胞巣となり、増殖しています。
腫瘍成分では扁平上皮癌類似成分、基質産生癌類似成分等も混在しており、免疫組織化学的検討も行いました。
その結果、扁平上皮癌類似成分の免疫形質は、その一部は扁平上皮癌の形質と矛盾しないこと、また腫瘍成分ではSMA、vimentin陽性成分も混在することが確認できました。
よって、本腫瘍は化生癌とまでは言えないものの、その生物学的特性(免疫形質)は化生癌とほぼ同等と考えられます。
腫瘍間質には豊富なリンパ球、形質細胞を主とする慢性炎症細胞の浸潤(TIL)を伴います。
類似の腫瘍細胞より構成され、コメド壊死、石灰化を伴うhigh-grade相当のin situ
成分が随伴しています。
腫瘍背景の乳腺組織には、microscopic pseudoangiomatous stromal hyperplasiaをみます。
SLNにisolated tumor cellsを認めます[pN0(i+)]
組織所見の詳細は以下
Brest(左Bt+SN):
1.浸潤腫瘍長径:20mm(A区域)
2.皮膚浸潤:無 3.胸筋浸潤:無 4.UICC T class:1c
5.組織異型度:Grade3 & 核異型度:Grade3 核異型:3 構造異型:3 核分裂
像:52/10HPF
6.組織型:化生癌の形質を有する浸潤性乳癌[今日の分類では、化生性変化を伴う浸
潤性乳癌、
other type(solid to scirrhous)に相当]
7.腫瘍壊死(浸潤癌成分):有 8.脂肪組織浸潤:有 9.Tumor budding grade:
Grade3
10.Fibrotic focus(FF):有 11.FF径:3mm
12.リンパ管侵襲:無 13.静脈侵襲:有(1カ所;v1) 14.神経束浸潤:無
15.切除断端:陰性 16.術前薬物療法:無 17.リンパ節:isolated tumor
cells[pN0(i+)(sn)]」
あまりの結果の悪さに不安になってしまいました。
今までは乳がんプラザを見て、トリプルネガティブでもステージ1~2aだし大丈夫と前向きな気持ちだったのですが、病理結果の単語についてネットで意味を調べると、予後不良因子となっているもののオンパレードで…
ステージでみると抗がん剤後の5年無病生存率は90%前後かと思いますが、私は限りなく10%の方に近いのではないかと不安になっております。
特に気になっているのは、化生癌とほぼ同等ということ、SLNのisolated tumor
cells、FF、静脈侵襲v1です。
今後はの治療は、来週からEC3w×4→DTX3w×4の予定です。
①このような病理結果の場合、やはり再発転移の可能性は他の同ステージと比べると高いのでしょうか?
②主治医はSLNのisolated tumor cellsについては微小転移までもいかないもので
その先に転移している可能性はまずないとおっしゃっていました。
FFや静脈侵襲については特に説明はありませんでした。
静脈侵襲があると血行転移などしている可能性はあるのでしょうか?
③今後の治療について、田澤先生の見解を教えていただきたく思います。
田澤先生からの回答
こんにちは田澤です。
「病理結果が非常に悪性」という(極めて無意味な)呪縛から逃れる事、それが大事です。
「①このような病理結果の場合、やはり再発転移の可能性は他の同ステージと比べると高いのでしょうか?」
⇒何を根拠に??
無意味な呪縛に囚われて、「得すること」もないし、「得する人」もいません。
(何故なら、治療に1択なのですから)
「②主治医はSLNのisolated tumor cellsについては微小転移までもいかないもので
その先に転移している可能性はまずないとおっしゃっていました。」
⇒その通り。
「静脈侵襲があると血行転移などしている可能性はあるのでしょうか?」
⇒??
静脈侵襲があっても、無くてもその可能性に違いはありません。
「③今後の治療について、田澤先生の見解を教えていただきたく思います。」
⇒何か勘違いしている??
術後の標準治療は厳密に定義されており、使える薬剤はanthracyclineとtaxaneしかありません。
質問者が(無意味に)心配しても、特別な薬剤などなく、上記治療の1択なのです。
まさに『今後はの治療は、来週からEC3w×4→DTX3w×4の予定です。』をやるだけの話です。(物事を複雑にこね回すのは、以後止めましょう)
質問者様から 【質問2 】
CEAの上昇
性別:女性
年齢:44
病名:乳がん
症状:
投稿日:2021年9月3日
先日はお忙しい中、質問にお答えいただきありがとうございました。
田澤先生のおかげで前向きな気持ちでECとドセ完遂することができました。
今回は抗がん剤治療終了後のCEAの上昇についてお聞きしたく質問させていただきます。
数値の推移は以下の通りです。
2020年10月(手術後、抗がん剤前) CEA:0.7 CA15-3:8.3
2021年4月(抗がん剤終了約1ヶ月後) CEA:3.7 CA15-3:13.7
2021年5月 CEA:4.0 CA15-3:7.8
2021年6月 CEA:5.3 CA15-3:8.5
2021年7月 CEA:5.5 CA15-3:8.7
2021年8月 CEA:5.9 CA15-3:7.9
2021年9月 CEA:6.9 CA15-3:10.0
2週間後にPET/CT予定です。
2021年8月に乳腺のエコーを受けましたがコロナワクチンによるリンパの腫れ以外は異常なしでした。
手術前の2020年8月にPET/CTを受けていますが、転移はなしでした。
①先生のご経験から、この数値の推移は転移が疑われるものでしょうか?またCEAのみの上昇では消化器系の原発癌の可能性もあるというのを過去の質問で読みましたが、割合として転移とどちらの可能性が高いのでしょうか?
②転移だった場合は、ECとドセタキセルは効果がなかったということになりますか?
田澤先生でしたら
次はどのような薬を使われますか?(娘が二人いるので気になって術後にBRCA遺伝子検査をしましたが陰性でした)
③今まで完治を目標に治療を受けてきましたが、転移だった場合は画像上寛解というのが一番良い状態
でしょうか?まだ完治も目指せるのでしょうか?(心が折れないために目標は持っておきたいので…)
以上です。
PET/CT当日に結果の説明があるため、心の準備をしておきたいのと、思春期の娘に少しでも前向きに自分の状態を説明したいという思いがあり、仮定の質問もあり恐縮ですが教えていただきたく思います。
どうぞよろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは田澤です。
「先生のご経験から、この数値の推移は転移が疑われるものでしょうか?」
⇒あれこれ考える前に…
PETを撮影してみましょう。
質問者様から 【質問3 】
CEAの上昇
性別:女性
年齢:44
病名:乳がん
症状:
投稿日:2021年10月5日
先日はお忙しい中質問に答えていただきありがとうございました。
おかげであれこれ考えず、覚悟を決めてPET/CT検査に臨めました。
PET/CT検査の結果、
・左腋窩リンパ節に軽度集積(SUVmax:2.1)があります。
炎症反応性変化を疑いますが、精査してください。
・両側肩関節に軽度集積(SUVmax:2.3)があります。
肩関節周囲炎が疑われます。
・その他撮像範囲内にて病変を疑うような明らかな異常集積所見は指摘できません。
とのことでした。
左腋窩リンパ節については前月にエコー検査しているので問題ないだろうとのことでした。
(1カ月半ほど前に受けたコロナワクチンによる腫れとのこと)
今後1カ月ごとに血液検査で経過観察ということになりました。
私の通っている病院では主治医の先生によるエコーは行っておらず、そこが少し不安ではあります。
①他の方の質問で、画像上何も見つからなくても、腫瘍マーカーが上昇し続けた場合は転移箇所不明で
抗がん剤治療を始めることもある…というのを拝見しました。
この様な場合は、どのくらいの数値まで、もしくはどのくらいの期間上昇し続けたら先行しての治療を
検討するべきでしょうか?
②8月に行ったエコーの結果を再度確認してみたところ、左鎖骨下にも20.1mmの腫れがあるとなっていました。
鎖骨下のリンパもワクチンで腫れますか?
③今の状態で他にするべき検査等はありますか?
不安な気持ちでいっぱいですが、いつも田澤先生の回答に勇気をもらっています。
本当にありがとうございます。
お忙しい中恐縮ですが、教えていただけると幸いです。
よろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは田澤です。
「①他の方の質問で、画像上何も見つからなくても、腫瘍マーカーが上昇し続けた場合は転移箇所不明で
抗がん剤治療を始めることもある…というのを拝見しました。
この様な場合は、どのくらいの数値まで、もしくはどのくらいの期間上昇し続けたら先行しての治療を
検討するべきでしょうか?」
⇒PETで異常が無かったのだから、いったんは「そこ」から解放されましょう。
まずは3か月後のマーカーがどうなるか?(自然に下がったら「疑いは晴れる」となります)
②8月に行ったエコーの結果を再度確認してみたところ、左鎖骨下にも20.1mmの腫れがあるとなっていました。
鎖骨下のリンパもワクチンで腫れますか?」
⇒腫れます。(沢山経験しています)
「③今の状態で他にするべき検査等はありますか?」
⇒ありません。(上記①の回答参照)
質問者様から 【結果4 】
<結果として扱います。>
CEAの数値が下がりました。
性別:女性
年齢:45
病名:
症状:
投稿日:2022年1月14日
先日は質問に答えていただきありがとうございました。
上昇を続けていたCEAの数値ですが、その後11月の血液検査で3.2まで下がり、同日のエコーでリンパの
腫れも引いているのを確認してもらいました。
今月1月の血液検査では1.6に下がっていました。
不安で少し冷静さを欠いていた中、先生の「いったん解放されましょう」の言葉で冷静になれました。
おかげで娘たちに不安を与えてしまうことも回避できました。
今後もこちらのサイトで勉強させていただきたいと思います。
本当にありがとうございました。