[管理番号:2143]
性別:女性
年齢:41歳
田澤先生こんにちは。
乳癌と診断されてから、毎日拝見し勉強させていただいていました。
12月○○日に右乳房全摘出手術を終えました。
浸潤性小葉癌です。
本日病理結果が出ましたので、田澤先生に教えていただきたくメールをしました。
i nvasive lobular
carcinoma,
scirrhous,90×55×23m:m,
Nuc. grade1, intraductal
spreading(ー), f, ly1,v0,
surg. margin(ー)
Lymphnodes:negative for
metastasis(0/7)
組織学的には、標本上計測90×55×23mmの範囲に小葉癌の所見が見ら れる。
境界は極めて不明瞭で辺縁は脂肪組織に浸潤し、リンパ管侵襲を伴っているが、静脈侵襲は明らかでない。
intraductal
spreadingは見られないが、nonーinvasive lobular
carcinomaの所見は諸所に混在している。
Nuclear gradeは1 (atypia
2+ mitosis 1=3)に相当する。
リンパ節はいずれにも転移は認めません。
ER、PgRともに50%以上
の細胞に陽性、ki67は高い所で10%の陽性率
と病理結果にあります。
しこりとしては1センチと言われましたが、上記のように9センチと明記があり、担当医に聞いたところ、しこりとして9センチなわけではない、全摘出したし、おとなしいタイプなので大丈夫、小葉癌ではよく見られるとのことでした。
グレードについては安心しホルモン治療もしっかりやるつもりですが、拡がりが大きいのがとても心配です。
先生から見て、予後、再発転移の可能性、生存率などどう感じられますか?
担当医は、心配ないと言うのですが、信じて良いのでしょうか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT3, pN0, luminal A, NG1
確かに、小葉癌には多いタイプと言えます。
「しこりとしては1センチと言われましたが、上記のように9センチと明記があり、担当医に聞いたところ、しこりとして9センチなわけではない、全摘出したし、おとなしいタイプなので大丈夫、小葉癌ではよく見られるとのことでした。」
⇒その通りです。
「先生から見て、予後、再発転移の可能性、生存率などどう感じられますか?」
⇒担当医と同意見です。
「通常の乳管癌」として考えると「浸潤径=90mm」は「リスク因子」となりそうですが、「小葉癌は乳腺内に多発」し、時に癒合します。
小葉癌であれば特別な状況ではありません。
「担当医は、心配ないと言うのですが、信じて良いのでしょうか?」
⇒大丈夫です。
私も「担当医と同意見」です。
質問者様から 【質問2】
田澤先生こんにちは。
お答えいただきありがとうございます。
心強いお言葉に安心しました。
たびたび申し訳ありませんが、質問があります。
よろしくお願いいたします。
①切除した標本の画像のところに、「腫瘍:結節15mm大、広範に95×75mm大の病変」と記載があります。
これは、「しこり15mm、乳房内の拡がり95×75mm」ということでしょうか?
②病理組織学的所見に、「90×55×23mm大の範囲に小葉癌の所見が見られる。
非浸潤の所見は諸所に混在している」とあります。
これは、90×55×23の範囲に、浸潤している部分もあれば非浸潤の部分もある、という解釈で良いのでしょうか?
③2年前から超音波とマンモは毎年受けていました。
今年5月に乳頭陥没で受診し、エコー、マンモで異常がないため経過観察でしたが、気になったので10月にまた受診、またはっきりと診断されなかったので11月に別の病院を受診、乳頭の近くに1センチのしこりが見つかりました。
この時点では早期発見のステージ1でしたが、手術してみてこの拡がりがあり、乳管癌とは違う小葉癌なので、自分の癌がどの程度のステージなのかわからず、困惑しています。
拡がりもありリンパ管侵襲は1?とあるのにセンチネルで転移なし、というのも不思議です。
④担当医からはルミナルAなのでゾラデックスとノルバデックスの治療と言われています。
拡がりが大きいのに、放射線や抗がん剤などは必要ないのでしょうか?
⑤膨大な数の患者さんを診られてきた田澤先生からご覧になって、ホルモン治療をした場合私の再発率はどのくらいでしょうか?ホルモン治療をすれば、対側の乳がんの予防にも
なるのでしょうか?
たくさん質問してしまい申し訳ありません。
子供もまだ小学生なので、長生きするためにも前向きに治療頑張りたいです。
田澤先生のお言葉で、前向きになれます。
よろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
『①切除した標本の画像のところに、「腫瘍:結節15mm大、広範に95×75mm大の病変」と記載があります。これは、「しこり15mm、乳房内の拡がり95×75mm」ということでしょうか?』
⇒その通りです。
肉眼的に「しこり」と確認できる部分が15mm、顕微鏡的な拡がりが95x75mmです。
『②病理組織学的所見に、「90×55×23mm大の範囲に小葉癌の所見が見られる。非浸潤の所見は諸所に混在している」とあります。これは、90×55×23の範囲に、浸潤している部分もあれば非浸潤の部分もある、という解釈で良いのでしょうか?』
⇒その解釈でいいと思います。
『今年5月に乳頭陥没で受診し、エコー、マンモで異常がないため経過観察でしたが、気になったので10月にまた受診、またはっきりと診断されなかったので11月に別の病院を受診、乳頭の近くに1センチのしこりが見つかりました』
⇒「見つけ難い超音波像」である小葉癌が「見つけ難い位置」である乳頭近傍に「たまたま存在」したことが災いしたようです。
が、(最初の病院で)もしも「医師自らではなく、技師によるエコーでの判断だった」としたら、それは「誤り」だし、「医師自らエコーしての判断だった」としたら「稚拙」と言わざるを得ません。
「拡がりもありリンパ管侵襲は1?とあるのにセンチネルで転移なし、というのも不思議」
⇒リンパ管侵襲1というのは「大した」所見ではありません。
「ルミナルAなのでゾラデックスとノルバデックスの治療と言われています。」
⇒正しい判断と言えます。
SOFT試験からは「LH-RHagonistの適応基準」から外れますが、「広範囲」という点からは、それでいいと思います。
「拡がりが大きいのに、放射線や抗がん剤などは必要ないのでしょうか?」
⇒「乳房切除後の放射線照射」も「luminalAに対する抗がん剤」も「リンパ節転移4個以上」が一つの基準となります。(少なくともリンパ節転移無では適応から外れます)
「⑤膨大な数の患者さんを診られてきた田澤先生からご覧になって、ホルモン治療をした場合私の再発率はどのくらいでしょうか?」
⇒10-20%程度です。
最大浸潤径の解釈が難しいですが「大人しいタイプの小葉癌」であれば10%に近いと思います。
「ホルモン治療をすれば、対側の乳がんの予防にもなるのでしょうか?」
⇒その通りです。
50%近い「リスク低減効果」があります。
質問者様から 【質問3】
田澤先生こんにちは。
病理結果についての疑問、不安に対し、心強いお言葉をいただき感謝しております。
度々申し訳ありません。
病理結果ですが、「HER2」の結果がまだ出ていません。
担当の先生からは、「多分マイナスでしょう」とのことでした。
HER2の結果はある程度予想がつくのでしょうか?
もしHER2+だった場合は、治療法が変わりますか?
初診の病院で異常を見つけられず、でも不安に思っていた時にこちらのQ&Aを知り、「医師自ら行うエコー」の大事さを知り、診断確定までうやむやにしないこと、など色々勉強させていただきました。
そして医師がエコーをしてくれて小人数医師で手術数の多い病院を探し、診断確定まで至りました。
田澤先生がこの場を設けてくださらなかったら、今頃どうなっていたかと思います。
告知時は精神的に辛く、その時もこの場に助けられました。
ネットの情報は不安を煽るものもあり、「乳癌プラザ」以外は見ないようにしていました。
田澤先生の仰る通り、乳癌の手術は楽でした。
これから長い治療が続きますが、不安になったらこの場が助けてくれるという安心感のもと、元気に過ごして行きたいと思っています。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
田澤先生こんにちは。
『担当の先生からは、「多分マイナスでしょう」とのこと』
⇒私も同意見です。
大人しいタイプの「小葉癌」だから「HER2陽性の可能性」は極めて低いと思います。
「HER2の結果はある程度予想がつくのでしょうか?」
⇒上記の通りです。
「もしHER2+だった場合は、治療法が変わりますか?」
⇒可能性は「かなり低い」と思いますが…
HER2陽性ならば、「必ず抗HER2療法(通常の抗がん剤+ハーセプチン)」をすることが「強く」推奨されます。
「そして医師がエコーをしてくれて小人数医師で手術数の多い病院を探し、診断確定まで至りました」
⇒大変良かったです。
「天は自ら助くるものを助く」まさに、そういうことです。
「乳癌の手術は楽でした。これから長い治療が続きますが、不安になったらこの場が助けてくれるという安心感のもと、元気に過ごして行きたいと思っています。」
⇒こちらこそ、ありがとうございます。
そう言っていただけることが、「このQandAを行っていることの励み」となります。
質問者様から 【質問4】
田澤先生こんにちは。
先日はお忙しい中、お返事いただきありがとうございました。
HER2の結果ですが、田澤先生の仰る通りマイナスでした。
月曜日にゾラデックスを打ちました。
普通の注射より痛くなく、驚きました。
翌日からノルバデックスを服用しています。
「90×55×23mm大の範囲に小葉非浸潤の所見は諸所に混在している」と病理結果にあり、
90×55×23の範囲に、浸潤している部分癌の所見が見られる。
もあれば非浸潤の部分もある、という解釈で良いと田澤先生に教えていただきました。
これは、90×55×23がそのまま「最大浸潤径」ではないということで良いのでしょうか?
担当の先生は「しこりは15mmくらいで、でも拡がりがありましたね」「小葉癌なので、大きさはあまり気にしなくて良い、グレードも低いので、安心して良いんですよ」と。
最大浸潤径を調べてもらえば良いのでしょうが、そう言われてそれ以上聞けませんでした。
田澤先生にも、心強いお言葉をいただいたので、毎日元気に生活していますが、自分の「最大浸潤径」はどのくらいなのかと気になり、小葉癌では、しこりの大きさからステージをどのように判断して良いか難しく。
田澤先生のご経験から見て、私の最大浸潤径は何センチくらいだと思われますか?
お忙しい中申し訳ありませんが、お答えいただけたら嬉しいです。
時折不安な気持ちにもなりますが、このQ&Aの場をお守りに元気に治療していきます。
ありがとうございました。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「これは、90×55×23がそのまま「最大浸潤径」ではないということで良いのでしょうか?」
⇒そういうことです。
「経験から見て、私の最大浸潤径は何センチくらいだと思われますか?」
⇒あくまでも「参考程度」とはなりますが
担当医の言う「1cm程度」というところがヒントです。
「2cm以内=T1相当」と考えます。
質問者様から 【質問5】
田澤先生こんにちは。
先日はご回答いただきありがとうございました。
浸潤、非浸潤を含む病変の拡がりが大きかったため、心配していましたが、浸潤径としての大きさについてご意見を伺うことが出来、安心いたしました。
浸潤性小葉癌というのは、このように拡がりが大きくなるのはよくあることなのでしょうか?
そして例えば浸潤径が大きいとしても、乳管癌と同様に考えず、リスク因子として気にしなくても良いのでしょうか?
現在、ホルモン治療のみで、1ケ月に一度のゾラデックスと毎日のお薬だけです。
乳がんになったのに、治療がこんなに楽で良いのかと逆に不安にもなります。
(副作用は今後出るかもしれませんが)
全摘しましたが、拡がりが大きかったのに、放射線も必要ないのでしょうか?また、ルミナルAですが、抗がん剤を使って少しでも再発率を下げた方が良いのかと、ふと思ったりもしますが、上乗せは低いでしょうか?
「乳がんは根治の可能性の方が圧倒的に高い」という田澤先生のお言葉が、私たち患者にとってどれだけ心強いことでしょう。
ありがとうございます。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
「浸潤性小葉癌というのは、このように拡がりが大きくなるのはよくあることなのでしょうか?」
⇒その通りです。
「術前の画像診断では拡がり判断が困難」なこともよくあります。
「そして例えば浸潤径が大きいとしても、乳管癌と同様に考えず、リスク因子として気にしなくても良いのでしょうか?」
⇒そういうことです。
「全摘しましたが、拡がりが大きかったのに、放射線も必要ないのでしょうか?」
⇒乳腺を全切除しているので「放射線は不要」です。
「全摘後の放射線照射の適応」はリンパ節転移の個数で決めるのです。
「また、ルミナルAですが、抗がん剤を使って少しでも再発率を下げた方が良いのかと、ふと思ったりもしますが、上乗せは低いでしょうか?」
⇒抗がん剤による上乗せは低いと思います。
「NG1」「Ki67<10%」でもあり「5%以下」だと思います。
「「乳がんは根治の可能性の方が圧倒的に高い」という田澤先生のお言葉が、私たち患者にとってどれだけ心強いことでしょう。」
⇒沢山の患者さんの診療をしていれば「自ずと感じる」事なのです。
質問者様から 【質問6】
田澤先生、お忙しい中いつもありがとうございます。
毎日拝見していました。
本日はよろしくお願い致します。
私の病理組織学的所見に、「90×55×23mm大の範囲に小葉癌の所見が見られる。非浸潤の所見は諸所に混在している」
とあります。
90×55×23の範囲に、浸潤している部分もあれば非浸潤の部分もある、という解釈で良いと回答していただきました。
①これは、非浸潤癌として乳管内を進展し、所々で浸潤を始めたということなのでしょうか?それとも小葉癌によくみられるという「多中心性」というもので、いくつかの小葉癌が融合したものでしょうか?
②以前田澤先生に、抗がん剤の上乗せは5%未満と教えていただきました。
主治医の意見も聞きましたところ、抗がん剤は必要ないので、ホルモン治療を頑張りましょうとのことでした。
ホルモン治療のみ(ゾラデックス、ノルバデックス)での再発率はどのくらいになりますか?
服用は10年続けるつもりでいます。
田澤先生も、抗がん剤は必要ないと思われますか?
③主治医からは、気を付けることは、ホルモン治療をしているので太り過ぎないこと、他は今まで通り過ごして良いと言われています。
体重増加はないですが、甘い物をつい食べてしますのですが、糖分は控えた方が良いですか?
習慣で毎日ヨーグルトを食べるのですが、大丈夫でしょうか?
色々すみませんが、ご回答いただけたら嬉しいです。
田澤先生のQ&Aは私にとっての御守りです。
いつもありがとうございます。
田澤先生から 【回答6】
こんにちは。田澤です。
「①これは、非浸潤癌として乳管内を進展し、所々で浸潤を始めたということなのでしょうか?それとも小葉癌によくみられるという「多中心性」というもので、いくつかの小葉癌が融合したものでしょうか?」
⇒多中心性と思います。
「ホルモン治療のみ(ゾラデックス、ノルバデックス)での再発率はどのくらいになりますか?服用は10年続けるつもりでいます。」
⇒回答2の中で以下のように回答しています。
「⑤膨大な数の患者さんを診られてきた田澤先生からご覧になって、ホルモン治療をした場合私の再発率はどのくらいでしょうか?」
⇒10-20%程度です。
最大浸潤径の解釈が難しいですが「大人しいタイプの小葉癌」であれば10%に近いと思います。
「田澤先生も、抗がん剤は必要ないと思われますか?」
⇒「上乗せが5%以下」と考えられます。
必要ありません。
「習慣で毎日ヨーグルトを食べるのですが、大丈夫でしょうか?」
⇒大丈夫です。
乳癌学会としては「乳製品も、大豆イソフラボンも、むしろリスク低減」と結論づけています。
質問者様から 【質問7】
田澤先生こんにちは。
本日はよろしくお願いいたします。
先日は、多中心性であるとのご回答、ありがとうございました。
毎日こちらのQ&Aを拝見していますが、「小葉癌」の方が意外にいらっしゃるなと思いました。
「多中心性」というのは、乳腺の中にいくつも癌が出来ている状態でしょうか?それらが融合して、私の場合では90mmという大きさになったのでしょうか。
以前、小葉癌の腫瘍径は大きくなりがちだがリスク因子として考えなくても良いと教えていただきました。
それは、1つの癌として90mmに育ったわけではなく、いくつかの癌の融合体としての90mmであるからなのでしょうか?
私の病理結果を見ますと、浸潤と非浸潤が混在とあるので、多中心性のそれぞれの癌が、浸潤していたり非浸潤だったりしているのでしょうか?
それらを合わせての90mmでしょうか。
主治医は抗がん剤も放射線も全く勧めてきません。
その点は田澤先生のご意見と同じであり安心して信頼しています。
St. Gallen 2015でも「抗ガン剤の適応に、腫瘍径は考慮しない」が「過半数を占めている」とありますが、それは、ルミナールAタイプでは抗がん剤が効きにくいからでしょうか?
腫瘍径が大きくともそれともホルモン剤だけで十分効果があるからでしょうか?
たくさん質問してしまい申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答7】
こんにちは。田澤です。
「「多中心性」というのは、乳腺の中にいくつも癌が出来ている状態でしょうか?それらが融合して、私の場合では90mmという大きさになったのでしょうか。」
⇒そう言う状況を想像しています。(前回までの回答でもコメントしている様に)
「それは、1つの癌として90mmに育ったわけではなく、いくつかの癌の融合体としての90mmであるからなのでしょうか?」
⇒そういうことです。
「私の病理結果を見ますと、浸潤と非浸潤が混在とあるので、多中心性のそれぞれの癌が、浸潤していたり非浸潤だったりしているのでしょうか?それらを合わせての90mmでしょうか。」
⇒そのようです。
「St. Gallen 2015でも「抗ガン剤の適応に、腫瘍径は考慮しない」が「過半数を占めている」とありますが、それは、ルミナールAタイプでは抗がん剤が効きにくいからでしょうか?」
⇒「luminal Aでは抗ガン剤が効きにくい」のは間違いありません。
「腫瘍径が大きくともそれともホルモン剤だけで十分効果があるからでしょうか?」
⇒「大きいから、抗ガン剤が効く」ことは無いということです。