Site Overlay

乳房温存術後の病理診断について

[管理番号:469]
性別:女性
年齢:46歳
いつも参考にさせて頂いてます。 
乳がんにて4月下旬手術をしました。
しこり大きさ3.7cm(エコーにて)温存か全摘どちらでもよい。
画像ではリンパ節転移もない非浸潤がんが少し浸潤している程度。
先生の勧めで温存となりました。術中病理診断にてセンチネルリンパ節3/3転移. 
また1方向断片陽性にて追加切除となりました。術後病理診断にてER++PGR++共に90%
ハーツ、スコア0です。Ki67に関しては追加にて病理診断にだしています。
リンパ節レベル1まで郭清、センチネルリンパ節3個のみ転移でレベル1は0/7で転移なし
でした。Iy3 V2高度脈管浸潤ありです。脂肪浸潤あり+。
 
そこで質問です。
先生に全摘をしなくていいかお聞きしたところ、全摘しても高度脈管浸潤のため
放射線をするので胸が残っただけいいと・・必要なしとのことでした。
今後、化学療法→放射線→ホルモン療法の予定です。
先生は断端陰性のため必要ないとのことですが本当に温存で大丈夫なんでしょうか?
また全摘の追加手術の場合、化学療法→全摘手術でもいいのでしょうか?
病理診断コメントに腫瘍内に1.5cm大の嚢胞状変化を認めますが、壁の大部分は浸潤癌で囲まれています。
追加切除標本にも浸潤癌を認めます。追加切除を含めた断端は非腫瘍性です。
→私は再発リスクも高いため全摘希望です。
あまりにも術前と違うため動揺していますし、来週には化学療法TCに入るためどうすればいいのか混乱しています。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「温存術後の病理結果」で心配になり、「乳房切除」も考えている。という事ですね。
 術後化学療法の開始が迫り「このままでいいのか?」と焦っている気持が伝わってきました。

回答

「先生は断端陰性のため必要ないとのことですが本当に温存で大丈夫なんでしょうか?」
⇒「大丈夫ではない」とは言えませんが、「乳房内再発高リスク」だとは思います。
 もともと「3.7cmの腫瘍」であり、しかもly3と言う事は「リンパ管を介して乳腺内に拡がっている可能性」があります。
 そのために「術後放射線照射をする」わけなので、「乳房切除した方がいい」とは言いませんが、「高リスクである」事は事実です。
 但し「担当医のコメント通り」乳房切除しても「術後照射は必要」です。
 
「また全摘の追加手術の場合、化学療法→全摘手術でもいいのでしょうか?」
⇒構いません。
 化学療法後、3週間以上すれば「手術は全く問題ありません」
◎むしろ、「乳房切除するなら」放射線照射より前がいいです。
 
「来週には化学療法TCに入るためどうすればいいのか混乱しています」
⇒TCが終わってから「乳房切除」で全く問題ありません。
 無論、「TCの前」でもいい訳ですが、「TCが始まるからと言って」慌てる必要は無いのです。
 じっくり「質問者の希望」を話せば、「担当医も理解してくれる」ことと思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生早速のお返事ありがとうございます。
先生の回答で気持ちがとても落ち着きました。
エコー診断で3.7cmのしこりでしたが病理診断では浸潤部腫瘍径27㎜でした。
TC後でも問題ないが、「乳房切除するなら」放射線照射より前がいいです。
これはどういった理由がありますか?
再発率を下げるには全摘をし放射線がベストということですよね。
再手術せず温存→放射線・ 再手術にて全摘→放射線
先生ならどちらをすすめますか?  
先生、私の状態は(リンパ節転移あり 高度脈管浸襲ly3・V2)かなり厳しい状況ですか?
病理診断にはステージの記載がなかったため最終的なステージも分からず予後が気がかりです。  
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 担当医の「断端陰性のため(追加手術での全摘は)必要ない」というコメントも「執刀医」として非常に理解(共感)できます。
 ただ、「ご本人が何を最優先に考えるか?」を参考に考えます。

回答

「TC後でも問題ないが、「乳房切除するなら」放射線照射より前がいいです。これはどういった理由がありますか?」
⇒最初の部分の「TC後でも問題ないが」という部分は、「化学療法と再切除の順番はどちらでも良い」という意味です。
 後半の「乳房切除するなら放射線照射より前がいい」という部分は以下の2つの理由です。
①(最終的に、乳房切除後の)『胸壁照射+領域リンパ節照射』をしたい訳なので、手術前に放射線照射をしようとした場合には、『温存乳房が邪魔』になるから
②乳房切除をする際に「放射線照射後では、創傷治癒が(幾らか)心配」だから
 
「再発率を下げるには全摘をし放射線がベスト」
⇒局所再発(乳房内再発や胸壁再発)を低減させるには、そう思います。
 全身的な再発には「差はない」とは思います。
 
「再手術せず温存→放射線・ 再手術にて全摘→放射線 先生ならどちらをすすめますか?」
⇒誤解をしてほしくないのは
 執刀医として「病理組織結果を説明する際に、今回の結果『センチネルリンパ節3個のみ転移Iy3 V2高度脈管浸潤あり』で乳房切除を勧める事はありません。
 
◎質問者のケースは「『術前予想していた病理結果と乖離があり』、乳房温存で本当に大丈夫だろうか?再発リスクをできるだけ下げたい」という気持ちが強いと、私は解釈しています。
そこを前提として私が勧めるのは「再手術にて全摘→放射線」となります。
 
「私の状態は(リンパ節転移あり 高度脈管浸襲ly3・V2)かなり厳しい状況ですか?」
⇒そんなことはありません。
 質問者の場合にはpT2, pN1, pStage2Bとなります。Luminal typeであり、「術後ホルモン療法」が有効であり、十分根治する可能性はあります。
 リンパ節転移は3個ですが、「もしもKi67が低値」であれば、「本当に化学療法が必要か?」という見直しも必要だとは思います。
 
「最終的なステージも分からず予後が気がかりです。」
⇒最終的なステージはステージ2となります。(上記)
 1990年代のデータでは5年生存率91%, 10年生存率79%となります。
 
 

 

質問者様から 【質問3 化学療法について】

田澤先生ありがとうございます。またご相談させてください。
実は本日セカンドオピニオンを○○ガンセンターで受けてきました。
そちらの先生に化学療法がTC療法ではなくEC4クール→タキサン4クールを勧められました。
理由として高度脈管浸潤(ly3.V2)・グレード3・リンパ節転移3個
潰瘍も27㎜の為、Ki67が低値ではないだろうし(まだでていないです。)また低値でも、ここまで高リスクなら化学療法を変更すべきですと言われました。
ホルモン強陽性の為、化学療法が効きにくいのではとお尋ねしたところグレード3であれば、ホルモン療法の効果が不十分の可能性があるとの事。
ホルモン強陽性でここまで高リスクで揃っているのは珍しい。
○○ガンセンターでもあまりいないと言われ全摘し化学療法6カ月・放射線・ホルモン10年それが再発を下げる最大限にできることと言われました。
全摘に関しては田澤先生のコメントで心が決まってましたので主治医にその方向で話をするつもりでいましたが
先生、化学療法やはりEC4クール→タキサン4クールのほうがリスク低減になるのでしょうか?
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 その○○癌センターの医師の意見が正しいかは別として(大病院に居ると自分は偉いと勘違いしている医師は沢山います)また、そのように患者さんも考えがちです。
 ここでは事実に基づいて、私の意見を記載します。

回答

「TC療法ではなくEC4クール→タキサン4クールを勧められました」
⇒『TC』と『EC→タキサン(アンスラfollowd by taxane)』の直接比較はありません。
 ただ、「アンスラfollowd by taxane」が「現時点で術後補助療法として最強の化学療法」と言われています。
◎それは「アンスラサイクリン」と「タキサン」という『両巨頭』が入っているので、そのイメージがあるからです。(アンスラサイクリンには長期間の十分なエビデンスの蓄積があります)
★Ki67が高値(80以上とか)であれば、(最強と言われている)「アンスラfollowd by taxane」もいいとは思いますが、
 そうでなければ、「TC」でもいいと思います。
 
「グレード3であればホルモン療法の効果が不十分の可能性がある」
→これは、「根拠薄弱」です。
 あくまでもイメージでの話です。
 
「ホルモン強陽性でここまで高リスクで揃っているのは珍しい。○○ガンセンターでもあまりいない」
⇒(その○○ガンセンターでは、どうなのか知りませんが…)
 特に珍しいとは思いません。
 乳癌は「多様性」があるので「実に様々なタイプ」があります。
 
「全摘し化学療法6カ月・放射線・ホルモン10年それが再発を下げる最大限にできること」
⇒これに関しては、私も賛成です。
★特に「最も大事」なのは間違いなくホルモン療法です。
 閉経前なので「化学療法閉経とならなかった場合」には「LH-RHagonist」も併用した方がいいです。
 タモキシフェンも5年より10年の時代「ATLAS試験による」となっています。
 
 

 

質問者様から 【質問4 化学療法について】

田澤先生適切なお答えをありがとうございます。
主治医とお話ししたところまず化学療法に関しましては
ki67の数値が出てTCのみにするかEC+タキサンにするか判断することに
なり来週に化学療法が変更になりました。
また全摘の追加手術に関してもやはり先生がおっしゃっていたように
高度脈管浸襲 リンパ節転移で全摘はすすめない。なぜなら断辺陰性だし十分な視野?境
がとれてる。確かに局所再発率は上がるが全身には関係ないし定期検診は2~3カ月に
1度はする。ただし本人の意思は尊重したいから強い希望があれば全摘するとのことでした。
これに関しては他もセカンドを受けてみたら?とすすめられました。
まずは先に化学療法を受けその間にさらに気持ちを固めようかと思っております。
私的にはホルモン強陽性の為化学療法に上乗せ効果が薄いと考えてた為
6か月の化学療法に困惑してますがKI67が高値なら化学療法6カ月それ以外なら
TC3カ月と田澤先生と主治医の治療法ですすみたいと思っております。
 
田澤先生またご報告&ご相談させてください。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 よく方針が整理されてきましたね。
 自分自身で確認しながら前に進むことは、とてもいい事です。
 「Ki67の値も気になるところだとは思いますが」治療がんばってください。