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術後の補助治療いついて

[管理番号:3135]
性別:女性
年齢:42歳
術後の補助治療いついて教えてください。
オーストラリアで4月に左乳房部分切除、6月に両乳房全摘出+同時再建手術をしました。
(42歳)
病理検査結果
[左乳房]
腫瘍タイプ NST
浸潤がん 8mm(周りに非浸潤がん6cm)
(術中)リンパ節生検:転移なし
グレード1
エストロゲンレセプター陽性90%, プロゲステロンレセプター陽性100%
Her2 陰性
K67: 5%以下
[右乳房]
腫瘍タイプ NST
浸潤がん 2.5mm(周りに非浸潤がん7mm)
(術中)リンパ節生検: 不明(リンパ節生検したがとれたものは脂肪だった)
グレード3
エストロゲンレセプター陽性50%, プロゲステロンレセプター陽性30%
Her2 陰性
K67:不明(正確に評価するには小さすぎる)
乳腺科、放射線科等が集まったチームミーティングの結果、「術後の治療方法は無治療でよい」ことになりました。
その根拠としてはがん細胞がごく小さくこと、ホルモン治療しても再発率5%しか違いがないこと。
この年齢でのホルモン療法は副作用がきついこと。だそうです。
無治療なのは嬉しい反面、将来、転移が恐いです。
こちらは転移箇所しやすいと言われている肺、骨など術後に定期検査はありません。
(オーストラリアの治療ガイドラインより)
不安な点として
①左乳房リンパ節転移: 不明
②左乳房グレード:3
無治療でもいいのでしょうか?これで無治療だと生存、転移率はどのくらいでしょうか?
全摘したら無治療でもいいのでしょうか?
国で治療ガイドラインが違うようで、術後治療を決めかねています。
私の場合、無治療とホルモン療法どのくらいの差がありますか、お教えください。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
左8mm 右2.5mm
完璧な早期癌ですね。
左右ともルミナールタイプであり、(右は小さいけど)左は一応8mmなので「ホルモン療法が一般的」でしょう。
右の2.5mmは「気にする必要なし」です。
「その根拠としてはがん細胞がごく小さくこと、ホルモン治療しても再発率5%しか違いがないこと。」
「この年齢でのホルモン療法は副作用がきついこと」
⇒全て「正しい」と言えます。
 ただ「同じ内容」なのに最終的な結論が異なる(日本ではホルモン療法が勧められる)ところが分化の違いと言えそうです。(欧米の合理主義)
 日本では、なかなか「僅か5%だから、しなくても同じ」とは割り切れないものです。
 
「肺、骨など術後に定期検査はありません。(オーストラリアの治療ガイドラインより)」
⇒これは「正しい」です。
 日本のガイドラインでも「そんな余計な検査」を推奨はしていません。
(しかし、実際には、お金と被爆の問題があるのに無駄な検査を重ねているのも日本らしいと言えます)
 
「①左乳房リンパ節転移: 不明 ②左乳房グレード:3 無治療でもいいのでしょうか?」
⇒左は無視しても大丈夫です。
 浸潤径2.5mmは「グレードその他」は無意味であり、リンパ節転移もありません。
 
「無治療だと生存、転移率はどのくらいでしょうか? 」
⇒ 10年生存率は97%
再発率は14%
となります。(因みにホルモン療法をすると9%となり、上乗せは5%です)
 
「全摘したら無治療でもいいのでしょうか?」
⇒「局所」と「全身」に分けましょう。
 全摘はあくまでも「局所療法」です。
 ○それとは無関係に「全身療法をどうするか?」です。
 言い換えれば(ホルモン療法による)「5%の上乗せ」をどう考えるかです。
 おそらく「西洋的合理主義」では「僅か5%(しかも生存率には寄与しない)ではコストを考えると無駄」でバッサリなのでしょう。
 
「私の場合、無治療とホルモン療法どのくらいの差がありますか、」
⇒再発率は5%(上記)生存率は0%(全く寄与しない)のです。