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先日ADHと診断されたものです

[管理番号:306]
性別:女性
年齢:41歳
田澤先生
先日は診察ありがとうございました。
○日にADHと診断され、○月に手術をさせていただく○○です。
 
田澤先生の迅速な対応には本当にうれしく、両親も早い手術の日程、およびとても親切、そしてやさしい対応、その他いろいろと本当に田澤先生に出会えてよかった!!と心から私も両親、家族も感謝しております。
今後ともいろいろとよろしくお願いいたします。
 
先日、もっと直接お聞きすればよかったのですが、両親がいたので、あまり詳しく内容をきけず、家でいろいろと考えて頭の中を整理して再度メールにて質問させていただくことにしました。
 
先日も先生に言いましたが、ADHと診断され、正直なんだか安心してよいのか悪いのかわからないのですが、先生のもとで診察していただいているので、診療に関しての不安ということは全くありません。
 
ただ自分でもう少し理解したいと思ったのでメールさせていただきました。
 
先生の見立てでは、おそらくガンであろうと思われたと予測しますが、マンモトーム組織検査の結果ADHとの診断で先生からは、部分切除の後の病理検査でがんと診断される方が多いとお聞きしました。
 
このADHとは2ミリだとガンと診断名がされないのですね。
 
 
先生のHPでは
———
 V異型乳管の範囲(ADHは2mm以内)の違いだけです。
実はlow grade DCIS(低悪性度の非浸潤性乳管癌)とは、それ以外の性質は全て同一です
———
となっているのに、ADHという診断名が定めらるのはなんとなくすっきりしないのですが、2ミリでもガンはガンですよね。。
 
 
そこで、質問です。

  1. もし現時点でのマンモトーム組織検査で私がガンだった場合はどのよう治療方針となったのでしょうか?
  2. ガンとなった場合は、術後(温存手術の場合)は放射線治療もおこなうとなっているかと思いますが術後の病理検査の後もADHとなった場合は放射線治療を行う方はいままでいらっしゃるでしょうか?
  3. もし私はガンと診断されていた場合の手術の呼び名は「温存手術」なのですか?
    今回は「部分切除」となっているようですが、がんであった場合とADHの場合とでは手術内容がことなるのですか?
  4. 私のようにADHとなる方はどのくらいの割合でいらっしゃるのでしょうか。

 
もちろん、術後の病理検査にてガンと診断されればもちろんその治療に向かっていくとは思うのですが、それだったら、最初からグレーの診断はしないでその方向に向かうほうがいいのではと考えたりもしました。
 

田澤先生からの回答

 おはようございます。田澤です。
 診療をご評価いただき、ありがとうございます。
 今回の問い合わせ内容は、今後「ADH」と診断されて、「乳がんプラザ」を訪れる方たちに大変参考になる「重要な内容」ですので匿名にした上で掲載いたします。

回答

「1、 もし現時点でのマンモトーム組織検査で私がガンだった場合はどのよう治療方針となったのでしょうか?」
⇒手術は(通常の)乳房温存術+センチネルリンパ節生検 となります。
 術後は「温存乳房照射」を行います。
 術後補助療法として「ホルモン療法」を行う可能性もありますが、(予想される)効果と副作用を天瓶にかけた上での相談となります。
 ※DCIS(非浸潤性乳管癌)での術後ホルモン療法は乳癌診療ガイドラインでもC1であり必須ではないのです。
 乳癌の診断名となると、原則「術中センチネルリンパ節生検」の適応となります。
※原則といっているのは、「外科的生検などで、病変を広範囲に切除した上でのDCIS(非浸潤性乳管癌)の診断の場合にのみ、センチネルリンパ節生検も省略」されます。
 
「2.ガンとなった場合は、術後(温存手術の場合)は放射線治療もおこなうとなっているかと思いますが術後の病理検査の後もADHとなった場合は放射線治療を行う方はいままでいらっしゃるでしょうか?」
⇒(あとで私自身のデータを示しますが)術後、最終病理結果がADHとなった症例は3例なのですが、全員「術後照射はしていません」
 私からも勧めませんし、ご本人も希望されませんでした。
 
「3.もし私はガンと診断されていた場合の手術の呼び名は「温存手術」なのですか?今回は「部分切除」となっているようですが、がんであった場合とADHの場合とでは手術内容がことなるのですか?」
⇒(「1」と一部説明がダブりますが)

  • ADHの場合:乳腺部分切除
  • 癌の場合: 乳房温存+センチネルリンパ節生検 (センチネルリンパ節生検の適応については①を参照してください)

ここでは「乳腺部分切除」と「乳房温存」の「乳腺の切除範囲」の違いがあるか?ですが
⇒これは、先日(結果説明の際に)確認した内容なのですが、「ご本人の希望」により「術者が匙加減」する内容です。

  • 「ケース1」ご本人が(癌との確定診断でなければ)とにかく「最小限の切除」をご希望される場合(主として美容的目的で)
     ⇒「癌の手術である乳房温存」よりも小さく「(病変ぎりぎりの)小さい切除範囲」にとどめる
     ※このケースでは術後に「癌と診断」されれば、原則として「癌としての再切除(病変からマージンがとれるように)大きめに切除しなおす)」が前提となります。
     
  • 「ケース2」ご本人が(今回の手術で癌と確定診断された場合でも)安心なように「(病変から十分マージンをとった)切除範囲」をご希望される場合
     ⇒術後に「癌と診断」されても再切除は行いません(そのための十分なマージンをつけた切除なのです)
     

「4.私のようにADHとなる方はどのくらいの割合でいらっしゃるのでしょうか。」
⇒今回、過去のマンモトーム症例(今すぐに調べられるのが、H17/1/25~H23/11/29の833症例なので以下、そのデータでお話しします)で、調べますと
マンモトーム833例の時点で17症例(約2%)です。
※この中で癌の診断は163例なので最初から癌と診断される方の約1/10となってます。
 
◎回答はここまでですがST-MMTでADHと診断された17例の転帰も(この機会に調べましたので)以下に記載しておきます。参考にしてください。
17例中13例が手術をし、10例(約77%)が癌の最終診断(3例が最終診断でADH)
17例中4例が他院へ紹介となっています。(その4例とも詳細は不明です。)
 
「もちろん、術後の病理検査にてガンと診断されればもちろんその治療に向かっていくとは思うのですが、それだったら、最初からグレーの診断はしないでその方向に向かうほうがいいのではと考えたりもしました。」
⇒ADHの取り扱では(トップページの中の「ADH」に記載したように)原則全て、外科的生検をして病変の範囲を明らかにするように推奨されています。
 十分な(病変全体の評価を行った上で)「不要な治療を避ける」意図があります。
 
 つまり「2mm以内のlow gradeのDCIS」であれば、「外科的生検できっちり切除すれば治療としては十分である(わざわざ癌の診断名をつけて、放射線などそれ以上の治療は不要)」という考えです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
大変お忙しいのに、本当に詳しく丁寧にわかりやすく説明していただきありがとうございました。
とても納得し、手術に向かいたいとおもいます。
先日、主人も病院に同行する予定でしたが、子供が熱を出したのでいけませんでした。
今回の質問、回答を主人に連絡したら、とてもわかりやすくきちんと理解してくれたようで、今回質問してとてもよかったです。
本当にいつもありがとうございます。
それでは、手術日まで体調を整えます。
よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答2】

 今回回答するにあたり、「過去の自分のデータ」を引っ張り出せて良かったです。
 質問者のように「積極的に、自分の疾患について理解する」という姿勢は大変好ましい事であり、治療にむかうにあたって、とても重要な事です。
 手術日まで体調を崩さないようにお願いします。
 
 江戸川病院 乳腺センター 田澤篤