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手術後の治療について

[管理番号:5759]
性別:女性
年齢:48歳
いつも拝見しています。
浸潤性乳管がんで右乳房全摘しています。
抗がん剤を始める前に気になっている点についてアドバイスをお願いします。
・浸潤性乳管癌 (多発)
・浸潤径: 1.2cm×0.5cm
・範囲 3.3cm×3.0cm
・核異型度  2
・組織異型度 2
・リンパ節転移: 1/13
・断端: ?
・リンパ管侵襲 ly3+
・血管侵襲 –
・ER + 80%
・PgR + 60%
・HER2 –
以下質問となります。
(1) 通っている病院では 抗がん剤は AC のみしか対応しておりません。
  田澤先生の所では TC を実施すると思いますが
  AC、TC との違いはどのようなものでしょうか?
  AC 治療を始めて良いものでしょうか?
(2) 放射線治療については 不要と言われています。
  ly3+ のため気になっていますが
  放射線治療は実施するべきでしょうか?
(3) 左胸のしこりが非常に気になっています。
  手術前にはなかったもので、手術後は
  検査をしてもらえません。
  かかりつけの病院では 手術前に撮った画像などから
  判断しており、乳腺症で 1回/年 検査で
  良いという診断となっています。
  このまま抗がん剤をすすめて良いのかどうか。
  他院で調べてもらっても良いものでしょうか?
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「AC、TC との違いはどのようなものでしょうか?AC 治療を始めて良いものでしょうか?」
⇒違いはA(ドキソルビシン)とT(ドセタキセル)の違いです。前者がアンスラサイクリン系に対し、後者はタキサン系薬剤です。
 臨床試験でAC<TCが解っています。
「ly3+ のため気になっていますが放射線治療は実施するべきでしょうか?」
⇒胸壁照射は考慮してもいいでしょう。
「(3) 左胸のしこりが非常に気になっています。他院で調べてもらっても良いものでしょうか?」
⇒本来なら、手術した病院で解決する問題ですが…
 (どうしても納得できないなら)そうするしかありません。
 
 

 

質問者様から 【質問2 手術後の治療について】

性別:女性
年齢:48歳
前回は回答ありがとうございました。
現在は全摘後 抗がん剤 AC の 3/4 回目の投与が終わったところです。
分からないところがありますので質問させてください。
病理報告書を合わせて記載します。
以下報告書です。
==============================
組織学的には浸潤性乳管癌、硬癌、G2、NG2を認める。
高度の核形不整と低頻度の核分裂像を呈する
腫瘍細胞が、比較的小型の胞巣や索状構造を形成し、複数個所で浸潤巣を形成している。
腫瘍周囲の間質には炎症細胞浸潤が目立つ。
充実性ないし、篩状の乳管内癌成分を伴う。
高度のリンパ管侵襲を認め、それを介した多発浸潤がみられる。
腫瘍全体の広がりは3.0×1.0×3.3cm、最大浸潤径は1.2×0.5cm。
リンパ節転移あり。
免疫染色
ER: 3+、80%、強、Allred score 5+3=8
PgR: 3+、60%、強、Allred score 4+3=7
HER2: score 0
Ki67 LI: 17.4% (87/500)
リンパ管侵襲巣においてホルモン受容体の発現がやや低下している
(ERでは3+、30%、中、Allred score 3+2=5程度、PgRでは 3+、20%、弱、
Allred score 3+1=4 程度)
リンパ節規約
永久LN(0/8)、結合織のみ 0/4
迅速SLN(1/5)、マクロ転移
合計(1/13)
==================================
====
(1)主治医の勧めにより AC 4回を投与することになりました。
 田澤先生からの回答で TCをお願いしてみましたが、初期治療では
 TCは投与しない方針の病院であったため、ACとなりました。
 治療方針として抗がん剤は ACのみといわれてますが タキサン系の抗がん剤を
 しなくていいのか不安です。
 主治医からは副作用と上乗せ効果を考えると不要といわれています。
 田澤先生は病理結果から、どのように思われますでしょうか?
 また、オンコタイプDXせずに AC を始めてしまいましたが、
 今からでも検査して判断したほうが良いと思われますか?
(2)前回の質問時 胸壁照射を実施しても良いという回答をいただきましたが
 病理結果より やはり実施したほうが良いという判断になりますでしょうか?
 照射は胸壁のみで十分なのでしょうか?
 鎖骨上も必要ですか?
 放射線治療はリニアックになりますが、トモセラピーと比べて効果や
 体への負担はどうでしょうか?
 もし、トモセラピーのほうが良いということになれば、江戸川病院で転院しなくても
 対応していただけるものなのでしょうか?
 主治医からは、放射線治療も副作用があるため不要と言われております。
 温存の場合は必ず放射線治療を実施すると思いますが、全摘の場合は
 体への負担が大きくなるなど 温存の場合とは別の副作用があるのでしょうか?
(3)左胸のしこりについて
 前回も質問させていただきましたが、主治医からは乳腺症と言われ
 (画像判断のみ) 検査は 1回/年程度で良いという診断は変わらず、
 それ以上の検査をしてもらえません。
 右が多発で何年も画像診断で良性と言われ続け、昨年の診察時に悪性となり
 リンパ節郭清となったため、気になっています。
 また、抗がん剤治療を実施したところ、左胸のしこりは小さくなったと
 感じるため、癌ではないかという思いもあります。
 田澤先生の診察を 5月下旬に入れさせていただきましたが、それまで待っていても
 問題ないでしょうか?
(4)体の痛みについて
 背中の痛み (背骨の右側、患側で、少し筋肉が腫れているような感覚) が乳がんの 告知を受ける1か月前(2017/08) からあります。
 2017/11 に撮影した造影CTの時には 転移ではないとのことでしたが
 まだ画像に写らなかっただけで 転移しているということは考えられますでしょうか?
 この痛みは抗がん剤を投与後、2週間位なくなりますが、3週目位から
 元の痛みに戻ります。
 痛みの程度は昨年の秋と同じ位で痛みのある時はしばらく続きますが
 一日中痛いわけではなく、感じない(忘れている)時もあります。
 疲れた時、負担がかかった時は起きているのが辛いほど痛くなることもあります。
 車に乗っている時はシートがあたるせいか痛むことが多いです。
 また、2017/09 には右足先がしびれることもありましたが
 手術後からは足のしびれは気にならなくなりました。
(5)病理報告書について
 病理報告書は主治医から直接もらえなかったため
 後日受付から発行してもらいました。
 所見から かなり良くない状態でしょうか?
 先生のご経験から再発しやすいと思われることはありますか?
 今後気を付けることなどあればご教示お願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「 田澤先生は病理結果から、どのように思われますでしょうか?」
⇒Ki67=17.4%なのに(当院では)抗癌剤をすることはありません。
 「リンパ節転移=抗癌剤」と考える施設が、いまだにあることは知っていますが…
「 また、オンコタイプDXせずに AC を始めてしまいましたが、 今からでも検査して判断したほうが良いと思われますか?」
⇒何のために行うのか?
 という問題となります。
 可能性としては「low risk」となりそうですが、そうすると「化学療法による上乗せがない」結果を目の当たりにすることになります。(それを質問者がどう感じるか?ということです)
 ただ、自分が「low risk」であることや「再発率の低さ」は知る価値があるのかもしれません(ご本人次第です)
「前回の質問時 胸壁照射を実施しても良いという回答」「病理結果より やはり実施したほうが良いという判断になりますでしょうか?」
⇒そのとおり、前回回答に変更はありません。
「鎖骨上も必要ですか?」
⇒不要です。
 鎖骨上リンパ節照射は「腋窩リンパ節転移が4個以上」で必要となります。
「 放射線治療はリニアックになりますが、トモセラピーと比べて効果や 体への負担はどうでしょうか?」
⇒胸壁照射では、あまり変わらないと考えましょう・
「田澤先生の診察を 5月下旬に入れさせていただきましたが、それまで待っていても 問題ないでしょうか?」
⇒実際に診察していない私に(その主治医以上の)判断を求められても…
 それくらいは、主治医を信用してあげましょう。
「まだ画像に写らなかっただけで 転移しているということは考えられますでしょうか?」
⇒全く根拠がありません。
「所見から かなり良くない状態でしょうか?」
「 先生のご経験から再発しやすいと思われることはありますか?」

⇒全く、そうは思いません。
 必要以上に(もしも)脅かされているとしたら…
 OncotypeDXを見て「安心する」ことも、一つの方法かもしれません。
 
 

 

質問者様から 【質問3 手術後の治療について】

性別:女性
年齢:48歳
いつも丁寧な回答ありがとうございます。
放射線治療についてもう少し質問させてください。
現病院の乳腺外科の主治医と腫瘍内科の主治医には放射線治療は不要だろうと言われています。
今後、放射線医との話になるのですが、そこでも不要と言われた場合、
強く希望する理由が私の中でまだ乏しいので田澤先生のお力をお貸しください。
高度な脈管侵襲の場合、全摘しても放射線をしたほうがいいということは局所再発の可能性が高いということだと思っています。
ご経験として脈管侵襲で再発する人は確率的に多かいものでしょうか?
通常、全摘でリンパ節転移が多くなければ放射線治療はしないと思っていますが、私の場合、どのような再発を想定されていますでしょうか?
取り残しのガンが大胸筋や皮膚で増大しやすいということでしょうか?
それともリンパ管から胸壁にがん細胞が散らばってる可能性があるということでしょうか?
もしそうだとするとそれは時間の経過とともにでしょうか?
それとも手術の際にでしょうか?
局所再発した場合の治療として放射線をすでに受けた場合、手術になると思いますがそれで根治はありますでしょうか?
放射線をかけるタイミングは今がベストと考えられますか?
再発時に取取っておくという考え方はありますか?
もし局所再発するとしたら早い時期(2~3年)の可能性が高いでしょうか?
以上よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「ご経験として脈管侵襲で再発する人は確率的に多かいものでしょうか?」
⇒局所再発自体、そもそも(皆さんが心配される程)多いものではありません。
「どのような再発を想定されていますでしょうか?」
「それは時間の経過とともにでしょうか?それとも手術の際にでしょうか?」

⇒危惧するのは…
 皮膚のリンパ管に癌細胞が(手術時に)残存していた場合に、それが時間経過と共に増大するケースです。(確率的に高いと言っているのではありません)
「局所再発した場合の治療として放射線をすでに受けた場合、手術になると思いますがそれで根治はありますでしょうか?」
⇒範囲次第ですが…
 あくまでも局所再発は局所なのです。(全身とは異なり、完全制御「根治」の可能性は常にあります)
「放射線をかけるタイミングは今がベストと考えられますか?再発時に取取っておくという考え方はありますか?」
⇒「とっておく(再発を前提とした考え方)」という考え方は私には「そもそも」ありません。(「相手(敵)は小さいほどいい」ことは間違いありません。
 その考え方が「術後補助療法」なのです)
「もし局所再発するとしたら早い時期(2~3年)の可能性が高いでしょうか?」
⇒それは解りません(そもそも決して頻度が高いわけではありません)
 
 

 

質問者様から 【質問4 手術後の治療について】

性別:女性
年齢:48歳
いつも回答いただきありがとうございます。
2/(上旬) に AC 4回目(最終)投与が終了し、現在はホルモン治療に入りました。
(ノルバデックス錠のみ)
タキサン系については主治医の判断で投与していません。
、し
AC終了後の 3週間目位から 術後の傷口に沿って二か所に5個と2個の湿疹のようなものが有り気になっています。
1つの湿疹は1~2mm位でかゆみがあります。
今後の治療として、田澤先生にご回答いただいた通り 放射線治療を受けたいと思っていますが この湿疹が再発かどうかの判断をしてから始めるべきなのか、治療を開始してしまってもよいのかどうか迷っています。
主治医からは もう少し様子を見ましょうと言われたのみで、特に検査はは実施しておりません。
放射線は江戸川病院での治療を考えていますが このまま治療を始めてしまっても良いものでしょうか?
また、皮膚に再発となった場合、手術して切り取ることができるのでしょうか?
それとも、抗がん剤や放射線治療となるのでしょうか?
もし田澤先生に診察していただきたい場合はお願いすることができるのでしょうか?
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
「術後の傷口に沿って二か所に5個と2個の湿疹湿疹のようなもの」
「この湿疹が再発かどうかの判断をしてから始めるべきなのか」「主治医からは もう少し様子を見ましょうと言われた」

⇒気になるなら…
 (私は当然、診察していないのでこれ以上コメントできませんが)皮膚生検すべきものです。(メスで切って、一針縫合する位だから大した負担ではありません)
「放射線は江戸川病院での治療を考えていますが このまま治療を始めてしまっても良いものでしょうか?」
⇒それは、実際に診察している(もしくは、するべき)担当医に相談すべきであり、
(その診断が不安なら)その担当医が責任を持って「皮膚生検すべき」ものです。
 私に聞いても(その担当医以上の)回答を引き出す事が困難であることはお解りですね?
「また、皮膚に再発となった場合、手術して切り取ることができるのでしょうか?
それとも、抗がん剤や放射線治療となるのでしょうか?」

⇒それは範囲によります。
 そのためにも、「もしも疑わしいなら」小範囲であろう「今のうちに」診断をつけてしまうべきです。
「もし田澤先生に診察していただきたい場合はお願いすることができるのでしょうか?」
⇒もしも皮膚転移について心配ならば…
 
 (それに対して責任のある)担当医に「もうひと押し、ふた押し」すべきです。
 主治医で無い私が、質問者の希望通り「早期の診察」をすることは難しいことをご理解ください。