[管理番号:219]
性別:女性
年齢:66才
人間ドック超音波検査で「左胸にしこりあり。専門医の診察を受けるように」と指示され、
乳腺科でマンモ→エコー検査を受けたところ、「大小2個のしこりあり、1つは5CMぐらい、不定形で悪性が疑われる」とのことで、針を刺しての検査となりました。
結果は来週後半の予定です。
質問ですが、手元のドック検診結果では過去3年間左胸には、しこりは見つかっておりません。
1年で5cmもの癌ができることがあるのでしょうか?
なお、30年ほど前に右胸から繊維線腫3cmを摘出し、現在も右胸には石灰化しこりが1つあります。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「1年前に異常無し⇒5cmのしこり(悪性が疑われる)」となると疑問に思うのは当然です。
「1つ確認ですが、過去3年間のドック検診は超音波でしょうか?それともマンモでしょうか?」(それにより若干異なってきます)
私なりに、いろいろな状況を考えてみました。
それでは回答します。
回答
「大小2個のしこりあり、1つは5CMぐらい、不定形で悪性が疑われる」
⇒「過去3年間異常なし」と言う事も含めると可能性は2つに絞られます。
乳癌 | 残念ながら、年齢からして(60歳以上で新たに腫瘍ができるとしたら)真っ先に癌を疑わなくてはなりません。 ※線維腺腫など良性腫瘍は、通常若い年代で発生するのです。 |
糖尿病性乳腺症 | 非常に乳癌と形態が似ているために「画像上は、乳癌と診断」される事も多い。 ※コントロール不良の糖尿病を患っている場合には可能性があります。(勿論、針生検では区別は容易です) |
◎(コントロール不良の)糖尿病でも無い限りは、残念ながら「乳癌の可能性」が高そうです。
「1年で5cmもの癌ができることがあるのでしょうか?」
⇒(通常は考えにくいですが)以下の可能性があります。
- 過去3年間(少なくとも1年前)にうけたドック検診が「マンモグラフィーのみであった」場合
質問者のマンモグラフィーが「高濃度(乳腺が豊富)」である場合には、「マンモでは腫瘍が写りにくかった」可能性があります。
- (今回同様に)過去3年間のドック検診も「超音波のみであった」場合
「非浸潤癌などの、比較的難しい所見」が見逃されていた可能性
※「非浸潤癌」は超音波では「乳管拡張+多発嚢胞」のような一見「良性」のように見える事があります。(腫瘤非形成性病変といいます)
この場合には「実は非浸潤癌が以前から少しずつ増大していた」となります。(超音波は、検査術者の技術で信頼度にかなりのバラつきが出ます)
- (実際に、昨年までは所見はなく)1年間で5cmに急速増大する場合
一般に、「乳癌は増大速度は遅い」ですが、稀に「急速増大するもの」もあるのです。
◎一般的には「毎年検診をうけていて」発見される場合に、「進行している」事は殆どありません。
5cmと言っても「実質、非浸潤癌が大部分」ということも十分ありえます。
きちんと診断して、前向きにすすみましょう。
質問者様から 【質問2】
早速丁寧な回答をいただきありがとうございます。もう一点うかがいます。
ドック検診で数年前から耐糖能障害と指摘され今回は「糖代謝:糖尿病予備軍」との指摘があります。
4年ほど前から血糖値とHb1c値は基準を少し上回っていますが治療は受けておりません。
この程度でも糖尿病性乳腺症の可能性はあるのでしょうか?
また前回質問時に針での検査を受けたのは細胞診のようです。
別の検査が必要でしょうか?
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「1年間で5cmのしこり」と以前質問いただいた方ですね。
再度のご質問ありがとうございます。
それでは回答します。
回答
「4年ほど前から血糖値とHb1c値は基準を少し上回っています」
⇒この程度では「糖尿病性乳腺症」は少ないと思います。
ただ、私が経験してきた「糖尿病性乳腺症」の方がたまたま「コントロール不良 HbA1cの値で7以上」の方ばかりであったのでそのように考えていますが、きちんとした定義(HbA1cの値が○○以上のような)はありません。
「前回質問時に針での検査を受けたのは細胞診のようです。別の検査が必要でしょうか?」
⇒針生検すべきです。
細胞診では「偽陽性(良性なのに悪性と判断)」や「偽陰性(悪性なのに良性と判断)」また穿刺技術によっては「判定不能(細胞採取ができていない、又は少ない)」があります。
確実な診断には「針生検」が必須です。
★もちろん「糖尿病性乳腺症」は「細胞診では診断不能」です。