皆が気になる質問シリーズ -5-
~石灰化 vol1~
私は自分でステレオガイド下マンモトーム(以下ST-MMTと略します)を「非常識な位、多数」やっているので相当な(自らの経験による)蓄積があります。
「私の経験をふまえての」石灰化診療について、解り易く解説します。
良くある質問①
検診票に「石灰化 1年後経過観察」とありました。
精査(ST-MMTなど)しなくても大丈夫?
回答
大丈夫です。
石灰化は約半数の方にある所見であり、その90%が「明らかな良性」なのです。
「精査(ST-MMTなど)が必要」な石灰化は、極一部(10%以下)にすぎないのです。
【解説】
石灰化の総数に占める「要精査・癌の」内訳
90%が「明らかな良性の石灰化」(マンモグラフィー画像を見ただけで、乳腺症や線維線種、と診断できるもの)であり、実際に要精査となるのは10%に過ぎません。
10%が「要精査」となりますが、その中で実際に「ST-MMTで精査」を選択する数は更に少なく、「ST-MMTをした方の中で癌がみつかる確率」は約20%です。
江戸川病院検診センター(MAXLIFE)での2014年のデータをまとめました。
年間受診者総数(1525名)に対し、石灰化を認めた数(721名)は実に47.3%でした。
石灰化を認めた数(721名)に対し、カテゴリー3以上は73名であり、約10%でした。
結局癌だった人は3名であり、カテゴリー3以上でチェックされた方の4%にあたります。
●この数字を紐解くと、石灰化を認める方の90%は(そもそも)精査の対象外であり、石灰化要精査とされた方でも癌と診断される方は4%にすぎません。
(石灰化要精査となった方の内ST-MMTの適応のある方や、実際に希望する方は更に少なくなり、その20%に癌が発見されます。)
石灰化の「成因」による分類
石灰化の成因(成り立ち)で代表的なものは3種類あります。
壊死型/分泌型/間質型があります。
※間質型は線維腺腫など良性疾患に伴うものに限られており、それ以外を図で紹介します。
◎癌で起こる石灰化には壊死型と分泌型がありますが、代表的なものは壊死型石灰化です。
良くある質問②
回答
石灰化が癌になる訳ではありません。
石灰化はただのカルシウム(無機質)です。
順番が逆なのです。
「癌に起こる石灰化」は「まず癌が乳管内に発生して」
⇒「その後に石灰化が起こります」
従って、「良性(疾患に伴う)石灰化」は決して、将来癌になることはありません。
【解説】
代表的な「癌に伴う石灰化である」壊死型石灰化の発生から増加、ついに「しこり形成」まで見てみましょう。
壊死型石灰化の発生と(石灰化の)増加
⇒ついに「しこりの形成」まで
乳癌細胞は(大部分)乳管の細胞からできます。
これが、先ず乳管内で増殖します。
このまま、すぐに「浸潤を始めると」石灰化はできずに「しこりが出現」するのですが、「(浸潤しないまま)乳管内を拡がる」と以下に挙げたような経緯をたどります。
- 癌細胞が乳管内に発生(癌細胞の発生)
- 乳管内に充満(石灰化の発生)
- 乳管内に充満したまま、乳管内を拡がる(石灰化の増加)
- 「浸潤癌となり」乳管を破り、しこりを形成(しこりの形成)
図で解説
1.癌細胞が乳管内に発生⇒②乳管内に充満(石灰化の発生)
3.乳管内に充満したまま、乳管内を拡がる(石灰化の増加)
4.(ついに)「浸潤癌となり」乳管を破り、しこりを形成(しこりの形成)