Site Overlay

大学病院での診療

[管理番号:1045]
性別:女性
年齢:54歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:1039「母が乳がんの疑いです

 
 
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:1092「手術について

 
 
田澤先生
私の支離滅裂な質問に、お忙しいなか、しかも一つ一つ丁寧にお答えいただき、
本当にありがとうございました。
少しパニック状態から落ち着きを取り戻せました。
針生検の結果が出たら再質問しようと思いましたが、
今日少し困惑したことが起こりましたので、再度質問させてください。
本日クリニックからの紹介状とCD-ROMデータを持って、母(と父)が大学病院に行ってきました。
すると、針生検よりも前に先生から手術の話(検査のスケジュール等)になったそうです。
父と母はいきなり検査もなしに手術の話をされたので、困惑しすぐ返事が出来なかったので、今日のところは帰ってきたそうです。
医師曰く、『紹介状を書いたクリニックは針生検ができるクリニックなので、良性か悪性かわからない場合はその場で検査するはず。検査なく紹介状を書いたのは、手術が必要だからです。今日は紹介状に書かれていた先生は夏休みでいないので、私(准教授らしいです)がお話します。実際の手術は紹介状の先生になるか、私になるかまだ分かりません。スタッフには大学院生?インターン?のメンバーもいますが、沢山のチームで支えますので安心してください。』とのことでした。
父と母はまず、インターンという言葉に不安を覚えたそうです。
自分の身体を預けるので、やはり熟練のメンバーのチームがよいと思ったそうです。
こういうチームは大学病院では有りがちそうですが、ある意味、母の場合簡単な手術や症例だからですか?
手術の成果は、極端な話、研修医がやっても、ベテラン医師がやっても変わらないものですか?変わる場合は再発の可能性も大きく変わりますか?
また、すぐ手術の話になったのは、進行が早かったり、悪性度が高いと触診や画像診断で思ったからではないですよね?
前回の田澤先生のご回答から、ステージが比較的初期であること、生検しないと核グレードがわからないことも理解してるのですが、不安なので念のためお伺いします。
※細かい質問で本当に申し訳ございません。
それから、なぜ針生検をすぐしないのか尋ねたところ、『針生検をすると、針生検の痕?(モヤモヤ?)が映ってCT検査が正確にとれない場合がある。針生検からCT検査までに2週間くらい空けないといけないので、先に今日CTなどの検査をしてから針生検をします』と医師は答えたそうです。
これは、普通の流れですか?
まず針生検と思っていたので、困惑しています。もう画像診断から分かりきっているからなのだと思いますが。
父と母が『娘とも話し合ってからまた3日後くらいに来ます』と話すと、医師は『どんどん手術が埋まってしまうから、休憩を挟んで今日回答下さい。』と言ったそうです。
結局、父と母は違和感があったので、そこの病院で手術すると決めきれず、CT検査は受けずに、先生と話す前に受けた血液検査やマンモグラフィーだけを受けて今日は帰ってきたそうです。
初日からのこの流れが普通なら、私達の考え方が間違っていたのだと思います。
あえて、針生検を先に希望すると手術までの期間が伸びてしまいますよね。
乳がんは進行が比較的遅いのは分かっていますが、せっかく早期発見したのに、その間に万が一進行したら?と不安になります。
まず、針生検を希望するべきでしょうか?
手術は早ければ早いほど良いと思うのですが、具体的に、手術はどれくらいまで待てるのでしょうか?
今の時期(9月中旬までに生検を受けるとして)だと、何月までに手術を受けたほうがよいと田澤先生はお考えになりますか?
というのも、母は友達が手術したという乳がんの症例数の多い有名な病院(大学病院ではなくがん研究センター系の病院です)にもう1件行ってみようと思っています。
※紹介状をもらうために、またクリニックに行ってマンモやエコーを撮らなければいけなくなりましたが。
そこは治療までの待ち時間がそれぞれ、手術まで6週間、化学療法まで2-4週間、放射線治療まで3-4週間と書いてあります。
待ち時間は平均的ですか?
手術数の多い病院、腕の良い医師の執刀を待つよりも、早く手術してもらえる病院をオススメしますか?
また、有名な病院なら医師の人数が多いので、研修医?など経験が浅い医師が担当になって、結局大学病院と変わらなくなるのでは?と心配です。
まず、生検してグレードやリンパ節転移の有無を確認しないと治療方法も分からないので、田澤先生の見解も変わると思いますが、現時点でのご意見を教えてください。
ちなみに、大学病院や有名病院だと(無駄はないのでしょうが)、本当に必要かどうかが疑わしい抗がん剤治療(抗ガン剤治療が不要なことを願うのですが)をさせられてしまうことはありますか?
あまりにも辛い副作用がある場合は、部分部分拒否しながらも最後まで治療してもらえるのでしょうか?
色々と他の病院のことを尋ねてしまい、失礼で本当に申し訳ございません。
本当は田澤先生の病院に行けたら良いのですが。
話が変わりますが、今日の大学病院の先生が画像で腫瘍を測ったところ、先日お伝えした11mmではなく、13mmだったそうです。
2日で2mmも大きくなったとは思えないのですが、前回の医師の測り間違いですか?
綺麗な丸ではないと思うので、測る人によって少しの誤差はありますよね。
また、13mmでも、ステージや転移の可能性等前回のご回答内容に変わりはありませんか?
今日の医師は左胸にも5mmのしこりがエコー上認められると説明してくれたらしいのですが、これは当たり前ですが生検してみないとガンかわからないですよね?
また、万が一癌だった場合、ステージ0またはⅠまたはⅡaの可能性ありと考えていれば良いですか?
また両側で核グレードがそれぞれ違うということはありますか?
両側乳がんだった場合、生検や手術は同時にするのが一般的なのでしょうか?
沢山質問してしまい申し訳ございませんが、よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 大学病院では、どのような診療になるか「良く表現」されています。
 「誰が執刀するかわからない」
 「スタッフには大学院生?インターン?のメンバーもいますが、沢山のチームで支えますので安心してください」これこそ、安心できない理由だと思いますが…
 ここでは、「大学院生や研修医が執刀する可能性」について触れられていませんが、「実際には大学病院で彼らは、経験を積む訳」です。
 気をつけなくてはならないのは「○研○明」とか「癌○○タ―」のような(一見)専門病院です。
 これらは行くと解るのですが、「経験を積むために、(大学病院と大した差もない)若い医師が集まって」います。
 やはり、「それらの乳腺認定医や乳腺専門医を目指す医師の修練の場」なのです。
 「名前だけで」患者さんが集まってくる事をいいことに、「チームで医療をしている」という名のもとで「それら若い医師の修練」が行われています。
 大量にいる「経験の浅い医師の誰が手術をするのか?」チーム医療の名のもとに「曖昧となっている」のです。

回答

「こういうチームは大学病院では有りがちそうですが、ある意味、母の場合簡単な手術や症例だからですか?」
⇒「簡単とか難しい」とかではなく、「大学病院では当たり前(通常)のこと」です。
 医師として「最初の数年で経験を積む場」は大学病院です。
 一般病院には「迷惑をかけられない」から「大学病院は教育機関」という名のもとに「大学病院で初期研修医などが経験を積んでいる」のです。
 ♯もちろん、それが大学病院の機能の「最も重要な点」であることも間違いありません。
 意地悪く言えば、皆さんの「大学病院は高度な医療が行われているという勘違い」を上手く利用しているのです。
 
「すぐ手術の話になったのは、進行が早かったり、悪性度が高いと触診や画像診断で思ったからではないですよね?」
⇒違います。
 「診断は前医でついている」という認識なのでしょう。(針生検もしていないのに)
 
「手術の成果は、極端な話、研修医がやっても、ベテラン医師がやっても変わらないものですか?変わる場合は再発の可能性も大きく変わりますか?」
⇒これは大きな違いがあります。
 ただ、「長く」やっているとか、「大勢の医師で多くの症例を行っている病院にただ在籍している」などは何の足しにもなりません。
 やはり、実施に「自ら執刀した症例数がどれくらいあるのか?」が重要なところです。
 手術の「成果」は質問者のいうところの「再発率」だけではありません。
①根治性 
 これを「再発率」などで数値で比較しようとすると「ステージなどの違い」があり困難なところです。(ステージの高い症例が多ければ再発率が高いのは当たり前だからです)
 ただし、身近な例を挙げると
 私がつい最近、「他院で手術された患者さん」が術後治療を希望して紹介されたのですが、「腋窩リンパ節を郭清された事になっている」のに、「明らかに転移リンパ節が残っていた(術後2~3カ月ですから、再発ではなく取り残しです)」のです。
 このように(手術が稚拙なものが)「摘出すべきリンパ節」を取り残しすることは時々あるのです。
②合併症
 これが実は最も問題となるところです。
・術中の出血 私が赴任する前の「麻酔記録」などを見る機会があるのですが、「100mlとか200mlとか平気で出血」していることに驚かされます。
 私は、「腋窩郭清があろうが、乳房切除だろうが」ここ数年来「出血少量」で行っています。
 そのような「出血をさせずに手術をすることが可能」であることさえも、大学病院時代には考えもしなかった思いがあります(出血して当たり前と)
      
・術後出血 
 術中出血と同様です。
 手術操作が稚拙だと、どうしても術後に「ジワジワ」と出血するのです。
 挙句の果てには「再手術」となります。(大学病院が再手術率が高いのは間違いないでしょう)
      
・入院期間 
 当院のように、「乳房切除でも腋窩郭清でもドレーンを入れない」施設は他には無いとは思いますが、どうしても「術後にリンパ液が貯留」して入院期間が長くなりがちです。
       
・感覚障害 
 例えば「センチネルリンパ節生検のみ」のように「本来、周囲の神経は避けて行える筈」の事も、「めちゃくちゃな操作」で破壊してしまうことでおこります。
     
・患肢浮腫 
 「腋窩郭清」でも「不必要なリンパ管を破壊」していることに気付かない医師は沢山います。
 「何処からアプローチして」どこまで郭清すればいいのか? 非常に経験が必要な部分です。
 
③整容性 
 必要な部分を切除し、「残すべきものは残す」という事ができるかどうか?です。
 一番大きいところは「腫瘍と関係の無い部分の」皮下脂肪を綺麗に残せるか?なのです。
 
「針生検をすると、針生検の痕?(モヤモヤ?)が映ってCT検査が正確にとれない場合がある」
⇒そんなことはありません。
 余程「稚拙な手技」でも無い限り、「針生検」が画像診断に影響など与えません。
 ♯当院では全て「針生検」後に画像診断は行っていますが、全く支障はありません。
 
「まず、針生検を希望するべきでしょうか?」
⇒そう思います。
 本来「診断(組織診断)」⇒(術式決定のための)「画像診断(MRI)」や(全身チェックのための)「画像診断(CT)] という順番であるべきです。
 ♯針生検した結果がでるのが10日前後かかるため、その「待っている間」にそれら画像診断をすることが「時間を有効に用いる」ことだと思います。
 
「具体的に、手術はどれくらいまで待てるのでしょうか?」
⇒私の感覚だと「診断から1カ月半」というところです。
 2カ月だと「長い」感覚があります。
 今現在、疑われているとしたら、「10月中旬まで」だと安心です。(最低限10月中でしょう)
 
「待ち時間は平均的ですか?」
⇒その手の病院では「平均的」だと思います。
 
「手術数の多い病院、腕の良い医師の執刀を待つよりも、早く手術してもらえる病院をオススメしますか?」
⇒なかなか病院選びは難しいことは「過去のQandA」でも再三回答している次第です。
 「(病院として)手術数が多い」は全くあてにはなりません。
 手術は「執刀医その人」の技術なのです。頭数だけいても仕方がありません。
 そうではなく「医師一人当たりの手術数が多い」がいいと思います。
 
「有名な病院なら医師の人数が多いので、研修医?など経験が浅い医師が担当になって、結局大学病院と変わらなくなるのでは?と心配です」
⇒その通りです。
 冒頭に記載したとおりです。
  
「生検してグレードやリンパ節転移の有無を確認しないと治療方法も分からないので、田澤先生の見解も変わると思いますが、現時点でのご意見を教えてください」
⇒治療法のバリエーションが増えれば増えるほど、むしろ「医師個人の経験」がものをいいます。
 「チーム医療」という都合のいい言葉が良く用いられますが、一歩間違えると「無責任医療」となることに注意が必要です。
 何でもかんでも「カンファレンスにかける」的な発想が「皆がこれでいいと言ったから(もう自分の責任ではない)的な、自らの責任を回避」に繋がるのです。
 全ての責任は「自分にある」という医師による治療がいいと思います。
 
「本当に必要かどうかが疑わしい抗がん剤治療(抗ガン剤治療が不要なことを願うのですが)をさせられてしまうことはありますか?」
⇒その手の病院の場合は、「条件にあえば」治験を強く勧められることはあります。
 確かに「なかなか断りづらいよう」ですね。
 さすがに、「無理やり」ではないですが…
 
「部分部分拒否しながらも最後まで治療してもらえるのでしょうか?」
⇒途中で「投げ出す」ことはありません。
 
「11mmではなく、13mmだった」
⇒質問者のおっしゃるように「計り間違い」というよりは「測定誤差の範囲内」と思います。
 
「13mmでも、ステージや転移の可能性等前回のご回答内容に変わりはありませんか?」
⇒その通りです。
 変わりません。
 
「万が一癌だった場合、ステージ0またはⅠまたはⅡaの可能性ありと考えていれば良いですか?」
⇒さすがに「5mm」では(もしも癌だとしても)「0か1」でしょう。
 
「両側で核グレードがそれぞれ違うということはありますか?」
⇒それは当然です。
 (前回の回答にもコメントしたように)右と左が同一の起源である事は「絶対にありえません」
 完全に「別のもの」なので、当然「グレードもサブタイプも組織型も異なる筈」です。(偶然はありえますが…)
 
「両側乳がんだった場合、生検や手術は同時にするのが一般的なのでしょうか?」
⇒これも当然です。
 患者さんにとって「両方同時に手術」するのが「精神的にも身体的にも」いいことは間違いありません。
 なので、「左も同時に(針生検を)すべき」です。
 ただし、「5mmだと、細胞診にしましょう」と言われそうですが…(そこで「検体不良」となり、様子を見ましょうとなりそうです。そのような診療には困ったものです。)