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ルミナールHER2乳がんの治療と妊活

[管理番号:13183]
性別:女性
年齢:42
病名:
症状:病状は本文中に記載、症状はタモキシフェン服用による更年期障害のような症状あり
投稿日:2025年11月04日

田澤先生、はじめまして。
いつもQAを参考にさせていただいております。ありがとうございます。
同様の問い合わせも多いと思いますが、私のような状況の場合は、田澤先生はどのようにお考えになるのか、
先生のご意見を伺いたくよろしくお願いいたします。

2024年2月、40歳で左乳がんの診断を受けました。

<治療前の診断>
ステージ2A、浸潤がん21mm+非浸潤がん40mm、ER90%、PgR60%、HER2 3+陽性、
Ki-67 70、核グレード2、組織学的グレード2、CEA 0.7、CA15-3 6.0、 NCC-ST-439
1.7、BCA225 20未満、BRCA1/2 陰性、画像上はリンパ節転移なし・遠隔転移なしの想定(PET-CTで脾臓が光り、エコーにて腫瘤確認、MRIにて過誤腫の疑い 腫瘤は複数あり、大きいもので13mm→遠隔転移ではないものと想定)、肝臓に血管腫あり

<これまでの治療>
2024年4月~術前化学療法 DHP療法×4回、EC療法×4回(3週おき)
 *術前化学療法を終えた時点での検査結果:エコーで浸潤がん10mm、MRIではもともと一塊だった浸潤がんがバラバラに砕けた形状に映り測定不能
2024年10月 左乳房全摘手術、センチネルリンパ生検陰性(0/1) のため、リンパ郭清省略
2024年12月 摘出乳房の病理検査の結果 グレード3残存なし
2024年12月~術後ハーセプチン、パージェタ×14回(3週おき)、タモキシフェン内服(5年間)

<現在の治療>
抗HER2治療は2025年9月に終了、現在タモキシフェンの服用のみ
(直近の腫瘍マーカー 2025年9月時点CEA 1.7、CA15-3 5.2)

<以下質問です>
①治療の妥当性
現在までの治療内容について妥当だと思われますか?
もし別の治療法、治療順を考えられるという場合は、どのような治療計画が理想か教えていただけると幸いです。
私は、正しい病状の把握のため、手術先行の方がよかったのではないか?と?今でも疑問をいだいています。
ちなみに、乳房温存希望はなく、化学療法により縮小したことで温存も可能になったといわれましたが、それでも自ら全摘を選んでいます。
それから、化学療法について、通常はEC→DHPの順で行うそうですが、治療の予約当時、遠隔転移(DHPのみになるとのこと)の疑いがあったため、DHPから開始する予定となりました。
結局、初回投与日前に、転移ではないだろうという見解になりましたが、もう予約しているからということで順を元に戻すことはなく、DHP→ECの順で行いました。
順を入れ替えることはあまりないと聞いていますが、効果に差はないものでしょうか?

②脾臓の腫瘤について
治療前の検査のあと、DHP療法終了時と術前にMRIを、術後8か月でPET-CTを受けています。
大きさに変化はなく、MRIでは過誤腫の疑い、最後のPET-CTでは変わらず光っていたそうです。
主治医は「転移ではないと思います」と言っていますが、断定はされずに気にかかっています。
今後も検査を受けるべきでしょうか?受けるべき場合、検査内容や頻度についてどのようにお考えでしょうか?

③肝臓の血管腫について
脾臓のエコーの際に見つかりました。良性のしこりと言われましたが、こちらはその後検査をしていません。
乳がんの影響などにより悪性化することはあり得ますか?
今後も検査を受けるべきでしょうか?

④術後の病理検査の結果(グレード3:残存なし)について
上記の通り術前の検査で画像上映るものがあったため、がんはまだあると思っていたので、残存なしという病理結果に驚いています。
術前の画像には映っていても、実際はがんはもう消失していて残存なし、ということがあり得るのでしょうか?
(切り取った乳房をいくつかの輪切りにして、その断面にがんがあるかを病理検査していると聞いたのですが、例えばたまたまその断面にはがんがないけれど、断面ではないところにがんが残っているなどの理由で、がんの残存を見落とされることはあるのでしょうか?もしくは術前検査の画像に映ったものが、死滅したがん細胞で残存に含まれないということでしょうか?)

⑤残ったリンパ節への治療の必要性
術前抗がん剤治療をしたため、正しい病状の把握ができていないと考えており、リンパ郭清省略となったことが不安です。
郭清をする、もしくは術後放射線治療をした方がよいのでは?と主治医に相談しましたが、
主治医は「過度な医療は行わない」という見解で、リンパ局所に対して治療をすることなく過ごしています。
そもそも手術先行にしていれば、このような不安はなかったものと思いますが、
こうなってしまった今からでも、リンパへの治療をすべきでしょうか?
また、治療をすべき場合は、どのような治療が望ましいと思われますか?

⑥抗HER2薬による心臓の機能低下について
治療前には一度も指摘されたことはないですが、治療を開始してから3回の心電図で毎回不整脈(期外収縮)を指摘されています。
抗HER2薬の影響かもしれないと言われましたが、ボーダーラインで治療の必要はなく、
また抗HER2薬の中止を考えるほどでもないとのことで、予定されていた抗HER2薬の投与をすべて終えました。
この心臓の機能低下は、投薬が終われば復活するものなのでしょうか?
それとも不可逆的なもので、一度低下した機能の復活は期待できないものでしょうか?

⑦今後の定期検査について
今後10年間、残っている健側(右)の乳房に対しマンモとエコーを、また、両側リンパに対しエコーをしていきます。
頻度は1年に1回です。こちらで十分といえますでしょうか?
(他院に通う知人は、乳がん手術後、3か月おきにマンモとエコーと腫瘍マーカー、1年おきにPET-CTをしているようでして…)

⑧ホルモン治療の期間について
術後の病理結果で残存なしで良好だったため5年でよいといわれました。
10年といわれる今、5年でやめるのが適正と考えられますでしょうか?

⑨ホルモン治療の選択について
タモキシフェンを飲み始めて1年弱で、生理のような下腹部痛と出血がありました。
出血1日目に婦人科でエコーで診てもらったところ、子宮内膜は10mmの厚さがあり、
また、右の卵巣には50mmの黄体嚢胞と思われるものがあるとのことで、婦人科医から生理が戻ったのだろうと言われました。
ところが、出血から1週間が経った時点で血液検査を行ったところ、AMH 0.03未満、
LH 7.10、FSH 18.93、エストラジオール 6.9、テストステロン 0.10となっており、
とても生理がくるような値ではないということで、婦人科の先生曰く「閉経前のひと踏ん張りで最後の生理が来たのかもしれない、今後生理がくることは考えにくい」と言われました。

生理が戻った可能性を考えると、LH-RHアゴニストの上乗せが必要か?と思っていましたが、
血液検査の結果からして、上乗せは不要でしょうか?
むしろ、閉経しているものと考え、タモキシフェンをAIに変えるべきでしょうか?
AIに変えるにしてもアリミデックス、フェマーラ、アロマシン等、いくつか種類あるようですが、私の場合はどの薬が良いなどありますでしょうか?

⑩妊活について
挙児希望で、治療前の40歳の時点で7個の受精卵凍結をしています。
しかし、5年のホルモン治療を終えてから移植をするとなると、移植時で47歳になってしまいます。
そこでホルモン治療の中断を検討するため、主治医よりポジティブ試験の説明を受けましたが、
この試験の対象者は、HER2陰性であること、また抗がん剤治療を必要としない早期かつ予後のよい見込みの方のみが対象になっているため、私には直接当てはめることはできないと言われました。
そこで、ポジティブ試験に準じて考えるとして、
2年~2年半で中断+ウォッシュアウト6月で、44歳~45歳で胚移植のチャレンジをしてみては?と言われていました。
その後、前述の婦人科医(別病院、IVF出身)より、それでは遅い(妊娠出産は厳しい)のでは?と言われ、
主治医とよく相談するようにとアドバイスをいただき、もう一度主治医に相談したところ、
術後の病理結果で残存なしだったことをふまえ、そういうことなら1年半で中断+ウォッシュアウト3月でいいかも(43歳で移植)との回答がありました。
この場合、移植時期はハーセプチンのウォッシュアウトに必要だと言われた1年を満たすタイミングとほぼ重なります。
(そもそもハーセプチンは抜けるのに1年かかりますか?3月で抜けるという文章を見たことがあります)
年齢を重ねて妊娠・出産が難しくなるだろうという焦りから早く胚移植したい気持ちと、
再発への不安から治療を疎かにしたくない気持ちがぶつかっています。

先生は、私の場合でも中断してよいものか、また、治療中断のリスクについてどのように思われますか?
また、仮に中断するならば最良のタイミングはいつとお考えになりますか?

質問が多く、また長文となり申し訳ありません。
どうかお力をお貸しいただけると幸いです。
お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

①治療の妥当性
現在までの治療内容について妥当だと思われますか?

→全くの標準治療です。
私から見ると「全摘なら術前抗がん剤する理由がない」と思いますが、術前抗がん剤好きの医師が多いので仕方がないことでしょう。

②脾臓の腫瘤について
治療前の検査のあと、DHP療法終了時と術前にMRIを、術後8か月でPET-CTを受けています。
大きさに変化はなく、MRIでは過誤腫の疑い、最後のPET-CTでは変わらず光っていたそうです。
主治医は「転移ではないと思います」と言っていますが、断定はされずに気にかかっています。

→100%転移ではないと言い切れます。(主治医にも言い切ってほしいものです)

③肝臓の血管腫について
脾臓のエコーの際に見つかりました。良性のしこりと言われましたが、こちらはその後検査をしていません。
乳がんの影響などにより悪性化することはあり得ますか?
今後も検査を受けるべきでしょうか?

→血管腫は気にする必要は一切ありません。

④術後の病理検査の結果(グレード3:残存なし)について
上記の通り術前の検査で画像上映るものがあったため、がんはまだあると思っていたので、残存なしという病理結果に驚いています。
術前の画像には映っていても、実際はがんはもう消失していて残存なし、ということがあり得るのでしょうか?
(切り取った乳房をいくつかの輪切りにして、その断面にがんがあるかを病理検査していると聞いたのですが、例えばたまたまその断面にはがんがないけれど、断面ではないところにがんが残っているなどの理由で、がんの残存を見落とされることはあるのでしょうか?もしくは術前検査の画像に映ったものが、死滅したがん細胞で残存に含まれないということでしょうか?)

→素直に「病理結果を信じましょう」

⑤残ったリンパ節への治療の必要性
術前抗がん剤治療をしたため、正しい病状の把握ができていないと考えており、リンパ郭清省略となったことが不安です。
郭清をする、もしくは術後放射線治療をした方がよいのでは?と主治医に相談しましたが、
主治医は「過度な医療は行わない」という見解で、リンパ局所に対して治療をすることなく過ごしています。
そもそも手術先行にしていれば、このような不安はなかったものと思いますが、
こうなってしまった今からでも、リンパへの治療をすべきでしょうか?
また、治療をすべき場合は、どのような治療が望ましいと思われますか?

→術前画像診断で「転院所見なし」となっているので、(術前抗がん剤後ではありますが)「センチネルリンパ節生検をして(その結果)郭清省略をする」ことは極めて妥当です。

⑥抗HER2薬による心臓の機能低下について
治療前には一度も指摘されたことはないですが、治療を開始してから3回の心電図で
毎回不整脈(期外収縮)を指摘されています。
抗HER2薬の影響かもしれないと言われましたが、ボーダーラインで治療の必要はなく、
また抗HER2薬の中止を考えるほどでもないとのことで、予定されていた抗HER2薬の投与をすべて終えました。
この心臓の機能低下は、投薬が終われば復活するものなのでしょうか?
それとも不可逆的なもので、一度低下した機能の復活は期待できないものでしょうか?

→可逆的なものなので「全く」心配いりません。

⑦今後の定期検査について
今後10年間、残っている健側(右)の乳房に対しマンモとエコーを、また、両側リンパに対しエコーをしていきます。
頻度は1年に1回です。こちらで十分といえますでしょうか?
(他院に通う知人は、乳がん手術後、3か月おきにマンモとエコーと腫瘍マーカー、1年おきにPET-CTをしているようでして…)

→定期診察に関しては(ガイドラインは全くなく、唯一は1年に1回のマンモグラフィーのみ)施設でバラバラなので仕方がないでしょう。

⑧ホルモン治療の期間について
術後の病理結果で残存なしで良好だったため5年でよいといわれました。
10年といわれる今、5年でやめるのが適正と考えられますでしょうか?

→それは「5年たってから」考えるべきもので「5年後に決断すべきことを現時点で決めてしまう」こと自体、ナンセンス極まりないことですよ。

⑨ホルモン治療の選択について
タモキシフェンを飲み始めて1年弱で、生理のような下腹部痛と出血がありました。
出血1日目に婦人科でエコーで診てもらったところ、子宮内膜は10mmの厚さがあり、
また、右の卵巣には50mmの黄体嚢胞と思われるものがあるとのことで、婦人科医から生理が戻ったのだろうと言われました。
ところが、出血から1週間が経った時点で血液検査を行ったところ、AMH 0.03未満、
LH 7.10、FSH 18.93、エストラジオール 6.9、テストステロン 0.10となっており、
とても生理がくるような値ではないということで、婦人科の先生曰く「閉経前のひと踏ん張りで最後の生理が来たのかもしれない、今後生理がくることは考えにくい」と言われました。
生理が戻った可能性を考えると、LH-RHアゴニストの上乗せが必要か?と思っていましたが、
血液検査の結果からして、上乗せは不要でしょうか?
むしろ、閉経しているものと考え、タモキシフェンをAIに変えるべきでしょうか?
AIに変えるにしてもアリミデックス、フェマーラ、アロマシン等、いくつか種類あるようですが、私の場合はどの薬が良いなどありますでしょうか?

→これは「明らかに」化学療法閉経から回復する過程と言えます。
本来ならばLH-RHagonistを併用すべきです。

⑩妊活について
挙児希望で、治療前の40歳の時点で7個の受精卵凍結をしています。
しかし、5年のホルモン治療を終えてから移植をするとなると、移植時で47歳になってしまいます。
そこでホルモン治療の中断を検討するため、主治医よりポジティブ試験の説明を受けましたが、
この試験の対象者は、HER2陰性であること、また抗がん剤治療を必要としない早期かつ予後のよい見込みの方のみが対象になっているため、私には直接当てはめることはできないと言われました。
そこで、ポジティブ試験に準じて考えるとして、
2年~2年半で中断+ウォッシュアウト6月で、44歳~45歳で胚移植のチャレンジをしてみては?と言われていました。
その後、前述の婦人科医(別病院、IVF出身)より、それでは遅い(妊娠出産は厳しい)のでは?と言われ、
主治医とよく相談するようにとアドバイスをいただき、もう一度主治医に相談したところ、
術後の病理結果で残存なしだったことをふまえ、そういうことなら1年半で中断+ウォッシュアウト3月でいいかも(43歳で移植)との回答がありました。
この場合、移植時期はハーセプチンのウォッシュアウトに必要だと言われた1年を満たすタイミングとほぼ重なります。
(そもそもハーセプチンは抜けるのに1年かかりますか?3月で抜けるという文章を見たことがあります)
年齢を重ねて妊娠・出産が難しくなるだろうという焦りから早く胚移植したい気持ちと、
再発への不安から治療を疎かにしたくない気持ちがぶつかっています。

先生は、私の場合でも中断してよいものか、また、治療中断のリスクについてどのように思われますか?
また、仮に中断するならば最良のタイミングはいつとお考えになりますか?

→そもそも妊娠出産に再発リスクの上昇のエビデンスはありません。

妊娠出産希望であれば「いつの時点であれ」ホルモン療法を中断し妊活すべきです。

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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/11/19
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