[管理番号:13155]
性別:女性
年齢:55歳
病名:浸潤乳がん
症状:右乳頭下3.2㎝しこり
投稿日:2025年10月24日
ルミナルHER2 Ki67 40% StageⅡBで
来月田澤先生に手術をお願いすることが出来嬉しくおもっております
地元の主治医のご提案は
トラスツズマブ+ぺルツズマブ+ドセタキセル 3クール
のち
エピルビシン+シクロフォスフェミド 3クール
のち手術
術前のメリットとしては
①術後癌細胞が消えていたらトラスツズマブ+ぺルツズマブ 14回
②がん細胞が残ってた場合はカドサイラを14回
①を選ぶことが出来るが、手術先行だとお薬が効いているかがわかりようがないため
きついお薬を使うしかなくなってしまう
だけだと思っていたところ
「術前抗がん剤、その闇と影」
も拝見し、手術先行に決めたのですが
先日主治医から
術前抗がん剤にすると、再発率が30%減らせる
20人再発してるところを、6人に抑えることが出来ることがわかり
これは我々にはインパクトが強いから術前で行こう、という流れになっていると伺いました
そようなデータがあるのでしょうか?KATHERINEのことでしょうか?
また、術後抗がん剤をしないと(データではなく)体感半数以上再発している、ともおっしゃっていました 田澤先生もそういった印象でしょうか?
(HER2には抗がん剤が標準治療というのは理解しています)
お忙しいところ恐縮ですがよろしくお願いします
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
詳細は『今週のコラム 499回目 術前抗がん剤の闇と影 抗癌剤を知り尽くした乳腺外科医の憂い』を読んでいただくとして…
まず重要なことは「抗がん剤は術前に行っても、術後に行っても同じ」という事実があるのにも関わらず、
古の時代から
「見えない癌細胞をまずは抗がん剤で叩く」とか、「術前に行うと抗がん剤が効くかどうか解る」などと
わけのわからない理屈(そもそも「術前術後補助療法に適応のある薬剤は厳密に決まっている」ので選択などない)を術前抗がん剤を行う際の「錦の御旗」のように使われていたことは、このQA10年以上の歴史で私が口酸っぱく言っていた通りです。
その実、本当の理由(裏の理由と言ってもいいかもしれませんが)は、自分が楽をするための術前抗がん剤が「見え見え」であることが多い。
リンパ節転移があるとすぐ「術前抗がん剤をごり押しする」のは、そのいい例といえます。
話をHER2陽性乳癌に絞れば、先に挙げた『今週のコラム 499回目 術前抗がん剤の闇と影 抗癌剤を知り尽くした乳腺外科医の憂い』を熟読してもらえばいいわけですが、『KATHERINE』試験により術前抗がん剤でpCRとならなかった場合には(本来、再発治療にしか適応のない)T-DM1が使える。
↑
このことを「HER2陽性乳癌では術前抗がん剤をごり押しする根拠」とする連中が多くなってしまいました。
しかし(先のコラムでも書いたように)
1.そもそもT-DM1と(その臨床試験で比較したのは)trastuzumabであって、trastuzumab+pertuzumabではないという事実
♯現在ではpN+ではtrastuzumab単独で行うことはなく、必ずtrastuzumab+pertuzumabを使用しているのです。
2.T-DM1は「再発治療でこそ、その副作用に耐えうる」薬剤だとしても、術後補助療法として受け入れられるものなのか?
上記のような問題があり、「HER2陽性乳癌=術前抗がん剤とする根拠として(pCRでなければ)T-DM1を使えるから」というのには全く賛成できないのです。
それよりも、「きちんと腋窩郭清ができるように修練しなさい。」
そう私は彼らにはいってあげたくなるのです。
***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/11/10
***