[管理番号:12766]
性別:女性
年齢:57
病名:トリプルネガティブ2b
症状:
投稿日:2025年05月31日
いつもこちらで勉強させていただいております。薬剤性間質性肺炎の原因についてご相談させてください。
去年の12月、母がトリプルネガティブ乳がんステージ2bと診断されました。その後パクリタキセルなどの抗がん剤とキイトルーダの治療を副作用も少なく3ヶ月無事終えました。しかしその後、TC療法1回目+引き続きキイトルーダをして5日経ったあたりから高熱が続き、結果薬剤性の間質性肺炎になってしまいました。今抗がん剤を中止して肺の治療中です。
主治医の見解としては、「間質性肺炎を起こしたのはキイトルーダの可能性が高い。キイトルーダの使用を今後中止し、ステロイドの量を減らしながら、肺が良くなり次第、TC療法を続ける。」とのことでした。
家族はTC療法を新しく始めたからその影響で間質性肺炎になったと思っていたので、主治医の見解を聞いて正直驚いています。
私は素人なため、主治医の見解を受け入れるべきだと思います。しかし、状況的にTC療法の副作用ではないかと疑ってしまい、今後の治療に不安を感じています。田澤先生のご見解をお聞きしたいです。
また、間質性肺炎の影響で2ヶ月抗がん剤ができなくなってしまいました。母はトリプルネガティブ乳がんなこともあり、癌が大きくなってしまうのではないかととても怖がっています。2ヶ月という短い期間で転移したり癌が大きくなってしまうことはあるのでしょうか?
長文失礼いたしました。お忙しい中だと思いますが、御回答よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
トリプルネガティブだからといって、安易に?(か、どうかは不明ですが)おそらく、「これがトリプルネガティブの標準で、一番効果がいいから」と「都合のいい情報のみを強調」してこのpembrolizumabを用いた術前抗がん剤が開始されただろうことは容易に想像がつきます。
先日私がYOUTUBEでお伝えしたように、重篤な有害事象(間質性肺炎はその最たるものと言えます)が患者さんの運命を変える可能性があることを忘れてはいけないのです。
パクリタキセルなどの抗がん剤とキイトルーダの治療を副作用も少なく3ヶ月無事終えました
⇒これはpembrolizumab/paclitaxel/carboplatineの3剤ですね。
TC療法1回目+引き続きキイトルーダ
⇒これは誤りです。
TCではなくAC(doxorubicin:商品名adriamicinの頭文字A/cyclophosphamide) もしくはEC(epirubicin/cyclophosphamide)のどちらかです。
♯doxorubicinもepirubicinもどちらもanthracycline系、所謂taxane(paclitaxelやdocetaxelなど)と並ぶ乳癌のKeydrugです。
高熱が続き、結果薬剤性の間質性肺炎になってしまいました。今抗がん剤を中止して肺の治療中
⇒まさに、これが術前抗がん剤偏重の問題点です。
この後、治療自体が滞ってしまい(そもそも)間質性肺炎自体そのものが時に致死性となりうる重大な有害事象なのです。
同じ間質性肺炎が発生するにしても(無論しないことにこしたことはありませんが)
術後であれば「病変が切除された後」だから、落ち着いて間質性肺炎の治療に専念できますが、乳癌を置いた状態では、最悪「手術不能状態」へと追い込まれる可能性がゼロではないわけです。
主治医の見解としては、「間質性肺炎を起こしたのはキイトルーダの可能性が高い。
キイトルーダの使用を今後中止し、ステロイドの量を減らしながら、肺が良くなり次第、TC療法を続ける。」とのことでした。
家族はTC療法を新しく始めたからその影響で間質性肺炎になったと思っていたので、
主治医の見解を聞いて正直驚いています。
⇒無論、間質性肺炎の原因薬剤がpembrolizumabなのか?anthracyclineなのか?は判定はできません。
其の意味で「原因薬剤はpembrolizumabと決めつけて、再度anthracyclineだけでも再開する」など、とんでもない暴挙と言えます。
今回、うまく治癒したとしても(無論そうなることを願っていますが)、再度その抗癌剤(anthracycline)で間質性肺炎の再燃が起きたら(正直そう考えるだけでもゾッとしますが)今度こそ致命的になりえます。
私は過去にも同様のことをコメントしていますが…よく聞いてください。
『術前術後に行う抗癌剤は命の危険を優先しなくてはいけないものであり、再発治療とは決定的に異なる』
↑
上記を見失ってしまうと、それは守られるべき命も守られません。
質問者(の母親)は、転移を伴う乳癌でも再発乳癌でもないのです。
命の危険を冒して抗癌剤をしなくてもまずは手術だけで根治の可能性が十分あるのです。
その主治医のいう「目に見えない癌細胞を倒す為」に、(その有害事象で)患者さんの命を脅かすことは絶対に間違いなのです。
つまり間質性肺炎の原因が「pembrolizumabであれ、anthracyclineであれ」、間質性肺炎となった以上これからは(術前であれ術後であれ)それを再燃させるリスクのある抗癌剤(この場合は免疫チェックポイント阻害剤であるpembrolizumabも)決して行ってはいけないのです。
それ(抗癌剤使用)が許されるのは唯一(無論、無いことを祈っていますが)再発した場合に限ります。
お母さんの命を第一に考えたら、そのようにすべきです。
私は素人なため、主治医の見解を受け入れるべきだと思います。しかし、状況的にTC療法の副作用ではないかと疑ってしまい、今後の治療に不安を感じています。田澤先生のご見解をお聞きしたいです。
また、間質性肺炎の影響で2ヶ月抗がん剤ができなくなってしまいました。母はトリプルネガティブ乳がんなこともあり、癌が大きくなってしまうのではないかととても怖がっています。2ヶ月という短い期間で転移したり癌が大きくなってしまうことはあるのでしょうか?
⇒上記で理解できましたか?
決してpembrolizumabも抗癌剤も使うべきではないのです。
★間質性肺炎が治癒したら「手術不能となる前に、確実に手術をすること」これだけに注力しましょう。
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/6/18
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