[管理番号:836]
性別:女性
年齢:58歳
初診時に乳癌3.5cm位の診断。現在右乳房に5㎝×4.5cmの癌。検査の結果骨への転移、恥骨・右鎖骨・脊髄の3か所。内臓への転移は見られいません。進行性の悪性癌。
6月初回ウイークりーパクリと月1回のランマーク開始。現在は3回目の抗がん剤投与終了で、半年投与の予定です。
ランマーク1回の注射で左股関節の痛みが消えました。抗がん剤の後遺症も倦怠感や疲れやすいと感じるくらいです。現在痛みは胸の癌が時々痛いくらいで、十分我慢できる範囲です。その他はどこも痛い所はありません。
治療については主治医の判断で不安はありませんし、標準治療をしてもらっていると理解しています。信頼が出来るDr.です。
ただ、今後脳に転移をしたら、私はどんな症状が出るのでしょうか?
近い将来骨折を必ずするのでしょうか?
そして、私は一人暮らしで、今生活に大きな支障はありません。職場の理解もあり、重い物は持たない、階段は使わずエレベーター使用。週5日間の常勤で仕事をして、残業もしています。
私はいつまで今のQOLを維持できるのでしょうか?転ばないように生活では気を使っています。
この先、どのような症状でQOL低下、ADL低下をして、いつまで出かけることが可能なのか?どのくらい元気で居られるのか知りたいです。それまでにやっておきたいことがあります。
そして、治療費にいったい幾らかかるのかとても不安で、余命や元気で居れる予測が出来たら、お金の使い方も変わるし、少し安心できそうに思います。
アドバイスを頂けないでしょうか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「脊髄」ではなく「脊椎」ですね。(脊髄転移となると、骨転移とは全く意味合いが異なってきます)
Weekly PTXを行っているところからすると、(ホルモン療法もハーセプチンも行っていないようですので)トリプルネガティブでしょうか?
回答
「今後脳に転移をしたら、私はどんな症状が出るのでしょうか?」
⇒脳転移で多いのは「ふらつき」や「歩行障害」です。
たとえば、「自分では真っすぐ進んでいる」つもりなのが、「どんどん右(左)に逸れていく」ような感じです。
また「痙攣」なども注意が必要です。
「近い将来骨折を必ずするのでしょうか?」
⇒そんな事はありません。
きちんとランマーク投与や化学療法をしている限り大丈夫です。
実際に、骨転移で治療中の方で「骨折」することは殆どありません。
ただ、加重骨には注意が必要です。場合によっては「放射線治療」の適応となります。
♯放射線治療は「除痛や骨折予防」のために行います。
「どのような症状でQOL低下、ADL低下をして、いつまで出かけることが可能なのか?どのくらい元気で居られるのか知りたいです」
⇒これは非常に個人差があり、回答することができません。
骨転移は「長期コントロールが可能」なのです。
臓器転移が起きない様な治療を継続すれば、10年以上の「QOLやADLの維持」も十分に狙えます。
「治療費にいったい幾らかかるのかとても不安」
⇒これは今行っている「weekly PTXの効果」次第です。
6ヵ月継続時点で、「ほぼコントロールされてしまう」可能性も十分にあります。
その場合には、ランマーク+α(ルミナールならばホルモン療法単剤、そうでなければ経口抗がん剤など)で長期間コントロールも可能です。
♯パクリタキセルに比べると、随分経済的には楽になります。
質問者様から 【質問2】
先生返信を頂けてありがとうございす。申し訳ありません。脊椎でした。私の間違えです。
今分かること、今は答えられない事、丁寧に記載して頂き、本当にありがとうございます。嬉しいです。
初回抗がん剤で2泊3日で入院をしたとき、2名が骨折をした方が同じ病室でしたので、骨折が怖くて、過剰に心配をしていました。先生のおっしゃる通り、今後、過重の骨折には十分注意をして行きたいと思います。
内臓への転移がなければ、しばらくの間現状が維持できる望みもあることで、内臓の転移に注意して、自分なりに何か見分けると言ううか、今のうちにやっておきたい事、後でも良い事、慌てる事はない気がして、ホッとしました。
主治医からは、トリプルネガティブで、ホルモン剤が効かない癌だと言われました。
治療費はやっぱり掛かりそうですね。まずは、パクリタキセルの効果を見守りたいと思います。
先生、ハーセプチンについて、再度教えてください。HAR2の陰性でもハーセプチンは有効なのでしょうか?ネットで検索すると、HAR2陽性に有効と書いてありました。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
抗HER2療法(ハーセプチンなど)は分子標的薬です。
HER2過剰発現でしか全く無意味です。
回答
「HER2の陰性でもハーセプチンは有効なのでしょうか?」
⇒無効です。
ハーセプチンなど抗HER2療法は分子標的薬であり、「HER2陽性で無い限り」は全く意味がないのです。